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MM-WES:遺伝子検査により最も有効な抗凝固療法用量が決定でき入院が3分の1近く減少する [2010-03-30]
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NMM-WES: Genetic testing helps determine most effective dose for anticoagulant
therapy, utting hospitalizations by nearly one-third |
各々の患者に対する最も安全で有効な抗凝固療法用量を医師が決定するのに役立つある簡便な遺伝子検査により、一般的に用量を試したり失敗したりして調整する重要な開始時期の入院数を有意に減少させるとの研究結果が第59回American
College of Cardiology 学会で発表された。Medco-Mayoワルファリン有効性スタディ(Medco-Mayo Warfarin Effectiveness
Study:MM-WES)ではワルファリン療法を開始する患者896人を組み入れた。医師は患者から血液検体または頬粘膜のスワブを採取し、2つの遺伝子(CYP2C9およびVKORC1)の発現に関するレポートおよびこの結果を解釈するための臨床情報を得た。例えば、genotypeに基づきワルファリン感受性が高いと分類された患者の主治医はワルファリン投与量を減量し血液検査をより頻回に行った。6ヵ月後、全ての理由による入院および出血または血栓塞栓症による入院は遺伝子検査を受けた者において遺伝子検査を受けずに従来通りにコントロールされた者と比較し、それぞれ31%および29%少なかった。Genotype決定後の入院のみを対象とした解析では、遺伝子検査をされた患者の全ての原因による入院のリスクは33%低く、出血または血栓塞栓症による入院は43%低かった。 |
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JETSTENT:ステント留置前のレオリティック血栓除去はステント留置単独よりも再灌流および短期臨床エンドポイントの成績が良好である [2010-03-30]
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JETSTENT: Rheolytic thrombectomy before stenting leads to better reperfusion and
short-term clinical end points than stenting alone |
急性ST上昇心筋梗塞に対するダイレクトステント留置術前にレオリティック血栓除去術を施行する方がステント留置術単独よりも臨床成績が良好であるとのリサーチ結果が第59回American
College of Cardiology学会で発表された。JETSTENTトライアルでは501人の患者をダイレクトステント留置術または血栓除去術とダイレクトステント留置術を行う群に無作為に割り付けた。一次エンドポイントは、早期ST回復(30分後の50%以上のST上昇軽減)および30日後の梗塞サイズであった。ダイレクトステント留置術に加え血栓除去術を施行された群において、ステント留置術単独群と比べ、有意に多くの患者が指定時間内にST上昇の回復を示した(それぞれ85.8%
と78.8%、P=0.43)。1ヵ月後のシンチグラフィーで評価した梗塞サイズには、両群間で有意差はなかった。臨床上のエンドポイントに関しては、1および6ヵ月後の主要な心血管有害事象が血栓除去術群で有意に少なかった(それぞれ3.1%対6.9%、P=0.05および11.9%対20.6%、P=0.012)。このスタディにおける他のサロゲートエンドポイント(myocardial
blush gradeおよびcorrected TIMI frame countなど)について有意差は認めなかった。施術時間は血栓除去術を施行した群において有意に長かった(約15分)が成功率は両群間で同等であった。 |
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PASSION およびDEDICATION:スタディの結果ST上昇MI患者に対する薬剤溶出ステント使用に関する懸念が示唆された [2010-03-30]
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PASSION
and DEDICATION: Studies raise concerns about use of drug-eluting stents in patients
with ST-segment-elevation MI |
ST上昇心筋梗塞患者に対する薬剤溶出ステント(DES)とベアメタルステントを比較した2つのスタディの結果、薬剤溶出ステントに関する疑問が持ち上がった。PASSIONトライアルの5年間の結果、パクリタキセル溶出ステント(Taxus
Express2)とベアメタルステント(Express2 or Liberte)の複合一次エンドポイント(心臓死、心筋梗塞再発、標的病変に対する再血行再建術施行)はそれぞれ18.3%と22.0%であり、統計学的に有意ではなかった。個々に比較すると2つのステント群間でいずれの主要な心イベントに関しても有意差は認められなかった。さらに、確実な(definite)ステント血栓発現率はベアメタルステント群と比較しDES群において2倍であった(それぞれ3.6%と1.7%)が、確実なおよびかなり確実と思われる(probable)ステント血栓発現率はそれぞれ3.9%と3.4%であり、同等であった。DEDICATIONトライアルでは、薬剤溶出ステント群において主要な有害心事象は少なかったものの、心死亡率は有意に高かったと報告された。これらのスタディは第59回American
