妊娠中の子癇前症または糖尿病は後の心血管疾患リスクを上昇させる可能性がある [2012-02-28]
Preeclampsia or diabetes during pregnancy may increase risk of cardiovascular disease later in life
妊娠関連高血圧障害や糖尿病を発症した女性は後の心血管疾患リスクが高い可能性があるとのスタディ結果がCirculationに掲載された。研究者らは1990年代前半の妊婦3,416人を調査した。そのうち1,002人(29.8%)が妊娠関連合併症を1つ有し、175人(5.2%)が2つ、26人(0.8%)は3つ有していた。合併症には妊娠糖尿病、子癇前症、早産、および出生時体重(体重の最高および最低10%)が含まれた。研究者らはこれらと18年後に評価した心血管リスクファクターとを関連付け、その後10年間の心血管イベント発現確率を計算した。中年期に心血管疾患を発症するリスクは妊娠糖尿病および子癇前症を有するとそれぞれ26%および31%高かった。これらの妊娠合併症を有していた女性のうち、妊娠糖尿病を有すると空腹時血糖およびインスリンレベルが高かった。子癇前症はボディマスインデクスおよび腹囲が大きいこと、高血圧、高脂血症および高インスリン血症と関連があった。妊娠週数に対し大きな子供を出産した女性は腹囲が大きく血糖値が高かった。早産した女性は血圧が高かった。
心筋梗塞の女性は男性よりも胸痛の訴えがない確率が高く院内死亡率が高い [2012-02-28]
Women with myocardial infarction more likely than men to present without chest pain and have higher in-hospital mortality
心筋梗塞(MI)患者のうち、女性は同年代の男性よりも胸痛の訴えがない確率が高くMI後の院内死亡率が高いが、この差は加齢とともに小さくなるとのスタディ結果がJAMA 2月22/29日号に掲載された。このスタディでは心筋梗塞米国国内登録National Registry of Myocardial Infarctionの登録患者1,143,513人のデータを解析した。うち42.1%が女性であった。MI女性は男性よりも来院時年齢がやや高齢であり、平均年齢が74歳であり、男性では67歳であった。胸痛/胸部違和感なしに来院したMI患者の割合は全体で35.4%であり、女性において男性よりも有意に高かった(42.0%対30.7%)。胸部症状のないMIの性差は年齢とともに徐々に小さくなった。院内死亡率は女性で14.6%であり、男性では10.3%であった。完全に補正したモデルでは、胸痛/胸部違和感なしに来院した若年女性は男性よりも院内致死率が高く、この傾向は年齢が上昇すると反転した。
冠動脈疾患リスクと前立腺がんリスクとの間に有意な相関が認められた [2012-02-21]
Significant correlation found between risks of coronary artery disease and prostate cancer
Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版に掲載された前立腺の治験に参加した男性の大規模解析において、研究者らは冠動脈疾患と前立腺がんに有意な相関を見出し、これらの2つの疾患は共通する原因を有することが示唆された。研究者らは、薬剤dutasteride の前立腺がんリスク軽減に関する有益性を調査するための4年間のランダム化トライアルREDUCEに組み入れられた男性6,390人のデータを使用した。スタディの対象男性のうち547人が登録前に冠動脈疾患既往歴を有していた。この群の男性は高齢で体重が多く不健康な傾向にあり、ベースラインのPSAが高く、さらに糖尿病、高血圧および高コレステロール血症を有しがちであった。これらの男性はベースライン時点の全ての相違点を考慮しても、前立腺を発症する確率もより高かった。冠動脈疾患を有する男性の前立腺がんリスクは35%高く、このリスクは時間とともに上昇した。これらの男性は2年以内に前立腺がんと診断される確率が冠動脈疾患を有さない者と比較し24%高く、またこの群の患者のスタディ開始後4年以内の前立腺がんリスクは74%高かった。
心臓磁気共鳴画像は生命を脅かす不整脈患者の診断法として有用である [2012-02-21]
Cardiovascular magnetic resonance effective diagnostic tool in patients with life-threatening arrhythmias
Circulation: Cardiovascular Imagingに掲載された新たな研究の結果、心臓突然死または心室性不整脈による入院から蘇生した患者において心臓磁気共鳴(CMR)検査を行うことの有益性が示された。このスタディは心臓突然死から蘇生した状態でまたは心室頻拍により入院した連続82症例にCMRを施行しその効果を調査した。全ての患者に対し標準的な心臓画像診断検査を施行された。しかし研究者らはまた、3-Tesla MRIも用いて1つの検査で答えを発見できるかどうかを評価した。CMRは非常に有効な診断画像法であり、循環器的診断を75%の症例において下したのに対し、他の全ての検査においてはわずか50%であった。全体で、CMRは不整脈の新たな、または別の原因を50%の患者において同定した。患者らはしばしば心筋の炎症や小さな心筋梗塞を有しており、それらは過去には見逃されていた。
全エクソームシークエンス技術により頭骸内動脈瘤のリスクを上昇させる遺伝子変異が同定された [2012-02-14]
Whole exome sequencing technique identifies genetic mutations that increase risk for intracranial aneurysms
革新的なゲノムスクリーニング法により脳動脈瘤のリスクを上昇させ脳出血の素因となる可能性のあるまれな変異に関する糸口が得られたとの予備的なレイトブレイキング研究の結果が、2012年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。研究者らは全エクソームシークエンスと呼ばれる工程を初めて適用し、頭骸内動脈瘤を複数人有する家系の遺伝子変異を検索した。全エクソームシークエンスはゲノム全体をシークエンスする代わりに蛋白合成の指令を出す遺伝子ブループリントの小部分に焦点を当てる。この方法により遺伝子コードのまれな亜型を検索できる。7つの家系の脳動脈瘤を有する32人を調査した結果、過去にシークエンスをされた一般人口の対照アレルと比較し100,000を超える遺伝子亜型が発見された。血管構造および機能に関連した遺伝子のカテゴリーに焦点を当て、確実に一家系で3人以上の脳動脈瘤患者が同じ亜型を共有していることとした結果、研究者らは初回の結果を19遺伝子の27亜型に狭めた。個人のリスクは、いくつかの遺伝子におけるいくつかの亜型に加え喫煙などの環境因子への曝露が関係している可能性がある、と筆者らは述べている。

