リスクの軽減、薬物療法の改善および生活習慣の改善が2010年心血管系の重要な研究結果である [2010-12-28]

Reducing risks, improving medical treatment and improving lifestyle behaviors key findings of cardiovascular research in 2010
リスクの軽減、薬物治療の改善および生活習慣の改善が今年の心血管系および脳卒中研究の重要な研究結果の上位を占めたとAmerican HeartおよびAmerican Stroke学会が認めた。心血管系のハイライトには糖尿病患者のリスク軽減のための治療、ハイリスク患者における新出現の開胸手術代替治療としてのカテーテルを用いた大動脈弁植え込み術、およびリサーチの結果、医療従事者以外の目撃者による成人に対する心臓マッサージのみのCPRにより生存率が改善することが示されたことなどが含まれた。心房細動患者の脳卒中一次予防に実用的なクマジンの代替薬がこの20年以上で初めて認められた。また、ICDペーシングにより心不全患者の予後を改善しうること、単心室の小児におけるNorwoodシャントの無作為化トライアルの結果この型のシャントは他よりも優れていること、およびPLATO研究班の行った新たな研究の結果ticagrelorはクロピドグレルよりも予後を改善し有害事象を減少させる可能性が示唆されることなどが示された。他のスタディの結果、肥満や高血圧は減塩により好影響を受け、特に減量を試みている人々において運動は心−代謝因子を改善する重要な生活習慣因子であることも示された。

迅速な治療、新たな技術、生活習慣および遺伝子が2010年の脳卒中研究の重要なトピックスである [2010-12-28]

Timely treatment, new techniques, lifestyle behaviors and genetics are key topics of stroke research in 2010
American Heart AssociationとAmerican Stroke Associationが初めて心血管疾患および脳卒中における研究の進歩に焦点を当てた2つの別々のリストを公表した。2つの学会が特筆した学会脳卒中研究には、治療までに要する時間の影響の強さを示した過去の結果を再強調した急性虚血性脳卒中に対する静脈内組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)投与に関するトライアルと、発症後4.5〜6時間を超えて施行した後期治療により死亡率が増加することを初めて示したトライアルを組み合わせた患者解析結果が含まれた。脳血管の血栓を清浄するextravasationと呼ばれる新たなメカニズムが発見され、また大規模CRESTトライアルの結果、頸動脈内膜切除術と頸動脈ステント術の成功率および合併症率が同等であったが、若年患者(70歳未満)においてはステント術の方が有益であり、一方高齢者においては内膜切除術の方が有益であることが示された。経頭骸ドプラ超音波は頸動脈狭窄を有し脳卒中リスクが高く手術やステント術の恩恵を被る無症状患者の同定に成功し、ロボット補助療法は脳卒中後の上肢機能を改善した。他の研究者らは脳出血発症後早期の強力な降圧療法により脳出血の拡大を軽減することを示し、ある大規模スタディは余暇時間のウォーキングなどの身体活動により脳卒中リスクが低下することを示した。最後に、遺伝子学により動脈瘤治療に関する重要な知見が示された。

閉経後乳がん患者においてアロマターゼ阻害薬は心血管系疾患のリスクを上昇させる [2010-12-21]

Aromatase inhibitors increase risk of cardiovascular disease in postmenopausal women with breast cancer
乳がん治療目的でアロマターゼ阻害薬を内服する閉経後女性は心血管系疾患発症のリスクが高い可能性があるとのメタ解析の結果が、第33回CTRC- AACRサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。これらのデータから、心血管系疾患リスクファクターを有し乳がん治療を受けている女性に対しては、アロマターゼ阻害薬の使用を短期間にすることを考慮すべきであることが示唆された。研究者らは、閉経後早期乳がん患者に対しタモキシフェンとアロマターゼ阻害薬を比較した7つの大規模無作為化臨床試験のデータを調査した。アロマターゼ阻害薬の使用により、使用期間に関わらず心血管系疾患発症の確率が 20%上昇した。しかし、アロマターゼ阻害薬使用によりまた、静脈血栓症および子宮内膜がんのリスク低下も認められた。二次解析の結果、アロマターゼ阻害薬を初回治療として用いた場合とタモキシフェン治療後にアロマターゼ阻害薬に変更した場合とを比較すると、重篤な有害事象のリスクは同等であった。

頸動脈内膜切除術施行前に抗血小板薬内服中止は必要ないようである [2010-12-21]

