うつ病は後の急速な腎機能低下の予測因子となる [2011-03-29]

Depression predicts subsequent rapid decline in kidney function

うつ病は将来的な腎不全発症リスクを上昇させるとのスタディ結果がClinical Journal of the American Society Nephrologyに掲載される。研究者らは米国全域5,785人を10年間調査した。参加者らは65歳以上で透析には至っていなかった。彼らはうつ症状を計測するアンケートに回答し、推定糸球体濾過率(eGFR)や腎疾患および心疾患リスクファクターなどの医学的計測を受けた。うつ病は慢性腎疾患と合併し、腎疾患を有する者において疾患を有さない者より有病率が20%多かった。うつ病はその後の急速な腎機能障害、末期腎臓病の新規発症、および急性腎障害の合併による入院の予知因子であった。他の医学的測定値の長期的な影響で補正した後も、うつ病の急性腎障害による入院の予測値は依然として高かった。研究者らは現在、医療機関受診の遅れ、患者と医師とのコミュニケーション障害、および免疫系や神経系などのうつ病と関連した重要な生物学的過程等のうちどの因子によりうつ病との関連が説明できるかを解析している。

 

うつ病、年齢および他の因子が脳卒中後の依存状態と関連している [2011-03-29]

Depression, age and other factors linked to dependence after stroke

脳卒中を発症した者がうつ病を有していたり、高齢であったり、または他の医学的問題を有している場合には依存状態となる確率が高いとのスタディ結果がNeurology 2011年3月15日号に掲載された。研究者らは、重度の言語障害または認知障害を有さない虚血性脳卒中既往者367人(平均年齢62歳)の情報を収集した。彼らのうち、174人が脳卒中発症1ヵ月後に脳卒中後うつ病と診断された。参加者の依存状態は0から5までのスケールで評価された(5が最も重度の機能障害を有し依存度が高い)。3ヵ月後に参加者の20%がレベル3以上であり依存状態と考えられた。うつ病を有する脳卒中既往者は、若年で他の疾患を有さない者と比較し、高齢であり(64歳対59歳)、他の合併症を有しており(合併症検査において18点対15点)、または重度のうつ病(健康に関するアンケートにおいて16点対14点)であると依存状態となる確率が高かった。3ヵ月後にうつ病が改善したことにより依存状態も回復するかどうかに関しては、このスタディでは評価されなかった。

 

心理社会的ハザードを伴う地域での居住は一部の高齢者において認知機能を低下させる [2011-03-22]

Living in neighborhoods with psychosocial hazards associated with worse cognitive function in some older adults

心理社会的ハザードを伴う地域での居住は、アポリポ蛋白Eε4アレル(APOE)を有する高齢者の認知機能を低下させるとArchives of General Psychiatry 3月号に報告された。心理社会的ハザードを伴う地域とは“警戒、不安、または恐怖を上昇させ生物学的ストレス反応を引き起こす地域”で定義される。研究者らは都会の居住者(50〜70歳)1,124人を調査し、心理社会的ハザードを伴う地域に居住することと加齢に伴う認知機能との関連を評価した。全体で、参加者の30.4%がε4アレルを少なくとも1つ有していた。外部因子(人種、性別、経済状態など)で補正した結果、最も心理社会的ハザードを伴う地域に居住する参加者は、検査をした7つの認知領域(言語、処理速度、目と手の協調、実行機能、言語の記憶および学習、視覚に関する記憶力、および空間情報を整理し手動操作する能力[visuoconstruction])全てにおいてかなり成績が不良であった。地域とAPOEの条件で補正後の解析で、最も心理社会的ハザードを伴う地域に居住する者は他の参加者と比較し点数が低かったのは目と手の協調においてのみであった。APOEε4は実行機能低下および visuoconstructionの成績不良と関連があった。

 

心房細動を有する脳卒中既往者は認知症の発症リスクが高い [2011-03-22]

Stroke survivors with atrial fibrillation may have higher risk of developing dementia

