|
◆ |
肥大型心筋症患者に対する心臓移植の生存率は高い [2010-08-31] |
Heart transplant patients with hypertrophic cardiomyopathy have high survival rates |
肥大型心筋症(HCM)に対する心臓移植術の短期生存率は他の心疾患に対する心臓移植術と同等であり、長期生存率はより高い可能性があるとの研究結果がCirculation:
Heart Failureに報告された。研究者らは、全米の全移植患者のデータベースであるUnited Network of Organ Sharing Registryを用いて、成人患者26,706人の臨床上および生存に関する特徴を解析した。参加者のほとんどが白人(81%)の男性(79%)であり、平均年齢は52歳であった。しかし、HCM患者は若い傾向にあり、平均年齢は43歳で半数以上が女性であった。参加者の3分の1近く(31%)は喫煙していたが、HCM患者におけるこの割合ははるかに低かった(17%)。これらの患者全てが1990年1月から2004年12月の間に移植を受けた。術後1年間の生存率はHCM患者(85%)と他の心疾患患者(82%)とで同等であった。術後5年で生存率は異なり始め、HCM患者で75%、他の心疾患患者70%であった。術後10年では、両群の生存率は低下したが、HCM患者においては他の心疾患患者よりも有意に高かった(61%対49%)。 |
|
◆ |
hsCRPが上昇している“中等度リスク”の者はコレステロールレベルが正常であってもスタチン療法が有益である [2010-08-31] |
People at "intermediate risk" of heart disease with elevated hsCRP benefit from statin therapy even if cholesterol levels are normal |
炎症マーカーである高感度C反応性蛋白(hsCRP)が高レベルの中等度心血管疾患リスクを有する者は、コレステロールレベルが既に理想的な範囲内であってもコレステロール低下療法が有益となりうる、とのスタディ結果がCirculation:
Cardiovascular Quality and Outcomesに掲載された。この研究は、無作為化プラセボ対照二重盲検の「予防におけるスタチン使用の有用性の判定:ロスバスタチン評価のための国際トライアル(Justification
for Use of statins in Prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin
[JUPITER] trial)」のデータを新たに解析したものである。このスタディは50歳以上の男性および60歳以上の女性を対象とした。10年間の心血管疾患(CVD)リスクが5〜10%と推定されるhsCRP高値の患者は、コレステロール低下スタチン薬により心血管疾患(CVD)相対リスクを45%低下させることができた。さらに、スタチンを内服することにより10年間のリスクが11〜20%と推定される患者の相対リスクを49%低下させ得た。10年間のリスクが5%未満では、スタチンによるイベントの有意な軽減はなかった。これらのデータは、hsCRP検査は中等度リスクの患者において医師が治療方針を決定する際に使用するのが最も適した用い方である、との現在の勧告を支持するものである。 |
|
◆ |
高品質のチョコレートを中等量摂取することにより心不全のリスクが低下する [2010-08-24] |
Moderate consumption of high quality chocolate linked to lower risk of heart failure |
少量のチョコレートを日常的に摂取する中年および高齢のスウェーデン女性は心不全のリスクが低かったとのあるスタディ結果がCirculation:
Heart Failureに掲載された。この9年間のスタディは、31,823人の女性を対象とし、女性が食べる高品質のチョコレートの量と心不全のリスクとの関連を調査した。この観察研究において研究者らは、Swedish
Mammography Cohortの対象となった48〜83歳の女性から得た自己申告の食品頻度アンケートを解析した。スウェーデン国内の入院および死亡登録のデータを統合し、研究者らは複数の統計学的モデルを用いて心不全とチョコレート摂取に関する結論に達した。摂取されたチョコレートには約30%のカカオが含まれていた。この高品質のチョコレートを週に平均1〜2サービング量食べた女性は心不全を発症するリスクが32%低く、1ヵ月に1〜3サービング量食べた女性はリスクが26%低かった。毎日1サービング以上摂取していた者では、心不全予防効果は認められないようであった。専門家らは、このチョコレートによる心血管系に対する有益性の可能性については、カロリーや脂肪摂取過多などの好ましくないリスクを注意深く評価すべきであると警告している。 |
|
◆ |
心筋梗塞は特に高齢者および冠動脈疾患の既往者においては低い温度下で増加する [2010-08-24] |
Myocardial infarctions increase in colder temperatures especially among elderly and those with previous coronary disease |
外気温が低いことにより心筋梗塞のリスクが上昇するとの新たなスタディ結果がBritish
Medical Journalに掲載された。研究者らは1日の気温が1度低下する毎に心臓発作が約200件増加することを明らかにした。London School
of Hygiene & Tropical Medicineの研究者らは2003〜2006年に心筋梗塞で入院した患者84,010人のデータを調査し、これとイングランドおよびウェールズの日々の気温とを比較した。この結果は大気汚染、インフルエンザ活動性、季節および長期変動などの因子を考慮して補正した。その結果、1日の平均気温が1度低下する毎に28日間の心筋梗塞の累積リスクが2%上昇することが示された。リスクが最も高いのは暴露されて2週間以内であった。75〜84歳の高齢者および冠動脈疾患の既往者は気温低下の影響を受けやすいようであった。長期間にわたりアスピリンを内服している患者は影響を受けにくかった。 |
