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BATTLE:非小細胞肺がんの標的治療のガイドとなる特定のバイオマーカーが同定された [2010-04-27] |
BATTLE: Specific biomarkers identified to guide targeted drug therapies in non-small
cell lung cancer |
腫瘍生検における分子標識に基づき患者に対する標的治療をガイドするための初めての肺がん臨床試験は、オーダーメイド治療および新薬のためにより有効で効果的な臨床試験へのステップである、と2010年第101回American
Association for Cancer Researchで研究の主導者が報告した。研究者らは革新的な統計モデルを用いて4つの薬剤とステージIV非小細胞肺がん患者の255の腫瘍におけるバイオマーカーを適合させた。この生検を基本としたトライアルにより、これら4つの薬剤各々が他の3つよりも特異的な分子標識を標的としているとのエビデンスが得られた。現在、薬剤の使用ガイドとなることが実証されているバイオマーカーはない。肺がん撲滅のための標的療法のバイオマーカー統合アプローチ(Biomarker-Integrated
Approaches of Targeted Therapy for Lung Cancer Elimination:BATTLE)トライアルのエンドポイントは8週後の疾患コントロールであった。腫瘍内にKRAS変異を有しsorafenibを投与された患者の61%が8週後に疾患のコントロールが得られており、一方他の3薬では32%であった。エルロチニブはEGFR変異に対し最も有効性が高く、vandetanibはVEGFR-2高発現に対して、エルロチニブ−bexaroteneはサイクリンD1欠損またはEGFR遺伝子増多に対して最も有効性が高かった。バイオマーカーの有効性に関するこれらのPhase
IIトライアルの結果はPhase IIIトライアルで実証する必要がある。
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ビタミンとカルシウムのサプリメントは乳がん患者においてDNA修復能力と関連があるようである [2010-04-27]
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Vitamin
and calcium supplements appear to be linked to DNA repair capacity in patients
with breast cancer |
ビタミンとカルシウムのサプリメントは乳がんのリスクを軽減させるようであると2010年第101回American Association for Cancer
Research学会で発表された。このスタディには乳がん患者268人と健常コントロール457人が組み入れられた。高齢で乳がん家族歴を有し授乳歴がなくDNA修復能が低いほど、乳がん有病率は高かった。ビタミンのサプリメントにより乳がんのリスクは約30%低下するようであった。カルシウムのサプリメントは乳がんのリスクを40%低下させた。DNA修復能のレベルで補正したところ、カルシウム補充には予防効果は認められなかったが、ビタミン補充と乳がん軽減との関連は依然として認められた。これらの結果から、カルシウム補充はDNA修復能(破壊されるとがんを発現しうる200以上の蛋白が関わる複雑な生物学的過程)増強のために働くことが示唆された、と研究者らは述べている。この効果に即効性はないが、長期の乳がん軽減効果が認められた。ビタミンの効果は長期でありDNA修復能とは独立したものであった。
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早期乳がんに対する最良の診療に関する国際的なコンセンサスは得られているものの治療は世界中で異なる [2010-04-20] |
Despite international consensus on best practice, treatment for early breast cancer
varies globally |
10,000人近い早期乳がん女性を対象としたグローバルスタディの結果、乳がんの最良の診療に関する国際的なコンセンサスは得られているものの、治療法は多岐にわたることが明らかにされたとBritish
Journal of Surgery 5月号に掲載された。研究者らは、ベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、日本、オランダ、英国/アイルランドおよび米国の566施設の女性9,779人(平均年齢64歳)を比較した。乳房切除術および術後放射線療法ではなく乳房温存手術(BCS)を受けた女性のパーセンテージは国によって大きく異なった。T1腫瘍率は米国とフランスとで同様であったが(それぞれ74%および76%)、BCSで治療されたT1腫瘍の割合がフランスでは89%であったのに対し米国では55%のみであった。T2腫瘍を有する患者はBCSよりも乳房切除術を受ける率が高かったが、フランスの42%から米国の69%と、これも国別で差が大きかった。国際ガイドラインでは放射線療法を乳房温存療法の一部とすべきであるとしているが、放射線療法施行率が100%と報告したのはフランスとベルギーのみであった。非施行率が最も高かったのは日本(14%の患者が放射線療法を受けなかった)、英国およびアイルランド(13%)、そして米国(14%)であった。
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CBC血液検査により急性リンパ性白血病の小児の治療成績が予測できる [2010-04-20]
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CBC
blood test predicts treatment outcome in children with acute lymphocytic leukemia |
一般的かつ簡単な血算(CBCとも呼ばれる)検査の情報を用いて若年の白血病患者の治療成績をより正確に予測する方法が明らかにされた。あるレトロスペクティブスタディの結果がAmerican
