◆ |
外傷後ストレス障害のリスクにおけるピークは女性において男性よりも10年遅い [2010-07-27]
|
Women
peak in their risk of post-traumatic stress disorder a decade later than men |
外傷後ストレス障害(PTSD)発現率のピークは女性において男性よりも遅いとのスタディ結果がオープンアクセスジャーナルAnnals of General
Psychiatryに掲載された。研究者らはデンマークまたは北欧の過去のPTSDスタディの参加者6,548人(男性42.3%、女性57.5%)のデータを収集し、生涯におけるPTSDの分布の性差を調査した。PTSDはHarvard
Trauma Questionnaire, Part IVに基づき評価した。その結果、合計のPTSD有病率は21.3%であり、予測されたとおりPTSDは女性において男性の2倍多く認められた。最も重要なことに、男性と女性の各々の生涯におけるPTSDリスクのピークは10年異なっていた:男性は41〜45歳にPTSDに罹患しやすく、一方女性のピークは51〜55歳であった。有病率が最も低いのは男女ともに70歳代であった。筆者らは、平均寿命が以前よりも長くなったことで外傷体験の否定的な結果に影響される年月もより長くなっている、と述べている。そのために、生涯における異なる時期のPTSDを理解することが重要である。
|
|
◆ |
無気力およびうつは軽度認知障害から認知症への進行を予測する
[2010-07-27]
|
Apathy and depression predict progression from mild cognitive impairment to dementia |
無気力およびうつは、軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー病やレヴィー小体型認知症を含む認知症への個人レベルの進行を予測するとInternational
Conference on Alzheimer's Disease学会で発表された。研究者らはMCIを有する358人を同定しアンケートを用いてうつおよび無気力に関するデータを収集した。その後、個々人を認知症の予後に関して追跡した(追跡期間中央値2.8年)。うつを有する87人中30人(34.5%)が認知症を発症した。うつを有さない271人中、認知症を発症したのは59人(21.8%)であった。無気力を有さない298人中、認知症を発症したのは67人(22.5%)であった。年齢、性別および教育レベルで補正したところ、MCIとうつを有する者はMCIのみでうつを有さない者よりも認知症を発症するリスクが66%高かった。同様に、MCIと無気力を有する者はMCIを有し無気力を有さない者と比べ、認知症を発症するリスクが99%高かった。
|
|
◆ |
ビタミンDレベルの低い高齢者において思考、学習および記憶能力が低下しやすい [2010-07-20]
|
Thinking, learning and memory decline in older adults with low levels of vitamin
D |
ビタミンDレベルの低い高齢者はスタディ期間の6年間にわたり、思考、学習および記憶能力が低下しやすかったとArchives of Internal Medicine
7月12日号に掲載された。研究者らはスタディ開始時の1998年に65歳以上であった858人の血中ビタミンDレベルを評価した。参加者らは問診、診察を受け採血を施行された。スタディ開始時、3年後および6年後に3つの認知機能検査−認知機能全体の評価、注意力に焦点をおいた検査、および実行機能(計画、準備、優先順位を付けること)に重きをおいた検査−を施行した。ビタミンDレベルが重度に低下している者(25ヒドロキシビタミンDレベルが25nmol/L未満)はビタミンDレベルが十分な者と比較し、6年間全体にわたる実質的な認知機能低下が60%起こりやすく、実行機能を評価する検査においては31%低下しやすかった。しかし、注意力を評価する検査では有意な差は認められなかった。
|
|
◆ |
ビタミンEの豊富な食物を摂取することにより認知症のリスクは低下するが、他の抗酸化物質ではそのような効果は認められない [2010-07-20]
|
Eating foods rich in vitamin E, but not other antioxidants, lowers risk of dementia |
食事を通してビタミンEを多く摂取することにより認知症やアルツハイマー病のリスクが軽減するようであるとの報告がArchives of Neurology
7月号に掲載された。研究者らは1990〜1993年にかけて55歳以上の認知症を有さない者を評価した。参加者はスタディ開始時に家庭での面談および2つの臨床検査を受け、食事を基本としたチェックリストおよび食べ物に関するアンケートを内容とした2つの過程を通して、食事に関する情報を提供した。研究者らは4つの抗酸化物質:ビタミンE、ビタミンC、βカロチン、およびフラボノイドに焦点を当てた。平均9.6年間の追跡期間を通して465人に認知症が発症し、そのうち365人はアルツハイマー病と診断された。他の関連する可能性のある因子で補正した結果、ビタミンEを最も多く摂取(中央値18.5mg/day)していた3分の1は最も摂取量の少なかった(中央値9mg/day)3分の1と比較し認知症を発症するリスクが25%低かった。食物からのビタミンC、βカロチンおよびフラボノイド摂取は認知症リスクとは関係がなかった。アルツハイマー病と診断された者のみを評価しても結果は同等であった。
|
|
◆ |
うつ病は後の認知症発症の予知因子となるようである [2010-07-13] |
Depression appears to be precursor to developing dementia later in life |
