重度の難聴を有する高齢者はその程度が軽症の高齢者よりも認知症を発症しやすい [2011-02-22]

Elderly people with severe hearing loss more likely to develop dementia than those with less impairment

難聴を有する高齢者は認知症を発症しやすく、そのリスクは難聴がより重症になるほど上昇するとArchives of Neurology 2月号に報告された。研究者らは認知症を有さない36〜90歳の成人639人を調査した。スタディ開始時に125人が軽度(25〜40デシベル)、53人は中等度(41〜70デシベル)、6人は重度(70デシベル超)の難聴を有していた。経過観察期間中央値11.9年の間に58人が認知症と診断され、うち 37人はアルツハイマー病であった。認知症のリスクは、25デシベル以上の難聴を有する者において高く、軽症の難聴を有する者よりも中等度および重度の難聴を有する者においてより高かった。60歳以上の参加者においては3分の1以上(36.4%)の認知症リスクは難聴と関連があった。アルツハイマー病発症のリスクは特に難聴レベルとともに増加し、難聴が10デシベル進行するとリスクがさらに20%上昇した。自己申告による補聴器使用による認知症またはアルツハイマー病リスク軽減は認められなかった。

 

知的能力低下を有する人は脳卒中リスクが高い可能性がある [2011-02-22]

People with declines in mental abilities may be at increased risk for stroke

記憶障害または他の知的能力低下を有する人は脳卒中リスクが高い可能性があるとのスタディ結果が2011年4月に開催される第63回 American Academy of Neurology学会で報告される。計14,842人(脳卒中の既往のない45歳以上)が言語流暢度検査を、17,851人が単語記憶検査を受けた。スタディ期間中に言語流暢度検査を受けた者のうち123人および記憶力検査を受けた者のうち129人が脳卒中を発症した。言語流暢度検査でスコアが下位から 20%に位置した者は上位20%であった者と比べ3.6倍脳卒中を発症しやすかった。記憶力検査では下位20%の者は上位20%の者と比較し脳卒中を 3.5倍発症しやすかった。上位20%と下位20%との脳卒中発症率の差は3.3件/1,000人年であった。50歳の時点で記憶力検査のスコアが下位 20%であった者は上位20%の者と比較し、後に脳卒中を発症する確率が9.4倍高かった。

 

大麻使用者においては精神疾患が若年齢時に出現するようである [2011-02-15]

Psychotic illness appears to begin at younger age among those who use cannabis

大麻使用は精神疾患の発症を早めるようであるとの過去に公表されたスタディのメタ解析の結果がArchives of General Psychiatry 6月号オンライン版に掲載され印刷版にも掲載予定である。研究者らは大麻または他の薬物使用者計8,167人および使用歴のない者14,352人を組み入れた83のスタディを検出した。これらのスタディ全てにおいて二群間の精神疾患発症年齢が比較された。その結果、大麻使用者は使用歴のない者と比較し、精神疾患発症年齢が2.7歳若かった。薬物の種類に関係なく使用した者は2年早く精神疾患を発症したが、アルコールのみの使用は精神疾患発症年齢とは関係がなかった。大麻使用は統合失調症の要因であり、発症リスクの高い者において精神疾患を引き起こし、統合失調症症状を増悪させ、統合失調症を有する者がより大麻を使用する傾向にあるなど、大麻使用と統合失調症との関係を説明する仮説はこれまでに多く報告されている。今回の結果は、大麻使用は統合失調症および他の精神疾患を引き起こし、おそらく遺伝子および環境の障害との相互作用または脳の発達阻害によるものであるとの見解を支持するものである。

 

統合失調症に対する抗精神病薬は脳容積をわずかに減少させる [2011-02-15]

Antipsychotic medication for schizophrenia associated with subtle loss in brain volume

抗精神病薬を内服している統合失調症患者は少しではあるが時間とともに計測可能な量の脳組織を失っていくようであるとArchives of General Psychiatry 2月号に掲載された。研究者らは発症後すぐから神経画像検査を繰り返し施行された統合失調症患者211人を調査した。各々の患者は7.2年間に平均3回の磁気共鳴画像検査(MRI)を施行され、延べ674回の検査が行われた。筆者らはその後、経時的な脳容積変化に対する4つの予測因子(罹病期間、抗精神病薬治療、疾患重症度および薬物乱用)の相対寄与を評価した。長期間追跡された患者ほど脳容積はより減少した。他の3つの予測因子で補正した結果、抗精神病薬治療もまた脳組織減少との関連が認められた。抗精神病薬がより強力であることは脳組織減少の全体的な計測値と関連があり、より強力であると灰白質容積がより小さく白質容積がより進行性に減少した。他の2つの変量である疾患重症度と薬物乱用は、罹病期間および抗精神病薬治療の影響を考慮した場合には関連が非常に少ないかまたは全くなかった。

 

前立腺がん患者において術前ストレス管理は免疫能を上昇させ気分障害を軽減する [2011-02-08]

Pre-surgical stress management boosts immune function, lowers mood disturbance in prostate cancer patients

