歩行やバランスの変化はアルツハイマー病の認知障害前に出現する可能性がある [2011-07-26]

Changes in gait and balance may appear before cognitive impairment in Alzheimer's disease

ごく早期のアルツハイマー病の徴候を有する者において転倒はより多く認められる、とのスタディ結果がパリで開催された2011年Alzheimer's Associationx®International Conferenceで発表された。このスタディでは、ピッツバーグコンパウンドB(PiB)を使用した陽電子放射断層撮影(PET)を用いたアミロイド画像により評価した潜在的アルツハイマーの有無にかかわらず、認知機能の正常な高齢者の転倒率を計測した。現在記憶および老化に関する長期スタディに組み入れられている高齢者125人を8か月間追跡した。参加者ら全員がPiB PET画像検査を施行され脳脊髄液検体を提供した。各々の参加者らは転倒(床、地面または膝の高さより下のものへの意図しない移動で定義)回数を日記に記入するよう依頼された。平均191日のデータを収集したところ、48人が少なくとも1回の転倒を経験した。PiB PET画像において陽性である場合、PiB PET画像で1単位増加するごとに転倒リスクが2.7倍上昇した。高齢者に関しては転倒リスクが低いのに転倒するのはアルツハイマー病に対する診断的評価の必要性のシグナルである可能性がある、と筆者らは述べている。

網膜画像がアルツハイマー病リスクの高い者を検出するのに有用であることが証明される可能性がある [2011-07-26]

Retinal imaging may prove useful in identifying individuals at risk for Alzheimer's disease

パリで開催された2011年Alzheimer's Associationx®International Conferenceで注目されたあるスタディにおいて、網膜血管の特徴がアルツハイマー病のバイオマーカーとして役立つ可能性があるか否かが調査された。ある小規模なパイロットスタディにおいて、大規模なオーストラリアにおける画像、バイオマーカーおよび生活習慣フラッグシップ加齢スタディ(Australian Imaging, Biomarker and Lifestyle Flagship Study of Ageing :AIBL)から得たアルツハイマー病患者(13人)、軽度認知障害(13人)および健常人(110人)の網膜写真の評価を行った。その結果、眼の背後のある血管の幅がアルツハイマー病患者と健常人とで明らかに異なり、これはアルツハイマー病を示唆する脳画像ベンチマーク−PET PiB画像で計測した脳内アミロイドプラーク沈着と関連することが明らかにされた。これらのスタディはまだ非常に予備的なものであるが、しかし有望である。筆者らは、非侵襲的かつ費用対効果に優れた網膜検査がアルツハイマー病の早期発見検査として有用である可能性があると期待をしているが、さらに研究が必要である。

動物実験において大気汚染は学習や記憶能力の問題およびうつと関連があることが示された [2011-07-19]

Air pollution linked to learning, memory problems and depression in animal study

長期の大気汚染により脳の物理的変化および学習や記憶障害さらにうつさえ引き起こされる可能性があるとのマウスの新たな研究結果が示された。この結果はMolecular Psychiatryオンライン版に掲載される。マウスは、フィルターでろ過された大気または汚染大気に1日6時間、週5日、10か月間曝露された―これはマウスの寿命のほぼ半分の期間である。10か月間の曝露の後、研究者らはこれらのマウスに様々な種類の行動検査を行った。学習および記憶検査では明るい照明領域の真ん中に置き2分間の間に穴の中に逃げさせた。避難穴をみつけるトレーニングを5日間行わせたが、汚染大気を吸ったマウスは避難穴の場所を覚えるのに時間がかかり、また、後に検査したときに避難穴を思い出しにくかった。他の実験では、汚染大気に曝露されたマウスはフィルターでろ過された大気を吸っていたマウスよりも、うつ様行動を強く示した。汚染大気マウスはある検査では不安様行動の高いレベルを示したが、その他の検査ではそうではなかった。

陽電子放射断層撮影は脳内アルツハイマー病変の存在を同定するのに役立つ可能性がある [2011-07-19]

Positron emission tomography may help identify the presence of Alzheimer's disease lesions in the brain

陽電子放射断層撮影(PET)を行うことにより脳組織内のアルツハイマー病(AD)所見を同定するのに役立つ可能性があるとの2つの論文がArchives of Neurologyオンライン版に掲載された。1つ目のスタディでは研究者らは18Fで標識されたflutemetamolと呼ばれるトレーサーを用いて脳を画像化し評価した。このスタディではこの物質を1用量投与した患者7人にPETスキャンを行った。全ての患者が、認知症を含む進行性疾患でありADとの鑑別の困難な正常圧水頭症に対し過去に生検を施行されていた。研究者らはPETスキャンの読影結果と生検された組織の顕微鏡的所見との関連性を発見した。もう1つのスタディでは、トレーサーとしてflorbetapir F 18を用いたPET画像を評価した。スタディにはADの可能性の高い68人、軽度認知障害を有する60人、およびコントロールとして参加した健常者82人が組み入れられた。その結果、3群間で脳のflorbetapir F 18の取り込みおよびアミロイドプラークの検出に差が認められた;この差はこれらの疾患間の鑑別や異常な脳と正常な脳の鑑別に役立つほどに十分に大きい可能性がある。

胎児期のある種の抗うつ薬への曝露により自閉症スペクトラム障害のリスクが上昇する [2011-07-12]

