魚油サプリメントの心血管系における価値は疑問である
親の離婚は男性の脳卒中と関連する
循環器系集中治療室の小児に対する厳格な血糖コントロールは有益ではない
高齢者において閉塞性睡眠時無呼吸は心血管系死亡率を上昇させる
ステント留置後で抗血小板薬内服中の患者におけるアスピリン中止は安全である(ESC 2012)
心原性ショックにおいて大動脈内バルーンパンピングの生存率に関する有益性はない(ESC 2012)
FFRガイド下インターベンションは緊急血行再建術を減少させる(ESC 2012)
大規模レジストリにおいてもTAVI後の有害イベントは低かった(ESC 2012)
TAVIは重症大動脈弁狭窄症患者のQOLを改善する(ESC 2012)
心筋梗塞の傾向は若年者と高齢者とで異なる(ESC 2012)
2011年の地震後に心不全のピークが持続(ESC 2012)
初めてのアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬は有望であることが示された(ESC 2012)
僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraClipの有望なデータ(ESC 2012)
Prasugrelはクロピドグレルよりもイベントを減少させなかった(ESC 2012)
アスピリン反応性を追加することによりクロピドグレルの予測値が上昇する(ESC 2012)
FFRctは既存の方法よりも優れている可能性が示された(ESC 2012)
オメガ3脂肪酸のサプリメントは主要心血管系イベントを低下させなかった [2012-09-25]
Omega-3 fatty acid supplementation not associated with lower risk of major cardiovascular events

70,000人近くの患者を対象とした入手可能な無作為化エビデンスの系統的なレビューおよびメタ解析の結果、オメガ3多価不飽和脂肪酸(PUFAs)のサプリメントは総死亡、心臓死、突然死、心筋梗塞(MI)、または脳卒中のリスク低下と関連しなかったとの過去のスタディの解析結果が、 JAMA 9月12日号に掲載された。何百万人という人がオメガ3 PUFAsを摂取するために市販の魚油カプセルを摂取している。検索された3,635の論文のうち68,680人を対象とした20のスタディが対象とされ、7,044の死亡、3,993の心臓死、1,150の突然死、1,837の心筋梗塞および1,490の脳卒中が報告された。解析の結果、全てのサプリメントスタディを考慮すると、総死亡率、心臓死、突然死、MIおよび脳卒中とのあいだに、統計学的に有意な関連がないことが示された。主要な学会の編集した最新のガイドラインでは、MI後の患者に対する魚油のサプリメントまたは食事指導が推奨されている。オメガ3 PUFAは様々な患者群において主要な心血管予後と統計学的有意な関連はないと筆者らは結論付けている。これらの結果は、日々の臨床における組織化された介入や食事性のオメガ3 PUFA摂取を支持するガイドラインにおけるオメガ3の使用を正当化するものでないと彼等は述べている。

親が離婚した男性は離婚のない家庭の男性と比較し脳卒中リスクが3倍である [2012-09-25]
Men with divorced parents have triple the risk of stroke compared to men from intact families

親が離婚した男性は離婚のない家庭の男性よりも脳卒中を発症する確率が高い、とInternational Journal of Strokeに掲載された。このスタディでは成人男性が18歳未満の時に親が離婚した場合、親が離婚しなかった男性よりも脳卒中を発症する確率が3倍高いことを示した。親が離婚した女性は親が離婚しなかった女性と比較し脳卒中リスクは高くはなかった。全ての家庭内暴力や親の薬物依存に曝露された例はスタディから除外された。年齢、人種、収入および教育、成人の習慣(喫煙、運動、肥満、および飲酒)、社会的補助、メンタルヘルスの状態および保険などの既知の脳梗塞リスクファクターの多くに関して統計学的に調整した。これらの補正後であっても、親の離婚は男性において脳卒中リスクを3倍増加させた。なぜ親が離婚した家庭の男性は脳卒中リスクが高いのかに関して、研究者らは確信をもって説明はできないが、一つの可能性としてはストレスに関連したホルモンであるコルチゾールの調整にあると述べている。

