高齢者において遺伝子亜型と認知機能の間に保護的な関係が認められた [2010-04-27]

Protective relationship identified between gene variant and cognitive function in older people

ある遺伝子亜型が高齢者の記憶および思考能力を保護している可能性があるとの研究結果がNeurology誌2010年4月20日号に掲載された。研究者らは70〜79歳のアフリカ系アメリカ人および白人2,858人を8年間追跡した。対象者らのDNAのカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子(過去の研究で思考能力に影響することが示された遺伝子)が解析された。この遺伝子に関連したアレル亜型がValおよびMet亜型である。対象者らはまた2つの思考検査を受けた。1つの検査は言語、集中力および記憶力などを測定し、もう1つの検査は反応時間、注意力および光景や目的を判断する能力を測定した。スタディの結果、COMT遺伝子のMet亜型は経時的な思考能力低下度が大きいことと関連しているが、Val亜型は思考能力の保護効果があり経時的な低下が小さいことが示された。白人においてはVal亜型を有する者は亜型を有さない者よりも長時間経過後のスコアが33%上であった。アフリカ系アメリカ人ではValアレル遺伝子を有する者は亜型を有さない者よりも長時間経過後のスコアが45%上であった。このスタディは遺伝子亜型と認知機能間の保護的な関係を示した初めてのものである。

 

境界性パーソナリティ障害の長期スタディの結果、現実の世界の予後を計測することの重要性が示された [2010-04-27]

Long-term study of borderline personality disorder shows importance of measuring real-world outcomes

境界性パーソナリティ障害−不安定な対人関係、慢性的な不幸感、感情の不安定、認知のゆがみ、および著しい衝動性で特徴付けられる−で入院した患者290人の長期追跡スタディの結果、退院から10年後、患者の86%において症状の寛解が持続していた。研究者らは2年ごとに一連の半構造的面接および自己申告により患者を評価した。ほとんどの患者はもはや診断基準に合致しなかったが、回復を達成し2年間の症状寛解および社会的職務的機能を維持または達成していたのは50%に過ぎなかった。症状寛解と良好な心理社会的機能を同時に得るのは多くの境界性パーソナリティ障害患者にとって困難であると思われるが、一旦回復すれば比較的安定していることを、筆者らは見出した。機能的に回復した患者の3分の2はそれを維持し、改善を症状寛解が少なくとも4年間持続することと定義すると割合はむしろより高かった。今回のスタディにおける長期の経過観察、および患者やその家族にとっての最大の関心事である予後の尺度を使用したことが境界性パーソナリティ障害からの回復を定義する上での大きな進歩であった。このスタディはThe American Journal of Psychiatryの早期オンライン版AJP in Advanceに掲載される。

 

うつ病のリスクのある若年少女は報酬と損害に対する神経反応低下を示す [2010-04-20]

Young girls at risk for depression display diminished neural responses to reward and pleasure

うつ病のリスクが高いが何の症状も経験したことのない若年少女は報酬を受けたり損害を被ったりする可能性を処理する際の神経反応パターンが異なるとArchives of General Psychiatry 4月号に掲載された。研究者らは、本人はうつ病を有さないが母親が再発性のうつ病を有する(高リスク群)10〜14歳の少女13人を、本人および家族にうつ病歴のない(低リスク群)同年代の少女と比較した。参加者ら26人全員が報酬および処罰を受ける可能性のある課題を行っている最中の機能的磁気共鳴画像検査(f-MRI)を受けた。高リスク群は報酬を予測および受領した時の神経反応が低リスク群と比較し低下していた。特に、過去の経験を増強し学習を促進するのにかかわると思われる背側前帯状皮質の活性を全く示さなかった。しかし、低リスクの少女と比較し高リスクの少女は処罰を被るときにこの領域の活性が上昇した。この結果から、高リスクの少女たちは長い年月の間に報酬や喜びよりも損失や処罰に関する情報をより容易に蓄積する可能性のあることが示唆された。

 

主観的な記憶力低下は痴呆への進行リスクを上昇させる [2010-04-20]

Subjective memory impairment increases risk for conversion to dementia

主観的な記憶力低下、つまり、本人が認めるか認めないかの軽度の記憶力低下は、より進行した認知障害または認知症への進行を予測するとArchives of General Psychiatry 4月号に掲載された。プライマリケアの患者における加齢、認知機能および認知症に関するドイツのスタディ(Aging, Cognition and Dementia in Primary Care Patients Study)では、スタディ開始時に認知機能障害を有さない75歳以上の2,415人を調査した。対象者は彼等の記憶力が低下していると確信しているか、およびそれが彼等にとって心配の種になっているかに関して質問された。その後彼等は追跡調査され1年半後と3年後に軽度認知機能障害および認知症に関して検査を受けた。スタディ開始時に記憶力低下を有し心配していた者は、いずれの追跡調査においてもあらゆる認知症およびアルツハイマー病関連の認知症への進行リスクが最も高かった。さらに、スタディ開始時に記憶力低下を有し最初の追跡調査時に軽度認知機能障害を有していると、二度目の追跡調査時にはあらゆる認知症またはアルツハイマー病関連の認知症に進行しているリスクが高かった;これらの者は認知症を発症するリスクが最も高かった。

 

