ROMICAT II:心筋梗塞の疑いのある患者の評価において心臓CTはより迅速で有効である [2012-04-10]
ROMICAT II: Cardiac CT is faster, more effective for evaluating patients with suspected myocardial infarction
胸痛の評価において心臓CT冠動脈造影を早期に使用することにより、心筋梗塞治療のために入院させるべき患者と帰宅させても安全な患者とを医師がすぐに鑑別でき、時間と医療費を節約できるとのROMICAT IIスタディの結果が第61回American College of Cardiology学会で発表された。ROMICAT IIスタディは、胸痛を伴い救急外来(ER)を受診し、症状および早期ER評価(血液検査および心電図の結果)に基づくMIリスクが中等度の患者1,000人を組み入れた。患者は、心臓CT検査を初回の診断検査として施行される群または、患者の状態や医師の判断に基づき心臓負荷検査を行う群または全く検査を行わない標準的処置群に無作為に割り付けられた。ERにおいて、CT検査で胸痛患者を評価することにより、患者の平均病院滞在時間は18時間減少した。CT検査を受けた患者の半分が9時間以内に安全に退室したのに対し、標準治療を受けた患者のうち9時間以内に退室したのはわずか15%であった。CTを使用することにより標準治療よりもERのコストが10〜20%節約できた。
EINSTEIN PE:新たな経口抗凝固薬rivaroxabanは肺塞栓症に対する標準的な治療法よりも安全である [2012-04-10]
EINSTEIN PE: New oral anticoagulant rivaroxaban safer than standard approach to treat pulmonary embolism
肺塞栓症の初回治療および長期治療における重要な安全性指標に関し、新たな経口抗凝固薬は標準的な注射薬治療よりも成績が優れていたとの研究結果が第61回American College of Cardiologyにおいて発表され、New England Journal of Medicineオンライン版に掲載された。EINSTEIN-PEトライアルは2,419人の患者をrivaroxaban群(15mg1日2回内服を3週間の後に20mg1日1回)および2,414人を標準治療群(体重1kg当り1.0mgのenoxaparin1日2回を5日以上継続しINR2.0以上が2日間以上持続し、それに加えビタミンK阻害薬を無作為化後48時間以内に開始しINRを2.0〜3.0とするように用量調節した時点でenoxaparinを中止)に無作為に割り付けた。Rivaroxaban群の再発率は2.1%(50件)であったのに対し、標準療法では1.8%(44件)であり、有効性に関する非劣性が有意に認められた。出血に関する安全性評価に関しては、rivaroxabanの方がはるかに良好であった:重大なまたは臨床的に明らかな出血に関する主要な安全性評価では、10.3%であったのに対し標準治療では11.4%であった;重大な出血のみに関しては、1.1%であったのに対し標準治療では2.2%であった。一次エンドポイント発現率は患者背景に関係なく同等であった。
妊娠中の心筋梗塞は一般の人々よりも重症になる傾向にある [2012-04-10]
Myocardial infarction during pregnancy tends to be more serious than among general population
妊娠中の心筋梗塞(MI)はより重症になり合併症が多く、また非妊娠集団に一般的に認められる原因とは異なる原因で発症する傾向にあり、一部の症例では標準的な治療法が必ずしも最良ではないとの研究結果が第61回American College of Cardiology学会で発表された。同じ研究グループによる過去の2つの調査を拡大した今回のスタディでは、2005年以降に発症した新規発症妊娠関連MI、150例を解析した。解析の結果、ほとんどの妊婦は、高血圧、糖尿病または高脂血症などの一般的な心血管リスクファクターを有さず、にもかかわらずより重症のMIを有する傾向にあった。実際、これらの女性の死亡率は7%であり、同年代の非妊娠患者において予測される死亡率の2〜3倍高かった。さらに、一般集団においては動脈硬化がMIの最も一般的な原因であるが、妊婦においてはこれは原因の3分の1に過ぎなかった。より多い原因が冠動脈解離であった。冠動脈解離は血栓溶解療法のようなガイドラインで推奨されている標準治療を用いると実は悪化する可能性があることも研究者らは明らかにした。
