PETスキャンで転移性乳がんにおけるエストロゲン遮断薬の有効性が確認された [2011-08-30]
PET scans confirm effectiveness of estrogen-blocking drugs in metastatic breast cancer
エストロゲン含有アイソトープを用いた陽電子断層撮影(PET)の一連の検査により、がん細胞内のエストロゲン受容体遮断療法において、タモキシフェンやfulvestrantなどのエストロゲン受容体遮断薬の有効性がアロマターゼ阻害薬のようなエストロゲン枯渇療法よりも優れていることが確認された。研究者らは、乳がんが骨にまで拡がった一連の患者30人に対し、アロマターゼ阻害薬、タモキシフェンおよびfulvestrantによる治療前後に 18Fフルオロエストラジオール(FES)を用いたPETスキャンを用いて局所のエストロゲン受容体ブロックおよび結合の度合いを計測した。腫瘍のFES 取り込みは、エストロゲン枯渇アロマターゼ阻害薬を投与された患者よりもエストロゲン受容体阻害薬を投与された患者において著明に低下した(それぞれ平均低下率は54%と15%)。調査された2つのエストロゲン遮断薬のうち、完全腫瘍遮断率はfulvestrantよりもタモキシフェン使用後において高かった。この結果は予測されてはいたが研究者らは、これらの結果はこれまでに証明されたことがなかったことを特筆している。この研究結果は Clinical Cancer Researchオンライン版に掲載された。これらの結果は個別化治療や、薬剤開発過程を速めるためにも意味がある。
研究者らが卵巣がん早期発見に役立つ可能性のある悪性中皮腫抗体を発見した [2011-08-30]
Researchers discover mesothelin antibody that may help detect ovarian cancer in its earliest stages

非常に早期の卵巣がんのバイオマーカーを開発する新たなアプローチを用いて、研究者らは不妊女性の血流内のある分子を発見した。この分子は将来卵巣がんハイリスクの女性−または早期の卵巣がん患者のスクリーニングにさえ用いられる可能性がある。研究者らは不妊女性109人(28人は卵巣がん、24人は良性卵巣腫瘍またはのう胞、と診断され152人は健常女性)の血流中の悪性中皮腫抗体を検査した。不妊は子宮内膜症、排卵障害によるものおよび原因不明の不妊であった。卵巣がん患者に加え早期卵巣機能不全、排卵障害および原因不明の不妊の女性においても有意なレベルの悪性中皮腫抗体が認められたが、健康な女性または良性腫瘍の女性においては認められなかった。子宮内膜症は一般的に他の不妊症と異なった種類の卵巣がんと関連があり、そのため悪性中皮腫抗体がこれらの女性には認められなかった可能性がある。血流中の悪性中皮腫抗体がなぜ卵巣がんと関連するのかは明らかでない。このスタディ結果はCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionオンライン版に掲載される。

小児血管腫に対してはプロプラノロールの方が経口コルチコステロイドよりも治療成績が良好である [2011-08-23]
Propranolol associated with better outcomes than oral corticosteroids in treatment of infantile hemangiomas

小児血管腫(IHs)治療には、経口コルチコステロイドと比較しβ遮断薬であるプロプラノロールを使用した方が局所除去率が高く、有害事象は少なく治療後に外科的処置を必要とした症例も少なく、医療費は低かったとArchives of Dermatologyオンライン版に掲載された。研究者らは、IHを有し心疾患を有さない患者110人を評価し2群:IHが75%以上除去された患者(腫瘍容積が75%以上減少したことで定義)または腫瘍除去が75%未満の患者に分別した。プロプラノロール治療は平均で7.9ヵ月間持続し、経口コルチコステロイド治療では5.2ヵ月間であった。プロプラノロールを投与された患者68人のうち56人(82%)において腫瘍除去率が75%以上であり、経口コルチコステロイド投与患者42人におけるその割合は12人(29%)であった。有害事象が発現したのはプロプラノロール内服患者のうち3人およびコルチコステロイドを内服した患者全員であった。後に手術が必要となったのはプロプラノロール群患者のうち8人(12%)でありコルチコステロイド群患者では12人(29%)であった。患者あたりの平均医療費はプロプラノロール群とコルチコステロイド群でそれぞれ$205.32および$416.00であった。

新たな解析の結果によると喫煙による膀胱がんのリスクはこれまで報告されていたよりも高い [2011-08-23] 
New analysis indicates that risk of bladder cancer from smoking is greater than previously reported

JAMA 8月17日号に掲載されたあるスタディの結果、喫煙者における膀胱がんリスクは過去の住民データの報告よりも高く、喫煙女性のリスクは喫煙男性のそれと同等であることが報告された。研究者らはNational Institutes of Health-AARP(NIH-AARP)食事と健康に関するスタディの対象である男性(281,394人)および女性(186,134人)のデータを用いて、喫煙と膀胱がんの関係を調査した。喫煙と膀胱がん発生率に関する過去のスタディは入手可能な論文を系統立ててレビューし確認した。経過観察中に、男性3,896人および女性627人が新たに膀胱がんと診断された。喫煙は男女ともに膀胱がんの有意なリスクファクターであった。データ解析の結果、男女とも非喫煙者と比較し、元喫煙者は膀胱がんリスクが2.2倍高く、現喫煙者におけるリスクは4倍高かった。一方、7つの過去のスタディにおける現喫煙者の概算推定リスクは2.94であった。喫煙経験の人口寄与危険度は男性において50%、女性において52%であり、男女における膀胱がんの割合は同等であった。