SPS3:クロピドグレルとアスピリンの併用は皮質下小梗塞をより予防することはなく出血や死亡のリスクを上昇させる可能性がある [2012-02-14]

SPS3: Clopidogrel with aspirin doesn’t prevent more small subcortical strokes and may increase risk of bleeding, death
皮質下梗塞患者に対するアスピリンにクロピドグレルを加える併用療法は脳卒中再発を予防はせず出血や死亡のリスクを上昇させる可能性があるとのレイトブレイキング研究の結果が2012年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。この皮質下小梗塞二次予防トライアル(The Secondary Prevention of Small Subcortical Strokes Trial:SPS3)は、81施設の脳卒中患者3,020人を対象とした。患者らは症状発現から180日以内にアスピリンとクロピドグレルまたはアスピリンとプラセボを毎日内服する群に無作為に割り付けられた。プレリミナリーな結果では、出血および死亡のリスクはクロピドグレル/アスピリン併用群でアスピリンとプラセボ内服群よりも高いことが示された;出血リスクはアスピリンとプラセボ併用群の年間1.1%に対し、アスピリンとクロピドグレル併用群では2.1%であった―多くが脳以外の臓器の重大な出血であった。死亡リスクはアスピリンとプラセボ併用群で1.4%であり、アスピリンとクロピドグレル併用群では2.1%であった。脳卒中再発は両群間で差がなかった。これらの予備的な結果から、研究者らはSPS3の抗血栓パートを終了させた。SPS3トライアルは、皮質下脳梗塞患者を対象とした初めての大規模スタディである。

WARCEF:ワルファリンを内服している心不全患者とアスピリンを内服している心不全患者とで死亡および脳卒中のリスクは同等である [2012-02-14]

