◆ |
KRAS遺伝子亜型は卵巣がんリスクのマーカーであることが示された
[2010-07-27] |
KRAS gene variant shown to be a marker for ovarian cancer risk |
卵巣がん発症リスクを予知する遺伝子マーカーが同定されたとCancer Research 7月20日号に掲載された。この研究チームは、KRASがん遺伝子亜型が卵巣がん患者全体の25%に存在することを示した。さらに、この亜型は乳がんと卵巣がんの家族歴を有する患者の61%に認められ、このマーカーがこれらの家系における卵巣がんリスクの新たなマーカーであることが示唆された。卵巣がん患者の4人に1人がKRAS亜型を有し、一方一般人口におけるその割合は6%であった。KRAS亜型が卵巣がんリスクの遺伝子マーカーであることを確認するために研究者らは、家族性乳がん卵巣がん症候群が確認されている卵巣がん患者を調査した。これらの女性のうち卵巣がんリスクの遺伝子マーカーとして知られるBRCA1またはBRCA2を有するのは半分のみであった。他の既知の卵巣がん遺伝子マーカーを有さない女性の10人中6人がKRAS亜型を有していた。若年で卵巣がんを発症するBRCA変異を有する女性と異なり、KRAS亜型を有する女性は卵巣がんを閉経後に発症する傾向にあった。
|
|
◆ |
ある発見が慢性骨髄性白血病の治療戦略となることが示唆された [2010-07-27]
|
Discovery suggests possible treatment strategy for chronic myelogenous leukemia |
慢性骨髄性白血病(CML)の最悪の段階への移行を説明できる可能性のあるメカニズムが発見された。この発見には、細胞成熟を抑制しCMLのホールマークの1つである未熟細胞を大量に作成するMushashiと呼ばれる蛋白が関わっている。Mushashiは特に幹細胞において上昇しその増殖に必要であり、このことはがん細胞においても未熟細胞の増殖を促進するのにこの蛋白が関わることの説明に役立つ。この研究チームは異なるCML進行時期の患者の120の検体を観察した。Musashiの発現は未熟細胞が増加するCMLの急性転化期において10倍高まった。Mushashiのレベルは、疾患の進行が速いほどが劇的に上昇していた。同様の分子経路が他の進行する白血病や、グリオブラストーマや乳がんの様な固形がんにおいても関連している可能性がある。Mushashiを阻害することによりがんの増殖も抑制しうるため、この分子経路は今後の治療の標的となる可能性がある。この結果はNature
7月18日号オンライン版に掲載された。
|
|
◆ |
小児がん既往者は25年後でもがんおよび循環器系疾患による死亡リスクが高い [2010-07-20] |
Survivors
of childhood cancer still have higher risk of death 25 years later, from cancer
and circulatory diseases |
英国の小児がん既往者の追跡調査の結果、小児がん診断後25年以上経過しても他の原発がんや心および脳血管疾患による死亡が多いことが示されたとのスタディ結果がJAMA7月14日号に掲載された。研究者らは、15歳未満でがんと診断された小児がん5年生存者17,981人の長期の死因特異的な死亡率を調査した。調査中に3,049人が死亡した。がん既往者の死亡数は一般人口から予測される死亡数の11倍多かった(標準化死亡比[SMR]、10.7)。SMRは追跡調査期間とともに低下したが、診断後45年経過しても予測値より3倍多かった。再発による死亡の絶対過剰リスク(AER)は5〜14歳の診断時から診断後45年にかけて低下した。一方、他の原発がんや循環器系(心臓死や脳血管死)の死亡のAERは増加し、診断45年後の死亡数は一般の人々の他の原発がんで死亡する予測値の3.6倍であり、循環器系の死亡は26%多かった。研究者らは、これらの原因による死亡率が高いのは小児がんに対する治療の後期合併症によるところが大きいと考えている。
|
|
◆
|
頭頸部がん患者において疼痛および口渇が睡眠の質を低下させている [2010-07-20]
|
Pain
and dry mouth affect sleep quality in patients with head and neck cancer |
診断1年後に睡眠の質が不良であると訴える頭頸部がん患者は、慢性疼痛および放射線治療に伴う口渇の症状がより強いとLaryngoscope誌オンライン版に掲載された。またこのスタディの結果、気管切開術、うつおよび若年であることが睡眠障害により悪影響を及ぼすことも示された。研究者らは3つの耳鼻咽喉科クリニックで最近頭頸部がんと診断された患者457人を調査した。参加者らは、疼痛、睡眠、食事および呼吸に関する問題などの身体的および感情的なQOLに関する質問に回答した。対象者は診断の1年後に再調査を受けた。対象者における睡眠の質は診断時から1年後にかけて劇的には変化していなかった。しかし両時点での睡眠の質は平均的な人々の睡眠スコアよりも不良であった。研究者らは、1年後の睡眠の質の変化が比較的小さかったのは、手術や放射線療法および化学療法などの治療の副作用や症状が原因であろうと述べている。
|
|
◆ |
新たな治療法により進行乳がんの腫瘍の成長を遅らせることができる
[2010-07-13] |
Novel therapy slows tumor growth in advanced breast cancer |