|
◆ |
多くの心停止患者にとってマウス・ツー・マウスでの人工呼吸を行わないCPRの方が好ましい可能性がある [2010-08-10] |
CPR without mouth-to-mouth rescue breathing may be better for many victims of cardiac arrest |
心肺蘇生(CPR)が必要な男女3,000人以上を対象とした2つのスタディの結果、通行人によるCPRを施行された成人において胸部圧迫のみを施行する群と人工呼吸を用いた標準的なCPRを施行する群に無作為に割り付けた場合の生存率は同等であることが示された。スタディに参加した通行人は全員が電話で911電話指令員からCPR方法を指導された。1つのスタディの1ヵ月後の生存率はそれぞれ8.7%と7%であり、他のスタディにおいては退院時の生存率が12.5%と11%であった。研究者らはこれらの数値は統計学的に同等であると述べている。これら両スタディおよび過去の動物実験の結果から、あるタイプの心停止(ほとんどの場合除細動を必要とする不整脈によるもの)は手のみでのCPRが最も有効であったことが示されている。このスタディに参加した編集者は、さらに研究を行い、あるタイプの心停止では救命のために人工呼吸を組み合わせたCPRの方が有効であるのか、また一般の人々を心発作のタイプを認識し区別することができるようにトレーニングすることが可能であるのかを確認する必要があると述べている。このスタディはNew England Journal of Medicine 7月29日号オンライン版に掲載されている。 |
|
◆ |
心拍出係数低下は磁気共鳴画像で計測した脳容積の減少と関連がある
[2010-08-10] |
Decreased cardiac index is linked to diminished brain volume using magnetic resonance imaging |
心臓を健康に保つことにより脳の老化を遅延させることができる可能性があるとの新たなスタディの結果がCirculationに掲載された。このスタディにおいて心臓拍出係数低下は磁気共鳴画像(MRI)を用いて計測した脳容積低下と関連があった。この観察研究において研究者らは、数十年にわたるFramingham Offspring Cohortの脳卒中、一過性脳虚血発作または認知症歴のない参加者ら1,504人の脳と心臓のMRI情報を調査した。参加者は34〜84歳であり54%は女性であった。研究者らはMRIを用いて心拍出係数を計測し、体表面積で補正し標準化した。脳容積はMRIを用いて計測した。参加者は心拍出係数に基づき3群に分類された。心拍出係数が最も少ない群では心拍出係数が最も大きい群と比較し、脳が約2年老化していた。中間の群は心拍出係数は減少してはいるものの正常レベルを保っていたが、やはり最も大きい群と比較し脳が約2年老化していた。心不全や冠動脈疾患などの心血管疾患を有さない者においても、これらの関連が認められた。 |
|
◆ |
致死率の最も高い心筋梗塞治療の最良の戦略はPCIの可能な病院への速やかな搬送である [2010-08-03] |
Transporting
patients directly to PCI-capable hospitals best strategy for treating deadliest
myocardial infarction |
心筋梗塞(MI)を有する患者の救急管理を改善するための新たな研究の結果、病院での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の定員を拡大することは救急医療サービス(EMS)を用いて既存のPCIセンターに直接患者を搬送するよりも有効性が低いことが示された。最も致死率の高いMIであるST上昇心筋梗塞(STEMI)患者について、EMSによりPCIの可能な病院に直接搬送され閉塞冠動脈の血流を再開させることにより予後は最も改善し経費は最も低かった、とのコンピュータシミュレーションスタディ結果がCirculation:
Cardiovascular Quality and Outcomesに報告された。研究者らは、病院でのPCIの定員を拡大することを含むどのようなストラテジーよりも救急車による搬送の方が2倍以上有効性は高く、経費は20倍以上少ないことを示した。EMSによる搬送を用いることで、患者は救急車でPCIの可能な病院に直接搬送され、PCIを行っていない病院があればそこを回避することになる。病院計画には施設の新設とカテラボの新規スタッフおよび既存施設のスタッフ増員やカテラボの稼働時間の延長などが含まれる。今回のスタディ結果から、地域によってはSTEMI患者に対する搬送プロトコルはより有効であり経費も低下するであろうことが示唆された。 |
|
◆ |
免疫細胞内の脂肪酸合成酵素阻害により動脈硬化リスクが低下する [2010-08-03] |
Inhibiting fatty acid synthase in immune cells decreases atherosclerosis risk |
マウスにおいて、コレステロールレベル低下または他の肥満関連問題減少と関係なく動脈硬化を有意に減少させる方法が発見された、とJournal
of Biological Chemistry 7月23日号に掲載された。この研究チームは脂肪酸合成酵素の産生を阻害することにより動脈硬化を抑制した。彼らは脂肪酸パスウェイ内のマウスのプラークが動脈を閉塞するのを予防する作用のある因子(LXR-alphaおよびABCA1)を同定した。マクロファージ細胞内に脂肪酸合成酵素を有さないマウスにおいては、糖尿病やコレステロールに対しては何も影を及ぼさなかったが、動脈硬化を有する動脈が少なかった。ヒトからマクロファージを取り出しこれらの細胞の脂肪酸合成酵素を阻害しこのマクロファージを体内に注入し戻すことが可能であろうと、筆者らは考えている。さらに、マウスでの観察結果から、この方法によりプラークの蓄積を予防し妨害することにより心筋梗塞や脳卒中を予防できると考えている。マクロファージ内の脂肪酸合成酵素を阻害することにより血管を永遠に正常な状態に維持することができるわけではないが、減量や血糖値コントロールの改善、中性脂肪やコレステロール値の低下など生活習慣を改善させながらリスクを低下させることが可能となるであろう。 |
|
|