College of Cardiology学会で発表された。 |
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FIR Collaboration:非ST上昇急性冠症候群に対しては選択的な侵襲治療よりもルーチンの侵襲治療の方が良い [2010-03-30]
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FIR
Collaboration: Routine invasive strategy better than selective invasive care for
non-ST acute coronary syndrome |
非ST上昇急性冠症候群患者に対するより積極的な治療により保存的治療よりも長期予後が改善すると第59回American
College of Cardiology学会で発表、Journal of the American College of Cardiologyに掲載された。FIR共同トライアル(FRISC-II、RITA-3およびICTUSスタディのメタ解析)では個々の患者のデータを解析し、重度の症状または虚血の徴候を有する患者に対するより積極的なルーチンの侵襲的(RI)治療(全患者に早期の冠動脈造影を施行し適応の場合には血行再建術を施行する)または保存的な選択侵襲的(SI)治療(標準的な薬物療法と特異的な症例にのみ冠動脈造影を施行)の長期予後を明らかにした。5年後の心血管死および非致死性心筋梗塞(MI)発現率はRI治療群の方が低かった。特に、RI群に割り付けられた患者2,721人中14.7%が心血管死または非致死性MIを発現したのに対し、SI群患者2,746人におけるその割合は17.9%であった。治療効果が最も著明に認められたのは非致死性MI単独であり、RI群の10%に認められたのに対しSI群におけるその割合は12.9%であった。心血管死単独および総死亡もRI群において少なかった。 |
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冠動脈バイパス術後1年間の開存率は伏在静脈グラフトと橈骨動脈グラフトとで同等である [2010-03-30]
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Saphenous vein and radial artery have same graft patency one year after coronary
artery bypass graft surgery |
伏在静脈グラフトと橈骨動脈グラフトを比較したスタディの結果、1年後のグラフト開存率は同等であったとの研究結果が第59回American
College of Cardiologyで発表された。このスタディでは待機的冠動脈バイパスグラフト術(CABG)を施行される患者733人を橈骨動脈または伏在静脈グラフト(366人を橈骨動脈グラフト群、367人を伏在静脈グラフト群)を用いる群に無作為に割り付けた。1年後にグラフト造影を行った結果これらの2つのグラフト群間で開存率に差はなかった。手術の合併症、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建術、および死亡からなる二次エンドポイントに有意差はなかった。可能性のある合併症を明らかにするため、研究者らは術後1週にもグラフト造影を行った。その結果、2つのグラフトの開存率はそれぞれ橈骨動脈99%および伏在静脈97%であり、同等の成績であった。しかし、橈骨動脈グラフトの方が疾患の早期徴候が多く認められた(びまん性狭窄[string
sign]は橈骨動脈グラフトの8%において認められたのに対し伏在静脈においては1%であった)。 |
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DOSE:体液貯留に対しループ利尿薬は持続投与でもボーラス投与でも結果は同等であるが高用量フロセミド投与の方が有効である可能性がある [2010-03-30]
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DOSE:
Loop diuretics have similar results whether given by continuous infusion or bolus,
but high-dose furosemide may be better for fluid overload |
急性心不全で入院した患者に対し、高用量または低用量の利尿薬を持続的または間歇的に投与しても総合的な症状改善または腎機能変化には有意な差がないとの研究結果が第59回American
College of Cardiologyで発表された。利尿薬の最適な使用法の評価(Diuretic Optimization Strategies Evaluation:DOSE)スタディにおいて、急性非代償性心不全および体液貯留を有する患者308人を高用量または低用量フロセミド静脈内注射(それぞれ常用経口投与量の2.5倍または常用経口投与量と同用量)を投与する群に無作為に割り付けた。二重無作為化アプローチにより患者らはまた、静脈内投与を12時間ごとあるいは持続的に投与する群に無作為に割り付けられた。その結果、高用量フロセミドを72時間投与することにより全体の徴候の改善がより認められる傾向にあった。高用量のフロセミド投与による腎機能の有意な悪化(ベースラインから72時間後までの血清クレアチニンレベルの変化の中央値で計測)はみられなかった(高用量群で0.06mg/dLに対し低用量群で0.01mg/dL)。全体の体液量減少および体重変化のような体液量オーバーロード改善に対するフロセミドの有効性などいくつかの二次計測項目に関しても高用量フロセミド群で良好な傾向にあった。 |