SPECS trial:循環器系集中治療室の小児において厳格な血糖レベルコントロールは治療関連感染発症において何の影響もなかった [2012-09-18]
SPECS trial: Tightly controlling blood sugar levels had no impact on the incidence of care-related infections for children in the cardiac ICU

一部のスタディでは重症の成人患者に対する厳格な血糖コントロールは有意に感染率を低下する可能性があるとされているが、現在New England Journal of Medicineオンライン版に掲載中であり9月27日号印刷版において報告される新たなスタディの結果、心臓手術を施行される小児患者においてはこの方法が有益であることを示すものはないことが明らかにされた。Safe Pediatric Euglycemia in Cardiac Surgery(SPECS)トライアルでは、循環器系集中治療室(CICU)に入院中の小児980人においてインスリンを用いた厳格な血糖コントロールを標準的な血糖管理と比較した。全ての患者(新生児から3歳)が心肺バイパスを伴う開心手術を施行された。研究者らは皮下血糖モニターおよびインスリンの持続値を考慮に入れ、特別な血糖値のみに基づき変化させることにより血糖値を正常に保ち過去の前向きトライアルの中で最も低血糖発現率の低かったカスタムインスリン用量設定アルゴリズムを用いた。インスリンを用いた正常血糖値の維持は治療関連感染(施術部位感染や肺炎など)発現、CICU滞在期間、臓器不全または死亡率にはなんら明確な影響を与えなかった。このトライアルはまた、若年で脆弱な病人において血糖値は安全にコントロールし得ることも示した。

高齢者の閉塞性睡眠時無呼吸に対するCPAP治療は心血管系死亡リスクを軽減する [2012-09-18]
CPAP treatment for obstructive sleep apnea in elderly patients reduces their risk of cardiovascular mortality

高齢者における無治療の重度閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は心血管系死亡のリスクを上昇させ、持続的気道内陽圧(CPAP)を用いた適切な治療はこのリスクを有意に低下させる可能性があるとの新たなスタディ結果が、American Thoracic SocietyのジャーナルであるAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine印刷版に先立ちオンラインで掲載された。この前向き観察研究の対象939人全員が65歳以上であった。追跡期間中央値は69か月であった。睡眠検査は終夜睡眠ポリグラフまたは呼吸ポリグラフのいずれかを用いて行われた。OSAは、軽度から中等度(無呼吸−低呼吸指標[AHI]15〜29)または重度(AHI≥30)と定義された。AHI<15の患者はコントロールとされた。CPAP使用時間が1日4時間以上の場合に、治療へのアドヒアランスが良好と考えられた。コントロール群と比較し、心血管系死亡の補正後ハザード比は無治療の重度OSA患者で2.25(CI, 1.41〜3.61)、CPAP治療を受けた患者で0.93(CI, 0.46〜1.89)であり、無治療の軽度から中等度のOSA患者で1.38(CI, 0.73〜2.64)であった。75歳以上の患者のサブグループにおいても同様の結果が観察された。CPAP治療を開始した患者におけるコンプライアンスは心血管系死亡リスクを軽減する独立した因子であった。

WOEST study:ステント留置後に抗血小板薬を内服している患者において抗血小板薬からアスピリンを除外することにより安全性が低下することなく出血が軽減する [2012-09-11]
WOEST study: Omission of aspirin from antiplatelet regimen reduces bleeding without compromising safety in patients taking oral anticoagulants following stent placement

WOEST(What is the Optimal antiplatElet and anticoagulant therapy in patients with oral anticoagulation and coronary StenTing)スタディの結果から、抗凝固薬にクロピドグレルのみを追加(そしてアスピリンを中止)することにより出血は減少しステント血栓などの血栓性および血栓塞栓性合併症予防の点では安全であることが示されたと2012年European Society of Cardiology学会で発表された。このスタディは、2008年11月から2011年11月の間に施行された。573人の患者は心房細動または機械弁に対し既に抗凝固薬を内服しており、冠動脈内ステント留置を施行され、前向きに2群:1つ目の群はクロピドグレルのみを追加(2剤併用療法群)に、もう1つの群はクロピドグレルとアスピリンを追加(3剤併用療法群)に無作為に割り付けられた。各々の群は1年間追跡された。冠動脈内ステント留置後1年の経過観察の時点で、2剤併用群は3剤併用群よりも出血が少なく全死亡率が低かった。さらに、心筋梗塞、脳卒中またはステント血栓も3剤併用群よりも少なかった。WOESTは抗凝固薬で治療されている冠動脈内ステント留置後患者においてアスピリン中止が安全であることを示した初めてのスタディである。