心房細動を有する脳卒中既往者は心房細動を有さない脳卒中既往者と比較し、認知症の発症リスクが高いとNeurologyプリント版3月8日号に掲載された。心房細動患者の約15%が脳卒中を発症する。研究者らは、心房細動を有する者と有さない者を比較し時間経過とともに認知症を発症した者を確認したスタディのうち、入手可能なものを解析した。計15のスタディでは、平均年齢72歳の対象者46,637人を解析した。その結果、心房細動を有する脳卒中既往者は心房細動を有さない脳卒中既往者と比較し、認知症を発症する確率が2.4倍高かった。脳卒中と心房細動を有する患者の約25%が経過観察期間中に認知症を発症した。心房細動を有するが脳卒中の既往のない者において認知症のリスクが高いか否かは結論付けられていない、と筆者らは述べている。

 

心血管疾患患者において、共同ケアによりうつ、不安および情動的QOLが改善する [2011-03-15]

Depression, anxiety and emotional quality of life improves with collaborative care program for patients with cardiovascular disease

初めての病院主導低強度共同ケアプログラムによる心疾患患者のうつ治療は、6〜12週後の患者のうつ、不安症および情動的QOLを改善したと Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomesに掲載された。研究者らはうつ病を有する心疾患患者175人(ほとんどが白人、半分が女性)を“通常治療”(うつ治療に関する勧告)または、“共同ケア治療”(うつ病および心疾患に及ぼすその影響に関して書物または口頭による教育、退院後の楽しい余暇活動の計画、詳細な治療オプション[薬物またはカウンセリング]、退院後の経過観察の調整など)を受ける群に無作為に割り付けた。退院後6週間にうつ症状が半分以下になったと報告したのは、共同ケア群患者の方が通常ケア群患者の倍近く多かった(59.7%対33.7%)。12週後うつ病の奏効率でも、共同ケア群で51.5%であったのに対し通常ケア群では34.4%と、差が認められた。これらの効果は12週後に介入が終了すると低下し始め、最終的に研究者らと接触してから3ヵ月経過した6ヵ月後のフォローアップ電話時までには統計学的有意差は消失していた。

 

世界中の双極性スペクトラム障害の影響が実証され急速な治療促進の必要性が強調される [2011-03-15]

Researchers document the impact of bipolar spectrum disorder worldwide and underscore the urgent need for treatment facilitation

双極性スペクトラム障害(BSD)の有病率は国家間で差があるものの、重症度および関連疾患は同様であり必要な治療が特に低所得国においてしばしば不足していることがArchives of General Psychiatry 3月号に掲載された。研究者らは、World Health Organization World Mental Health Survey Initiativeにおいて横断的、対面的、世帯調査を行いBPSの有病率、症状の重症度、合併症のパターン、およびBPSのためのサービス利用のパターンを評価した。地域住民61,392人の調査を11ヵ国において施行した。一生涯における世界中の総有病率はBP-Iで0.6%、BP-IIで 0.4%、亜領域BPで1.4%であり、合計のBPS有病率は2.4%と推定された。うつ病を有する回答者の約74%およびそう病を有する回答者の 50.9%が重度の役割障害を訴えた。BPSを有する患者の4分の3が少なくとももう一つの障害も有していた。不安障害、特にパニック発作は最も一般的に合併する疾患であった。この調査の結果、BPSの必要とされる治療は、特に低所得諸国において不足していることが示された。筆者らは、今回の結果は世界中のBPの重大さおよび重大な影響を実証し、その認知および治療促進の必要性がさらに急務であることを強調するものである、と確信している。

 

脳生検の結果、アルツハイマー病と他の型の認知症がしばしば誤診されていることが示された [2011-03-08]

Brain biopsies show that Alzheimer's disease and other forms of dementia are often misdiagnosed

高齢者においてアルツハイマー病および他の認知症性疾患は誤診されやすいとの、死亡後脳解剖を受けたハワイの人々を対象としたスタディの早期結果が示された。この研究結果は事前に公表されたもので、4月に開催される第63回American Academy of Neurology学会プレナリーセッションで発表される予定である。研究者らは、平均年齢87歳で死亡した日系アメリカ人426人の脳の死亡解剖を行った。これらのうち211人が生前に認知症と診断されており、多くはアルツハイマー病が原因とされていた。このスタディの結果、アルツハイマー病と診断されていた患者の約半分がこの診断を支持する状態に特徴的な相当数の脳病変を有していなかった。アルツハイマー病と確定診断されなかった者のほとんどが認知症を説明するのに十分な脳病変を一つまたは組み合わせで有していた。この認知症に特徴的な脳病変とは微小梗塞、レヴィー小体、海馬硬化または全般性脳萎縮などであった。しかし、レヴィー小体型認知症や血管性認知症の診断の方が正確であった。誤診は年齢とともに増加した。これらの結果はまた、認知症の表れ方が非特異的であること、混合型病変が非常に高率であること、および多くの神経学的画像検査基準があいまいであることを反映している。

