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成人ADHDの持続する症状は認知行動療法と薬物療法により改善する
[2010-08-31] |
Persistent adult ADHD symptoms improve after cognitive behavioral therapy and medication |
JAMA 8月25日号に掲載された新たなスタディの結果、薬物療法に加え認知行動療法を施行することは注意欠陥/多動性障害(ADHD)の症状改善に役立ちこの改善を長年維持できることが示された。研究者らは、ADHDに対し薬物療法は行われているが依然として有意な症状が残存している成人86人を検査した。患者らは認知行動療法または教育的サポートによるリラクゼーションの12の個別セッションを受ける群に無作為に割り分けられた。認知行動療法には、ADHDに関する心理教育および構成し計画するトレーニング;注意力散漫を軽減する技術の習得;認知再構成法および再発予防などに焦点を当てたセッションが含まれた。認知行動療法を受けた患者は教育的サポートによるリラクゼーションを受けた患者よりもADHD評価尺度およびClinical
Global Impression scaleのスコアが有意に良好であった。また、Clinical Global Impression scaleおよびADHD評価尺度の両者を用いて評価したところ、治療が有効であった者の割合は認知行動療法群の方がはるかに高かった(それぞれ53%対23%、67%対33%)。治療を通して、自己報告された症状は認知行動療法群の方が有意により改善した。認知行動療法群の寛解および部分寛解は6および12ヵ月後にも維持されていた。
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中等度の飲酒、特にワインの摂取は良好な認知機能と関連がある [2010-08-31] |
Moderate drinking, especially wine, associated with better cognitive function |
Acta Neurologica Scandinavicaに掲載された5,033人の男女を対象とした大規模前向き研究の結果、中等度のワイン摂取は認知機能検査の良好な結果と独立して関連があった。対象者(平均年齢58歳、脳卒中の既往なし)は7年間追跡され、様々な認知機能検査を受けた。女性においては、ワインを2週間に4回以上摂取する者は摂取が2週間に1回未満の者よりも検査スコアの悪いリスクは低かった。飲酒をしない女性では、認知機能検査の結果が有意に低かった。認知機能低下と他のリスクファクター間の関連も認められ、例えば高齢、低教育レベル、喫煙者、およびうつ病、糖尿病または高血圧を有する患者において認知機能低下が認められた。筆者らは、いずれの観察研究においても他の生活習慣が認知機能に影響している可能性が考えられ、今回のスタディでは一部のもの(食事、収入、または専門性)では補正されていないが、主要なリスクファクターである年齢、教育、体重、うつ病、および心血管疾患で補正した、と述べている。 |
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妊娠中の免疫反応は子供の統合失調症に関連した脳の異常と関連がある
[2010-08-24] |
Immune responses during pregnancy linked to brain abnormalities associated with schizophrenia among offspring |
インフルエンザに対する反応で産生されるようなある免疫蛋白への妊娠中の暴露は、その子供の統合失調症に関連した脳の異常のリスクを上昇させるとのスタディ結果がSchizophrenia
Research 8月号に掲載された。このスタディにおいて、母親が妊娠中にインフルエンザ、ウイルスおよび他の感染症に罹患した場合の子供の統合失調症のリスクは約1.5〜7倍高かった。過去のスタディにおいて母親のインフルエンザへの暴露と子供の統合失調症のリスク上昇との関連は確立されたが、ほとんどの感染媒体は胎盤を通過しないため原因は不明であった。今回のスタディで研究者らは母親の感染への免疫反応がリスク上昇の原因の可能性があるとして観察した。特に注目されたのは炎症性サイトカインであった。今回の新たなスタディは約12,000人の妊婦から妊娠前期中期後期全ての期間中に採取し収集した血液検体を用いて施行された。統合失調症を発症した子供を発見しやすくするため、妊婦およびその子供は産後追跡した。統合失調症と診断された子供の器質的脳変化と、妊娠中の母親の血中インターロイキン8(妊娠中に感染に対し戦う際に産生される炎症性サイトカイン)レベルに直線的な相関関係が認められた。
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非同期テレサイカイアトリーは特に地方の人々においては適した治療法のようである [2010-08-24] |
Asynchronous telepsychiatry appears suitable treatment approach, especially for rural population |
研究者らは、プライマリケア医に精神科コンサルテーションを提供するために患者情報とともに患者を録画したビデオを用いることの実現性を示した、とPsychiatric
Services 8月号に掲載された。ライブの双方向ビデオ送信を用いたテレサイカイアトリーはこれまでにも時々使用されていた。しかし、スケジューリングや技術的な困難さのために使用が限られていた。このスタディでは、プライマリケア医から緊急を要しない精神医学的問題を有すると見られている成人に、精神科医以外の研究医師が20〜30分の面談を行った。ビデオに録画された面接状況は患者の他の情報とともにコンサルテーションを依頼された精神科医のもとに送付された。60人の患者のほとんどがうつ病、不安障害、あるいは物質使用障害と診断され、その多くが他の合併症を有していた。コンサルテーションを提供した精神科医は83%の患者に追加の血液検査を、95%の患者に薬物の変更を勧めた。1人の患者は精神科医との直接の面談を必要とされた。筆者らは、非同期テレサイカイアトリーは評価の必要な患者の最大80%に適しており、医療サービスの不足している地方地域からのアクセスを増加させることが可能であると述べている。 |