IABP-SHOCK II study:最も広く使用されている機械的補助循環装置は心原性ショック患者の死亡率を改善しなかった [2012-09-11]
IABP-SHOCK II study: Most widely used mechanical support device fails to improve mortality rate in cardiogenic shock patients

2012年European Society of Cardiology学会で、心原性ショックに対する大動脈内バルーンパンピング(IABP)の使用による有益性が認められないことが報告された。国際的ガイドラインでは心原性ショック患者に対するIABPの使用を推奨している。しかし、循環器医らはその有効性を完全には認めていないため、現在IABPはショック患者の25〜40%にしか使用されていない。IABP-SHOCK IIトライアル―心原性ショックに対して施行されたトライアルの中で最も大規模―は、ドイツの37施設で登録された患者600人をIABPまたは従来通りの最良の薬物療法のみの群に無作為に割り付けた。その結果、30日間の死亡率はIABP群において標準治療を施行されたコントロール群と比較し低下しなかった。様々なサブグループにおいても評価を行ったがIABPの明らかな有益性は認められなかった。同様に、IABPは血圧を改善せず、集中治療室における治療時間も短縮せず、処方薬の使用期間または使用用量も減少させず、臓器灌流も改善しなかった。一方、トライアルの結果、IABPは合併症を引き起こすことはなく安全な装置であることが示された。この結果は同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。

FAME 2 trial:冠血流予備量比ガイド下PCIは緊急の血行再建術を減少させるが死亡率や心筋梗塞発症率は低下させない [2012-09-11]
FAME 2 trial: PCI guided by fractional flow reserve reduces urgent reinterventions but not mortality or myocardial infarction

安定冠動脈疾患患者は冠血流予備量比(FFR)ガイド下でPCIを施行され可能な最良の薬物療法(MT)を行われた場合、MT単独と比較し緊急血行再建術の必要性が低い。FAME 2トライアルの最終解析が、2012年European Society of Cardiology学会で発表されNew England Journal of Medicineオンライン版に掲載された。研究者らは、この無作為化トライアルの患者のうち75人が一次エンドポイントイベント(死亡、心筋梗塞、または緊急血行再建術)の少なくとも1つを経験したと報告した。イベント発症率はMT単独群よりもPCIとMT併用群の方が低かった(4.3%対12.7%)。FFRによる治療ガイドは緊急血行再建術施行のリスクを8分の1に減少させるのに役立った。しかし、死亡率やAMI率は治療群間で差がなかった。FFRで虚血を引き起こす病変が認められなかった患者は薬物療法のみで治療され、レジストリでフォローされた。一次エンドポイントイベント率(死亡、AMIまたは緊急血行再建術)はこれらの患者において低かった(3%)。独立したデータ安全性監視委員会がMT単独群の継続は不当であると判断したため、このトライアルは早期に中断された。

GARY registry:TAVI後の院内死亡および脳卒中発現率は使用が増加してもなお低いままであった [2012-09-11]
GARY registry: In-hospital death and stroke rates stay low after TAVI even as use increases

German Aortic Valve Registry(GARY)の結果、いくつかの型の経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)は、ガイドラインが推奨する通り主に高リスク患者において使用されており、TAVIを用いた場合の院内死亡率は、従来の大動脈弁手術と同様に良好であるかまたはそれよりも優れていることが示唆された。2012年European Society of Cardiology学会で発表された1つ目の結果から、参加施設は患者選択に関して全般的に最新のガイドラインに沿っていることが示された;TAVI施行患者全体の85%が75歳を超えており手術に伴う死亡リスクが高いと推定された。待機的にまたは緊急で従来の大動脈弁置換術のみを施行された患者の平均年齢は68.3(±11.3)歳であり、ロジスティック EuroSCORE(log. ES)は8.8%(±9.7%)であった。TAVI患者は平均して有意に高齢(大腿動脈経由81.0[±6.1]歳、心尖部経由80.3[±6.1]歳)であり手術リスクがより高かった。院内死亡数、施術の成功率が高いこと(97%)、および弁関連再インターベンション(0.5%未満)が低率であることから、今回のスタディの結果が良好であったことが確認された。患者をリスク群で層別化したところ、高リスク(log. ES >20%)および超高リスク(log. ES >30%)患者を経大腿動脈的に治療した場合に特に有益性が認められ、死亡率はそれぞれ4.7%および7.7%であった。