心配がうつや恐怖に関連した脳の活性パターンを変化させ、その結果うつや恐怖による悪影響の一部が軽減する可能性がある [2010-04-13]

Worry alters patterns of brain activity associated with depression and fear, and may lessen some of the negative effects of both
うつおよび不安症の人々の脳活性を調査したスタディの結果、うつ病による悪影響が不安により変化することが示された。Cognitive, Affective & Behavioral Neuroscience誌に掲載されたこのスタディではうつ病および二つのタイプの不安症(強い恐怖、時にパニックに変化する恐怖でびくびくした状態、および強い不安、心配)とうつ病に関して調査した。その結果、感情的な言葉の課題に取り組んでいる間の脳fMRI像が心配をしているうつ病患者と警戒心またはパニックを有するうつ病患者とで非常に異なっていた。おそらく最も驚くべきことには、強い不安(不眠、恐怖、パニック)によりうつ病でも活性化している右の前頭葉の一部分の活性が増強していたが、それは不安や心配のレベルが低いときのみであった。うつ病があっても心配をしているうつ病患者は恐怖心を有するまたはびくびくしているうつ病患者よりも感情的な言葉の課題の成績が良好であった。心配により嫌な単語の意味を無視し課題に集中することができた。この結果から、恐怖でびくびくした状態は時にうつ病に関連した脳の活性を上昇させるが、心配はまさに逆で、うつや恐怖による悪影響の一部を軽減させる可能性があることが示唆された。
 

超越瞑想により臨床的に有意なうつ症状が48%も軽減する [2010-04-13]

Transcendental Meditation reduces symptoms of clinically significant depression by as much as 48 percent

超越瞑想®技術はうつ症状を軽減する有効な方法である可能性があるとの2つの新たなスタディの結果が第31回Society of Behavioral Medicine学会で発表された。これらのスタディは55歳以上の心血管疾患リスクのあるアフリカンアメリカンおよびハワイ先住民を対象とした。参加者らは超越瞑想(TM)プログラムまたは健康に関して教育を受けるコントロール群に無作為に割り付けられ、うつ病に関する標準的な検査(Center for Epidemiological Studies-Depression[CES-D])による評価をベースライン、3、および9〜12ヵ月後に受けた。2つのスタディいずれにおいてもTMプログラムを受けた患者はコントロール群患者と比較し、うつ症状が有意に軽減した。最も軽減したのは臨床的に有意なうつ症状を有しTM療法を受けた者で、うつ症状が48%軽減した。筆者らは、うつ病は心血管疾患の重要なリスクファクターであり、中等度レベルのうつ症状であっても心イベント上昇につながると述べている。彼らは、これらのスタディの結果は精神の健康を改善し心血管疾患罹患および死亡を軽減するのに重要な意味がある、と述べている。

 

言葉の使用は生後1ヵ月から幼児の認知機能に影響を与える [2010-04-06]

Use of words influence infants' cognition from first months of life

たとえ話し始める前の幼児であっても、言葉は彼らの認知機能に重要な役割を果たしているとの研究結果がChild Development誌3/4月号に掲載された。生後3ヵ月において、言葉は認知的な課題の遂行能力に対し音楽などのいろんな種類の音よりも大きな影響を与える。健康な満期産で出生した生後2〜4ヵ月の幼児46人を対象に、言葉の群と音の群とに無作為に割り付けられた。幼児は、言葉または「ピー」という音とともに魚の絵を見せられた。言葉の群の幼児は、それぞれの絵を見る度に、例えば「トーマをみてごらん」などの魚用に作られた言葉を話しかけられた。音の群の幼児は、音色や持続時間用に標識化したフレーズに厳密にマッチさせた一連の「ピー」音を聞いた。その後に幼児は別の魚と恐竜の絵を並べて見せられた。もし幼児が区別できるなら、魚の絵を恐竜の絵より長く見るはずである。全ての幼児は全く同じ絵を全く同じ時間見たが、言葉の群の幼児は魚を区別でき音の群の幼児は区別できなかった。

 

軽度認知機能低下を経てアルツハイマー病に進行する間に記憶力低下率は増加する [2010-04-06]

Rate of memory decline increases as patients progress through mild cognitive impairment to Alzheimer's disease

記憶力および思考能力は軽度認知機能低下を有する者において急速に低下し、認知症が始まるとさらに急速に進行する可能性があるとの研究結果がNeurology 2010年3月23日号に掲載された。このスタディには1,158人(平均年齢79歳)を組み入れた:149人はアルツハイマー病を有し、395人は軽度認知機能障害を有し、614人は思考または記憶に関して問題はなかった。スタディ開始時および3年ごとに記憶および思考能力に関する検査を繰り返し行った(平均期間5.5年、最高11年)。認知機能低下のない群と比較し、年間の認知機能低下率は軽度認知機能低下群において2倍以上高く、アルツハイマー病群においては4倍以上高かった。スタディ開始時に全体的な認知機能検査は、思考能力に問題のない群の0.5点から軽度認知機能を有する者の0.2点およびアルツハイマー病患者の-0.5点の範囲であった。思考に問題のない群のスコア低下は年0.04であったのに対し、軽度認知機能低下群で0.09、アルツハイマー病患者においては0.17であった。この結果は人種、性別および年齢で差がなかった。

 


 

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