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ケタミンは難治性双極性障害患者のうつを速やかに軽減する可能性がある
[2010-08-10] |
Ketamine may relieve depression quickly for those with treatment-resistant bipolar disorder |
麻酔薬ケタミンの1回の静脈内投与により、他の治療に反応しなかった双極性障害患者のうつ症状が40分以内に軽減するようであるとArchives of General
Psychiatry 8月号に掲載された。リチウム製剤またはバルプロ酸が無効であった双極性うつ患者18人がケタミンまたはプラセボの静脈内投与を2週おきに2回受けた。静脈内投与の順序は無作為に決定された。参加者らはうつ病評価スケールを用いて各々の注射前、その後40、80、120および230分後、さらに1、2、3、7、10および14日後に評価を受けた。ケタミンを投与された患者はプラセボを投与された患者と比較し、40分以内にうつ症状の有意な改善を認め、その改善度は2日後に最大となり3日後まで有意に持続した。このトライアルの経過中のある時点では、参加者らの71%がケタミンに反応し、プラセボに反応したのは6%であった。この結果は、双極性障害の発症においてはグルタミン酸作動性システムが関与しており、それを標的とすることにより治療法が向上する可能性があるとの仮説を支持するものである。
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統合失調症患者は精神科疾患以外で入院中にも損傷を被る確率が高い [2010-08-10] |
Schizophrenia patients suffer more injuries during non-psychiatric hospital stays |
統合失調症を有する患者は他の人々よりも、精神科疾患以外での入院中の損傷を被りやすいとの大規模米国国内スタディの結果がGeneral
Hospital Psychiatry 7/8月号に掲載される。研究者らは、統合失調症患者269,387件および統合失調症を有さない患者の3,700万件以上をカバーしているNationwide
Inpatient Sampleを用いて、米国の3,605の病院における2002〜2007年の退院について調査した。データから、統合失調症と診断された人々は統合失調症を有さない患者よりも、入院中に褥瘡による潰瘍、敗血症および感染などの損傷を有するリスクが高いことが示された。術後呼吸不全を発現する比率は約2倍高かった。例えば、統合失調症を有する者の術後呼吸不全発現率は1,000病院当り24.2件であったが、統合失調症を有さない患者におけるその数は9.2件であった。さらに、褥瘡による潰瘍の発現は1,000病院当り36.6件であったが、統合失調症を有さない患者においては1,000病院当り27.7件であった。筆者らは、疾患の合併、統合失調症患者が既に内服している薬物、およびコミュニケーション不良が今回観察された患者の安全に関するイベントのリスクを上昇させたものと考えている。 |
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高齢者においてせん妄は死亡、認知症および施設入所のリスクを上昇させる
[2010-08-03] |
Delirium in elderly patients associated with increased risks of death, dementia
and institutionalization |
過去の研究のレビューおよび解析から、高齢者においてせん妄が年齢、併存疾患または疾患の重症度に関係なく死亡、認知症および施設入所のリスクを上昇させることが示唆された、とJAMA
7月28日号に掲載された。研究者らは過去のスタディを解析し、高齢者におけるせん妄と長期の予後不良との関係を重要な交絡因子で補正し評価した。彼らは51の関連論文を同定した。一次解析には、年齢、性別、併存疾患または疾患の重症度およびベースラインの認知症の統計学的補正を行った質の高いスタディのみを組み入れた。一次解析の結果、せん妄により平均追跡期間22.7ヵ月後の死亡リスクがコントロールと比較し高いことが示された。せん妄を経験した患者はまた、施設入所および認知症のリスクも高かった。この相関関係は院内死亡およびベースライン時に入所中の患者を除いても、依然として認められた。低い生存率および高い入所率や認知症発症率から、せん妄を経験した高齢者は特にリスクの高い人々であると考えるべきである、と筆者らは付け加えている。せん妄に関連した長期の続発症が回避可能か否かを調査する臨床試験が必要である。
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お茶を日常的に飲んでいる高齢者は認知機能低下を来しにくいことが示された [2010-08-03] |
Cognitive decline shown to be lower among older people who are regular tea drinkers |
お茶を日常的に飲んでいる65歳以上の人々はお茶を日常的に飲まない人々と比較し認知機能低下が17〜37%少なかった、と2010年International
Conference on Alzheimer's Diseaseで発表された。この地域住民を対象としたスタディは、4,800人以上の米国人(65歳以上)を最長14年間追跡した。お茶やコーヒーの摂取量は食品摂取頻度アンケートで、認知機能はMini-Mental
State Examination(3MSE)を用いて評価した。このスタディの参加者のうち毎日お茶を飲んでいたのは25%であり、そのうちコーヒーを飲んでいたのは43%であった。全体で、3MSEスコアの年間平均低下率は、年5〜10回、月1〜3回、週1〜4回、および毎週5回以上飲む者において、お茶を飲まない者と比較しそれぞれ17%、32%、37%、および26%であった。コーヒーを毎日飲むことは認知機能低下には影響を及ぼさなかったが、摂取量が非常に多い場合は低下率が20%少なかった。年齢、学歴、喫煙の有無、および病歴などの交絡因子で補正しても、認知機能低下はお茶を日常的に飲む者において統計学的に有意に少なかった。 |
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