 

注意欠陥多動性障害の小児において中等度の睡眠不足は覚醒性および注意力持続を損なう [2011-03-08]

Moderate sleep loss impair vigilance and sustained attention in children with attention deficit hyperactivity disorder

SLEEP誌3月1日号に掲載された新たなスタディにより、注意欠陥多動性障害を有する小児の覚醒性や注意力を維持する能力は、夜間睡眠が1週間にわたり1時間未満の減少で有意に低下することが示された。このスタディは43人の子供を対象とし、11人はADHDを有し32人はコントロールであり、平均年齢は約9歳であった。ベースラインの睡眠を6夜モニターし、その後子供たちに通常より1時間遅く寝るように指示した。平均夜間睡眠が約55分少ない日が6夜継続した後に、ADHDの小児の神経行動検査は、オミッションエラーや反応時間などの6つの計測のうち4つにおいて、注意欠陥の潜在性範囲から臨床的範囲へと悪化した。ADHDを有する小児は一般的にコントロールと比較しオミッションエラーをより起こしやすかった。平均夜間睡眠時間が34分少ない日が6夜継続したところコントロール群の小児の検査成績も低下したが、6つの計測値いずれにおいても注意欠陥の臨床的レベルには到達しなかった。このスタディから、ADHDの小児においては、中等度の睡眠時間削減であっても神経行動学的機能に影響する可能性があり、それが学力に悪影響を及ぼす可能性があることが示唆された。

 

中年における高コレステロールおよび高血圧は早期認知機能障害および記憶障害と関連がある [2011-03-01]

High cholesterol and blood pressure in middle age associated with early cognitive and memory problems

高コレステロールや高血圧などの心血管系の問題を有する中年男女は心疾患のリスクが高いのみならず早期認知機能障害および記憶障害のリスクも高い可能性があるとのスタディ結果が、4月に開催される第63回American Academy of Neurologyで発表される予定である。このスタディにおいて男性3,486人および女性1,341人(平均年齢55歳)が認知機能検査を施行され、10年間の心血管イベントを予測するのに用いられるフラミンガムリスクスコア計測を受けた。心血管リスクが高い人は心疾患リスクが最も低い人と比較し、認知機能が低く全体的な認知機能低下速度が速かった。心血管リスクが10%高いと、男性においては論理的思考を、女性においては流暢性を除き全ての領域において認知機能検査スコアが低かった。例えば、心血管リスクが10%高いと男性においては記憶テストのスコアが2.8%低く、女性においては7.1%低かった。心血管リスクが高いと心血管リスクが低い者と比較し、全体的な認知機能低下速度が男女ともに10年速かった。

 

3つ以上の外国語を話すと記憶能力保護効果が認められる [2011-03-01]

Speaking more than two foreign languages has protective effect on memory

3ヵ国語以上の外国語を話す人々は記憶障害を発症するリスクが低い可能性があるとのスタディ結果が、4月に開催される第63回American Academy of Neurology学会で発表される。このスタディは平均年齢73歳、2〜7ヵ国語を話すあるいは話していた230人の男女を対象とした。参加者らのうち44人が認知機能障害を有すると報告した;その他の人々は認知機能障害を有していなかった。4ヵ国語以上を話す人々は2ヵ国語しか話さない人々と比較し、認知機能障害を有する確率が5倍低かった。さらに、現在3ヵ国語以上を話す人々は認知機能障害を有する確率がやはり4倍低かった。この結果は年齢および参加者の教育レベルを考慮に入れたものであった。この研究は3ヵ国語以上を話す人々の多いルクセンブルグで行われた。

 


 

DOLについて - 利用規約 -  会員規約 - 著作権 - サイトポリシー - 免責条項 - お問い合わせ
Copyright 2000-2025 by HESCO International, Ltd.