葉酸やビタミンB12を用いてホモシスチンレベルを低下させても心筋梗塞や脳卒中は減少しないようである [2010-06-29]

Lowering homocysteine levels with folic acid and vitamin B12 does not appear to reduce risk of myocardial infarction or stroke
心筋梗塞(MI)の既往があり葉酸やビタミンB12を用いて血中ホモシスチンレベルを低下させた患者において、MI、冠動脈死または脳卒中のリスクは低下しなかったとJAMA6月23/30日号に掲載された。しかし、葉酸のサプリメントにより疑われているがんのリスク上昇は認められなかった。研究者らは英国の二次医療機関のMI既往者12,064人を葉酸2mg/dayおよびビタミンB12 1mg/dayまたはプラセボを内服する群に無作為に割り付けた。ビタミンを投与された患者においてはホモシスチンレベルが平均3.8μmol/L(28 percent)低下した。6.7年間の経過観察期間で、主要な血管イベントが葉酸とビタミンB12群投与患者6,033人中1,537人(25.5%)に、プラセボ群6,031人中1,493人(24.8%)に発現した。この差は有意ではなかった。ビタミン内服は脳卒中(ビタミン群4.5%対プラセボ群4.4%)、冠動脈以外の血行再建術(ビタミン3.0%対プラセボ2.5%)、主要な冠動脈イベント(ビタミン20.4%対プラセボ19.6%)、または新たな原発がん(皮膚悪性黒色腫以外:ビタミン11.2%対プラセボ10.6%)に対しても有意な効果は示さなかった。

心筋梗塞で入院する前の半年間にほとんどの男性が勃起不全を経験する [2010-06-29]

Most men experience erectile dysfunction in the six months prior to hospitalization for myocardial infarction
急性ST上昇心筋梗塞(STEMI)で入院した男性10人中7人が入院前半年間に勃起不全(ED)を有していたとの新たなデータがWorld Congress of Cardiology学会で発表された。University Malaya Medical Centre において2009年に施行された、STEMIで入院した性的にアクティブな男性111人を対象とした1年間のスタディにおいて、75.7%が入院前半年間にEDを経験し、過去に虚血性心疾患歴のある患者全員がEDを有していた(Fisher Exact Test, P=0.020)。さらに、今回のスタディに組み込まれなかった性的にアクティブでない男性81人中24.7%が、スクリーニング6ヵ月以上前から完全なEDを有していた。このスタディにおいてはまた、STEMI歴およびEDを有する患者全員が心臓発作の再発で来院した。筆者らは、これらの患者には積極的なスクリーニングや治療が必要であると述べている。さらに、性的にアクティブでない男性においても4分の1が治療の対象となる完全なEDを有し、これがCADの予知因子でもある可能性があり、厳密に評価する必要があることが示唆された。

地中海式ダイエットは心拍変動を改善し心血管関連死を減少させる [2010-06-22]

Mediterranean-style diet improves heart rate variability and reduces cardiovascular related deaths
双子のスタディの結果、遺伝子により心血管疾患のリスクが高くなっていたとしても地中海式の食事を摂ることにより心機能を改善することが可能になることが示されたとCirculation: Cardiovascular Quality and Outcomesに掲載された。Emory Twins Heart Studyのデータを用いた結果、地中海式の食事―飽和脂肪酸が少なく魚、果物、野菜、豆類、ナッツ類、オリーブオイル、シリアルおよび中等度のアルコール摂取の多いことで特徴づけられる―を摂っている男性は、西洋型食事を摂っている男性と比較し心拍変動(HRV)が大きいことが示された。研究者らは一卵性および二卵性双生児276人の食事摂取頻度調査票から得た食事データおよび心臓に関するデータを解析した。HRV計測のために参加者らは心臓の電気活性を持続的に計測されHolterモニターにより記録された。HRV計測の結果、ダイエットスコアが高いほど心臓の拍動から拍動までの間隔の変動がより大であった―地中海式ダイエットスコアが上位4分の1の男性においては最も低い4分の1の男性と比較し10〜58%(HRV計測法による)大きかった;これは心臓関連死9〜14%の減少に匹敵する。このスタディ対象の94%が非ヒスパニック系の白人男性であったため、女性や他の人種には当てはまらない。

