後期臨床試験における新出現の乳がん治療
(第33回サンアントニオ乳がんシンポジウム)
  アジュバント療法としてのゾレドロン酸の有益性は認められない
(第33回サンアントニオ乳がんシンポジウム)
  循環腫瘍細胞は転移の予測に役立つ(第33回サンアントニオ乳がんシンポジウム)
 
 
  医療用放射線によるがんのリスクは過大評価されていた可能性がある
  乳がん既往歴を有する女性はMRIでスクリーニングすべきである
  50歳未満の女性において年1回のマンモグラフィーにより乳房切除術のリスクが低下する



MRIとマンモグラフィーの併用により早期がんの殆ど全てが検出される [2010-12-28]
Magnetic resonance imaging plus mammography detects nearly all cancers at an early stage

磁気共鳴画像(MRI)とマンモグラフィーの併用により早期がんの殆ど全てが検出され、従って進行乳がんの発現率を低下させることができると2010年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。研究者らはBRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有し、したがって乳がんハイリスクの女性1,275人を、MRIとマンモグラフィーでスクリーニングを行う群とマンモグラフィーによる従来通りのスクリーニングを行う群の2群に分けた。両群を数年追跡し、どちらのスクリーニング法が有意に早期の段階でがんを検出できるかを調査した。MRI群では41例が乳がんと診断されたのに対し、コントロール群では76例であった。それに比例してMRIでスクリーニングされた女性の方がMRIでスクリーニングされなかった女性と比較し、進行乳がんの数は少なく早期のがんがより多かった。さらに、がんのサイズはMRI群の方が小さかった。進行の速いがんの平均サイズはMRI群で0.9cmであったのに対し、コントロール群では1.8cmであった。腫瘍径が2cmを越えていたのはMRI群では3%であったのに対し、コントロール群では29%であった。

本質的に難知性の乳がん幹細胞を標的としたガンマセクレターゼ阻害薬による治療は有望である [2010-12-28]
Targeting intrinsically-resistant breast cancer stem cells with gamma-secretase inhibitors offers promising treatment results

“Notch”パスウェイ阻害薬を用いた乳がん治療は、がん幹細胞補充能および腫瘍成長促進能を低下させると2010年サンアントニオ乳がんシンポジウムで報告された。研究者らは“マンモスフィア形成”ヒト乳がん細胞―幹細胞の特性を有し従来の化学療法に耐性であることが明らかになった細胞―に焦点を当てた。彼らは、非臨床がん幹細胞モデルおよび乳がん患者に対するガンマセクレターゼ阻害薬の補完的な臨床試験においてガンマセクレターゼ阻害薬を試みた。ガンマセクレターゼは“Notch”パスウェイの活性化に必要であり、幹細胞の自己複製を調節する。研究チームは異なる2群のマウスに乳がん患者から得たヒトのトリプルネガティブ 乳がん細胞を植え込み、その後ガンマセクレターゼ阻害薬で治療した。腫瘍を摘出した結果、マンモスフィア形成は阻害されていたが腫瘍サイズに変化はなかった。彼らはその後、転移性乳がん患者から得た生検組織を調査した。マンモスフィア形成能は初回の化学療法とガンマセクレターゼ阻害薬治療併用後に低下しており、腫瘍反応は数クールの治療後にのみ認められた。これらの結果からこの種の薬剤、特に他の抗がん剤との併用を試みている現在進行中の臨床試験の結果は有望であることが期待される。

