MRI画像検査を用いた新たな技術により心疾患に対する細胞ベースの治療が評価できる [2012-07-24]
New technique aided by MRI scanning evaluates cell-based treatments for heart disease

磁性微粒子を含む免疫細胞の血流内への注射は安全であり細胞機能には支障を来さないとの研究結果がCirculation: Cardiovascular Imagingに掲載された。研究者らはまずテストチューブを用いて磁気でラベルされた血液細胞が通常の血液細胞と同様に動き生育することを確認した。次に彼らは4つの小規模のヒトにおける検査を行った。6人の大腿筋内へのラベルされていない細胞、磁気でラベルされた細胞、およびただの磁気素材の注射に成功した。ラベルされた血液細胞は7日間トレースが可能であった。2人に磁気的にラベルした血液細胞を徐々に用量を増大させて6回の静脈内注射を行ったところ、好ましくない効果は認められなかった。12人がラベルされた血液細胞の静脈内注射―6人は高用量を他の6人は低用量を―受けたが、これらは1週間後にもMRIでトレースできた。1人はこれらの細胞が炎症部位にどの程度移動するかを検査するためラベルされた血液細胞の注射を受けたところ、これらの細胞が大腿の皮膚の炎症部位に移動したことがMRIで追跡できた。この技術は将来的に細胞療法の開発を促進するのに使用したり細胞ベースの心疾患治療の評価に用いることが可能になる、と筆者らは述べている。

新たなリスクスコアリングシステムは小児のメタボリック症候群のよりよい診断に結びつく可能性がある [2012-07-24]
New risk scoring system could lead to better diagnosis of the metabolic syndrome in children
新たなスコアリングシステムは、後に2型糖尿病や心疾患を発症するリスクの高い集団であるメタボリック症候群の青少年の発見を向上させる可能性があるとのスタディ結果が、第94回Endocrine Society学会で発表された。メタボリック症候群の診断は5つの項目:腹囲、高血圧、高血糖、高中性脂肪および低HDLコレステロールの少なくとも3つにおいて異常値を有するか否かによる。しかし、一部の青少年は各々の項目がカットオフよりやや低いのみである可能性がある。これらの青少年に診断は下されないものの、成人期にメタボリック症候群となるリスクが高い。研究者らは"連続性の"リスクスコアを作成し、その結果所見の悪化する範囲内にいる小児を見極めるのに役立った。このスコアは5つの項目全ての数値の合計である。この新たなスコアリングシステムは、メタボリック症候群の診断の一部ではなく、メタボリック症候群に関連した心血管リスクファクターを多く有する青少年を予測するのに通常のシステムよりも優れていると研究者らは述べている。これらには空腹時インスリン値やC反応性蛋白などが含まれる。
心不全患者においてボディーマスインデックスとウエスト周囲径が大きいと予後が良好である [2012-07-17]
High body mass index and larger waist circumference associated with better outcomes in heart failure patients

ウエストが細く標準体重であると通常は健康上の予後が良好であるが、心不全患者においては必ずしもそうではないとのスタディ結果がAmerican Journal of Cardiologyオンライン版7月1日号に掲載された。研究者らは進行心不全患者2,718人のボディーマスインデックス(BMI)を心不全治療開始時に計測し、469人に関しては治療開始時にウエスト周囲径を計測し評価を行った。2年後の経過観察で、男性ではウエスト周囲径が大きいこととBMIが大きいことは死亡や心移植、または心室補助装置挿入などの予後不良因子イベントのない生存期間と関連があった。BMIの大きい女性においても標準体重の対照よりも予後が良好であり、ウエスト周囲径の大きい女性では予後が良好な傾向にあった。BMIが標準であるとBMIが大きいことよりも、男女とも予後が有意に不良であった(リスク上昇が男性では34%、女性では38%であった)。ウエスト周囲径が標準であると男女とも予後不良リスクが上昇し、男性では2倍、女性では3倍であった。

