STEMIに対し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行される患者に抗凝固薬abciximabをボーラス単回投与することにより30日後の梗塞サイズが減少したとのスタディ結果が2012年American College of Cardiology学会で発表され、同時にJAMAオンライン版に掲載された。INFUSE AMIスタディは左冠動脈近位部または中部の閉塞によるSTEMI発症後4時間以内に来院しプライマリPCIを抗凝固薬bivalirudinを用いて施行された患者452人を対象とした。患者らはボーラスでの梗塞領域冠動脈内abciximab局所投与またはabciximab非投与および手動での血栓吸引施行群または血栓吸引非施行群に無作為に割り付けられた。梗塞サイズは心臓磁気共鳴画像を用いて30日後に評価した。冠動脈内abciximab投与群に割り付けられた患者においてはabciximab非投与患者と比較し、総心筋量に対するパーセンテージとして計測された梗塞サイズ(中央値15.1%対17.9%)および絶対梗塞量(中央値18.7g対24.0g)が有意に小さかったが、異常壁運動スコアはそうではなかった。血栓吸引術施行群に割り付けられた患者は血栓吸引を施行されなかった患者と比較し、梗塞サイズ(中央値17.0%対17.3%)、絶対梗塞量(中央値20.3g対21.0g)、および異常壁運動スコアに有意差はなかった。
患者の骨髄を用いた慢性虚血性心不全の治療は心機能計測値のほとんどを改善しなかったとのスタディ結果が2012年American College of Cardiology学会で発表され、同時にJAMAオンライン版に掲載された。FOCUSトライアルにおいて研究者らは、5つの米国内心、肺、および血液施設-スポンサーのついた心臓血管細胞療法研究 ネットワーク施設において、慢性虚血性心疾患および左室機能低下を伴う心不全かつ/または狭心症を有し最大限の薬物療法を受けている患者に対し、経心内膜自家骨髄単核球細胞(BMCs)投与の効果を評価するスタディを施行した。患者はBMCsまたはプラセボの経心内膜注入を受ける群に無作為に割り付けられた。データ解析の結果、左室収縮末期容積指数、最大酸素摂取量、および可逆的欠損(reversible defect)の変化から成るエンドポイントは両群間で統計学的な有意差がないことが示された。パーセント心筋欠損、総欠損サイズ、固定性欠損サイズ、局所壁運動、および臨床上の改善などの二次エンドポイントのいずれにおいても差がなかった。左室駆出率を評価した検査分析では、62歳以下の患者においては統計学的に有意な治療効果が認められた。
Archives of Internal Medicine 2012年3月12日号に掲載された新たなスタディの結果、赤肉摂取は総死亡率、心血管死亡率、およびがん死亡率を上昇させることが示された。研究者らは、ベースライン時点で心血管疾患およびがんを有さないHealth Professionals Follow-up Studyの対象男性37,698人およびNurses' Health Studyの対象女性83,644人をそれぞれ最長22年間と28年間前向きに観察した。1日1人前の非加工赤肉(トランプカード1組の大きさ)摂取により死亡リスクが13%上昇し、1日1人前の加工赤肉(ホットドッグ1個またはベーコン2枚)摂取によりリスクが20%上昇した。1人前の赤肉を1人前の健康的な蛋白源に変更することにより、死亡リスクは低下した(魚で7%、家禽肉で14%、ナッツで19%、豆類で10%、低脂肪乳製品で10%、全粒粉で10%)。参加者全員が1日の赤肉摂取量を0.5 人前未満にすることで、追跡期間終了までに男性の9.3%および女性の7.6%の死亡が予防できたと筆者らは推定している。
家禽のモモ肉に含まれる栄養素は高コレステロールの女性の冠動脈疾患(CHD)を予防する可能性があるとのスタディ結果がEuropean Journal of Nutritionオンライン版に掲載された。研究者らは、一部の魚介類や七面鳥および鶏肉のモモ肉に自然に含まれる栄養素であるタウリンのCHDに対する効果を評価した。彼らは、CHDを発症したかCHDで死亡した女性223人から1985年−疾患発症前−に採取した血清中のタウリンを計測し、同時に心血管疾患の既往のない参加者ら223人の血清中のタウリンレベルも計測した。比較の結果、全体では血清タウリンレベルはCHDの予防効果はないことが示された。しかし、今回のスタディにおいて、高コレステロールの女性では血清タウリンレベルが高いと血清タウリンレベルが低い女性と比較し、CHD発症またはCHDによる死亡の確率が60%低かった。コレステロールレベルが低い女性では同様の関係は認められなかった。今後のスタディで同様の結果が認められれば、将来的にCHDリスクの高い高コレステロール血症の女性に対しタウリン補充や食事の勧告が考慮される可能性がある。
心房細動(AF)と認知症リスク上昇との強力な相関関係が認められるとのスタディ結果がCanadian Medical Association Journal(CMAJ)最新版に掲載された。脳卒中既往者においてAFが認知症のリスクを上昇させることは知られているが、今回の新たなスタディの結果、この関係が脳卒中の既往のないAF患者においても明らかであることが示された。研究者らは、40か国733施設の患者31,546人を対象とした2つのランダム化コントロールトライアルであるONTARGET およびTRANSCENDトライアルの結果を調査した。参加者は心血管疾患または糖尿病、およびこれらの疾患による何らかの臓器損傷を有する55歳以上の患者であった。彼らは初診時、2年後および最終受診時の認知機能を評価した。注意力、計算・記憶・物の名前を言うこと・ 復唱・読解の能力を評価するために、MMSE検査(mini-mental state examination)を用いて認知機能低下、認知症または機能低下の発症を計測した。MMSEスコアの3点以上の低下、認知症、長期療養型施設への入所および日常生活動作実行の独立性の欠如の合計アウトカムは、心房細動を有さない者の26%に認められたのに対し心房細動患者では34%に認められた。