AZURE:乳がんに対するアジュバント療法としての経口ビスホスホネート製剤は生存率において有益性を示さなかった [2010-12-21]
AZURE: No survival advantage for oral bisphosphonates as adjuvant therapy for breast cancer
待望の乳がん患者に対するPhase III AZURE(再発軽減のためのアジュバント療法としてのゾレドロン酸:Adjuvant Zoledronic acid to redUce REcurrence)トライアルの結果、乳がん再発または全生存期間においてビスホスホネート製剤ゾレドロン酸の効果は認められなかったと第33回CTRC-AACRサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。このトライアルには、174施設のステージII/III乳がん患者3,360人が組み入れられ、標準治療または標準治療とゾレドロン酸(ゾメタ)併用のいずれかに無作為に割り付けられた。経過観察期間中央値59ヵ月後のコントロール群患者(1,678人)と比較したゾメタ治療群患者(1,681人)の無病生存期間のハザード比(HR)は0.98(95%信頼区間[CI 0.85-1.13]、P=0.79)であり、治療群間の臨床的に有意な有益性は認められなかった。ゾメタ群で全生存期間の良好な傾向は認めたが、統計学的に有意ではなかった(HR=0.85[95% CI 0.72-1.01]、P=0.0726)。サブ解析の結果、閉経後女性(閉経後5年以上)における再発および生存期間では有意な有益性が認められたが、閉経前女性において有益性は認められなかった。
SUCCESS:循環腫瘍細胞は早期乳がん患者の再発および死亡を予測した [2010-12-21]
SUCCESS: Circulating tumor cells predicted recurrence, death in patients with early-stage breast cancer

早期乳がん患者において血液内に1〜4個の循環腫瘍細胞(CTCs)が存在すると、がん再発および死亡のリスクは2倍となり、5個以上存在すると再発率が 400%、死亡が300%となるとのphase III SUCCESSトライアルの結果が第33回CTRC-AACRサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。このスタディの結果、21.5%の患者がアジュバント治療開始前に1個以上のCTCを有していた。これらの患者はリンパ節転移陽性の確率が高かったが、腫瘍サイズ、疾患グレード、またはHER2の状態とは関連がなかった。CTC陽性であることは無病生存率および全生存期間の有意な独立した予測因子であった。CTCsを1〜4個有する患者は早期乳がん再発のリスクが88%高く、乳がん死のリスクが91%高かった。予後はCTCsを5個以上有する患者においてより不良であった;これらの患者はがん再発のリスクが4倍高く、乳がん死のリスクが3倍高かった。このスタディにおいて発見されたCTCsは、腫瘍が乳がん細胞を流出させていることを証拠付ける可能性がある。

低リスクの前立腺がんに対しては積極的な監視の方が他の治療法と比較し良好なQOLが得られる可能性がある [2010-12-14]
Active surveillance for low-risk prostate cancer may offer better quality-of-life compared to other treatments

65歳の低リスク前立腺がんに対する初回治療戦略を比較したスタディにおいて、最善の治療は監視か治療かに対する個々患者の希望に非常に依存するものの、積極的な監視は前立腺切除術などの初回治療と比較しQOLの計測値が高いことが示された、とJAMA 12月1日号に掲載された。研究者らは、低リスクの臨床的に局所の前立腺がん患者に対し積極的な監視と初回治療のQOLに対する利益とリスクを調査した。シミュレーションモデルを用いたこのスタディにおいて、患者らは診断時に、小線源療法、強度変調放射線療法(IMRT)、前立腺切除術、または積極的な監視によりフォローされる群に無作為に割り付けられた。65歳男性においては、積極的に監視し、進行した際にはIMRTを施行するのが最も有効な戦略(QOLで調整した余命[QALE]の最も高い治療戦略と定義、11.07質調整生存年[QALYs;高いQALYsは望ましい健康状態の年を反映]を生み出した)。積極的な監視により、最も有効な初回治療である小線源療法と比較しQALEが6.0ヵ月延長した。

手術の合併症は大腸がんケアの質に長期の影響を与える [2010-12-14]
Surgical complications have long-term impact on quality of colorectal cancer care

大腸がん手術後に合併症を発症する患者は、化学療法が明らかに推奨される症例であっても化学療法を施行される確率が低いとDiseases of the Colon & Rectum 12月号に掲載された。さらに、合併症を有する患者は化学療法を施行の時間枠として適切と考えられる診断後120日または術後2ヵ月よりも遅れて施行された。このスタディはステージIII大腸がんに対し手術を施行された患者17,108人のデータを観察したものである。化学療法はステージIIIの大腸がん患者全てに対し推奨されており、5年生存率を16%も改善することが示されている。化学療法は身体にストレスを与え創傷治癒を遅延させるため、腫瘍専門医は術後合併症により虚弱または状態不良の患者には通常、化学療法施行に消極的である。手術合併症は一般的には短期の問題と考えられているが、このスタディからその下流のがん治療と術中の合併症とには明らかな関連があることを示唆している。これらの大腸がん患者群において化学療法は明らかな救命効果をもたらすため、この結果は重大である。

