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大規模スクリーニングスタディの結果、PSAスコア3.0ng/mlが生検のカットオフレベルとして適正であることが示された [2011-02-22]
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Large
screening study shows PSA score of 30 ng/ml is appropriate cut-off level for biopsy
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中年および高齢男性の再受診を含めた大規模前立腺がんスクリーニングスタディの結果、生検の必要性を決定するには初回前立腺特異抗原(PSA)スコア3.0ng/mlが最小カットオフレベルとして最適であることが示された。初回PSAレベルが3.0ng/ml未満の男性で前立腺がんを発症しそれにより死亡した男性は少なかった。研究者らは55〜74歳の男性42,376人における前立腺がん発生率および死亡率を解析した。生検はPSAスコアが
3.0ng/ml以上の場合に推奨し、スクリーニング間隔は4年間であった。その結果、前立腺生検を推奨された男性19,950人中15,758人(79%)は初回PSAレベルが3.0ng/ml未満であった。これらの男性のうち915人が経過観察期間中央値11年の間に前立腺がんと診断され死亡したのは23人のみであった。診断された915人中182人は定期スクリーニングまでの間に発見され(しばしば進行が速いことを示す)、全体で169人(1.1%)が進行の速い前立腺がんと診断された。研究者らはまた、これらの低リスクの男性の中でも、初回PSAが高いほど前立腺がん発症リスクが高くより進行が速く、前立腺がんで死亡するリスクが高いことも示した。この研究はASCO第4回泌尿生殖器がんシンポジウムで発表された。
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REDEEM study:Dutasterideは早期前立腺がん男性のがん進行を遅延させるようである [2011-02-22] |
REDEEM
study: Dutasteride appears to slow time to cancer progression among men with early-stage
prostate cancer |
ある新たなスタディの結果、前立腺肥大の治療に一般的に使用される薬剤dutasterideが早期前立腺がんの進行を遅延させる可能性もあることが、疾患の「監視療法(active
surveillance)」に参加した男性において認められたとASCO第4回泌尿生殖器がんシンポジウムで発表された。 REDEEM(Reduction by
Dutasteride of Clinical Progression Events in Expectant Management of Prostate
Cancer:前立腺がんの経過観察におけるdutasterideを用いた臨床進行イベント軽減)スタディにおいて、早期前立腺がん男性302人を dutasterideまたはプラセボを3年間投与する群に無作為に割り付けた。Dutasterideを内服した患者はプラセボ内服群と比較し、がん進行までの時間が長かった。何らかのがん進行所見を認めたのは、dutasteride群においては54人(38%)であったのに比べプラセボ群では71人(49%)であり、dutasteride群において38.9%の相対リスク軽減が認められた。また、dutasterideを内服している患者は再生検においてがんが発見される確率が低いことも示された。最終の生検でがんが認められなかったのはdutasteride群患者のうち50人(36%)であり、プラセボ群患者の31人(23%)であった。さらに、標準テストに基づくとdutasteride投与群患者は前立腺がん関連不安のレベルが低かった。
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睡眠が不十分であると大腸癌リスクが上昇する [2011-02-15] |
Inadequate
sleep associated with higher risk for colorectal adenomas |
睡眠が不十分であると肥満、心疾患、糖尿病、および死亡のリスクが上昇することがこれまでに示されてきた。今回さらに大腸がんがこのリストに加わる可能性がある。Cancer
2011年2月15日号に掲載されたスタディによると、夜間睡眠時間が平均6時間未満の人は、夜間睡眠が平均7時間以上の人と比較し、大腸腺腫のリスクがほぼ50%高いことが報告された。予定された大腸内視鏡検査を受けるために来院する前に患者に電話で調査を行った。患者にはPittsburg
Sleep Quality Index(PSQI)の質問に加え、人口統計学的情報に関しても尋ねた。PSQIには睡眠障害の頻度や睡眠時間に関する質問も含まれた。1,240人中
338人が大腸内視鏡検査で大腸腺腫と診断された。腺腫を有する患者は有さない患者と比較し、概して睡眠時間が6時間未満と報告し、睡眠時間と腺腫との関係は家族歴、喫煙およびウエスト−ヒップ比で補正した後も依然として認められた。
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神経芽腫細胞は特にCHK1阻害に感受性が高いことが明らかにされた [2011-02-15] |
Neuroblastoma
cells found to be particularly sensitive to CHK1 inhibition |
腫瘍細胞のDNAが産生する数百の蛋白を解析した結果、しばしば致死的な小児癌である神経芽腫の新たな治療の中心となり得るひとつの蛋白が発見されたとのスタディ結果がProceedings
of the National Academy of Sciences 2月2日号オンライン版に掲載された。研究者らは神経芽腫細胞のDNAによりエンコードされた数百のプロテイン
キナーゼを包括的にスクリーニングした。彼らはRNA干渉を用いて神経芽腫細胞により産生される500以上のキナーゼの各々の作用を阻害した。各キナーゼを系統的に検査し、研究者らは、枯渇すると神経芽腫細胞が死滅する30のキナーゼを同定した。これらのキナーゼのうち、cell
