|
◆ |
CIB1蛋白の過剰発現が心肥大進行のトリガーとなる可能性がある [2010-07-27]
|
Overexpression
of the protein CIB1 may trigger progression to cardiac hypertrophy |
心肥大の重要な調節分子が同定され、これが心不全および早期死亡の主要な危険因子の治療標的となる可能性があるとNature
Medicine印刷版に先立ちオンライン版において報告された。研究者らはCIB1蛋白(calmyrinとも呼ばれる)の過剰発現が心肥大を引き起こす生化学過程のトリガーとなることを報告した。これには、正常な心筋細胞の成長と機能において重要な生化学因子であるカルシニューリンという酵素の活性化も含まれる。生体の心傷害におけるCIB1のレベル、機能および分子連関をモニターするようデザインされた実験において、マウスに高血圧刺激試験を行った。マウスはCIB1遺伝子を欠失または過剰発現されていた。心臓特異的CIB1を過剰発現させたマウスは著明な心肥大および刺激による機能不全を来したが、CIB1遺伝子を欠失したマウスは肥大および機能不全から保護された。このスタディはCIB1およびそれとカルシニューリンとの相互作用が治療の標的となるとしているが、このデータが臨床的に患者に当てはめることができるようになるにはさらなる拡大した研究が必要であると筆者らは警告している。 |
|
◆ |
飲酒後1時間は脳卒中のリスクが一時的に上昇する [2010-07-27]
|
Stroke
risk temporarily increases for an hour after drinking alcohol |
たった1杯のアルコールでも飲んだ後1時間は脳卒中のリスクが上昇するようであるとの小規模多施設スタディの結果がStroke誌に掲載された。Stroke
Onset Studyの前には、少量の飲酒(1日2杯未満)は長期的には脳卒中のリスクを低下させる可能性があることは知られていたが、飲酒が虚血性脳卒中への即時的な影響を有するかどうかは不明であった。研究者らは虚血性脳卒中患者390人(男性209人、女性181人)に脳卒中発症約3日後に面談をした。14人の患者が脳卒中発症1時間以内に飲酒をしていた。飲酒をしていない場合と比較すると、飲酒後の脳卒中リスクは飲酒後1時間以内で2.3倍高く、2時間以内で1.6倍高く、24時間後はベースラインよりも30%低かった。アルコールの種類はワイン、ビール、蒸留酒の何れでもこのパターンに変化はなかった。脳卒中直前の他のトリガーとなる可能性のある因子(激しい運動やカフェイン飲料摂取)で補正してもアルコールとの関連は変化しなかった。脳卒中発症前1時間以内に2杯以上飲酒した者が1人だけいたが、このデータを削除してもパターンに変化はなかった。 |
|
◆ |
クラスIVの狭心症があると男性よりも女性の方が冠動脈疾患のリスクが3倍高い [2010-07-20]
|
Class
IV angina poses 3 times the coronary artery disease risk for women than men |
最も重篤なタイプの狭心症を有する女性は同様の男性と比較し重症の冠動脈疾患(CAD)を発症するリスクが3倍高い、とJournal
of Internal Medicine 7月号に掲載された。カナダの研究者らは23,771人の患者の医療記録を閲覧し診断冠動脈造影の結果を参照した。CCSクラス(カナダ心血管学会の定義)IVで60歳以上の女性はCAD発症絶対リスクが男性よりも21%高かった。この傾向は60歳未満の女性においても顕著であり、同年代の男性と比較しリスクが11%高かった。一般的にCADと関連のある、糖尿病、高血圧、高コレステロール、喫煙および年齢などの因子で補正すると、クラスIV狭心症によりリスクが女性においては82%、男性においては28%上昇した。しかし、重症のCADを有するのは男性の方が多かった(37%対22%)。重症のCADを有する女性は男性よりも有意に高齢であった(70歳対66歳)。糖尿病により重症CADのリスクは100%上昇し、高コレステロールにより50%、クラスIV狭心症により143%、喫煙により10%、年齢により5%、そして高血圧により1%上昇した。 |
|
◆ |
交通機関に関連した大気汚染への曝露により心拍変動が減少し心臓のリスクが上昇する
[2010-07-20]
|
Personal
exposure to traffic-related pollution is linked to decreased heart rate variability
and increased cardiac risk |
既存の心疾患または肺疾患を有する患者においては、交通機関に関連した高レベルの大気汚染に曝露されることにより心拍変動(HRV)が低下するとのスタディ結果がJournal
of Occupational and Environmental Medicine 7月号に掲載された。携帯用のモニターを用いて大気汚染への個人的な曝露を計測することにより、環境レベルの大気汚染に基づいた過去のスタディでは証明できなかった関連を今回示すことができた。スタディには慢性閉塞性肺疾患または陳急性心筋梗塞を有するアトランタ地域の患者30人が組み入れられ、大気汚染への曝露とHRVとの関連が調査された。患者らの住む地域の大気汚染レベルはHRVとは関連を示さなかった。しかし、患者らが24時間モニターを装着したところ、個人の曝露量(交通機関関連大気汚染−特に元素状炭素および二酸化窒素)はHRV低下と有意に相関した。この結果から、大気汚染レベルとHRV変化との関連を示すには個人レベルの曝露量データが必要であることが示唆された。ボストンで行われた過去のスタディの結果ではHRVと環境レベルの大気汚染に関連が認められたが、このスタディの参加者らは大気汚染測定所の近くに住んでいた。一方、アトランタの患者らは広範な地域に散らばっており、幹線道路からの距離などにより汚染濃度が異なっていた。 |
|
◆ |
不安障害を有する心疾患患者は死亡を含む心血管イベントを経験しやすい [2010-07-13] |