コンピュータ断層撮影による被曝のリスクはこれまで考えられていたよりも低い可能性がある [2010-12-07]
Radiation risk from computed tomography may be lower than previously thought
コンピュータ断層撮影(CT)による放射線誘発性がんを発症するリスクはこれまで考えられていたよりも低い可能性があるとのスタディ結果が2010年RSNAで発表された。研究者らは米国メディケア請求を用いてレトロスペクティブスタディを行い、CTスキャンの分布を解析し電離放射線被曝量を計測し関連するがんを推定した。データには1998〜2001年および2002〜2005年の2グループの100万以上の記録が含まれていた。彼らはCTスキャンの数および型を解析し、各々の患者の被曝量を“低”用量(50〜100mSv)または“高”用量(100mSv超)に分類した。1998〜2001年に42%の患者、2002〜2005年には49%の患者がCTスキャンを施行された。放射線を被曝した患者の割合は低および高用量のいずれも1998〜2001年の群から2002〜2005年の群までに、2倍に増加した。この結果は診断および管理に高速CTの使用が増加したことと一致している。CTの電離放射線による発がんはそれぞれの群で0.02%および0.04%と推定されたのに対し、過去のスタディではそれぞれ1.5〜2.0%と推定されていた。
乳房MRIは乳がん遺伝歴または家族歴を有する女性よりも乳がん既往歴を有する女性に対しより多くの乳がんを検出し偽陽性は少ない [2010-12-07]
Breast MRI identified more cancers with fewer false positives in women with a personal history of breast cancer than in women with a genetic or family history

乳がん既往歴を有する女性には年1回のマンモグラフィーに加えMRIによるスクリーニングも考慮すべきであるとのスタディ結果が2010年RSNAで発表された。研究者らは、2004年1月から2009年6月にかけて女性1,026人の初回スクリーニング乳房MRI検査の結果をレトロスペクティブ解析した;327人が乳がん遺伝歴または家族歴を有しており、646人が乳がん治療歴を有していた。全体で、MRI検査によりこの患者グループの27件のがんのうち25件が検出され、感度は92.6%であった。乳がん既往歴を有する女性の乳がん発症率(3.1%)は遺伝歴または家族歴を有する女性(1.5%)の倍であった。乳がん既往歴を有する女性における特異度は93.6%であり、これと比較し、他の群の特異度は86.3%であった。生検を勧められたのは乳がん既往歴を有する女性の9.3%であり、遺伝歴および家族歴を有する女性におけるその割合は15%であった。生検の陽性適中率もまた、乳がん既往歴群において高く、生検の35.7%からがんが検出されたのに対し他の群では12.2%であった。

50歳未満の女性において年1回のマンモグラフィーにより乳房切除術のリスクが低下する [2010-12-07]
Annual screening mammography beginning at age 40 reduces mastectomy risk
40〜50歳の女性において年1回のマンモグラフィー検査を受けることにより乳がんに対する乳房切除術のリスクが非常に低下するとのスタディ結果が2010年RSNAで発表された。研究者らは乳がんと診断されLondon Breast Instituteで治療を受けた40〜50歳の女性の臨床データを解析した。2003〜2009年に971人の女性が乳がんと診断された。診断時に393人(40%)が50歳未満であり、うち156人がこの施設で治療を完了した。治療された女性のうち114人(73%)が過去のマンモグラムを有していなかった。42人は過去にマンモグラフィーによるスクリーニングを受けており、うち29人が過去2年以内のマンモグラムを有していた。そのうち16人が過去1年以内のマンモグラムを有していた。データから、過去1年以内にスクリーニングを受けた女性16人中3人(19%)において必要な治療法が乳房切除術であるとされ、一方、過去1年間にスクリーニングを受けなかった女性140人のうち乳房切除を必要とされたのは64人(46%)であることが示された。


 

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