非侵襲的TAVI手術は実地臨床の場において健康関連のQOLを改善する [2012-09-11]
Minimally invasive TAVI procedure leads to a improvement in health-related quality of life in real world setting

経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)は、1年以上維持された重症大動脈弁狭窄症患者の健康に関連したQOLを有意に改善するとのスタディ結果が2012年European Society of Cardiology学会で発表された。この前向き多施設German transcatheter aortic valve interventionsレジストリではベースライン、30日後および12か月後の健康関連QOLをEQ-5D質問票を用いて評価した。スタディではTAVI後12か月生存した患者計415人(平均年齢81.9 ± 5.9歳;男性37.3%)のQOLデータを使用した。12か月後、TAVI患者はEQ-5Dの各々の面について改善したと報告した。12か月後の時点で通常の活動に問題のない患者の割合は17.5%から48.6%に上昇し、何らかの問題のある患者は72.5%から39.7%に低下し、非常に問題のある患者は10.1%から11.7%にやや増加した。不快感に関しては、問題のない患者の割合は22.7%から61.9%に上昇し、何らかの問題のある患者は69.1%から33.3%に減少し、非常に問題のある者は8.3%から4.8%に減少した。1年後に患者自身が評価したこのQOLに関する有益性は持続性であった。

FAST-MI:STEMIの死亡率は全体的に改善しているが新たなデータから若年者および女性のMIが増加する心配な傾向が示された [2012-09-11]
FAST-MI: Mortality rates from STEMI improving overall but new data shows worrying trend of increasing MIs in young people and women

2012年European Society of Cardiology学会で発表され同時にJAMAに掲載されたFAST-MI(4つのフランス国内レジストリ)の結果、この15年間でST上昇型心筋梗塞(STEMI)治療の成功率が上昇し、死亡率が68%低下(13.7%から4.4%)していることが示された。プライマリ経皮的冠動脈インターベンションや再灌流療法の使用で補正した後であっても早期死亡率は実質的に(>60%)低下しており、その患者背景、患者の行動および組織や治療提供などが大きく影響していた。再灌流療法を施行されなかった患者においても、STEMI死亡率は50%を超えて低下した。このスタディにより、若年患者(60歳未満)、特にMIを発症する女性の割合が実質的に増加している心配な結果が示された。60歳未満の女性の割合は2倍(12%から25%)に、50歳未満の女性の割合は3倍(3.7%から11.1%)に増加した。若年女性患者の中で急速に増加しているのは喫煙者(1995年には37%、2012年には73%)、および/または肥満者(18%から27%)の割合であった。急な胸痛を発症した患者の行動もまた変化しており、医療救助への連絡がより迅速(2000年には中央値が120分であったものが2010年には74分)になった。

2011年の地震と津波の後に短期および中期の心血管系への影響がピークに達した [2012-09-04]
Incidence of short- and mid-term cardiovascular effects rise with the seismic peak following 2011 earthquake and tsunami

2011年3月に日本を襲った巨大地震後の有意かつ持続性の心不全発生の増加が2012年European Society of Cardiology学会で報告された。このような出来事の後に心不全発生のピークが持続していることが報告されたことはかつてない。スタディでは、宮城県における2008〜2011年の3月11日の前4週間および後16週間の救急搬送記録全例(124,152件)を調査した。震災前、中、および後の発生記録を比較し、余震の数を計算し記録した。その結果、地震後6週間は余震が頻回に起き、2番目のピークは2011年4月7日の大きな余震として記録された。過去3年間と比較し、心不全および肺炎発生の有意な増加は津波襲来のあと6週間以上着実に持続した。一方、脳卒中および心肺停止の増加は初回および余震ピークのパターンに追随した。急性冠症候群および心肺停止発生の急激な増加は、その後急激かつ有意に減少した。このスタディ結果はEuropean Heart Journalオンライン版に同時に掲載された。