Prenatal exposure to certain antidepressants associated with modestly increased risk of autism spectrum disorders

胎児期、特に妊娠初期の選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)への曝露により自閉症スペクトラム障害(ASD)発症のリスクが中等度上昇するとArchives of General Psychiatryオンライン版に掲載された。筆者らはASDを有する小児298人(症例群)とその母親、およびコントロールの小児1,507人とその母親をスタディに組み入れた。症例群の小児の母親20人(6.7%)およびコントロール群の小児の母親50人(3.3%)がスタディ対象の子供を出産する前1年以内に少なくとも1つの抗うつ薬を処方されていた。ASDを有する小児の母親は出産前1年以内に抗うつ薬を処方された確率が2倍高かった。母親および出産に関する因子で補正すると、SSRIを処方された母親の子供は後にASDと診断される確率が2倍以上であった。この関連はSSRI以外の抗うつ薬のみを処方された小グループの女性においては認められなかった。さらに、SSRIへの曝露は出産前1年間どの時点においてもASDのリスクではあったが、特に妊娠初期のSSRIへの曝露は有意であった。

双生児の研究から、自閉症スペクトラム障害に占める遺伝子因子は中等度であり、環境因子が多くを占める可能性が示唆された [2011-07-12]

Study of twins suggest genetic component of autism spectrum disorders may be moderate, environmental component may be substantial

少なくともどちらかが自閉症スペクトラム障害(ASD)を有する双生児を評価した結果、この疾患の発症には共有する遺伝子よりも共有する環境がより実質的な役割を果たしている可能性が示唆されたとArchives of General Psychiatryオンライン版に掲載された。研究者らは、少なくともどちらかがASDを有する双生児を、親に対する系統立った問診であるAutism Diagnostic Interview-RevisedおよびAutism Diagnostic Observation Scheduleを用いて評価を行い、他の検査を用いて言語性および非言語性認知機能を評価した。54組の一卵性双生児および138組の二卵性双生児(うち80組は男女のペア)に関して最終解析を行った。両者ともに自閉症またはASDを有する確率は二卵性双生児よりも一卵性双生児において高かった。研究者らはさらにモデルを用いて遺伝子が原因のリスクがどの程度であるかを推定した。この解析の結果、リスクの可変因子の半分以上がおそらく共有する環境因子により説明され、それに対し遺伝が原因であるリスクは40%未満であった。

産後うつ病リスクは、母親の年齢が若いこと、再入院、人工乳育児および尿失禁により上昇する [2011-07-05]

Risk of postpartum depression increases with young age of mother, hospital readmission, lack of breastfeeding and urinary incontinence

出産後に尿失禁を有する女性はそれを有さない女性と比較し産後うつ病発症リスクがほぼ2倍であるとBritish Journal of Obstetrics and Gynecologyオンライン版に掲載される。研究者らは分娩形式と退院6週後の産後うつ病との関連調査に着手した。彼らはほぼ1,900人の新たに母親となった女性を評価した。3分の1が帝王切開により出産した。退院後6週の時点で約8%が産後うつ病を有していた。産後うつ病と分娩形式には関連が認められず、この結果は過去のスタディ結果と同様であった。しかし、今回の調査の結果、母親が25歳未満であること;母親が再入院したこと;母乳保育を開始しないこと;自己申告による産後健康状態が良、普通、または不良であること;および尿失禁が産後うつ病の最強の5つの予測因子であることが示された。研究者らは、医療従事者が産後の評価の一環としていかなる膀胱に関する問題にも積極的であり質問することを提案しており、そのことで早期に問題を発見し症状や健康を改善するための適切な行動をとることができるとしている。

脳卒中発症後早期からの「動機づけ」面接法によりうつ病徴候が減少し生存率が上昇する [2011-07-05]

Patients participating in "motivational" interviews soon after a stroke show fewer signs of depression and increased survival

脳卒中発症後早期から「動機づけ面接法」のセッションをいくつか受けた患者は、標準的な脳卒中のケアを受けた患者と比較し、情緒が正常でうつ発症が少なく1年後の生存率が高いことが示されたとの研究結果がStrokeに掲載された。動機づけ面接法は一般的に、行動変化を要する健康上の問題を有する患者に対して行われる会話ベースの治療法であるが、今回のスタディにおいてこの治療法が脳卒中後の生活調整補助目的で使用された。スタディには病院の脳卒中治療室内の患者411人(平均70歳、男性が半数よりやや多かった)が組み入れられた。研究者らは患者の気分、回復への信念や期待、日々の身体活動性について標準的なアンケートを用いて評価した。全ての患者が通常の脳卒中ケアを受け、半数は脳卒中発症後2〜4週間以内に1人のセラピストに付き30〜60分間の会話ベース療法を最高4セッション受ける群に無作為に割り付けられた。患者は12ヵ月後に郵送のアンケートで再評価された。1年後に情緒が正常だったのは、早期の会話ベース療法を受けた患者の48%であったのに対し、この治療法を受けなかった患者においては37.7%であった。死亡率は介入群で6.5%であったのに対し、コントロール群では12.8%であった。



 

DOLについて - 利用規約 -  会員規約 - 著作権 - サイトポリシー - 免責条項 - お問い合わせ
Copyright 2000-2025 by HESCO International, Ltd.