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肥満の閉経後女性は標準体重の対照よりも認知機能検査の成績が優れている [2011-10-25]
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Obese post-menopausal women outperform normal weight counterparts
in cognitive tasks |
肥満は認知機能低下と関連があるとされてきたが、閉経後女性を対象としたあるスタディにおいて肥満の参加者は3つの認知機能検査で標準体重の女性よりも優れており、研究者らは性ホルモンの役割と認知機能について推測している。研究者らはアルゼンチンの心血管予防プログラム“Corazon
Sano,”の対象女性678人の記録をレビューした。これらの女性のうち300人(44.3%、平均年齢59.8歳)は閉経後1年以上経過していることが確認された。そのうち158人(52.6%)は腹囲またはボディマスインデクス(BMI)から肥満とも分類された。それぞれの女性は3つの認知機能検査(認知機能全般を評価する一般的な検査であるミニメンタルステート検査、実行機能評価のための時計描画検査、および縮小版ボストン検査による記憶力検査)を受けた。その結果、BMIと認知機能レベルに正相関が認められた。また、肥満からくる腹囲と全般的な認知機能にも同様の関係がみられた。筆者らは、女性自身の脂肪細胞から自然に生じるエストロゲンが認知機能を保護しているのであろうと述べている。このスタディ結果はAmerican
Physiological Society主催のPhysiology of Cardiovascular Disease:
Gender Disparities学会で発表された。 |
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アシクロビルはヘルペス感染細胞のアミロイドプラーク沈着を抑制し、アルツハイマー病の進行を遅延させる可能性がある [2011-10-25]
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Acyclovir decreases accumulation of amyloid plaques in
herpes-infected cells and may slow progression of Alzheimer's
disease |
ヘルペスウイルスを標的とした抗ウイルス薬はアルツハイマー病(AD)の進行を遅延させるのに有効である可能性があるとの研究結果がPublic
Library of Science (PLoS) One誌に掲載された。このスタディの筆者らは過去に、この疾患に特異的なある遺伝子リスクを有する人々の脳内に1型単純ヘルペスウイルス(HSV1)が存在するとアルツハイマー病のリスクファクターとなることを示した。AD脳内のウイルスDNAはアミロイドプラーク内に非常に特異的に定着する。この事実およびウイルスにより誘発されるアミロイド産生から、HSV1が有毒なアミロイド産生およびプラークの原因となり、したがってADのリスクファクターであることが示唆された。現在使用可能な抗ウイルス薬はHSV1
DNAの複製を標的として作用するため研究者らは、ウイルスによるβアミロイドおよびPタウの蓄積がウイルスDNA複製の生じる段階またはその後に生じるのであればAD治療に成功する可能性があると考えた。その結果、最も一般的に使用されるアシクロビルおよび他の2つの抗ウイルス薬を用いてHSV1感染細胞を治療することにより、βアミロイドおよびPタウの蓄積、そしてHSV1複製を減少させることが示された。 |
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小規模スタディの結果、薬物とアルツハイマー病に関連した脳内アミロイドレベル低下に関連が認められた [2011-10-18] |
Small
study shows association between medication and reduction
in brain amyloid levels related to Alzheimer's disease |
小規模スタディのためさらに臨床試験が必要ではあるが、薬物gantenerumabによる治療はアルツハイマー病(AD)患者の脳内アミロイドレベルを低下させたことがArchives
of Neurologyオンライン版で報告された。研究者らはgantenerumab治療により脳内Aβアミロイドレベルの計測可能な低下が認められるかを調査しアミロイド減少のメカニズムを解明しようとした。2つの連続した患者群を、gantenerumab(60または200mg)またはプラセボを4週ごとに2〜7回注射する群に無作為に割り付けた。2〜7ヵ月間のgantenerumab治療により用量依存的にAD患者の脳内アミロイドの減少が認められた。プラセボ治療を受けた患者の所見から、アミロイド量は軽度から中等度AD患者の多くにおいて増加し続けることを示した過去の報告が裏付けられた。さらに、2人のAD患者から得られた脳組織(組織は腫瘍手術の際に採取された)は、ex
vivoスタディ同様、gantenerumabとコインキュベートされていた。ex vivoではgantenerumabは用量依存的にヒトアミロイドの貪食を誘発した。筆者らは、この治療は“エフェクター細胞誘発メカニズム作用”を介して作用している可能性があることを示唆した。phase
II臨床試験が現在進行中である。 |
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病弱だと思う気持ちが認知症発症の可能性を上昇させる [2011-10-18]
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A person's impression of poor health could increase their
chance of developing dementia |
自分の健康状態が不良またはあまり良くないと思っている人は将来認知症を発症する確率が高いとのスタディ結果がNeurology®2011年10月5日オンライン版に掲載された。スタディ開始時に65歳以上の8,169人は自分の健康状態を評価するように言われ、その後7年近く追跡された。スタディ期間中に618人が認知症を発症した。認知症リスクは、自分の健康を不良およびあまり良くないと評価した者において健康状態を良好と評価した者と比較し、それぞれ70%および34%高かった。さらにスタディの結果、この健康に関する自己評価と認知症発症との関連は、記憶障害や他の思考能力の問題が何もない者においてより顕著に認められることが示された。認知機能に問題のない者では、自分の健康状態を不良と評価した者は良好と評価した者と比較し痴呆発症の確率が2倍近く高かった。この結果は、高血圧や高コレステロール血症などの他の健康状態で補正しても依然として認められた。 |