PARAMOUNT:新しいクラスの初めての薬剤であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の、心駆出能の保たれた心不全患者に対する有効性が示された [2012-09-04]
PARAMOUNT: Efficacy found for a first-in-class angiotensin receptor neprilysin inhibitor in patients with heart failure and preserved ejection fraction

新たなアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬LCZ696は心駆出能の保たれた心不全(HfpEF)患者に有益であることが示されたとのPARAMOUNT(Prospective compArison of ARNI with ARB on Management Of heart failUre with preserved ejectioN fracTion)トライアルの結果が2012年European Society of Cardiology学会で発表され、同時にLancetオンライン版に掲載された。トライアルの結果とともに発表された背景情報によると、駆出率の低下した心不全に対する薬物療法の有益性は多くのスタディで示されているが、最新のESCガイドラインではHfpEFの死亡率および罹患率を低下させる治療は未だ示されていないとされる。13か国308人の患者を対象として施行された第II相試験であるPARAMOUNTスタディは、新たなアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬LCZ696とARBバルサルタンのナトリウム利尿ペプチド濃度に対する効果を比較した。このスタディで調査したナトリウム利尿ペプチドNT-proBNPは、心臓の壁ストレスのマーカーであり心不全患者においてその値が上昇している。スタディの結果、LCZ696はバルサルタンよりもNT-proBNPレベルを23%低下させたことが示された。LCZ696はまた、左房の拡大を軽減させ心不全症状を改善した。

ACCESS-EU:実地臨床を対象としたヨーロッパのスタディにおいてMitraClip治療は治療後1年の有意な有益性を示した [2012-09-04]
ACCESS-EU: MitraClip therapy demonstrates significant benefits one year following treatment in real-world European study

僧帽弁閉鎖不全に対するMitraClipシステムを用いた経皮的カテーテル治療は1年後の症状および心機能を改善したとの前向き観察研究の結果が2012年European Society of Cardiology学会で発表された。ACCESS-EUROPE(ACCESS-EU)は、ヨーロッパの14施設で登録された567人の患者に対するMitraClipシステムの多施設スタディであり、これまでに評価された中で最大規模のものである。患者は、冠動脈疾患(63%)、中等度から重度の腎疾患(42%)、NYHA心機能分類クラスIII/IV(85%)、および左室駆出率<40%(53%)などの基礎疾患を有する高齢者(平均年齢74±10歳)であった。77%が機能性僧帽弁閉鎖不全を有し、平均ロジスティックEuroSCOREは23±18%であり、多くの患者は僧帽弁手術がハイリスクと考えられた。1年後に、MitraClipシステムで治療された患者の82%が生存しており、79%は僧帽弁閉鎖不全が2度以下であり、94%は僧帽弁手術を受けていなかった。多くの患者が臨床的に改善を認め(現在72%がNYHAクラスI/IIに分類された)、機能的能力が改善し(6分間歩行距離の改善の中央値60.5m)、QOLが改善した(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaireで14.0点の改善)。

TRILOGY ACS:血行再建術を施行しない急性冠症候群の薬物療法においてprasugrelとクロピドグレルとで差はなかった [2012-09-04]
TRILOGY ACS: No difference between prasugrel and clopidogrel for medical treatment of acute coronary syndromes without revascularization