経頭蓋直流刺激は脳卒中後嚥下障害に対する嚥下治療を強化できる可能性がある [2012-07-17]
Transcranial direct current stimulation can enhance swallowing therapy for post-stroke dysphagia
Restorative Neurology and Neuroscience 7月号に掲載されたスタディにおいて研究者らは、弱電流を脳の病的領域に流す経頭蓋直流刺激(tDCS)により脳卒中後嚥下障害の嚥下療法の効果を増強できることを示した。急性脳卒中後嚥下障害の患者16人に30分の嚥下治療を10回施行し、治療群またはコントロール群に無作為に割り付けた。治療群においては治療の最初20分間はtDCSを施行されその後10分間は嚥下のみのトレーニングを続けて行われた。コントロール群では直流電流を漸減し30秒後に電源を切られた。治療直後の評価では、嚥下障害は全ての患者において改善しており2群間に大きな差はなかった。しかし3か月の経過観察後、治療群においてはコントロール群よりも有意に改善が大であった。tDCSは病側大脳半球のみに施行されたが、PET画像の結果、異常のない大脳半球において糖代謝が増加しており、tDCSは電気刺激を与えられた領域のみではなく嚥下障害の回復に関与する大脳皮質ネットワークの広い領域を活性化させる可能性があることが示唆された。
重度のストレス後のたこつぼ心筋症は心臓を過剰刺激から保護している可能性がある [2012-07-10]
Takotsubo cardiomyopathy following severe stress may protect the heart from overstimulation
重度のストレスを経験した人々に一時的に心不全を引き起こす状態は、実は心臓を非常に高レベルのアドレナリンから保護している可能性があるとの新たなスタディ結果がCirculationに掲載された。この研究によりたこつぼ心筋症、別名"ブロークンハート症候群"(死別後の重度の感情的ストレスにさらされた人々が罹患するため)と呼ばれる疾患に対する初めての生理学的機序が示され、治療ガイダンスが提供された。筆者らは麻酔したラットに高用量のアドレナリンを注射し刺激した。これらのラットにおいては、たこつぼ心筋症患者のように心尖部方向にかけて心筋収縮が抑制される。これらのラットはこの状態にならなければ致死的な心臓過剰刺激から保護されており、アドレナリンが通常と異なるパスウェイを介して作用しこのスイッチが心臓を有毒レベルのアドレナリンから保護することを示している。このスタディではまた、たこつぼ心筋症治療に有用な可能性のある薬剤を調査した。一部のβ遮断薬は、たこつぼ様の状態を再現または増強し、これらの薬剤の保護作用に関する新たな知見が得られた。アドレナリン受容体パスウェイを介せずに心臓を刺激する異なるタイプの心不全治療薬Levosimendanは有益であった。
心筋傷害によって引き起こされる全身性の炎症は既存の動脈硬化を悪化させ将来のリスクを上昇させる [2012-07-10]
Systemic inflammation caused by heart muscle damage worsens pre-existing atherosclerosis and increases future risk
心筋梗塞(MI)は単に心筋の血流を遮断して傷害するのみでなく、その根底にある動脈硬化を悪化させる炎症カスケードをも始動させ将来のMIリスクを強く上昇させる。これらの報告はNatureオンライン版に掲載されたスタディから得られた。このスタディは、心筋傷害により引き起こされる全身の炎症が既存の動脈硬化を悪化させるとの仮説を分析するためにデザインされた。動脈硬化を発症するように遺伝子的にプログラムされたマウスモデルを用いて研究者らは一連の実験を行い、実験的に誘発したMIにより心臓発作を引き起こした部位から離れたところで動脈硬化性プラーク活性および先々のプラークラプチャにつながる線維性プラーク被膜を破壊する酵素活性を上昇させていることを示した。これらの動脈硬化性プラークには単球および他の炎症を引き起こす免疫細胞が蓄積し、脾臓の単球前駆細胞産生が亢進し、これらの免疫細胞の機能変化も伴っていた。交感神経系活動の上昇をきっかけとする骨髄からの幹細胞放出もまた増加していた。これらの結果に基づき筆者らは、白血球産生部位を標的とした治療により動脈硬化の免疫系賦活化を抑制できる可能性があると述べている。
胎児発育不全と診断された妊婦は無症状の拡張障害も有している可能性がある [2012-07-03]
Women diagnosed with fetal growth restriction may also have an asymptomatic diastolic dysfunction

胎児が平均よりも小さい妊婦は長期の心血管系の健康リスクも有する可能性があるとの新たな研究結果がAmerican Heart Association学会誌Hypertensionに掲載された。胎児発育不全(FGR)と診断された女性はまた無症状の拡張障害も有する可能性がある。これらの妊婦においてはボディーマスインデックス(BMI)が高いと心機能障害を来たす可能性がある。ロンドンのSt. George病院において2008年から妊婦の登録を開始した。FGRの女性29人、子癇前症を発現した女性25人、および正常妊娠女性58人を比較した。女性たちは心エコー検査および心電図、血圧測定および他の検査で心機能の計測を受けた。これらの検査はFGRまたは子癇前症の診断時および産後12週に施行された。FGRの妊娠はまた、他のスタディ患者群と比較し平均してボディーマスインデックスが有意に高かった。これらの妊婦においてボディーマスインデックス高値はまた心機能異常に影響する可能性があった。医師はこれらの妊婦において心負荷や心不全のリスクが高いことに留意すべきである、と筆者らは述べている。彼らは、早期の生活習慣改善や医療介入はこれらの女性の将来の心血管疾患や死亡リスク軽減に役立つ可能性があることを示唆している。

中等量のコーヒー常飲は心不全リスクを有意に低下させる [2012-07-03]
Regular, moderate coffee consumption significantly reduces a person's risk of heart failure
中等量のコーヒー常飲は心不全リスクを有意に低下させる可能性があるとの新たな研究結果がCirculation Heart Failureに掲載された。研究者らは、2001〜2011年に論文として公表されたコーヒー摂取と心不全リスクに関する5つの質の高い前向きスタディをレビューした。これらのスタディには合計で140,220人の男女における6,522件の心不全イベントが含まれていた。これらのスタディのうちの4つはスウェーデンで、1つはフィンランドで行われた。スタディでは1日に北欧サイズでの4杯分(米国一般サイズの8オンスの2倍)を中等量摂取と定義した。コーヒー過剰摂取は北欧サイズ1日10杯とした。カフェイン入りとカフェインなしの区別はしなかったが、スウェーデンやフィンランドで摂取されるコーヒーのほとんどはカフェイン入りである。1日2杯のコーヒー摂取がコーヒーを全く飲まない場合と比較し、心臓の健康には最も有意な有益性をもたらした。一方、過剰摂取は心不全リスク上昇と関連する可能性があった。研究者らはコーヒーが心臓の健康に有益である理由を決定的には述べていない。しかしエビデンスからは、頻回にコーヒーを摂取することによりカフェイン飲料への耐性ができ、それにより高血圧発現のリスクを軽減している可能性が示唆される。