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ある治療は一部のトラウマ経験者のPTSD症状を軽減させるのに有益なようである [2011-10-11]
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Certain therapies appear beneficial in reducing PTSD symptoms
in some trauma survivors |
長時間曝露療法、認知療法、および遅延長時間曝露療法は、トラウマとなる出来事を経験して間もない患者における心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状を軽減するようであるとArchives
of General Psychiatryオンライン版に掲載された。筆者らは、同意承諾した患者を4つの介入群:長時間曝露(PE)、認知療法(CT)、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)対プラセボ治療の二重盲検比較、または待機リストコントロール群(WL)のいずれかに無作為に割り付けた。PTSD有病率はPTSD臨床診断面接尺度Clinician-Administered
PTSD Scale (CAPS)を用いて決定した。解析の結果、5ヵ月後の時点でCAPSおよび平均PTSD症状尺度―自己報告スコアに関して有意な群間差が認められ、PEおよびCT群においてWL、SSRIおよびプラセボ群と比較し、PTSD症状が少なかった。9ヵ月後のPTSD有病率はPE、CT、およびWL群でそれぞれ21.2%、22.8%、および22.9%であり、一方でSSRIおよびプラセボ群(それぞれ42.1%および47.1%)においては依然として高率であった。9ヵ月後のCAPSおよび平均PTSD症状尺度―自己報告スコアにおいても解析の結果有意な群間差が認められ、PE、CTおよびWL群ではSSRIおよびプラセボ群と比較しPTSD症状が少なかった。 |
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ACCORD-MIND:高齢糖尿病患者において標準的な治療以上の血糖コントロールは認知機能低下を改善しない [2011-10-11]
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ACCORD-MIND: Blood sugar control beyond standard treatment
does not improve cognitive decline for older people with
diabetes |
高齢糖尿病患者において、標準的な治療以上の強化血糖コントロールは標準的な治療よりもさらに認知機能低下を抑制しないとの、糖尿病における心血管リスク-糖尿病における記憶力をコントロールするための活動Action
to Control Cardiovascular Risk in Diabetes-Memory in Diabetes(ACCORD-MIND)スタディの初めての結果がThe
Lancet Neurologyオンライン版に掲載される。強化血糖コントロールが認知機能の予後を改善するか否かを評価するために、研究チームは長期にわたる2型糖尿病および心疾患ハイリスクを有する3,000人近い人々(55〜80歳)をスタディに組み入れた。各々の患者が、HbA1cを標準的な目標値よりも低値の6%未満とする“強化”プログラム、または7〜7.9%
に維持する“標準”プログラムのいずれかに組み入れられた。40ヵ月後の認知機能テストスコアは両群間で差がなかった。強化療法群の患者は総脳容積が大きかった。しかし、強化治療群における認知機能に関する有益性の欠如、心血管系リスク上昇および死亡率上昇などとこの結果を比較すると、強化療法は支持されないと研究者らは結論付けている。 |
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カフェイン入りコーヒー摂取量が多い女性はうつ病リスクが低い可能性がある [2011-10-04] |
Increased
caffeinated coffee consumption associated with decreased
risk of depression in women |
カフェイン入りコーヒー摂取量が多い女性はうつ病リスクが低いようであるとArchives
of Internal Medicine 9月26日号に掲載された。この論文の背景によると、カフェインは世界で最も頻繁に用いられる中枢神経系刺激剤であり、その80%はコーヒーの形で摂取されている。研究者らはNurses'
Health Study(看護師健康スタディ)に参加した米国女性50,739人を調査した。参加者(平均年齢63歳)はスタディ開始時にはうつ病を有していなかった。10年の経過観察期間中に2,607人が新たにうつ病を発症した。1週間のコーヒー摂取量が1杯以下の女性と比較し、1日2〜3杯のコーヒーを摂取する女性はうつ病相対リスクが15%低く、1日4杯以上摂取する女性においては20%低かった。カフェイン摂取量が最も少ない(1日100mg未満)カテゴリーの女性と比較し、最も多い(1日550mg以上)カテゴリーの女性は、うつ病の相対リスクが20%低かった。カフェイン抜きのコーヒー摂取とうつ病リスクには関連がなかった。 |
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糖尿病を有すると認知症発症リスクが倍になるようである [2011-10-04]
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Having diabetes appears to double risk of developing dementia |
糖尿病を有する人々は認知症発症リスクが有意に高いようであるとのスタディ結果がNeurology
2011年9月20日号に掲載された。スタディに際し計1017人(60歳以上)に一晩の禁食後に糖負荷試験を行い糖尿病の有無を検査した。参加者は平均11年間モニターされ、その後に認知症に関する検査を受けた。スタディ期間中に232人が認知症を発症した。その結果、糖尿病を有する人々は血糖値が正常の人々と比較し認知症発症リスクが2倍であることが示された。糖尿病を有する150人中41人が認知症を発症したのと比較し、糖尿病を有さない590人中認知症を発症したのは115人であった。この結果は、高血圧、高コレステロール血症および喫煙などの因子で補正しても同様であった。認知症リスクは、糖尿病ではなく耐糖能障害を有する人々、つまり“前糖尿病状態”の人々においても高かった。さらに、痴呆リスクは食後2時間が経過しても血糖が高値である場合に有意に高かった。糖尿病を有する人々はアルツハイマー病を発症する確率もまた高かった。 |
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