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Luminal-like乳がんの起源の細胞となると思われる前駆細胞が同定された [2010-01-26] |
Progenitor cell identified that appears to be cell of origin for luminal-like breast cancer |
1月19日号のCancer Cellに、2つの前駆細胞群を同定する新たな乳腺細胞分化モデルが提起された。そのうち1つは最も一般的なluminal-like乳がんの起源細胞と考えられる。過去の研究では、これらの細胞群が分子構造を共有しているため全体の乳房組織を作る幹細胞と他の前駆細胞とを見分けることが不可能であった。今回の研究ではluminal-like乳がんが、妊娠中および授乳期に乳房組織内で母乳を生成する構造を作成するのに必要な自己再生細胞である小葉前駆細胞起源であることを示した。マウスにおいてこれらの細胞に不可欠なある蛋白を阻害することにより乳房腫瘍を予防することができた。研究チームは、この前駆細胞群が自己再生および分化においてサイクリンD1と呼ばれる蛋白の活性に依存していることを発見した。彼らは不活性化サイクリンD1およびluminal-like乳がんを増殖させることで知られる遺伝子を有するマウスモデルを作製した。コントロールと比較し、サイクリンD1活性のないマウスは小葉前駆細胞の数が非常に少なくluminal-like腫瘍を有さなかった。筆者らは、この研究結果から治療の標的となる可能性のあるものが同定されるであろうと述べている。
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PET-CTによる全身のスキャンは神経系の合併症の基盤となるがん検索に役立つ [2010-01-26]
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PET-CT whole body scan detects underlying cancer in patients with related neurologic complications |
ポジトロン断層撮影−コンピュータ断層撮影一体型(PET-CT)スキャンによる全身撮影により、他の一般的な検査に比べ神経系の合併症の原因となるがんを正確に検索できるようであるとArchives of Neurology 3月号オンライン版に掲載された。研究者らは、標準的な検査(CTを含む)ではがんが発見できなかった傍腫瘍性神経症候群患者連続56人の医療記録を解析した。全ての患者が2005〜2008年にPET-CTを施行された。PET-CTによりがんを疑わせる異常が22人の患者(39%)に認められ、うち10人(18%)は生検または他の方法でがんと確定診断された。これらのがんのうち2つは甲状腺に、1つは扁桃に、3つは肺に、1つは大腸に存在し、3つは原発不明のがん性リンパ節であった。10人中9人は早期がんであり、この検出により早期治療が可能であった。7人においてがんが寛解し、5人においては経過観察期間中央値11ヵ月後に神経症状が改善した。
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小児がんの既往者は心血管疾患につながる疾患のリスクが高い [2010-01-19]
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Pediatric cancer survivors at risk for diseases that predispose them to cardiovascular disease |
小児がんの既往者は脂質異常症、糖尿病、高血圧など、いずれも心疾患につながる疾患のリスクが非常に高くこれらのリスクファクターは一般の人々よりも早期に認められるとの研究結果がCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載された。研究者らは、Childhood Cancer Survivor Study(小児がん既往者スタディ)から小児がんの既往者8,599人および彼らの兄弟姉妹2,936人のデータを抽出した。その結果、小児がん既往者は彼らの兄弟姉妹と比較し降圧薬を内服している率が2倍近くあり、脂質異常症治療薬を内服している率が60%高く、糖尿病を有する率が70%高かった。心血管疾患につながる心血管疾患リスクファクターの重複(clustering)は、全身照射により5.5倍、胸部および腹部の照射により2.2倍上昇した。小児がん既往者の運動不足は心血管リスクファクターの重複を70%上昇させた。小児がんの既往のない子供と比較し、スタディ時に年齢が上であった者は心血管リスク重複のリスクが8.2倍高かった。
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小児髄芽腫は神経幹細胞から成長することもあり異なった疾患になりえる [2010-01-19] |
Pediatric medulloblastomas can grow from neural stem cells creating a distinct
form of the disease |
Oncogeneに掲載された新たな研究の結果、髄芽腫はある型の脳幹細胞から成長することもあり、これらのがんは異なった型の疾患であり全く異なる治療の必要性が示された。これまでの研究で、人の脳には少数の神経幹細胞が存在しこれにより脳自体をある程度修復できることが示されている。研究者らはマウスの神経幹細胞を用いて、がんにおいて役割を果たすことが知られている2つの特異的な遺伝子(Rbおよびp53)がこれらの神経細胞において正常に機能せず細胞の増殖を抑制できない状態にすることを明らかにした。彼らはまた、マウスにおいてこれらの細胞が髄芽腫になることも確認した。さらに、これらの腫瘍の遺伝子構造を詳細に観察し髄芽腫患者から摘出した腫瘍と比較してある特異的なパターンを発見した。この遺伝子パターンの腫瘍を有する患者の生存率が最も低いことも明らかにした。研究者らはこれらの結果は、最もaggressiveな髄芽腫を理解する初めの一歩として極めて重要であると考えている。彼らは今、この疾患に立ち向かうためにより有効で可能な限り毒性の少ない治療法を探し始めている。
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選択された卵巣がんバイオマーカーは早期スクリーニングにおいてあまり有用ではない [2010-01-12]