LDL療法は若年で開始した方が高齢で開始するよりも有意に優れている [2012-04-10]
Lowering LDL early in life is significantly better than treating with statins when older
LDL低下療法を若年で開始した方が遅く開始するよりも冠動脈疾患(CHD)のリスクが3倍低下したとのスタディ結果が、第61回American College of Cardiology学会で発表された。動脈硬化が発現する前の早い時期にLDLコレステロールを低下させた方が当然心筋梗塞(MI)軽減にはより有効であろうと思われるが、この仮説を立証するのは困難であった。この仮説を調査するには、従来の無作為化トライアルであれば非常に大人数の無症状の若年者を何十年も追跡する必要がある。これの替わりとして研究者らは、Mendelian無作為化コントロールトライアル(mRCT)と呼ばれる新たなスタディデザインを用いて、その各々がLDLコレステロールレベル低下と関連する9つの一塩基多型 (SNPs)の影響を調査した。その結果、9つのSNPs全てが、生涯におけるLDLコレステロールが1mmol/L(38.67mg/dl)低下するごとに一貫してCHDリスクが50〜60%低下するのに関連のあることが示された。LDLを2mmol/L(77.34mg/dl)低下させることにより、CHDリスクはほぼ80%低下させることができた。
新たなモノクローナル抗体を注射することによりスタチンのLDL低下の有効性が上乗せされる [2012-04-10]
Injection of novel monoclonal antibody adds to effectiveness of LDL lowering with statins
新たなモノクローナル抗体は循環LDLコレステロールを40〜72%低下させ、現在の標準治療に抵抗性の患者の新たな治療選択となる可能性をもつとの研究結果が第61回American College of Cardiology学会で発表され、 Journal of the American College of Cardiologyオンライン版に掲載された。近年の発見により、スタチン療法がLDL受容体の破壊に繋がる酵素であるPCSK9の産生を刺激することが示された。今回のスタディでは、PCSK9に結合しその作用を遮断しLDL受容体の変性を防ぐモノクローナル抗体SAR236553/REGN727の効果を試した。この多施設無作為化トライアルではLDLコレステロール値が100mg/dL以上の患者183人を観察した。循環LDLコレステロールは、50、100、または150mgを2週毎に投与する群に割り付けられた患者において、それぞれ40%、64%、および72%低下した。LDLコレステロールは200または300mgを4週毎に注射された患者において、43%および48%低下した。プラセボ群では循環LDLコレステロールが5%減少した。
中年以前の急激な血圧上昇は不可逆的な心障害を来し得る [2012-04-10]
Rapid rise in blood pressure before midlife may cause irreversible heart damage
若年者の血圧高値に対する現在の"観察および待機"する方法により患者を不可逆的な心障害に向かわせる可能性があるとの研究結果が、第61回American College of Cardiology学会で発表された。このスタディでは生涯の経過における心臓の健康指標を追跡し将来の予後を予測した結果、中年期の、単にある閾値を超えるだけではない急激な血圧上昇は後の心疾患リスクを上昇させる可能性があることが示された。さらに、スタディの結果、降圧薬はたとえ血圧を正常レベルまで回復させたとしても高血圧による心障害を完全には回復させられないことが示された。この結果から、中年期の急激な血圧上昇を早期発見し治療することが必要であることが示唆された。スタディの結果に基づき、30歳代であったとしても、境界または前高血圧(収縮期血圧120〜139mmHgまたは拡張期血圧80〜89mmHg)はより頻回にモニターし医師らが血圧変化率を観察できるようにすべきである、と筆者らは述べている。
ASCERT Trial:スタディの結果、生存期間は冠動脈形成術よりも冠動脈バイパス術を施行された患者の方が長いことが示唆された [2012-04-03]
