マウスにおいてアポリポ蛋白A-Vが中性脂肪レベルを低下させたことを受けて高中性脂肪血症の治療薬となる可能性が示された [2010-10-26]

Apolipoprotein A-V shown as a possible treatment for high triglyceride levels after it successfully lowered levels in mice
中性脂肪を分解するのに役立つ蛋白の注射が将来家族性高中性脂肪血症治療に役立つ可能性があるとの新たなスタディの結果がArteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biologyに掲載された。このスタディにおいて研究者らは、アポリポ蛋白A-Vと呼ばれるある蛋白を欠失させるように遺伝子操作し血中中性脂肪レベルを上昇させたマウスに新たな化合物を試した。アポA-Vは中性脂肪を分解するのに必要な酵素であるリポ蛋白リパーゼの効果を増幅させる。この活性型化合物はアポA-Vとリン脂質を合成させた、再構成された高密度リポ蛋白の形のものからなっている。研究者らはアポA-Vを欠失し中性脂肪レベルが非常に高いマウスにアポA-Vを注射し、それの中性脂肪レベルに与える影響を明らかにした。治療終了までに中性脂肪レベルは約87%低下した。しかし、GPIHBP1と呼ばれる蛋白を欠失した遺伝子組み換えマウス(これもまた中性脂肪レベルが非常に上昇する)においてはアポA-V注射は中性脂肪レベルを低下させなかった。静脈内アポA-VはアポA-Vレベルに影響する遺伝子変異のために重度に中性脂肪レベルが上昇したヒトにおいて治療上の有益性を有する可能性がある。

メタボリック症候群の治療や頸動脈血管形成術の施行が改訂後の脳梗塞再発予防ガイドラインにおいて推奨されている [2010-10-26]

Treating metabolic syndrome, undergoing carotid angioplasty recommended in revised recurrent stroke prevention guidelines
メタボリック症候群の治療や頸動脈血管形成術施行によって脳卒中再発または一過性脳虚血発作(TIA)が予防できる可能性があるとAmerican Heart Association/American Stroke Association 改訂版に掲載された。2006年改訂版に続き、エビデンスに基づくガイドラインがStrokeに掲載される。この新たなガイドラインは脳卒中やTIA既往者にとって重要な改訂を特徴とする。例えば、メタボリック症候群と診断された患者は生活習慣の改善(食事、運動および減量など)に関する指導や、特に高血圧や高脂血症など脳卒中のリスクファクターでもあるメタボリック症候群の因子の治療を受けるべきであるとされている。ステント挿入は頸動脈閉塞を有する合併症リスクの低い患者において手術の代替療法となる可能性がある。頸動脈閉塞を有する患者は全て抗血小板薬、スタチンおよび生活習慣リスクファクターの改善などの多面的な医学的アプローチで治療されるべきである。心房細動により脳卒中のハイリスク患者のワルファリン内服を一時的に中止する場合には、血栓リスクを軽減するためにブリッジング療法として低分子ヘパリンを投与すべきである。高血圧は脳卒中再発の最も重要なリスクファクターであることが明らかにされているため、コントロールを最良にするために適切な薬物療法で治療する必要がある。
糖尿病ではない者においてインスリン抵抗性は虚血性脳卒中リスクを上昇させる [2010-10-19]
Insulin resistance in non-diabetics associated with increased risk of ischemic stroke
インスリン抵抗性は糖尿病を有さない者において脳卒中のリスクを上昇させるようであるとArchives of Neurology 10月号に掲載された。研究者らは、多民族からなる都市地域における脳卒中リスク、発現率および予後を評価したスタディであるNorthern Manhattan Studyの糖尿病を有さない1,509人に対し、インスリン抵抗性指数(HOMA)を用いてインスリン抵抗性を評価した。平均8.5年間の追跡期間中に血管性イベントは180人に発現し、うち46人は致死性または非致死性虚血性脳卒中を、45人は致死性または非致死性心筋梗塞(MI)を発症し、121人は血管性疾患により死亡した。HOMAインデックスが最上の四分位に含まれた者は、それより下位の四分位に含まれた者と比較し脳卒中リスクが高かった。確立された心血管リスクファクター―血糖値、肥満およびメタボリック症候群―で補正しても、この相関関係は消失しなかった。インスリン抵抗性と初回脳卒中の関連は男性において女性よりも強かったが、人種や民族によって差はなかった。インスリン抵抗性が最上の四分位に含まれた者は全血管性イベントリスクが45%高かった。しかし、インスリン抵抗性はMIまたは血管死を別々に比較すると相関が認められなかった。

加齢黄斑変性症に対するある新たな治療法は心血管リスクを上昇させないようである [2010-10-19]

Certain new therapies for age-related macular degeneration do not appear to increase cardiovascular risk
加齢黄斑変性(AMD)に対する新たな治療法―化学療法薬硝子体内注射や眼疾患に対する使用を承認された関連化合物を含む―は既存の治療法と比較し心血管系合併症または死亡のリスクを上昇させないようであるとArchives of Ophthalmology 10月号に掲載された。研究者らは2005〜2006年にAMDの治療を受けたメディケア受益者146,942人の記録を解析した。死亡、心筋梗塞(MI)、出血および脳卒中に関して2007年を通して追跡された。ベバシズマブで治療された患者群と他の治療法で治療された患者群とで死亡やMIのリスクに差はなく、出血性イベントまたは脳卒中も治療群によって差がなかった。ラニビズマブ治療を受けた患者は光線力学的療法を受けた患者よりも死亡またはMI発症率が低く、ペガプタニブを投与された患者よりもMI発症率が低かった。筆者らは光線力学的療法やペガプタニブ使用により全身性の有害事象リスクが増加するとのエビデンスはなく、したがってこの差は交絡因子が残存していることを示唆している可能性があると述べている。