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Selected ovarian cancer biomarkers not very useful for early screening |
バイオマーカーCA125、human epididymis protein 4 (HE4)、およびメソテリン濃度は卵巣がんの臨床診断の3年前から上昇し始めるが、実質的に上昇するのは診断前1年以内であるとの新たなスタディ結果がJournal of the National Cancer Institute 12月30日号に掲載された。研究者らは、肺がんリスクの高い人におけるβカロチンとレチノールの肺がん発症に対する効果を試験した、無作為化二重盲検プラセボコントロール化学予防トライアルCarotene and Retinol Efficacy Trialで保存されてあった血清サンプルを解析した。卵巣がんと診断され血清が得られた34人とマッチさせたコントロール70人を抽出した。その結果、血清中CA125、HE4およびメソテリンはがん患者において診断の3年前より軽度上昇していたが、実質的に上昇したのは診断の約1年前に過ぎなかった。マーカーが上昇した時点でのがんのステージは不明である。これらのデータは、臨床診断の3年前の卵巣がんの存在を示唆するが、これらのマーカーのリードタイムは1年未満であり早期スクリーニングにおける有用性は低いことを示唆している。
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大腸内視鏡検査後には左側大腸の新生物発見率は右側よりも低い [2010-01-12]
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Following colonoscopy, fewer left-sided colorectal neoplasms found than right-sided |
過去10年間に大腸内視鏡検査を受けた集団では左側進行大腸新生物有病率は実質的に少ないが、右側に関してはそうではないとJournal of the National Cancer Institute 12月30日号に掲載された。大腸内視鏡の大腸がん予防効果に関するスタディは行われてきたが、地域住民におけるエビデンス、特に解剖学的部位に関しては乏しい。これを調査するためにドイツの研究者らは、Saarland州で55歳以上の参加者3,287人に対し2005年5月から2007年12月の間に大腸内視鏡のスクリーニングを施行し、横断研究を行った。過去の大腸内視鏡検査歴は標準的な質問票で聴取し、進行大腸新生物との関連を調査した。進行大腸新生物が発見されたのは、過去に大腸内視鏡検査を受けたことのない2,701人中308人(11.4%)であったのに対し、過去10年以内に大腸内視鏡検査を受けた者586人においては36人(6.1%)であった。
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化学療法によるラットの心臓傷害が自己幹細胞を用いた治療で回復した [2010-01-05]
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Heart damage from chemotherapy is reversed in rats by treatment with their own stem cells |
ラットにおいて化学療法薬による心臓組織傷害が、がん治療に暴露されていない自己の心臓幹細胞(CSCs)を用いることにより回復した。これらの細胞は心不全から回復させたとの新たなスタディ結果がAmerican Heart Association学会誌Circulationに掲載された。このスタディではアントラサイクリン系薬剤ドキソルビシンを用いた治療後に心不全を発症したラットを追跡した。研究者らは化学療法を開始する前に細胞を採取した。これらの細胞は増殖し保存された。ラットはその後ドキソルビシンで治療された。研究者らは心傷害発現後にドキソルビシンに暴露されていないCSCsを移植し、これらが傷害を修復するかどうかを観察した。この治療により心筋が救済された。この初期段階の研究は、ある種のがんには非常に有効なアントラサイクリンを投与された患者への研究に繋がるであろう。しかし、アントラサイクリンは心不全を来しうる心傷害を引き起こすため、医師はしばしば投与量を制限せざるを得ない。研究者らは、もしこの方法が人においても有効であることが証明されれば、心臓幹細胞を化学療法前に収集、増殖し保存することができるとの仮説を立てている。心不全が起きたら、患者は自己の心臓幹細胞の投与を受け再生することができるようになるであろう。
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新薬は非小細胞肺がんに対しquinazolinesよりも有効な可能性がある [2010-01-05]
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New agent found to be more potent than quinazolines against non-small cell lung cancer |
新たな抗がん剤の原子構造を作成し試験し図解することができることにより、一般的な薬剤耐性肺がんの成長を停止させる化合物を発見できるとのスタディ結果がNature 12月24/31日号に掲載された。イレッサとタルセバに感受性がなくなった非小細胞肺がん(NSCLC)が、ある特異的な構造上の欠損を有する上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼに対し働く化合物により治療できることが報告された。研究者らは、現在存在する治療薬は、理論上はEGFR T790Mに強固にまたは完全に結合すべきなのであるが実際はしないため、その能力を失うとの仮説を立てた。この順応性を改善するためにより全体的に働くと思われる、中心部に異なるピリミジンを有する一群の阻害薬を準備した。EGFR T90Mを有するNSCLC細胞に対するこれらの薬剤の効果を実験室において試験し、その結果、細胞増殖抑制効果がquinazolinesの最大100倍の可能性のあるいくつかの薬剤が発見された。予想外の利点として、これらの化合物は正常なEGFRを有する細胞の成長抑制能は100倍近く低く、これにより現在使用されている薬剤よりも副作用が起こりにくいと考えられる。
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