WARCEF: Risk of death and stroke similar for heart failure patients taking warfarin or aspirin
2つの抗血栓薬を比較した最大および最長のhead-to-head比較試験で、正常調律の心不全患者の死亡および脳卒中の予防においてワルファリンとアスピリンは同等であったとのレイトブレイキング研究の結果が2012年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。このランダム化盲検11か国トライアルである、低心駆出率患者におけるワーファリンとアスピリンの比較(Warfarin versus Aspirin in Reduced Cardiac Ejection Fraction:WARCEF)試験において、研究者らは正常調律の心不全患者2,305人(平均年齢61歳、LVEF<35%)を最長6年間(平均3.5年)追跡した。13%の患者が脳卒中または一過性脳虚血発作を経験し再発リスクが高かった。研究者らは患者らを1日325mgのアスピリン、または予め特定された血液抗凝固レベルで較正したワルファリン用量を受ける群に無作為に割り付けた。スタディ1次エンドポイントである死亡、虚血性脳卒中または脳内出血およびそれらのいずれかの組み合わせはワルファリン内服群患者の7.47%に発現し、アスピリン内服患者の7.93%に発現した。この差は統計学的に有意ではなかった。スタディ全体では差はなかったが、4年以上追跡された患者においてはワルファリン投与患者において有益性が大であった。

SWIFT:SOLITAIRE 血流再開通デバイスの方が脳卒中3か月後の生存率が良好である [2012-02-14]

SWIFT: SOLITAIRE Flow Restoration Device led to better survival three months after stroke
治験中のSOLITAIRE血流再開通デバイスはMERCI 血栓回収デバイスより優れているとのレイトブレイキング研究の結果が2012年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。血栓除去を目的としたSolitaire 治療(Solitaire With the Intention for Thrombectomy:SWIFT)トライアルにおいて、18の病院の脳卒中患者113人(平均年齢67歳、男性68%)が脳卒中発症後8時間以内にいずれかのデバイスで血栓除去を施行される群に無作為に割り付けられた。新たなデバイスを用いた群において予後が有意に良好であったため、このトライアルは予定よりも1年近く早く終了した。有症状の脳内出血を発生させることなく閉塞血管を開通したのはSOLITAIREで61%であったのに対し、MERCIでは24%であった。死亡率はSOLITAIRE群で17.2%であったのに対し、MERCI群では38.2%であった。有症状の脳内出血はSOLITAIRE治療群で2%であったのに対し、MERCI治療群では11%であった。SOLITAIRE治療患者の58%が90日後の精神/運動機能が良好であったのに対し、MERCI治療群におけるその割合は33%であった。またSOLITAIREデバイスを初回治療として使用することにより、その後の他のデバイスや薬剤を試みる必要性が軽減した。

顆粒球コロニー刺激因子製剤の脳卒中による障害の軽減効果の成績は残念なものであった [2012-02-14]

Manufactured form of granulocyte colony stimulating factor has disappointing performance for reducing disability from stroke
動物実験および早期臨床試験において有望であることが示されたある新薬は脳卒中患者の障害を改善しなかったとのレイトブレイキング研究の結果が2012年American Stroke Association's International Stroke Conference学会で発表された。脳卒中および他の脳傷害後に脳は天然の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を産生し、神経細胞を保護し血管増殖を増加させる。この新薬AX200はG-CSF製剤である。今回の盲検多施設スタディは、ヨーロッパ8か国78脳卒中治療施設の患者328人(平均年齢69歳、男性52%)に対し施行された。初回症状から9時間以内にAX200の血管内持続投与を開始し、3日間継続した。治療90日後に、AX200またはプラセボを投与された患者のいずれもが、脳卒中関連障害の一般的な検査である0-6のmodified Rankin scaleにおいて3であった。もう1つの解析においても、90日後に米国国立衛生研究所脳卒中スケールを用いて評価を行った。実薬とプラセボとの差は0.5点未満であり(AX200群で8.88、プラセボ群で8.45)、統計学的に有意ではなかった。