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RACE II:心房細動患者は厳密な心拍コントロールをしなくても健康を維持できるようである [2010-03-23]
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RACE II: Patients with atrial fibrillation stay healthy even without strict control
of heart rate |
最新のガイドラインに反して、心房細動(AF)患者の心拍コントロールは大まかであっても厳密にコントロールするのと同等のようである、と第59回American
College of Cardiology学会で発表され同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。慢性心房細動の心拍コントロールの有効性(Rate
Control Efficacy in Permanent Atrial Fibrillation:RACE II)スタディではAF患者614人を大まかな心拍コントロール(安静時心拍数<110bpm)または厳密なコントロール(安静時<80bpmおよび中等度の労作時<110bpm)を行う群に無作為に割り付けた。目標心拍数に達するためにβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、および/またはジゴキシンが用いられた。追跡観察中に大まかな心拍コントロール群患者のうち38人および厳密な心拍コントロール群患者のうち43人が心血管死または心不全による入院をしたかあるいは脳卒中、血栓、重篤な出血または生命にかかわる不整脈を発現した。これらのイベントの3年間の累積発現率は大まかなコントロール群で12.9%、厳密コントロール群で14.9%であり、大まかなコントロールの「非劣性」が示された。標的心拍数の達成度は厳密コントロール群よりも大まかなコントロール群の方が優れており(98%対67%)診察を必要とする回数も少なかった。 |
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STOP-AF and CABANA:トライアルの結果、心房細動に対しては薬物治療よりもアブレーションの方が有効であることが示された [2010-03-23]
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STOP-AF
and CABANA: Trials show effectiveness of ablation techniques over anti-arrhythmic
drug therapy for the treatment of atrial fibrillation |
第59回American College of Cardiology学会で発表された2つのスタディの結果、心房細動(AF)の治療としてアブレーションは抗不整脈薬治療よりも有効であり安全性は同等であることが示された。26の医療機関の患者245人を組み入れた発作性心房細動の維持治療(The
Sustained Treatment of Paroxysmal Atrial Fibrillation:STOP-AF)スタディでは、Arctic Front®心臓クリオアブレーションカテーテルシステムで治療された発作性AF患者の70%近くが施術後1年間洞調律を維持し、一方薬物療法群で洞調律を維持できたのは7%を少し上回っただけであった。クリオアブレーションの初期成功率は98%であった。より実質的な心血管疾患を基礎疾患として有するより進行したAF患者に対するカテーテルアブレーションの有効性を評価した初めてのスタディのひとつである、心房細動に対するカテーテルアブレーションと抗不整脈薬治療の比較(The
Catheter Ablation Versus Anti-arrhythmic Drug Therapy for Atrial Fibrillation:CABANA)パイロット研究の結果、カテーテルアブレーションは薬物療法よりも症候性AF再発予防に有効であることが示された。しかし、持続性および長期の持続性AF患者も含むこれらの患者らにおける成功率は他の無作為化臨床試験で認められた成功率よりも低かった。CABANAは大規模無作為化コントロール試験の基礎を築くようにデザインされた。 |
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CONNECT:植込み型デバイスの遠隔モニターは方針決定に必要な時間を短縮し診療回数を減らす [2010-03-23]
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CONNECT: Remote monitoring of implanted devices reduces time needed for clinical
decision-making and results in fewer office visits |
植込み型デバイスから循環器専門医の診察室へ自動的に不整脈情報を送信するワイヤレス監視システムは、問題が発生してから治療方針が決定されるまでの時間を有意に削減すると第59回American