うつ病を有することにより後に認知症を発症するリスクが2倍近くになる可能性があるとのスタディ結果がAmerican Academy of Neurology学会誌Neurology®2010年7月6日号に掲載された。研究者らはFramingham Heart Studyの対象となった949人のデータを調査した。スタディ開始時、参加者には明らかに認知症は認められなかった。全般的なうつ、睡眠障害、社会的関係および他の因子に関する質問に基づいたうつ症状の初回検査ののち、125人(13%)がうつ病を有していると分類された。参加者は17年間追跡された。スタディ終了時に164人が認知症を発症し、うち136人は明確にアルツハイマー病と診断された。スタディ開始時にうつを有していた者の22%近くが認知症を発症したのに対し、うつを有さなかった者のその割合は17%であり、うつを有する者におけるリスクは70%高かった。10年間の認知症絶対リスクはうつ症状を有さない者において0.21であり、うつ症状を有する者では0.34であった。この結果は年齢、性別、教育レベルおよびアルツハイマー病のリスクを上昇させるAPOE遺伝子の有無にかかわらず同等であった。 |
|
◆ |
青少年のネットいじめやその被害者は身体的精神的問題を有する可能性がある
[2010-07-13] |
Adolescent cyberbullies and their victims may have physical and mental health problems |
青少年のネットいじめの被害者および加害者は精神的身体的症状や問題をかかえている確率が高いようであるとArchives of General Psychiatry 7月号に掲載された。研究者らはフィンランドの青少年2,215人(13〜16歳)のアンケートに対する回答を調査した。対象者らはネットいじめおよびネット被害に関する情報に加え、人口統計学的情報、全般的な健康状態、薬物使用、今までのいじめ行動および頭痛や腹痛などの精神身体症状に関する質問を受けた。調査の半年前には4.8%がネットいじめの被害者のみ、7.4%は加害者のみであり、被害者および加害者であったのは5.4%であった。被害者であることは、2人の生物学的両親以外の家族の中で生活をしている;感情、集中、行動、または他人とうまくやっていくことが困難であると自覚している;頭痛;再発性の腹痛;不眠および学校で不安を感じること、と関連していた。ネットいじめの加害者であることは、感情、集中、行動、または他人とうまくやっていくことが困難であると自覚している;多動;問題行動;人の手助けをめったにしない;頻繁な喫煙や飲酒;頭痛および学校で不安を感じること、と関連があった。ネットいじめの加害者であり被害者であることはこれらのいずれとも関連があった。 |
|
◆ |
降圧薬は血圧低下作用とは独立したアルツハイマー病予防効果を有する可能性がある
[2010-07-06] |
Antihypertensive drugs may protect against Alzheimer's disease independent from reduction of blood pressure lowering activities |
降圧薬カルベジロールはアルツハイマー病の進行を軽減し健康な記憶機能を促進する可能性があるとの2つの動物実験の結果がNeurobiology of AgingおよびJournal of Alzheimer's Disease最新号に掲載された。1つのスタディは、カルベジロールがアルツハイマー病型の脳および記憶障害を有意に軽減する活性を発現する能力を有することを示した。この有益性は、アルツハイマー病の脳変性および記憶力低下を発症するように遺伝子操作されたマウスにおいて、血圧の低下なく認められた。もう1つのスタディでは、マウスがいかに新たな課題や情報を学び、脳内に化学的に蓄積された過去の情報を思い出すかを評価した。一方の群のマウスはカルベジロールを投与され、他の群は投与されなかった。各々の群のマウスに行動および学習に関する検査を行った結果、カルベジロール群のマウスは他の群のマウスよりも課題を思い出すまでの時間が有意に短かった。新たな課題や情報を学び、すでに脳内に化学的に蓄積されている過去の情報を思い出すことの評価に基づくと、カルベジロール治療は記憶能を促進する能力があると考えられた。これらのスタディから、既に使用されている降圧薬は降圧作用とは無関係にアルツハイマー病の脳の病的特徴である変性を軽減し記憶能に影響することが示唆された。 |
|
◆ |
記憶障害は後の軽度認知障害への唯一の予知因子ではない [2010-07-06] |
Memory problems not the only predictor of later mild cognitive impairment |
ストーリーの学習または記憶を計測する試験や、視界のコントロールとは独立した運動の課題を計測する試験の結果が、必ずしも障害されていなくとも低いこと、およびうつ症状は健康な人々の後の認知機能低下を予知するとJournal of the International Neuropsychological Society 7月号に掲載された。スタディに参加した94人が、標準的な認知機能および心理社会的検査により気分、注意力、視空間能力、言語能力、記憶および理解力に関する評価を受けた。学習を評価する検査の成績が不良なこと、Trail-Making Test(運動のスピード、視覚集中力、および認知の柔軟性を計測)のスピードが遅いまたはうつ病スケールのスコアが低いことが組み合わさると、80〜100%の確率で1年後に軽度認知機能障害の発症が予知された。1つだけで軽度認知機能障害を予知する因子はなかった。つまり、学習能力低下と視覚運動処理のスピードが遅いこと、またはうつ症状が合併することにより初めて後の認知機能障害と有意に関連があった。また、長年、軽度認知障害のリスクファクターと信じられてきた性別やアポリポ蛋白Eのジェノタイプは後の認知機能障害には何ら実質的な影響は与えないことも明らかにされた。 |
|