Patients may not need to discontinue anti-platelet therapy prior to a carotid endarterectomy
外科臨床において術前に抗血小板薬を中止することは一般的であるが、Annals of Vascular Surgery 12月号に掲載された頸動脈内膜切除術(CEA)施行患者を対象とした最近のあるスタディの結果、この処置は不必要である可能性があることが示唆された。このスタディにおいて、学会認定血管外科医5人が2006年6月〜2009年4月にCEAを施行された患者連続260人をレトロスペクティブに解析した。これらの患者のうち術中にクロピドグレルを内服し続けた50人を、術前にクロピドグレルを中止した患者と比較した。CEA手技の選択は術者の裁量に任せられ、パッチ(Dacron、牛の心膜または静脈)を用いた内膜切除術、血管形成術または外転内膜切除術などが含まれた。クロピドグレル内服を継続した患者はアスピリンのみを内服している患者と比較し手術時間が長かったが、施術に伴う出血量は統計学的に有意ではなかった。クロピドグレル内服中の患者に発現した出血性合併症のほとんどはDacronパッチ血管形成術にて内膜切除術を施行された患者においてであった。

新たな血液検査により無症状の人々における心疾患を検出できる [2010-12-14]

New blood test could detect heart disease in people with no symptoms
心筋梗塞を有していることを確認するのに一般的に使用される血液検査のより高感度版により、一見健康そうな中年が未知の心疾患を有し死亡のリスクが高いかどうかを示すことができる可能性があるとJAMA 12月8日号に掲載された。研究者らは、心筋トロポニンT(cTnT)と呼ばれる蛋白の新たな高感度検査により、3,500人以上から得た検体の約25% においてこの蛋白が検出できたことを明らかにした。またこのスタディから検出可能なトロポニンTレベルを有する人は6年以内に心疾患で死亡する確率が7倍近く高いことも示された。過去の研究からcTnTレベルと心疾患との関連が示されていたが、cTnTの標準的な検査では非常に低いパーセンテージの人においてしか検出できず、心疾患症状を有さない人々のリスク評価におけるこの検査の有用性を制限していた。今回のこのより高感度の検査により、慢性心不全および慢性冠動脈疾患を有するほぼ全員の循環cTnTレベルを検出でき、また慢性心不全および慢性冠動脈疾患のリスクは経時的な心筋トロポニンTの変化に一致して変動した。

たとえ救急医療ヘリコプターであっても他院への転送により心筋梗塞の治療は遅延しうる  [2010-12-14]

Even with helicopter EMS, hospital transfer can delay treatment for myocardial infarction
救急医療ヘリコプターは緊急治療の必要な患者の救命手段となり得るが、救急医療を稼働させる過程がしばしば治療までの推奨される時間より遅らせてしまうとのスタディ結果がAnnals of Emergency Medicineに掲載された。ある多施設レトロスペクティブカルテ調査において研究者らは、病院ベースの救急医療ヘリコプター(HEMS)により転送されたST上昇心筋梗塞(STEMI)患者の多くが推奨時間内に治療を受けていないことに気付いた。カルテ調査を用いて研究者らは、病院ベースのヘリコプターで転送されたSTEMI患者のうち国家目標に合致した者の割合を推定することを目的とした。彼らはGreater Cincinnatiの16の依頼元病院から6の受け入れ病院へ救急医療ヘリコプターにより転送された患者179人の記録監査を解析し、その結果、PCI 目的で転送された患者のうち90分の目標時間内に治療を受けたのはわずか3%であり、半分以上は2時間以上経過してから治療を受けたことが明らかになった。このスタディの結果、PCIの可能な病院へ転送する前に線溶療法を受けた患者は5人に1人に過ぎなかった。これらのうち、30分の目標時間内に治療を受けたのは半分に満たなかった。筆者らはHEMSを稼働する過程での遅延が治療の遅延に影響しうると述べている。
冠動脈CT造影により、閉塞性睡眠時無呼吸を有する人々が進行性動脈硬化のハイリスクであることが示された [2010-12-07]
Coronary CT angiography shows people with obstructive sleep apnea at higher risk for aggressive atherosclerosis
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を有する人々は冠動脈に非石灰化プラークを有する確率が高いと2010年RSNAで発表された。このスタディにおいて、平均年齢61歳のOSAを有する平均ボディマスインデックス(BMI)33の肥満者49人と、OSAを有さない肥満者(平均年齢60歳、平均BMI 30)に冠動脈CT造影(cCTA)を施行した。OSA群は男性26人と女性23人であり、それとマッチさせたコントロール群は男性22人および女性24人であった。造影検査から、冠動脈の石灰化プラークは両群間で差がないことが示されたが、血管内プラークの全体の構成が著しく異なっていた:OSAを有する患者は非石灰化および混合性プラークを有する確率が有意に高かった。OSAを有する患者はまた冠動脈狭窄を有する率が有意に高く、より広範な血管に病変が認められた。OSA患者の88%が少なくとも1枝に狭窄を有し、OSAを有さない患者におけるその割合は59%であった。OSAを有する患者の3分の1が4本の血管に狭窄を有していた。
 
 
 

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