checkpoint kinase 1(CHK1)は最強の効果を有していた。このキナーゼのシグナルが、神経芽腫において活性化されているMYC および MCYN発癌遺伝子により引き起こされるDNAに対するストレスに耐えさせることにより神経芽腫の成長を促しているようである。RNA干渉または小分子阻害薬によりCHK1活性を遮断すると神経芽腫細胞を死滅させることができる。このスタディから神経芽腫細胞は他剤との併用はせずCHK1を阻害することのみに特異的に感受性が高いことが示唆された。
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閉経とホルモン療法開始までの間隔が乳がんリスクに実質的な影響を及ぼす [2011-02-08] |
Interval
between menopause and starting hormonal therapy has substantial effect on breast
cancer risk |
閉経時期にホルモン療法を開始すると、閉経後間隔をあけて開始した場合と比較し乳がんリスクが大きいとJournal of the National Cancer
Institute 1月28日号に掲載された。ホルモン療法、特にエストロゲン単独療法に対しエストロゲン−プロゲスチン併用療法を受けた女性において乳がん発生率が上昇することは多くのスタディが立証している。しかし、ホルモン療法のタイミングをリスクファクターとして調べたスタディは少ない。この疑問を調査するために、研究者らは英国におけるMillion
Women Study(MWS)のデータを用いた。彼らはホルモン療法中および過去にホルモン療法を受けた女性と非使用者113万人の乳がん補正後相対リスクを評価した。その結果、閉経とホルモン療法開始時期との間隔が乳がんリスクに実質的な影響を及ぼすことが示された:ホルモン療法を閉経後5年以上経過してから開始した女性においては、ホルモン療法のタイプ、ホルモン療法の期間、過剰体重や肥満の有無に関わらずリスク上昇が少ないかまたは認められなかった。
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更年期のホットフラッシュは浸潤性乳管がんおよび小葉がんリスク低下と有意に関連がある [2011-02-08] |
Menopausal
hot flashes linked to significant reduction in risk for invasive ductal and lobular
breast cancer |
ホットフラッシュや他の更年期障害症状を経験した女性は、そのような症状を経験したことがない女性と比較し、最も一般的なタイプの乳がん発現のリスクが50%低い可能性があるとのスタディ結果が、Cancer
Epidemiology Biomarkers and Prevention 2月号の印刷版に先立ちオンラインで掲載された。研究者らはシアトル地域の閉経後女性1,437人にインタビューを行った。うち988人は過去に乳がんと診断され、診断されたことのない449人は比較群とされた。女性達は、ホットフラッシュ、寝汗や不眠から膣乾燥、生理周期の乱れや過多月経、うつや不安症に至るまでの更年期障害症状に関して調査を受けた。その結果、ホットフラッシュや他の症状を経験した女性において、最も一般的な2種類のタイプの乳がんである浸潤性乳管がんおよび浸潤性小葉がんが40〜60%低いことが示された。これらの症状とがんリスク低下との関係は、肥満やホルモン補充療法使用などの乳がんリスクを上昇させる他の因子を考慮しても変化しなかった。
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エストロゲンレベルは肺がん患者の予後に影響することが示された [2011-02-01]
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Estrogen
levels shown to play role in prognosis for patients with lung cancer |
ある新たなスタディにより抗エストロゲン乳がん治療薬タモキシフェンが肺がんによる死亡リスクを低下させる可能性のあることが示されたと Cancer早期オンライン版に掲載された。研究者らは、抗エストロゲン療法による治療を受けた乳がん患者とこれによる治療を受けなかった乳がん患者における肺がん発生率および死亡率を比較した。このスタディは1980〜2003年に乳がんと診断されGeneva
Cancer Registryに登録された女性計6,655人を対象とした。これらの女性のうち46%(3,066人)が抗エストロゲン薬を投与された。全ての患者が肺がんの発症および肺がん死に関して2007年12月まで追跡された。その結果、スタディに組み入れられた女性のうち40人が肺がんを発症した。肺がん発生率は抗エストロゲン薬による治療の有無にかかわらず、乳がん患者と一般人口とで差がなかった;しかし、抗エストロゲン薬を内服していた患者においては肺がんによる死亡数が予測されたよりも少なかった。つまり、抗エストロゲン薬投与群患者は一般人口と比較し肺がんによる死亡数が87%少なかった。このスタディ結果は、肺がんにはホルモンが影響することおよびエストロゲンレベルが肺がん患者の予後に影響することなどの仮説を支持するものである。
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強力な社会的サポートシステムが乳がん患者の予後を良好にする [2011-02-01] |
Strong
social support system leads to better prognosis for breast cancer patients |
診断後1年間に強力な社会的サポートを得た乳がん患者は死亡またはがん再発の確率が低いとのスタディ結果がJournal of Clinical Oncologyに掲載された。中国の乳がん既往者2,230人に対し睡眠、食欲、疼痛などの身体項目、心理的幸福度、社会的サポートおよび物質的幸福度に関して質問を行った。その結果、診断半年後に死亡またはがん再発のリスクを有意に低下させたのは、社会的幸福度のみであった。社会的幸福度のQOLスコアが最も高かった女性はスコアが最も低かった女性と比較し、がん再発リスクが48%低く死亡リスクが38%低かった。情緒的サポートはがん再発の最も強力な予測因子であった。具体的に示すと、リスク軽減率は、結婚生活や家族に対する満足度が最も高いと報告した女性においては43%、強力な社会的サポートを受けた女性においては40%、好ましい人間関係を有している人においては35%であった。がん再発や死亡率との関係は診断初年度のあとには漸減し、3年後までには消失した。
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