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男性がん既往者において先駆的な精子採取術により受精し家族をもつことが可能となる
[2011-03-29] |
Male
cancer survivors find path to fertility and are able to have families following
pioneering sperm extraction surgery |
過去のがん治療のため一旦は不妊と考えられた男性が顕微鏡下精巣内精子採取法(TESE)により父親になることができたとJournal of Clinical
Oncology 3月14日号に掲載された。TESEの後には即座に卵子内への顕微授精(ICSI)が行われ受精させる。このスタディの対象者である73人の男性は、リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、白血病、精巣(胚細胞)がんおよび肉腫などの様々ながんに対し化学療法を受けていた。37%(73人中27人)において精子採取に成功した。これらの患者の顕微受精された卵子当りの受精率は57%(卵子347個中198)であった。受精卵を移植された女性の半数が妊娠し、生児出生率は42%(双子5組を含む健常児20人の出産15件)であった。精子採取率は、精巣がんの治療を受けた患者において精巣が1
つしかないにもかかわらず最も高かった(85%)。リンパ腫患者の精子採取率は26〜36%であり、肉腫患者における採取率が最も低かった。これらの男性に生まれた子供に奇形は認められなかった。
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アルコール多飲は膵がんによる死亡リスクを上昇させる [2011-03-29] |
Heavy
alcohol consumption associated with increased risk of death from pancreatic cancer |
アルコール多飲、特に1日3〜4杯の蒸留酒摂取は膵がんによる死亡のリスクを上昇させるとArchives of Internal Medicine 3月14日号に掲載された。がん予防スタディIIのデータを用いて研究者らは、飲酒と膵がんとの関連を調査した。100万人の参加者(30歳以上)のうち
6,847人が膵がんのために死亡した。男性のみおよび男女を合わせた解析の結果、1日3杯の飲酒および4杯以上の飲酒により膵がんによる死亡リスクが統計学的に有意に増加することが示された一方、女性においては膵がんによる死亡の推定リスクは1日4杯以上の飲酒においてのみ統計学的に有意に上昇した。非飲酒者と比較し、蒸留酒を1日3杯以上摂取するとスタディ対象者全体において膵がん死リスクが上昇し、2杯以上の摂取では喫煙者および一度も喫煙したことのない者いずれにおいてもリスクは上昇した。この関連性は蒸留酒摂取において認められたが、ビールやワインでは認められなかった。
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同側浸潤性乳がんを発症するDCIS女性の死亡率 [2011-03-22]
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Mortality
in women with DCIS whose disease develops into invasive ipsilateral breast cancer |
非浸潤性乳管がん−DCIS−の後に同側乳房に浸潤性乳がんを発症した女性はこのがんを発症しなかった女性と比較し乳がんで死亡するリスクが高いとのスタディ結果がJournal
of the National Cancer Institute 3月11日号に掲載された。研究者らは2つの大規模無作為化トライアルに参加した局所DCIS患者の15年間の予後を観察した。この2つのトライアルは両者ともNational
Surgical Adjuvant Breast and Bowel Projectにより施行された。その結果、浸潤性同側乳がんが発症した者はこれを発症しなかった者と比較し、死亡率が統計学的に有意に高かった。
DCISの再発は死亡率上昇とは関連がなかった。乳腺腫瘍摘出術後の放射線治療は乳腺腫瘍摘出術単独よりも同側の浸潤性乳がんリスクを軽減し、放射線療法およびタモキシフェンを用いた治療は放射線療法単独よりもリスクを軽減した。リスク軽減は統計学的に有意であった。トライアルに参加した患者全員において
15年間の累積乳がん死亡率は全ての治療群において4.7%未満であった。これらのイベントの一部は反対側の新たな浸潤性乳がんによるものの可能性があった。
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アンドロゲン除去療法中の前立腺がん患者の70%が初年度に有意な体重増加を来す [2011-03-22] |
70%
of prostate cancer patients on androgen-deprivation therapy gain significant weight
in first year |