ASCERT Trial: Study suggests better survival in patients undergoing bypass surgery compared to coronary angioplasty
冠動脈バイパス術は低侵襲の経皮的冠動脈インターベンションよりも生存率を上昇させるようであるとの新たなエビデンスが示され、第61回American College of Cardiology学会で発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。過去のいくつかのスタディにより、この2つの治療法の長期予後は同等であることが示唆されたが、バイパス手術の予後の方が良好であることを示したスタディもあった。ASCERTトライアルにおいて研究者らはAmerican College of Cardiology Foundation CathPCIデータベース、Society of Thoracic Surgeons CABGデータベース、およびU.S. Medicare請求データベースから得た患者データを組み合わせ、2004〜2008年に治療を受けた冠動脈バイパス術後患者86,000人およびPCI後患者103,000人の生存率を比較した。治療後4年間の死亡率はPCIを施行された患者において冠動脈バイパス術を選択された患者よりも高かった(それぞれ20.8%および16.41%)。この結果は解析した全てのサブグループにおいて同様であった。このスタディは安定虚血性心疾患患者における血行再建術の選択決定の際の情報として役に立つだろう、と筆者らは述べている。
CORONARY trial:オンポンプバイパス術とオフポンプバイパス術に関する最大のスタディの結果、両者ともに安全に施行できることが証明された [2012-04-03]
CORONARY trial: Largest study of on-pump and off-pump bypass proves both can be done safely
人工心肺使用(オンポンプ)および人工心肺不使用(オフポンプ)で施行される冠動脈バイパス術を比較した結果、全体の技術に差はなかったが臨床的には明らかな差があったことが示されたとの研究結果が第61回American College of Cardiology学会で発表された。2007年10月以降、CORONARYトライアルでは、冠動脈疾患を有しCABGを予定された患者4,752人(平均年齢67.6歳、80.0%男性)を徹底的に評価し、確実にオフポンプまたはオンポンプ手術いずれもが適応であることを確認したあとでこれらのいずれかの手術に無作為に割り付けた。患者当たりの平均グラフト数は3.1であった。バイパス術後30日以内の死亡、心筋梗塞、腎不全および脳卒中からなる一次総アウトカムに関しては、統計学的に同等であった(オフポンプ患者9.9%およびオンポンプ患者10.3%)。同様に、この総アウトカムの個々のイベントについても差がなかった。オフポンプ手術の方が必要とする血液製剤の量、出血による再手術、肺合併症および急性腎障害が少なかったが、再血行再建術の施行がより多かった。この発現率はまれであった(オフポンプ群で2,375人中16人、あるいは0.7%に対しオンポンプ群で0.2%)。
大腸内視鏡スクリーニング検査中に腺腫性ポリープを切除することにより大腸がんによる死亡リスクが軽減する [2012-04-03]
HOST-ASSURE: Three-drug regimen equal to double-dose two-drug approach in preventing clots after angioplasty
大腸内視鏡によるポリープ切除は大腸がん発症を予防するのみならず大腸がん死も予防するとのスタディ結果がThe New England Journal of Medicine 2012年2月23日号に掲載された。腺腫性ポリープは大腸内視鏡検査で最も多く発見される異常所見であり、がん化する可能性がある。過去の研究の結果これらのポリープを切除することによりがんを予防できることが示されているが、予防されたがんが致死的である可能性があるか否かについては明らかにされていなかった。研究者らは国内ポリープスタディ National Polyp Study((NPS、この種のスタディで最大)に組み入れられた患者2,602人の長期結果を評価した。その結果、これらの病変を検出し切除することにより、同等の人口、年齢および性別の一般人口において予測される大腸がん死亡率と比較し53%低下することが示された。さらに、腺腫性ポリープを切除された患者の大腸がん死亡率は、切除後最長10年間はこれらのポリープを検出されなかった人々と同様に低かった。
