トラスツズマブと化学療法の併用によりHER-2陽性乳がん脳転移患者の生存率が改善する [2011-07-26]
Trastuzumab and chemotherapy improved survival in HER2-positive breast and brain cancer patients

HER-2陽性転移性乳がん患者に対する手術および化学療法とトラスツズマブの併用により、中枢神経系転移診断後の生存期間が有意に改善したとのスタディ結果がClinical Cancer Researchに掲載された。研究者らはregistHERスタディのデータを用いてHER-2陽性乳がん患者の発症率、リスクファクターの可能性のあるものおよび予後を評価した。HER-2陽性乳がん患者の脳転移の発症の仕方を評価し、その後何が起こるかを調査するために追跡した。HER-2陽性転移性乳がんと診断された女性1,023人中377人が中枢神経系の転移を有していた。中枢神経系転移を有する患者は、がんが脳まで拡がっていない患者と比較し、若年でホルモン受容体陰性であり重症である傾向にあった。さらに、初回診断時に中枢神経系転移と診断されなかった患者においては、がんの脳への進行は診断から13か月後に認められた。中枢神経系転移と診断された者に対し、トラスツズマブ、化学療法または手術による治療はそれぞれ全生存期間を有意に改善した(トラスツズマブ17.5か月対トラスツズマブ不使用3.8か月;化学療法16.4か月対化学療法不使用3.7か月;手術20.3か月対手術施行せず11.3か月)。

食道がんリスクは症状が少なく薬物治療を受けているGERD患者で高い [2011-07-26]
Esophageal cancer risk higher in medically treated GERD patients with fewest symptoms

軽度症状または無症状の胃食道逆流症(GERD)に対し薬物治療を受けている患者は症状が重度の患者よりも食道がん発症リスクが高い、とのスタディ結果がArchives of Surgeryに掲載された。このスタディには初回の上部消化管内視鏡検査のために来院したGERD患者769人を組み入れた。参加者は3つのグループ:症状に関係なく何らかの臨床上の適応により上部消化管内視鏡検査を勧められた患者;胸焼け、逆流および嚥下困難などの典型的なGERD症状を有する患者;嗄声、咳払い、粘液、咳や喉の異物感などの非典型的なGERD症状を有する患者、に分けられた。スタディ参加者全員が上部消化管内視鏡検査を受けアンケートおよび詳細な内服歴聴取に回答した。内視鏡検査の結果122人の患者、つまり15.9%がBarrett食道または腺がんを有していた。プロトンポンプ阻害薬(PPIs)で適切に管理されている患者では、GERD症状の訴えがあまりない場合、症状が重度でPPIsを内服していた患者と比較し、バレット食道を有する確率が61%高かった。重度のGERD症状を有する患者は食道のイガイガ感や腫脹をしばしば有するが食道がんを有する確率は低かった。

マンモグラフィーの頻度は乳房密度やその人にとっての有用性などの因子を考慮して決定されるべきである [2011-07-19]
Factors such as breast density and women's values should be considered when deciding frequency of mammograms

マンモグラフィーは全ての人に共通の頻度に基づくのではなく、女性の年齢、乳房密度、乳がん家族歴およびその女性にとっての有用性などの他の因子に基づいて個々に合わせてなされるべきであるとのスタディの結果がAnnals of Internal Medicine 7月5日号に掲載された。研究者らは、マンモグラフィーの頻度を毎年、2年毎、3〜4年毎、または全く行わない場合の生涯の医療費と健康に対する有益性を比較するモデルを開発した。解析の結果、第一度近親者に乳がん歴を有する者または乳房生検歴を有する者は40歳時に初回のマンモグラフィーによるスクリーニングを受けるべきであることが示された。40〜49歳の高乳房密度で第一度近親者に乳がん歴を有する者または過去に乳房生検を受けた者がマンモグラフィーを2年毎に受ける場合の有益性対有害性は、平均的リスクのある50歳代女性がスクリーニングを受ける場合と同等であった。リスクファクターを有さない40〜49歳の女性が、50歳でマンモグラフィースクリーニングを開始するのは妥当である。乳房密度や他のリスクファクターに関係なく、毎年のマンモグラフィーは2年毎の場合と比較し費用対効果はなく健康上の有益性はほとんど得られなかった。

網膜芽細胞腫に対する動注化学療法後、様々な反応や眼合併症が認められた [2011-07-19]
Variable response and ocular complications found after use of intra-arterial chemotherapy for retinoblastoma

網膜芽細胞腫に対する動注化学療法(IAC)後に摘出された8つの眼球を調査したあるスタディの結果、治療に対する腫瘍の反応は様々であったのみならず眼合併症の所見が認められたとの報告がArchives of Ophthalmologyオンライン版に掲載された。この論文の背景によると、IACは眼動脈経由で化学療法剤を直接眼球およびその周囲組織に投与する、新たなしかしやや議論のある網膜芽細胞腫に対する治療法である。研究者らは、IACによる治療を行ったが後に摘出された眼球8つについて調査した。眼球摘出は腫瘍が治療に反応しなかったか、またはある種の緑内障が発症するなどの他の医学的な問題が原因で施行された。眼科病理医による検討の結果、治療に対する反応は軽度(1つ)、中等度(1つ)、広範(4つ)および完全な退縮(2つ)の範囲にわたった。しかし、多くの眼球において虚血や網膜萎縮、血管内血栓や血栓内異物などの合併症が認められた。研究者らは、網膜芽細胞腫に対するIACは注意しながら使用すべきと述べている。