College of Cardiology学会で報告された。遠隔通知による方針決定時間の短縮に対する臨床評価(The Clinical Evaluation
Of Remote Notification to Reduce Time to Clinical Decision:CONNECT)トライアルでは植込み型除細動器または心臓再同期療法除細動器を植え込まれた患者1,997人を組み入れ、遠隔モニターまたは標準的な診察室でのケアを行う群に無作為に割り付けた。ワイヤレス遠隔モニターは、電話回線を用いて診断に必要な情報を自動的に送信し患者側は何もする必要はない。遠隔モニター群患者はデバイス植込み1ヵ月後および15ヵ月後のみ受信した。標準的なケアを受けた患者は一般的には3〜6ヵ月ごとの指定されたスケジュールで経過観察された。その結果、臨床上の問題発生からそれを処理する方針決定までの平均所要時間が有意に短縮された(標準的ケア群29.5日に対し遠隔モニター群10.5日)。平均入院期間も有意に短縮し(それぞれ4.0日対3.3日)、遠隔治療群患者において1回入院当たり推定$1,659の経費削減が見込まれた。 |
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SORT OUT III:head-to-head比較においてエンデバーステントはサイファステントよりも死亡率、心筋梗塞発症率、標的血管再血行再建術施行率が高かった [2010-03-23]
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SORT OUT III: Endeavor has higher rates of death, myocardial infarction, and target
vessel revascularization than Cypher in head-to-head comparison |
18ヵ月のhead-to-head比較において、エンデバーステントを埋め込んだ方がサイファステントに比べ心筋梗塞、死亡、および標的血管再血行再建術施行症例が多かったとの研究結果が第59回American
College of Cardiology学会で発表され、同時にLancetに掲載された。SORT OUT IIIトライアルは、薬物溶出ステントを埋め込まれた患者ほぼ全員を組み入れ、臨床エンドポイントを評価するように検出力をつけたall-comer
トライアルである。冠動脈疾患を有する患者をエンデバー(1,162人)またはサイファ(1,170人)ステントを埋め込む群に無作為に割り付けた。両者ともに薬物溶出ステントであるが、エンデバーは第二世代のzotarolimus溶出ステントであり一方サイファは第一世代のシロリムス溶出ステントである。ステント埋め込みから18ヵ月後の複合一次エンドポイントである心臓死、心筋梗塞または標的血管の血行再建術施行は、エンデバーステントにおいてサイファステントよりも有意に多かった(9.7%と4.5%、P<0.0001)。エンデバーを埋め込まれた患者はまた二次エンドポイント(心筋梗塞、標的血管再血行再建術施行、および総死亡)に関してもサイファーステントを埋め込まれた患者よりも多く認めた(4.4%対2.7%、P=0.035)。 |
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INVEST:スタディの結果、冠動脈疾患を有する糖尿病患者に対する強力な降圧治療に対し警鐘が鳴らされた [2010-03-23]
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INVEST:
Study warns against aggressive blood pressure lowering in diabetic patients with
coronary artery disease |
心血管疾患を有する糖尿病患者に対する厳密な降圧療法は標準的な降圧療法と比較し、心筋梗塞予防、脳卒中または死亡のリスクをより軽減するということはないようであり、一部の症例では有害な可能性さえあると第59回American
College of Cardiology学会で発表された。国際的ベラパミルSR−トランドラプリル(INVEST)スタディは冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者6,400人をカルシウム拮抗薬またはβ遮断薬のいずれかとアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬および/またはサイアザイド系利尿薬を併用する群に無作為に割り付けた。収縮期血圧が140mmHg以上の者−患者の約3分の1−はコントロール不良と分類した。収縮期血圧が130mmHg未満の患者は厳密コントロールとし、収縮期血圧が中間の者(130mmHg以上140mmHg未満)は標準コントロールとした。コントロール不良群患者は標準治療群と比較し死亡、心筋梗塞、または脳卒中のリスクが50%高かった。しかし、厳密コントロール群患者におけるリスクは標準治療群患者と同等であった。さらに解析を行った結果、収縮期血圧を130mmHg未満にすることにより標準治療と比較し総死亡のリスクが有意に増加することが示された。 |
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NAVIGATOR:スタディの結果、糖尿病および心血管疾患の予防に対して疑問が生じた [2010-03-23]