C反応性蛋白値の民族差がスタチン療法の適格性および心血管系リスクの予測に影響する可能性がある [2010-10-12]

Varying C-reactive protein levels in ethnic groups may affect statin eligibility and prediction of cardiovascular risk
C反応性蛋白(CRP)平均値には民族差があり、これがグループ間の心臓リスクの差として知られている一部であり、医師が心血管リスクを推定しスタチン療法を決定するのに影響を与える可能性があるとの新たなスタディ結果がCirculation: Cardiovascular Geneticsに掲載された。研究者らは、公表された89スタディの対象患者221,287人のデータのシステミックレビューおよびメタ解析を施行し、年齢やボディマスインデックスで補正後もなおCRP値に民族差があることを発見した。アフリカ系米国人はCRP値が最も高く(平均2.6mg/L)、次いでヒスパニック(2.51mg/L)、南アジア人(2.34mg/L)そしてコーケシアン(2.03mg/L)の順であった。東アジア人のCRP値が最も低く、1.01mg/Lであった。この順序は、民族間の2mg/Lの閾値を超える可能性を見積もっても、どの年齢においても同様であった。東アジア人では50歳の時点でCRP>2mg/Lである確率は半分未満であり、60歳では40%未満であった。筆者らは、CRP 2mg/Lのみのリスクレベルでは、特に他のリスクファクターを考慮しない場合は、異なる民族間でスタチンの必要性を過剰または過小評価する可能性があると述べている。

心イベントのリスクを有する患者において周術期のβ遮断は術後の短期および長期死亡率を低下させる [2010-10-12]

Perioperative beta-blockade reduces short- and long-term mortality after surgery in patients at risk for cardiovascular complications
Anesthesiology 2010年10月号に掲載のスタディによると、周術期のβ遮断により―リスクのある患者に特化したガイドラインを用いて投与した場合―有意に30日間および1年間の死亡率が低下したことが示された。また、β遮断薬投与中止により死亡率が上昇することも明らかにされた。この周術期心リスク軽減療法(Perioperative Cardiac Risk Reduction Therapy:PCRRT)プロトコールは、心有害事象リスクのある患者保護のために作成され施行された。PCRRTプロトコールはSan Francisco Veterans Affairs Medical Centerにおいて1996〜2008年に用いられ、38,779人の解析を行った。コンピュータ医療記録の補助により、費用対効果に非常に優れたこの治療法がリスクを有する患者の周術期死亡率を低下させることが証明された。筆者らは、周術期β遮断はリスクを軽減するための他のほとんどの治療法の何分の1かの費用で行うことができ、しかも効果は同等もしくは優れている、と述べている。
PARTNER Trial:カテーテルを用いた大動脈弁植込み術は状態が不良で従来の手術を受けられない患者において有望であることが示された [2010-10-05]
PARTNER Trial: Transcatheter aortic valve implantation shows promise for patients too sick for conventional surgery
New England Journal of Medicineに掲載されたPARTNER臨床試験の1年間のデータから、カテーテルを用いた大動脈弁植込み術(TAVI)は標準的な治療法と比較し、重度の大動脈弁狭窄を有するハイリスク患者の死亡率が低いことが示された。ハザード比0.55に基づくと、TAVI(経カテーテルEdwards SAPIEN心臓弁を用いた)を施行された患者の1年後の死亡率は50.7%から30.7%に低下した。さらに、総死亡または再入院を合計したエンドポイントは標準治療の71.6%からTAVIを用いることにより42.5%に低下した。1年後に生存していた患者のうち、循環器系の症状を有する患者の割合はTAVI施行患者において標準治療施行患者と比較し有意に低かった(25.2%対58%)。30日後の重度の脳卒中および重度の血管合併症の発現率はTAVIにおいて高かった(それぞれ5.0%対1.1%、16.2%対1.1%)。TAVI施行後1年間に心臓超音波検査で評価した狭窄または閉鎖不全の有無で評価した生体弁機能低下を来した患者はいなかった。この結果は第22回Transcatheter Cardiovascular Therapeutics(TCT)学会のレイトブレイキングトライアルとして発表された。

クリニックを受診する際にソフトウェアをダウンロードすることによりICDの不適切な電気ショックを減らすことができる [2010-10-05]

Software downloaded during office visits could cut risk of inappropriate ICD shocks
定期検診の際にソフトウェアをダウンロードすることにより、植込み型除細動器(ICD)患者に対する不適切な電気ショックのリスクを50%減らすことができるとの研究結果がCirculationに掲載された。ダウンロード可能なLead Integrity Alert(LIA)ソフトウェアは疑わしい電気信号に関してICDリードをモニターし、患者に警告し電気ショックを起こしにくくするよう再調整する。この前向きスタディにおいて研究者らは、標準的な毎日のモニタリングを受けた患者213人とこのダウンロード可能なLIAを追加しモニターされた患者213人を比較した。不適切な電気ショックを1回以上受けたのは、標準モニター群で70%であったのに対しLIA追加群におけるその割合はわずか38%であった(46%のリスク軽減)。不適切な電気ショックが5回以上あった患者は標準モニター群で50%であったが、LIA追加群ではわずか25%であった(50%のリスク軽減)。LIA追加群では72%が不適切な電気ショックを受けないかまたは不適切なショックの3日以上前に警告があったが、その割合は標準モニター群では50%であった。将来的にソフトウエアをアップグレードすることにより、新たなデバイスを植え込み直すことなくICDを改良させることが可能となるであろう。
 



 
 

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