天然植物化合物が細胞接着を妨げることにより血管新生を阻害する [2011-07-12]
Natural plant compound blocks vessel growth by interfering with cellular adhesion

全く新種の抗血管新生薬が初めて開発されたとProceedings of the National Academy of Sciences/Early Edition版に掲載された。VEGF経路と異なる方法で血管新生を阻害する薬物の研究において研究者らは、血管を外側の血管壁へ並ばせる内皮細胞接着に関係するパスウエイに着目した。新たな2段階の戦略を用いて研究チームは50000の化合物をスクリーニングし細胞接着に影響する化合物を探し出し、この化合物の毒性、および細胞構造に必須の蛋白アクチンに対する影響を解析した。この過程において発見された2つの化合物のうちの1つはdehydro-alpha-lapachone(DAL)であり、アルゼンチンやブラジルの天然植物であるタベブイアから抽出された。ヒトの臍帯血管から得た内皮細胞を用いた研究の結果、DAL投与により、アクチン細胞骨格構成が変化することにより細胞のサイズおよび形が変化し、新たな血管ネットワーク形成が阻害され既存のネットワークが再構築され、創傷治癒に必要な細胞の移動が妨げられることが明らかにされた。さらなる研究によりDALは細胞接着および細胞骨格形成に必要なことで知られる蛋白Rac1の活性を低下させることによりこれらの効果を生み出すことが示された。

低線量ヘリカルCTスキャンにより胸部X線と比較し肺がん死が20%減少する [2011-07-12]
Screening with low-dose spiral CT scanning reduces lung cancer deaths by 20 percent compared to chest x-ray

現喫煙者または大量喫煙者に対する低線量ヘリカルCTを用いたスクリーニングは、胸部X線撮影によるスクリーニングと比較し肺がん死が有意に減少したとのスタディ結果がNew England Journal of Medicine 6月29日号に掲載された。米国肺スクリーニングトライアル(National Lung Screening Trial)では、肺がん発症リスクの高い男女53,454人(55〜74歳)を組み入れた。参加者は年間30箱以上の現喫煙者または喫煙経験者で、無症状であるかまたは肺がん歴を有さないことが必要であった。彼らは、年1回の低線量ヘリカルCTまたは標準的な胸部X線撮影を3回施行される群に無作為に割り付けられた。その結果、低線量ヘリカルCTでスクリーニングされた現喫煙者または大量喫煙者は、胸部X線撮影でスクリーニングされた者よりも肺がん死が20%少なかった。偽陽性がCTスキャン全体の24%に認められたが、フォローアップの結果、スクリーニング検査および下流の診断検査による合併症率は低かった。筆者らは、この結果は非常に有望で将来的にはスクリーニングガイドラインを再作成すべきであるとする一方で、CTスクリーニング検査が禁煙に取って代わるものではないことを強調している。

しばしば食道がんの前駆病変であるBarrett食道は遺残胚細胞から生じる [2011-07-05]
Barrett's esophagus, often a precursor to esophageal cancer, results from residual, embryonic cells

Barrett食道は一般的に考えられているように変異細胞から発生するのではなく、成人全てに存在し過去には見逃されてきた、正常食道が酸により傷害を受けるとがん前駆細胞へと急速に発展する小細胞集団から生じることがCell 6月24日号において報告された。研究者らはg63遺伝子を欠失し酸逆流症状を模倣したあるマウスの変異を調査した。その結果、食道全体が、遺伝子発現レベルでのヒトBarrett細胞にほぼ厳密にマッチしていることが証明されたBarrett様組織で覆われていた。研究者らは、このマウスにおけるBarrett食道の発現シアスピードに特に驚いた。彼らは、胃食道結合部分(過去には内視鏡医がBarrett食道の発現部位ではないかと議論した部位)に割りこんだ遺残胚細胞の前がん腫瘍への成長を追跡した。マウスのスタディで予測されたように、研究者らは全ての健康な成人においてちょうど食道と胃の結合部位に胚細胞群を確認した。このまれなメカニズムが起源の明らかでない他の致死的ながんのサブセットに適用できると信じるのには理由があると研究者らは述べている。

遺伝性大腸がん症候群が口腔内異常血管新生により検出された [2011-07-05]
Hereditary colon cancer syndrome marked by abnormal vessel growth in mouth

Familial Cancer 6月号に掲載された報告によると、遺伝性大腸がん症候群(家族性大腸ポリポーシス[FAP])は口腔に裏打ちされた皮膚の異常な血管密度と関連があることが結論付けられた。この結果から、通常は高価なDNA検査および大腸内視鏡により診断され、また時に大腸がんになってから気付くこともあるFAPの迅速なスクリーニングが導き出される可能性がある。口腔と裏打ちされた皮膚の血管密度を直接そして比較的機械的に計測できるカメラ様装置を用いて研究者らは、FAP患者33人の下口唇内側の口腔粘膜の2cm2のパッチ、および年齢と他の可変因子はマッチするが大腸がんまたは腺腫の既往歴や家族歴を有さないコントロール50人の同様の組織をスキャンした。各々の対象者が下口唇の可視血管密度測定(彼らが「口腔粘膜血管密度(OMVD)」と名付けた)のスクリーニングを受けた。FAP患者の約90%においてOMVD値がある閾値を超えており、コントロール群の約90%においてその閾値未満であった。OMVDの結果の差は年齢や性別とは関連がなかった。

 
 


 

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