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NAVIGATOR:
Study raises questions on prevention of diabetes and cardiovascular disease |
糖尿病および心血管疾患の高リスク患者においてアンジオテンシン受容体遮断薬バルサルタンは、心血管系の健康状態維持には効果がなく糖尿病発症を軽度減少させたのみであり、一方糖尿病治療薬ナテグリニドにおいては糖尿病または心疾患進行に対し有意な効果が認められなかったと第59回American
College of Cardiology学会で発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。心血管リスクファクターまたは心血管疾患を有する耐糖能異常患者9,306人を解析した。二重無作為化デザインを用いて、患者らはナテグリニド(最高60mgを1日3回食直前に内服)またはプラセボ、およびバルサルタン(最高1日160mg)またはプラセボのいずれかを内服する群に割り付けられた。全ての患者が5%の減量維持、週5日平均30分の運動、および低脂肪食を目標とした生活習慣改善プログラムに参加した。その結果、バルサルタンはプラセボと比較し、糖尿病発症リスクを14%減少させたが、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全による入院、不安定狭心症、または血行再建術の複合リスクは軽減しなかった。ナテグリニドは糖尿病発症および心血管リスクのいずれも減少させなかった。 |
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PROGRESSスタディ:ペリンドプリルを用いた降圧により心血管疾患および脳卒中リスクが有意に軽減した
[2010-03-16]
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PROGRESS
study: Perindopril, used to lower blood pressure, significantly decreases risk
for cardiovascular disease and stroke |
正常体重、過剰体重、肥満の患者に長時間作用型ACE阻害薬を使用し血圧を降下させることにより脳卒中を含む心血管疾患リスクが有意に軽減した、とHypertensionに報告された。肥満は脳卒中および他の心血管疾患の危険因子であることは認識されているが、肥満患者における降圧薬の脳卒中発現率に対する影響についてはよく知られていない。これらの影響を明らかにするために研究者らは、正常体重、過剰体重および肥満の患者をペリンドプリルまたはプラセボ群に無作為に割り付けた。心血管疾患発現率は正常体重、過剰体重、および肥満の患者において25%以上減少した。有益性が最も高かったのは最も体重の多い患者群であり、より痩せた人々よりもスタディ開始時の血圧が高かった。この治療により、13人の肥満患者当たり1件の主要な心血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、または心血管死と定義)が予防できたのに対し、最も体重の少なかった群においては28人当たり1件のイベントが予防された。5年間のペリンドプリルによる再発性脳卒中予防スタディ(Perindopril
Protection Against Recurrent Stroke Study:PROGRESS)では、過去5年以内に脳卒中を発症した10ヵ国の患者6,105人を対象とした。 |
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コーヒーを飲む人は心調律異常による入院のリスクが低いようである [2010-03-16]
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Coffee
drinkers appear to have decreased risk of hospitalization for heart rhythm disturbances
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コーヒーを飲む人は飲まない人に比べ心調律異常により入院する確率が低いと、第50回American
Heart Association Annual Conference on Cardiovascular Disease Epidemiology and
Preventionで発表された。この大規模長期観察研究には18〜90歳の男女130,054人が組み入れられ、大多数は50歳未満であった。約2%が調律異常で入院した;そのうち50%は心房細動であった。1日4杯以上のコーヒーを飲むと報告した男女は心調律異常で入院する確率が18%低かった。1日1〜3杯のコーヒーを飲む人ではリスクが7%低かった。18%のリスク軽減は男女ともに認められ、異なる民族群、喫煙者および非喫煙者においても同様であった。この学会で発表された他のスタディにおいて、若年成人におけるコーヒー摂取は後の動脈硬化リスクと関連がなく、カフェイン入りのコーヒー摂取により2型糖尿病のリスクが軽減することおよび常習的にコーヒーを摂取することにより高血圧がやや増加することが示された。 |
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CREST Study:ステント留置および動脈内膜摘除術の安全性と有効性は同様であるが、脳卒中、心筋梗塞および死亡率は年齢により異なる [2010-03-09]