ROCKET AF:リバロキサバンは 脳卒中高リスク患者における脳内出血や血腫のリスクが少ない [2012-02-14]

ROCKET AF: Rivaroxaban has less risk of intracranial bleeding and hemorrhage in patients at high risk for stroke
心房細動(AF)患者に対し新たな抗凝固薬リバロキサバンは血栓関連の脳卒中予防において優れている一方で、脳内出血のリスクが少ない可能性がある。この研究は2012年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。この結果は、45か国1,178施設で施行されたROCKET AFと呼ばれる大規模ランダム化臨床試験のサブ解析により得られた。ROCKET AFはAF患者におけるワルファリンに対するリバロキサバンの効果を試験した。心臓弁膜症疾患歴のない最も一般的なタイプの心房細動を有する患者のうち、リバロキサバンを投与された患者はワルファリン投与患者よりも脳内出血発現率が34%少なかった。このスタディではまた、治療に関係なく、AF患者の脳内出血を発現する5つのリスクファクターも同定した。これらは高齢、黒人またはアジア人、脳卒中または一過性脳虚血性発作歴、高アルブミン血症および血小板減少であった。

一般的に加齢症状の1つと考えられている記憶障害はその後の致死的脳卒中リスクを評価するのに役立つ [2012-02-07]

Memory loss, commonly considered a part of aging, may help gauge a patient's risk for future fatal strokes

重度の急速な記憶障害はその後の致死的な脳卒中と関連があり―そして予知できる可能性がある―との研究結果がAmerican Stroke Association2012年International Stroke Conferenceで発表された。このスタディにおいて研究者らは50歳以上の11,814人の記憶力低下徴候を2年ごとに調査した。参加者は登録時に脳卒中はなく10年間追跡された。1,820件の脳卒中が報告され、364人が脳卒中後次の記憶力評価前に死亡した。標準化検査において標準偏差で表したところ、脳卒中を発症しなかった者ではそれぞれの年の平均記憶力スコアの低下は0.078ポイントであったのに対し、脳卒中後に生存した者では0.137ポイントであり、脳卒中で死亡した者では0.205ポイントであった。脳卒中後に生存した者では追跡期間中に脳卒中を発症しなかった同様の者と比較し、平均記憶力が低かった。脳卒中発症時には記憶能は平均0.321ポイント低下していた。この差は脳卒中を発症しなかった者が4.1歳年をとった場合の平均的な記憶能低下に相当した。脳卒中に関連した大幅な記憶力低下のため、脳卒中後患者における記憶力障害は一般的に認められた。

CREST:頸動脈内膜切除術とステント留置術とで患者の血行再建予後は同等であった [2012-02-07]

CREST: Similar revascularization outcomes found for patients receiving carotid endarterectomy or stenting

閉塞した頸動脈を金属ステントで血行再建した場合と手術をした場合の永続性は同等であったとの研究結果がAmerican Stroke Association2012年International Stroke Conferenceで発表された。施術2年以内に再狭窄を来した患者は7%未満であった。この、頸動脈血行再建内膜切除術対ステント留置術:Carotid Revascularization Endarterectomy versus Stenting Trial(CREST)トライアルでは、1,086人の患者がステント留置術を、1,105人が内膜切除術を受けた。治療部位に70%以上の狭窄を来した者を検出するため、患者全員が施術後1、6、12、および24か月後に超音波検査で評価を受けた。2年後の再狭窄率は両群で同等であった(5.8%)。完全閉塞は、ステント群の0.3%および内膜切除術群の0.5%に認められ、再狭窄と閉塞を合計するとステント術後で6%であり、内膜切除術後で6.3%であった。ステント群の20人および内膜切除術群の23人が再狭窄部位に2度目の施術を施行された。再狭窄率は女性および糖尿病や脂質異常患者において2倍であった。脳卒中発症率は、追跡期間中に再狭窄を来した患者において再狭窄のなかった患者の4倍高かった。このスタディはそれぞれの施術後の再狭窄率を観察した最も大規模なものである。