TRA 2°P-TIMI 50:標準的な抗血小板療法にvorapaxarを加えることにより再発性心血管イベントのリスクが軽減する [2012-04-03]
TRA 2°P-TIMI 50: Adding vorapaxar to standard antiplatelet therapy reduces risk of recurrent cardiovascular events
治験段階の抗血小板薬vorapaxarを標準的な抗血小板薬に追加することにより、既知の動脈硬化を有する患者の再発性心血管イベントリスクを軽減することができると第61回American College of Cardiology's 61st 学会において発表され、同時に New England Journal of Medicineに掲載された。この無作為化二重盲検プラセボコントロール多国籍試験では、26,449人の患者において過去の心筋梗塞(17,779例)、脳卒中(4,883例)または下肢動脈の動脈硬化性狭窄(3,787例)などの確定した動脈硬化に対し標準的な抗血小板薬を投与し2年以上追跡した。参加者は標準療法と試験用血小板阻害薬(経口2.5mg1日1回)または標準療法とプラセボのいずれかを内服する群に無作為に割り付けられた。Vorapaxarは心血管死、MIまたは脳卒中をさらに13%(3年後に9.3%対10.5%、p<0.001)低下させた。この新たな心血管イベントの低下はMI既往を有する患者で最大であり、彼らにおいてはこれらのイベントが20%低下した(p<0.001)。
薬物療法、血圧および全体的な心臓リスクは自己モニターおよび報告により改善する [2012-04-03]
Pharmacotherapy, blood pressure and general cardiac risk improve with self-monitoring and reporting
インターネットベースのテレメディスンシステムは、従来の定期的な受診よりも、より適切で有効な薬物療法、より良好な血圧コントロールおよび全体的な心血管リスク低下に繋がるとの研究結果が第61回American College of Cardiology学会で発表された。2つの大規模病院の患者らが組み入れられ、従来通りの管理または従来の管理にテレメディスンを加えた群に無作為に割り付けられた。テレメディスン群患者は心血管疾患リスク軽減に関する助言を受け、家庭用血圧計を与えられ使用法を教わった。彼等は自身の血圧、心拍、体重、1日の歩数、および喫煙数を週2回6ヵ月間にわたり報告するよう求められた。6ヵ月間の介入終了までにコントロール群の処方薬はほとんど変更されなかったのに対し、テレメディスン群では数は少ないが処方薬数は有意に増加した(2.20±1.20 から 2.34±1.15, p=0.004)。テレメディスン群において処方薬数が増加したのは過剰治療を意味するのではなく、患者の自己モニターおよび報告に基づき薬剤の増加かつ/または調整をより適切に行ったことを反映している、と筆者らは述べている。
自身の冠動脈石灰化を実際に見た患者はスタチン療法や減量プログラムへのアドヒアランスが良好である [2012-04-03]
Better adherence to statin therapy and weight loss programs in patients who actually view their coronary artery calcification
血管壁内へのカルシウム沈着を単に見ることで患者はスタチン療法および減量勧告の遵守に駆り立てられるようであるとの研究結果が第61回American College of Cardiology学会で発表された。2つの関連したスタディにおいて、心臓コンピュータ断層撮影を用いた冠動脈石灰化(CAC)スコアリングを施行された患者が自身の動脈画像を見せられた。疾患が最も重症で自分の心臓画像を見た患者は、検査を受けた結果疾患が軽度またはなかった患者と比較し、スタチンを指示通り内服する確率が2.5倍高く減量する確率が3倍以上高かった。スタチン調査(患者2,100人)の結果、CACスコアが0の者ではコンプライアンスが最も低く(36%)、CACスコアが上昇するとともに上昇した(1〜99、51.8%;100〜399、56.5%; > 400、59.1%; 傾向分析に関しp <0.001)。減量調査(患者518人)に関しても同様の傾向が認められ、冠動脈石灰化所見のない者では20%しか減量しなかったのに対し最も重症の者(CAC>400)においては40%減量した。