鎮痛薬は健常者における心血管関連死のリスクを高める [2010-06-22]

Pain relievers linked to higher risks of cardiovascular-related deaths among healthy people
一部の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は健常者の心血管関連死のリスクを有意に上昇させるとCirculation: Cardiovascular Quality and Outcomesに掲載された。この疫学スタディにおいて、研究者らはデンマーク国内の1,028,437人の10歳以上の健常者(年齢中央値39歳)の医療記録を使用した。少なくとも対象の44.7%がスタディ期間中に1回以上NSAIDsを内服した。ほとんどの人が通常低用量を約2週間内服した。NSAIDs処方前5年以内にデンマーク国営病院と接触しておらず、スタディ前2年以内に重篤な疾患に対する処方をされていなければ「健康」とみなした。NSAIDsの処方薬を内服していない人と比較し、イブプロフェンを内服にしていると致死性または非致死性の脳卒中リスクが29%高く、ジクロフェナクでは心血管死リスクが91%高く、rofecoxibでは心血管死リスクが66%高かった。最高用量を内服していた者では、ジクロフェナクおよびrofecoxibでは心筋梗塞のリスクがそれぞれ2〜3倍高かった。一方、ナプロキセンでは心臓関連の問題の増加は認められなかった。

ヒト羊膜由来の間葉系細胞は心筋細胞を形成し心臓の傷害を修復することが可能である [2010-06-01]

Human amniotic membrane-derived mesenchymal cells can form cardiac muscle cells and repair heart damage
議論の余地のない新たな臓器由来の幹細胞は心筋細胞を形成し心傷害修復に役立つとの予備実験結果がCirculation Researchに掲載された。日本の研究者らは羊膜を使用して、ヒト羊膜由来間葉系細胞(hAMCs)と呼ばれる幹細胞を獲得した。実験ではhAMCsは心筋に変化し33%は自発的に拍動した。心臓発作2週間後のラットに注射したところ心機能が34〜39%改善した一方、無治療のラットにおいて心機能は低下し続けた。心臓発作後のラットにhAMCsを注射することによりラットの傷害心の瘢痕領域は13〜18%減少し、幹細胞は免疫抑制剤を使用しなくても移植された個体の免疫系に拒絶されることなく4週間以上生存し続けた。またこの結果から、hAMCsは様々な臓器の細胞に分化しうることが示唆された。羊膜は出産後に医療廃棄物として廃棄されてしまうため、羊膜細胞は議論の余地のない心臓用の豊富な臓器由来のヒト幹細胞となる可能性がある。

CPAPを使用することにより眠気のない閉塞型睡眠時無呼吸患者の心血管系イベントおよび高血圧の発現を減少させる [2010-06-01]

CPAP use reduces incidence of cardiovascular events and hypertension in non-sleepy patients with obstructive sleep apnea
眠気のない閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)患者において、持続性気道内陽圧呼吸(CPAP)治療により心血管系イベントおよび高血圧の発現を減少させることが可能であると2010年ATS International Conferenceで発表された。研究者らは、中等度から重度(AHI>20)の睡眠時無呼吸を有しEpworth sleep scoresが10未満の患者(有意なOSAを有するにもかかわらず日中の眠気が軽微であることを示す)724人を組み入れた。患者らはCPAPまたは保存的治療(体重コントロールおよび睡眠に関して医師からアドバイスを受ける)群に無作為に割り付けられた。4年後に、脳卒中、狭心症、不整脈または末梢の虚血などの心血管イベントを有するリスクまたは高血圧を発症するリスクは、CPAPを使用しなかった患者と比べ夜間に4時間以上CPAPを使用した患者において25%低かった。ベースラインに高血圧がありCPAPを夜間に4時間以上使用した者の心血管イベントリスクは、CPAPを使用しなかった者の半分近くまで低下した。
 
 
 

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