前立腺摘除術後のアンドロゲン除去療法(ADT)を受けた患者の70%が初年度に有意な体重増加をきたしやすいとBritish Journal of Urology
International 3月号に掲載された。研究者らは1988〜2009年に前立腺全摘除術を施行された男性132人(平均年齢66歳)の体重記録を調査した。体重はADT療法開始前平均33日および後363日に計測された。70%の男性が体重増加を来し、26%は減少、4%は不変であった。体重が増加した男性の平均増加量は
4.2kgであり、減少した男性の平均減少量は2.4kgであった。132人全員の平均をとると、体重が2.2kgつまり2.4%増加していた。体重増加が最も有意なのはADT療法開始初年度であった。全員の体重増加は初年度で平均2.1kgであり、翌年は体重に変化はなかった。体重が増加した者と減少した者とで、人口統計学的、臨床的または疾患的な違いは認められなかった。
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乳がん既往者は化学療法後に転倒リスクが高まる [2011-03-15] |
Breast
cancer survivors at higher risk of falling following chemotherapy |
乳がんの既往を有する女性は対照と比較し、転倒しやすく骨折のリスクが高いとのスタディ結果がArchives of Physical Medicine and
Rehabilitation 4月号に掲載予定である。研究者らは閉経後乳がん既往者に前年に転倒したか否かを質問し、その後半年間のスタディ期間中に転倒の有無を追跡調査した。その結果、乳がん既往者の58%が前年に転倒し、ほぼ半数(47%)がスタディ参加後6ヵ月以内に転倒した。この割合は地域の65歳以上の高齢者が報告した年間転倒率25〜30%の2倍近かった。研究者らはスタディ参加者のうち59人において、転倒と関連があることで知られる包括的な一連の神経筋および平衡に関する特徴を計測した。その結果、転倒した乳がん既往者を転倒しなかった者と鑑別できたのは平衡感覚のみであった。このスタディの結果から、この平衡感覚の障害は化学療法に関連した前庭器官の変化による可能性があることも示唆された。
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ビタミンDを阻害する酵素レベルが高いことから肺がん生存率が予測される [2011-03-15] |
High
levels of the enzyme that blocks vitamin D can predict lung cancer survival |
最近の研究結果からビタミンDが、がんを阻止または予防する可能性があることが示された。今回、新たなスタディによりビタミンD代謝に関わる酵素により、肺がん生存率が予測できることが示された。正常な肺組織と比較し肺腺がんにおいてCYP24A1と呼ばれる酵素レベルが50倍も上昇していた。
CYP24A1レベルが高いほど腫瘍の進行が速い確率が高い。肺がん患者の約3分の1においてこの酵素レベルが上昇していた。この酵素レベルの上昇していた患者は低レベルの患者と比較し、5年後の生存率が半分近かった。そこでこの結果を研究者らはCYP24A1の活性型ビタミンDカルシトリオールとの相互作用の仕方に関連付けた。CYP24A1は、これが抑制されていれば正常かつ重要な役割を果たすカルシトリオールを分解する。しかしCYP24A1レベルが上昇すると、この酵素はビタミンDの好ましい抗がん作用を阻害し始める。研究者らはビタミンDを用いることで肺がんの術後再発および転移を予防するのに役立つのを観察し、CYP24A1を遮断する薬剤を同定しようと研究している。このスタディはClinical
Cancer Researchに掲載される予定である。
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出産回数が増加するほど トリプルネガティブ乳がんのリスクは上昇する [2011-03-08] |
The
more times a women gives birth, the higher her risk of triple-negative breast
cancer |
満期での出産は乳がんリスクを軽減するとされてきたが、the Journal of the National Cancer Institute 3月16日号に掲載された新たなスタディによると出産回数が多いほど、比較的まれであるが特に進行の速い"トリプルネガティブ"乳がんのリスクが上昇することが示された。逆に出産経験のない女性は、他の型の乳がんよりも予後不良でタモキシフェンなどのホルモン遮断療法の無効なこの型の乳がんのリスクが
40%低い。これらの結果はJournal of the National Cancer Institute 3月16日号に先立ちオンライン版で掲載されている。Women's
Health Initiativeのデータに基づいたこのスタディにおいて、研究者らは閉経後女性約150,000人の妊娠出産歴を解析した。これらの女性のうち