施設が協力し、悪性疾患発症を促進する想定外の遺伝子変異を明らかにする [2011-08-09]
Centers collaborate to reveal unexpected genetic mutations that drive development of malignancies
ヒトの遺伝子と疾患との因果関係に注目した強力な新技術が、メラノーマまたは卵巣がんなどのある種の悪性疾患発症を促進する腫瘍DNAの変化を選抜し、がんの全容を明らかにするとの2つのスタディ結果がScience誌7月28日号オンライン版に掲載された。2つの研究チームは、いずれも彼らが調べた腫瘍の半分余りにp53遺伝子の変異を発見した。次に多く認められた変異はNOTCH1に発現し、腫瘍の約15%に認められた。通常NOTCH1は、腫瘍がどのように他の種の細胞に分化し、成熟し、分裂を中止し、最終的に死亡するかを調節している。頭頚部がんにおいてはNOTCH1のスイッチをオフし、分化を遮断し細胞を増殖する増殖性の前がん状態に追い込む変異が認められた。これらの細胞の成熟は停止し、細胞は喫煙や飲酒またはp53変異などの他の因子によってでさえもゲノムが不安定化させられうる早期段階にとどまる。白血病など他のがんではNOTCH1シグナル過剰ががんにつながるため、頭頚部がんにおけるNOTCH1の不活性化は驚くべきことである。これらの発見を治療に利用するにはさらにスタディが必要であるが、この新事実は将来への布石となる、と研究者らは述べている。
心血管疾患を有する男性に対する前立腺がん治療目的のホルモン療法は有害である可能性がある [2011-08-09]
Treating prostate cancer with hormone therapy may be hazardous for men with pre-existing cardiovascular disease

中等度および高リスク前立腺がん患者に対し放射線療法とホルモン療法の併用により全生存期間が改善することが無作為化臨床試験において明らかにされている。しかし、たとえ高リスク前立腺がんであっても心疾患を有する男性においては、ホルモン療法の併用により全生存期間が低下する可能性がある、とInternational Journal of Radiation Oncology・Biology・Physicsオンライン版にプリント版に先立ち掲載された。研究者らは、小線源療法―放射線療法を基本とした―で治療された前立腺がん患者14,594人を調査した。そのうちの1,378人(9.4%)がうっ血性心不全または心筋梗塞歴を有していた。これらの心疾患を有する男性のうち、22.6%が追加体外照射療法を受け、42.9%が体内のテストステロン(がんの成長を促す可能性がある)を減少させるため4ヵ月にわたりアンドロゲン除去療法を受けた。心疾患を有する男性全体においてはホルモン療法の併用により全死亡率が有意に上昇した。心疾患を有する高リスク前立腺がん患者においては、5年後までに、ホルモン療法を受けた男性の31.8%が死亡したのに対しホルモン療法を受けなかった男性におけるその割合は19.5%であった。

不顕性リンパ節転移の検索は早期乳がん患者の全生存期間と関係がない [2011-08-02]
Detection of occult metastases in lymph nodes not associated with overall survival in early-stage breast cancer
免疫組織化学的染色診断を用いて検出されたセンチネルリンパ節(SNL)転移は、乳房温存術を受ける早期乳がん患者の全生存期間と関連がないとのスタディ結果がJAMA 7月27日号に掲載された。このスタディは臨床的T1からT2N0M0浸潤性乳がんを有し乳房温存術およびSLN郭清術を施行された患者5,210人を対象とした。手術時の骨髄穿刺は初期には選択性であったが後に必須となった。5,119例(98.3%)のSLN生検の結果、3,904例(76.3%)はヘマトキシリンエオジン染色で転移陰性であり、349例(10.5%)は陽性であった。免疫細胞化学法で解析した骨髄生検3,413例のうち104例(3.0%)が転移陽性であった。経過観察期間中央値6.3年間に435人が死亡し、376人において再発が認められた。SNLがヘマトキシリンエオジン染色で陰性であった患者において、免疫組織化学法で不顕性転移が認められることと死亡または転移は関係がないことが示された。また、不顕性骨髄転移を有する場合には臨床病理学的因子を考慮しない場合のみ全生存期間が低下することも明らかにされた。
メタボリックシンドロームは主要な2つの原発性肝がんのリスクを上昇させる [2011-08-02]
Metabolic syndrome increases risk of both major types of primary liver cancer

Hepatology誌8月号に掲載された地域住民を対象としたスタディの結果、メタボリックシンドロームは肝細胞がん(HCC)および肝内胆管がん(ICC)両者の発症リスクを有意に上昇させることが示された。HCCの主要なリスクファクターはB型およびC型肝炎ウイルスによる慢性感染およびアルコール過剰摂取である。ICCは原発性硬化性胆管炎および炎症性腸疾患と関連がある。しかし、HCCおよびICCの最大半数の原因はいまだ不明である。SEERメディケアデータベースを用いて、研究者らは1993〜2005年にHCCまたはICCと診断された患者を同定した。HCC計3649例、ICC743例、およびがんを有さない195,953例が同定されスタディ組み入れ条件に合致した。その結果、メタボリックシンドロームを有していたのは後にHCCを発症した者のうち37%であり、ICCを発症した者のうち30%であった。一方いずれのがんも発症しなかった者におけるその割合は17%であった。解析の結果、メタボリックシンドロームによりHCCおよびICCのリスクは有意に上昇した(それぞれオッズ比2.13、1.56)。メタボリックシンドロームの各因子−空腹時血糖値の異常、脂質異常症、肥満および高血圧−はHCCまたはICCを発症した患者において発症しなかった患者と比較しより多く認められた。

 
 


 

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