小規模なスタディにおいて、BRCA1またはBRCA2の遺伝子変異を有する患者の腫瘍を攻撃するようにデザインされた新たな治療法は、治療を受けた進行乳がん患者の85%において腫瘍の成長を遅延させたとLancet 7月6日号に掲載された。Olaparibと呼ばれるこの新薬は、poly(ADP-ribose) polymerase(PARP)と呼ばれる蛋白を阻害する。PARPもBRCA蛋白もDNA修復に関わっている。細胞はどちらかが欠如していても生存できるようにみえるが、BRCA遺伝子を欠如した腫瘍のPARPを阻害するとそれらの腫瘍細胞は死滅する。この国際スタディは54人の患者を組み入れた:27人は400mgのolaparibを1日2回内服し、27人は100mgのolaparibを1日2回内服した。高用量の方が疾患に対する効力は強いと思われ、1人(4%)は完全寛解し10人(37%)は腫瘍が実質的に縮小した。他の12人(44%)は疾患が安定したかまたは腫瘍が多少縮小したが、標準クライテリア上は部分寛解と考えるには不十分であった。低用量群では6人(22%)において実質的な縮小が認められ、12人は腫瘍が縮小したかまたは疾患が安定した。 |
|
◆
|
難治性の慢性白血病には同種幹細胞移植が奏効する [2010-07-13] |
Patients with treatment-resistant chronic leukemia respond positively to allogeneic stem cell transplants |
同種幹細胞移植(alloSCT)は、根底にある遺伝子異常に関係なく、難治性慢性リンパ性白血病(CLL)に対する有望な治療のひとつである、とのスタディ結果がBlood誌オンライン版に掲載された。難治性のCLL患者は治療に奏効するかを予測する遺伝子異常を有する。このスタディにおいて研究者らは、alloSCTがこれらの患者において根底にある遺伝子異常に非依存的に有効な治療となり得るかどうかを調査した。alloSCTにおいて、血液幹細胞はドナーから採取され患者に投与されると骨髄へ移動し新たな血液細胞を生成し始め、疾患のために病的になっていた血液細胞と置き換わる。この前向きphase IIスタディにおいて難治性CLL患者90人がalloSCTを受けた。幹細胞ドナーは健康な兄弟姉妹または血縁関係はないがマッチしたボランティアであった。alloSCTで治療された後に、この治療を受けなければ致死的な疾患を患っていた患者の40%以上が、長期の再発のない生活を味わっていた。これらの結果から、alloSCTはハイリスクのCLL患者に対し実践可能で治癒の可能性のある治療であり、これらの患者に対して考慮すべきであることが示唆された。 |
|
◆
|
高用量のスタチンほど前立腺全摘除術後の再発リスクは低下する [2010-07-06] |
Higher dose of statins associated with lower risk of recurrence following radical prostatectomy |
スタチンでコレステロールを低下させている男性はスタチンを内服していない男性と比較し、がんの再発率が30%低いとの研究結果がCancer誌に掲載され、同時に、高用量のスタチンほど再発リスクが低いことも明らかにされた。研究者らは、Shared Equal Access Regional Cancer Hospital (SEARCH)データベースに登録されている、前立腺全摘除術を施行された男性1,319人の記録を調査した。その結果、236人(18%)が手術を受ける時点でスタチンを内服していた。術後に患者を追跡した結果、スタチン内服患者37人(16%)および非内服者267人(25%)の計304人に“生化学的再発”(PSAレベル上昇)が認められた。全体でスタチン内服者の生化学的再発リスクは30%低かった。シンバスタチン20mg/dayに匹敵するスタチンを内服している男性においては、再発リスクは43%低く、シンバスタチン20mg/day超に匹敵するスタチンを内服している患者においては、再発リスクは50%低かった。シンバスタチン20mg/day未満に匹敵するスタチンを内服している患者においては、有益性は認められなかった。 |
|
◆
|
乳がん患者のうちホルモン療法を遵守している患者は半分に満たない [2010-07-06] |
Fewer than half of breast cancer patients adhere to hormonal therapy regimen |
Journal of Clinical Oncology 6月28日号に掲載された乳がん女性を対象としたあるスタディの結果、ホルモン療法を処方された通りに全て遵守した女性は半分に満たなかったことが明らかにされた。研究者らはstage I、II、またはIIIのホルモン感受性乳がんと診断された米国女性8,769人の自動薬局記録(タモキシフェン43%、アロマターゼ阻害薬26%、両者30%)を調査した。4.5年後までにこのスタディの全患者中32%がホルモン剤内服を中止し、中止しなかった者のうちスケジュール通りに内服を終了した(80%以上内服)のは72%に過ぎなかった。若い女性ほど治療遵守率が低かった。40歳未満または75歳以上の女性においては、乳房切除術を施行された女性と比べ、腫瘍摘除術を施行された女性および他の疾患を合併する女性がホルモン療法を早期に中断する率が高かった。アジア太平洋諸島では、過去に化学療法を受けたこと、結婚していること、および再処方までの間隔が長いことなどが4.5年間のホルモン療法を完遂することと関連があった。今回の結果は、ホルモン治療に対するコンプライアンス不良のより良い理解、およびそれを減少させる方法を開発する必要性を強調するものである。 |
|