300人以上がトリプルネガティブ乳がんを発症した。筆者らは、出産した女性においてトリプルネガティブ乳がんのリスクが高いのは、妊娠ホルモンに対する乳房組織の異常反応または乳がん全体のリスクが低下する一方で妊娠により乳房がある種の発がん物質に対する感受性が増加するのであろうと考えている。
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SA速度は前立腺がんの予測因子としては不十分であり不必要な生検を増加させる [2011-03-08] |
PSA
velocity shown to be poor predictor of prostate cancer and leads to many unnecessary
biopsies |
PSA速度は前立腺がんの予測因子としては不十分であり不必要な生検を増加させる可能性があるとのスタディ結果がJournal of the National
Cancer Institute 2月24日号に掲載された。このスタディでは前立腺がん予防トライアル(Prostate Cancer Prevention
Trial)の参加者を対象として、前立腺がんの診断歴がなく、DRE正常でベースラインのPSAが3.0 ng/mL以下の55歳以上の男性5,519人をfinasteride(良性前立腺肥大に使用される薬剤)またはプラセボを7年間投与する群に無作為に割り付けた。参加者は毎年1回のPSA検査を施行され、PSAが4.0
ng/mLを超えた場合に生検を推奨された。7年後に前立腺がんと診断されなかった男性全員がスタディ終了時の生検に同意するよう依頼された。年齢、人種、およびPSAレベルなどのリスクファクターで補正した結果、PSA速度と生検結果には重要な関連性は認められなかった。PSA速度よりもPSA値単独の方が生検結果の指標としては良好であった。筆者らは、PSA速度の速い男性に対しては他の適応がなくとも生検を施行すべきであるとの勧告を支持するエビデンスはないと述べている。
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骨粗鬆症予防のためのビスホスホネート使用が新種のがん予防となりうることが示された [2011-03-01]
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Use
of bisphosphonates to prevent osteoporosis seen as possible new class for cancer
prevention |
ある国際チームの研究者らにより、ビスホスホネート(骨粗鬆症予防のために既に何百万人もの健康女性に内服されている)を1年以上使用することにより閉経後大腸がんリスクが50%軽減することが示された。この結果はJournal
of Clinical Oncologyに掲載された。研究者らは、北イスラエルで行われた地域住民を対象としたケースコントロールスタディである大腸がん分子疫学(Molecular
Epidemiology of Colorectal Cancer :MECC)スタディのデータを抽出した。薬局の記録を用いて、彼らは閉経後女性参加者1,866人のビスホスホネート使用状況を評価した。大腸がんと診断される前のビスホスホネート使用は、家族歴、食事内容、運動、ボディマスインデックス、およびアスピリンやスタチン、ホルモン補充療法などの他の薬剤使用などの様々な既知の予防因子で補正しても、大腸がん相対リスクの有意な減少と強力に関連があった。これらの結果は新種のがん予防薬としてのビスホスホネートの役割を支持するものである。
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手術支援ロボットによる前立腺がん手術には経験を積んだ専門家が必要である [2011-03-01] |
Proficiency
in robotic-assisted prostate surgery requires experienced specialists |
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(RALP)の外科的ランニングカーブを調査したあるスタディにおいて、3,800例近くのレトロスペクティブ解析の結果、外科医がRALP手術の熟練者になり常に明らかなマージンをとって前立腺がんを摘出するには1,600件以上の経験が必要であることが示された。RALPは典型的な腹腔鏡下手術と比較し、いくつかの利点を有する比較的新しい技術である。RALPは外科医に3Dの視界、高い倍率画像、手ぶれに対するフィルター、さらに人の手首と同様の広範な動きを提供する。研究者らは、ペンシルバニア大学、カロリンスカ研究所、およびコーネル大学の3人の外科医が6年間に手術を行った患者3,794人の手術結果を解析した。そして、50症例ごとに各々の外科医の全体の平均ポジティブサージカルマージン(PSM)率および手術時間を算出した。その結果、全ての患者のPSM率は外科医の経験とともに改善し続けていた。これらの外科医の標準的な目標と考えられるPSM率10%未満を達成するには1,600症例以上必要であった。
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