前立腺手術前にストレス管理を行うことにより体の免疫応答を活性化し、それにより回復速度が上昇する可能性があるとの新たなスタディの結果が Psychosomatic Medicine誌2/3月号に掲載された。このスタディにおいて前立腺全摘除術を予定されている早期前立腺がん患者159人を3つの群:ストレス管理群(SM)、支持的配慮群(SA)、標準治療群(SC)に無作為に割り付けた。各々の患者から術前1ヵ月および術後48時間に血液検体を収集した。患者の気分は手術の約1ヵ月前、約1週間前(介入後)および手術当日の朝に評価した。その結果、介入の有益性が示された。手術の2日後にSM群患者においては、 SA群患者よりもナチュラルキラー機能および循環炎症誘発サイトカインレベルが有意に高く、SC群患者よりもナチュラルキラー機能およびサイトカイン IL-1bレベルが高く、SA群およびSC群の患者においては低下または不変であった免疫系パラメーターが上昇していた。SM群患者においてはまた、気分障害が術前よりも軽減していたが、これは免疫に関する結果とは関連がなかった。

 

強力なコミュニティは健康にリスクとなる行動から貧困の青少年を守る [2011-02-08]

Having a strong community protects poor adolescents from risky health behaviors

貧困な環境で育った子供は成人同様に健康上の問題を有する。しかし、Psychological Scienceに掲載されたある新たなスタディの結果、社会凝集性およびコントロールの強いコミュニティに住む貧困な青少年はいくつかの予防策を得ている;彼らは青年期に喫煙をせず肥満にならない傾向にある。1990年代後半から追跡されている17歳の青少年集団およびその母親が社会資本に関する調査に回答し、コミュニティとどのように繋がっているかおよび社会的コントロールがどの程度存在するかについて調べた。青少年らは行動に関する調査にも回答し、身長および体重測定を受けた。貧窮化した家庭で育った青少年は、収入が中程度の家庭で育った青少年と比較し、喫煙とボディマスインデックス(BMI)が大きい傾向にあった。しかし、社会資本を多く有する貧困な青少年はいくぶんか保護されていた;彼らは豊かな社会資本を有さない貧困青少年よりも、喫煙をせず BMIが小さい傾向にあった。筆者らは、社会資本を多く有するコミュニティに住む青少年は良いロールモデルやメンターを有しているのであろうと推測している。または、より権限を有するコミュニティでは、他人の粗悪な行動をやめさせることを人々が気持よく感じており、若年者もまた個人的に無力と感じにくいのかもしれない。

認知症リスクを有する高齢者の栄養状態を評価する場合、栄養に関するバイオマーカーは食物摂取に関するアンケートよりも信頼できる [2011-02-01]

Nutrient biomarkers more reliable than food questionnaires when assessing nutrition of elderly at risk for dementia

アルツハイマー病が栄養学的アプローチにより遅延または予防できる可能性があるか否かを評価する研究が施行されているが、Alzheimer's Disease and Associated Disordersに掲載されたある新たなスタディにより、この試みは認知症リスクを有する高齢者の栄養状態を客観的に評価する栄養バイオマーカーを使用することにより改善されうることが示唆された。主に自己申告の摂食調査に頼る伝統的な方法は、人々に何を食べたかを思い出させる方法である。この調査法は高齢者における二つの一般的な問題−食べた物を思い出すことにおける記憶障害の影響、または栄養成分の吸収に影響する消化の問題−を考慮していない。今回のスタディにおいて科学者らは38人の高齢者を組み入れた。高齢者のうち半分は記憶障害と診断され、残りの半分の認知機能は正常であった。栄養バイオマーカーの信頼度を、1ヵ月に2回施行した食事に関するアンケートの結果と比較した。その結果、アンケートにより一部の栄養レベルは評価できたが、それは記憶力の良好な群においてのみであった。栄養バイオマーカーの信頼度は注目した栄養素によるが、全体的に良好な成績であった。筆者らは、将来的に栄養バイオマーカーに関する信頼度の高い血液検査を行うことは有効な栄養療法につながり認知機能の健康度を促進するであろうと考えている。

 

認知機能の訓練として用いる記憶力ドリルは会話より優れているわけではない [2011-02-01]

Memory drills no better than conversation when used as cognition exercise

The Cochrane Library最新号に掲載される新たなレビューにより、高齢者の記憶力改善において、記憶力ドリルおよび同様の脳活性化活動は単なる会話と比較し何も優れた点はないことが示唆された。60歳以上の成人の標準的な記憶力低下は一部の人々においては加速するようであり、軽度認知障害(一部の研究者らはその後の認知症発症のリスクファクターと考えている)へと繋がる。研究者らは1970〜2007年に施行された患者2,229人を対象とした36のスタディの認知トレーニングのエビデンスをレビューした。多くのスタディが、トレイナーまたは家庭教師が認知機能訓練を提供するグループセッションを行っていた。トレーニングセッションの合計時間は6〜135時間であり、トレーニングセッションが行われた期間は1日から2年間にわたった。あるスタディは、軽度認知障害を有する健康な高齢者はある記憶力トレーニング後に言葉の記憶が実際に改善したことを示した。しかし、記憶力トレーニングを受けた高齢者は、言葉のリストの反復練習の代わりに芸術などについてのディスカッションに参加した高齢者と比較し、何ら記憶力が改善することはなかった。

 


 

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