血行再建術を施行せず薬物療法で管理した急性冠症候群患者の血小板阻害効果を調査した初めてのトライアルの結果、死亡、心筋梗塞または脳卒中予防効果においてprasugrelとクロピドグレルとでは有意差がないことが示された。この第III相試験である、Targeted Platelet Inhibition to Clarify the Optimal Strategy to Medically Manage Acute Coronary Syndromes(TRILOGY ACS)スタディでは、血行再建術を施行せずに管理した不安定狭心症または非ST上昇心筋梗塞のACS患者(7,243人、75歳未満)においてprasugrel(1日10mg)をクロピドグレル(1日75mg)と最長30か月間比較した。経過観察(中央値17か月)における一次エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、または脳卒中)が発現したのはprasugrel群で13.9%でありクロピドグレル群で16.0%であった(HR 0.91; 95% CI 0.79-1.05; P =0.21)。予想外なことに、prasugrel群では12か月後の虚血性イベントの低リスク傾向を有し、時間依存性な治療効果が認められた。さらに、全ての多発性再発性虚血イベントを評価する予め特定された解析において、prasugrelによりリスクが低下することが示唆された(HR 0.85; 95% CI 0.72-1.00; P =0.044)。重篤な出血性合併症は頻度が低くそれぞれの治療群で同程度であった。この結果は2012年European Society of Cardiology学会で発表され、New England Journal of Medicineオンライン版で発表された。

RECLOSE 2-ACS:クロピドグレルとアスピリン両者の血小板反応性を計測した方がクロピドグレル単独の反応性を計測するよりもよい [2012-09-04]
RECLOSE 2-ACS: Measuring platelet responsiveness to both clopidogrel and aspirin is better than measuring response to clopidogrel alone

虚血性イベント高リスクの急性冠症候群(ACS)患者を見極めるにはクロピドグレルのみへの有効性を計測するよりも血小板全体の反応性を計測した方がより有効であるとの研究結果が2012年ESC学会で発表された。Responsiveness to Clopidogrel and Stent thrombosis 2-ACS(RECLOSE 2-ACS)スタディは、経皮的冠動脈インターベンションを施行された急性冠症候群1,789人を対象とした前向き、観察、紹介施設コホートスタディである。研究者らはアスピリンおよびクロピドグレルに対する血小板反応性を計測した。その結果約20%の患者がアスピリンに対し高血小板反応性を有し、したがって非反応者であった。これらの患者は2年後の経過観察時に虚血性イベントや心臓死などの率が有意に高かった(主要な心臓有害事象[MACE]:HR=1.4[1.0-1.8]; P <0.04、 心臓死:HR=1.7 [1.2-2.6]; P =0.004)。約9%の患者においてクロピドグレルとアスピリン両者に対し血小板反応性が高かった(つまり非反応者)。このフェノタイプは全体的高血小板反応性(GHPR)として知られる。GHPRは心血管虚血性イベントおよび心臓死と有意に関連する(MACE: HR=1.5[1.0-2.2]; P =0.02、心臓死: HR=1.9[1.2-3.2]; P =0.008)。GHPRを有する患者はこれを有さない患者よりもMACEからの生存率が低く(P =0.001)、心臓死率が高かった(P <0.0001)。

DeFACTO:非侵襲冠血流予備量比により侵襲的な評価の必要な動脈病変部位をより正確に決定できる [2012-09-04]
DeFACTO: Non-invasive fractional flow reserve provides a more accurate determination of which arterial lesions require invasive evaluation

2012年European Society of Cardiology学会で発表された、Determination of Fractional Flow Reserve by Anatomic Computed Tomographic Angiography(DeFACTO) 前向きスタディの結果、標準的な冠動脈造影断層撮影(CT)と比較し、コンピュータ断層撮影による冠血流予備量比(FFRct)の非侵襲的な評価は侵襲的な評価を必要とする病変の決定においてより正確であることが示された。DeFACTOでは冠動脈疾患の疑われる安定した患者252人を登録した。全ての患者がCT、侵襲的な冠動脈造影、侵襲的FFRおよびその後にFFRct解析を施行された。FFRctはCT単独よりも血流の低下した動脈病変の検索において優れていた。曲線下面積(AUC)解析を用いた結果、患者ごとの感度および特異度もまたFFRctはCT単独よりも高かった(AUC 0.81 vs. 0.68; P =0.0002)。診断能の改善は中等度の動脈狭窄において最大であった。この患者集団においては検査感度が37%から82%へと2倍になり、特異度は低下しなかった。これらの患者ではAUCがCT単独では0.53であったものがFFRctにより0.80に改善した(P =0.0002)。このスタディの結果はJAMAオンライン版に同時に掲載された。