Heart patients with anxiety disorder experience more cardiovascular events, including deaths |
心疾患患者の中で不安障害を有する者は脳卒中、心筋梗塞、心不全および死亡のリスクが高いとArchives of General Psychiatry 7月号に掲載された。研究者らは安定した冠動脈疾患を有する外来患者1,015人を評価し、Diagnostic Interview Scheduleのコンピュータバージョンを用いて全般性不安障害およびうつ病の有無についてスクリーニングした。平均5.6年間の追跡期間の後に計371の心血管イベントが発現した。年齢で補正した後の年間心血管イベントは、全般性不安障害を有する患者106人中9.6%であり不安障害を有さない909人においては6.6%であった。可能性のある交絡因子−性別、合併症、心疾患重症度および薬物療法−で補正した結果、全般性不安障害により心血管イベントリスクが74%上昇した。この結果の説明として、不安はカテコールアミンサージを引き起こしたり、不安症の患者が治療法を探しがちであったり(心血管疾患の診断は増えるが死亡増加の説明にはならないが)、あるいは不安症や心血管イベントを起こしやすい共通の因子が存在する可能性があるかもしれないと筆者らは述べている。 |
|
◆ |
高齢者においてビタミンD欠乏症はメタボリックシンドローム発症リスクを上昇させるとのエビデンスが増加している [2010-07-13] |
Evidence mounting that vitamin D deficiency adds to risk for developing metabolic syndrome in elderly |
第92回Endocrine Society学会で発表されたスタディ結果によると、高齢者は一般的にビタミンD低下症の人が多くビタミンD欠乏症はメタボリックシンドロームのリスクとなる可能性があるとの増加しつつあるエビデンスをさらに追加した。研究者らは、アムステルダムにおいて1995〜1996年に行われた長期老齢化スタディ(the Longitudinal Aging Study)に参加したオランダの代表的な高齢者集団(1,300人近くの65歳以上の白人男女)におけるビタミンD欠乏症の有病率が48%であることを示した。全体の37%近くがメタボリックシンドロームを有していた。血清中25ヒドロキシビタミンが50nmol/L未満(ビタミンD欠乏症と考えられる)の者は、ビタミンDレベルが50を超えている者と比較しメタボリックシンドロームを有する確率が高かった。リスク上昇は特にメタボリックシンドロームの2つのリスクファクター(低HDLコレステロール血症および腹囲増大)の存在により生じた。リスクに男女差はなかった。研究者らは、2009年からの追跡調査データを用いて低ビタミンDレベルで糖尿病を発症した患者数を調査する予定である。 |
|
◆ |
2型糖尿病治療薬rosiglitazoneはピオグリタゾンと比較し脳卒中、心不全および死亡のリスクを上昇させる [2010-07-06] |
Type 2 diabetes medication rosiglitazone associated with increased risk of stroke, heart failure and death, compared to pioglitazone |
65歳以上の患者において糖尿病治療薬rosiglitazoneはピオグリタゾンと比較し、脳卒中や心不全のリスク、および総死亡率を上昇させることが示された。この論文はJAMAオンライン版6月28日号に掲載され、プリント版7月28日号に掲載予定である。研究者らは2006年7月から2009年6月の間にrosiglitazoneまたはピオグリタゾンによる治療を開始された患者227,571人(平均年齢74.4歳)のデータを評価した。3年間の経過観察期間中に心筋梗塞(MI、致死性21.7%)1,746例、脳卒中(致死性7.3%)1,052例、心不全による入院(致死性2.6%)3,307例、および総死亡2,562例が認められた。解析の結果、MIリスクに関してはrosiglitazoneとピオグリタゾンに差はなかったが、rosiglitazoneはピオグリタゾンに比べ、心不全のリスクを1.25倍、脳卒中のリスクを1.27倍、死亡のリスクを1.14倍上昇させた。さらにArchives of Internal Medicine 7月26日号に掲載予定である入手可能な臨床試験のメタ解析の結果、rosiglitazone開始後11年後にこの薬剤内服に関連してリスクが上昇しており、利益/リスク比が好ましくないことが示唆された。 |
|
◆ |
厳格な血圧およびコレステロールレベルコントロールは全ての糖尿病患者に有益ではない可能性がある [2010-07-06] |
Aggressive control of blood pressure and cholesterol levels might not benefit all patients with diabetes |
ある数理モデルによると、糖尿病患者の中には血圧やコレステロールレベルの厳格なコントロールは有益ではなく有害にさえなる者もいる、とArchives of Internal Medicine 6月28日号に掲載された。研究者らは1990年代に糖尿病であった30〜75歳の患者のデータから調査を開始した。この時点では厳格なコレステロールおよび血圧コントロールは一般的ではなかった。低LDLレベルおよび低血圧の患者を除くと、平均LDL-Cレベルは151mg/dLであり、平均血圧は144/79mmHgであった。研究者らはその後これらの患者のLDL-Cレベルが100mg/dL未満および血圧が130/80mmHg未満となるまで、より強力な治療を行った。これらの目標値まで治療することにより質調整生存年−完全な健康状態の生存年−は、LDL-Cに関しては1.5増加し血圧に関しては1.35増加した。治療に関連した有害性(スタチンを内服することによる筋肉痛や複数の薬剤を内服することのセイフティハザード)を考慮すると、リスク/ベネフィットに基づいて強化治療が禁忌であろうと思われる多くの症例が同定された。 |
|
|