Society of Pediatric Hematology Oncology学会で報告された。このスタディは微小残存病変(MRD)指標およびリンパ球絶対数(ALC)の両者により、急性リンパ性白血病(ALL)患者のうち無再発が維持できる患者あるいは最も再発しやすい患者を医師がより正確に予測できることを明らかにした。このスタディは小児ALL患者171人に基づき、1月間の治療の後にMRD陽性で低ALCの患者の無再発生存率は33%であり5年生存率は41%であることを示した。しかし、MRD陽性であるが高ALCの患者の無再発生存率は69%であり5年生存率は92%であった。最も予後が良好だったのはMRD陰性で高ALCの患者であった。これらの患者の5年生存率は99%であった。
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小児がんの既往者は成人してからの平均余命が短い [2010-04-13]
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Survivors of childhood cancer face shortened life expectancy in adulthood |
小児がんの既往者は一般の人々と比較し最高28%平均余命が短く、したがって通常よりもはるかに長期間にわたり厳重に監視すべきであるとAnnals of Internal
Medicine 4月16日号に掲載された。研究者らはあるコンピュータモデルを作成し、小児がんに対する治療を受け、少なくとも5年経過した15歳以上の人々における疾患および治療に関連した死亡リスクの累積効果を推定した。解析の結果、生涯における平均晩期再発率0.10、他のがんまたは合併症に対する治療関連死率0.15、および他の原因による死亡率0.05が示された。既往者の平均余命は50.6年であり、一般の人々より10.4年短かった。平均余命の短縮期間は腫瘍のタイプにより異なり、腎がんでは4.0年、脳または骨がんでは17.8年であった。過去20年間に治療が大幅に変化したことで、このデータには限界がある。エディトリアルの筆者らは、医師はこれらの患者を診察する際には過去の治療の複雑性や治療の長期および晩期影響を考慮する必要がある、と結論付けている。
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BRCA変異を有する乳がん患者は対側乳房のがんを発症する確率が4倍高い [2010-04-13] |
Breast cancer patients with BRCA mutations 4 times more likely to develop cancer
in opposite breast |
遺伝性の乳がん関連遺伝子BRCA1またはBRCA2を有する55歳未満の乳がん患者はこれらの遺伝子変異を有さない乳がん患者と比較し対側の乳がんを発症する確率が4倍高い、とのスタディ結果がJournal
of Clinical Oncology 4月5日号に掲載された。後に対側乳がんを発症するリスクは、遺伝子変異を有さない患者と比較してBRCA1変異を有する患者は4.5倍、BRCA2遺伝子を有する患者は3.4倍高かった。55歳未満に乳がんと診断され、いずれかの遺伝子変異を有していた患者が対側乳がんを発現する10年間の累積率は18%であったのに対し、変異を有さない患者の累積率は5%であった。さらに、BRCA1変異を有する者においては、初回診断時の年齢が低いほど対側乳がん発現のリスクが高かった。例えば、初回診断時の年齢が30代半ばの患者における10年以内の対側乳がん発症率は31%であるのに対し、変異を有さない者では7%であった。
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スタディの結果、妊娠と乳がんおよびその生存率の関連が認められた [2010-04-06]
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Studies reveal associations between pregnancy, breast cancer and survival |
出産後12ヵ月以内に乳がんと診断された女性は他の若年乳がん女性と比較し死亡リスクが48%高いとの研究結果が第7回European Breast Cancer
Conference(EBCC7)で発表された。しかしそのスタディにおいて、45歳未満の乳がんと診断された女性2,752人において、妊娠中に診断された場合には死亡のリスクは他の妊娠していない乳がん女性と同等である(3%高いのみ)ことが示された。予測されたように、組織学的な腫瘍のグレード、疾患ステージおよびリンパ節転移の有無は全て生存率と関連があった。もう一つのスタディでは、乳がん既往者の妊娠は安全であり生存率を改善する可能性もあることを示した。研究者らは乳がん既往を有する妊婦1,417人および乳がん既往を有する非妊婦18,059人を対象とした計14のトライアルの結果を解析した。その結果、乳がんと診断された後に妊娠した女性は、妊娠していなかった乳がん既往を有する女性と比較し、42%と有意に死亡のリスクが低かった。
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妊娠中の乳がん患者は胎児の健康を害することなく化学療法を受けることが可能である [2010-04-06]
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Pregnant
women can receive breast cancer chemotherapy without endangering health of their
babies |
妊娠中に乳がんと診断された女性は胎児を危険にさらすことなく化学療法を受けることが可能であるとの研究結果が第7回European Breast Cancer
Conference(EBCC7)で発表された。研究者らは乳がん患者235人(平均年齢33歳)の記録を検討した。乳がんは平均妊娠23週で診断された。まだ全てのデータは完全ではないが、151人中91人が妊娠中に平均2サイクルの化学療法を受けた。出産時週数は平均36週(28〜42週)であった。妊娠中に化学療法に曝露された新生児は曝露のなかった新生児と比較し体重が軽度少なく(平均2,636mg対2,791mg)、禿髪3人、在胎週数による低体重1人、18トリソミーを有し生後1週間で死亡1人、壊死性腸炎を有し生後3週間で死亡1人、敗血症発症1人、好中球減少症発症1人、貧血2人であった。化学療法に曝露されなかった新生児60人においては、一過性無呼吸1人、C反応性蛋白上昇1人、胃腸炎1人であった。これらの結果から、研究者らは、妊娠中に乳がんと診断された患者はほぼ標準的な勧告通りに治療できると述べた。
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