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CREST Study: Stenting and endarterectomy similar in safety, efficacy, but show
differences in stroke, myocardial infarction and death rates at certain ages |
閉塞した頸動脈を開通させ脳への血流を再開させる2つの主な方法についての全体的な長期安全性と有効性は同様であるが、施術翌週の脳卒中および心筋梗塞(MI)発現率には差がある、と2010年American
Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。頸動脈内膜摘除術対ステントトライアル(Carotid
Revascularization Endarterectomy Versus Stenting Trial:CREST)では、北米の100以上の病院で2,502人の患者(女性35%、少数民族9%)を頸動脈内膜摘除術(手術群)またはステント留置術群に無作為に割り付けた。施術後30日以内の脳卒中発現率は手術群で2.3%、ステント留置群で4.1%であった。しかし、MI発現率は手術群の2.3%に対しステント群では1.1%であり、統計学的に有意な差であった。また、患者の年齢により予後にも差が認められた。若年患者ではステント留置群で心血管イベントが少なく、高齢患者では手術群でイベントが少なかった。症候性と無症候性および男女別にみた予後は、手術群とステント群とで同等であることも明らかにされた。 |
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不眠症および短時間睡眠の子供は心臓の自動調節が障害されているようである [2010-03-09]
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Insomnia
and shorter sleep duration appear to impair cardiac autonomic modulation in children |
不眠症および短時間睡眠の子供は心臓が交感神経系や興奮した状態にシフトし、自動調節が障害されていると第50回American
Heart Association Annual Conference on Cardiovascular Disease Epidemiology and
Prevention学会で報告された。小学生612人(平均年齢9歳、白人以外25%、男子49%、全員が概ね健康)を対象としたスタディで研究者らは睡眠時間、入眠障害、覚醒回数および覚醒した後の再入眠障害を計測した。また、心臓の自動調節(CAM)、交感神経と副交感神経の心拍リズムコントロールに対するバランスについても計測した。不眠を訴えた子供は心臓調節が交感神経優位または興奮した状態にシフトしておりCAM障害を有していた。不眠の子供においては心臓調節における副交感神経の調節の割合が3〜5%低下していた。長時間睡眠の子供は心拍数が少なく心臓調律が副交感神経調節の方向にシフトしていることが示唆された。8時間以上寝る子供は7時間しか寝ない子供の心拍数と比較し、1分あたり2拍少なかった。不眠および短時間睡眠は低年齢の子供であっても交感神経調節による身体活性化をもたらしていた。 |
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頭蓋内ステント留置またはtPA動脈内投与は急性脳虚血発作に対する他の治療よりも優れている可能性がある [2010-03-02]
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Intracranial stenting or intra-arterial tPA may be better than other treatments
for urgent ischemic strokes |
頭蓋内ステント留置または組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)の脳動脈直接注入は他の急性脳虚血発作の治療よりも有効である可能性があるとの研究結果が2010年American
Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。1,056人の重度の脳卒中患者が症状出現後8時間以内に1種類以上の治療を受け、ステント留置患者の76%および組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)投与患者の72%において血流が再開した。全体で、他の薬物またはインターベンションを受けた患者においては血流が再開したのは69%のみであった。研究者らはいくつかの治療法(動脈内tPA投与、頭蓋内ステント留置、腕からの静脈内tPA投与、Merci
RetrieverTM(狭窄した血管内へ貫通させ血栓をつかみ抜き取るコルクスクリューのようなデバイス)、PrenumbraTM吸引カテーテル(吸引して血栓を取り除く)、糖蛋白IIb/IIIa抗体、およびステント留置なしの血管形成術)について調査した。その結果、534人が1つ以上の治療を受け75%(400人)の確立で治療が成功した、と述べている。しかし、統計学的に有意であったのは動脈内tPA投与およびステント留置のみであった。これらの2つの治療法にはいずれも出血の過剰リスクは認めなかった。 |
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喫煙は若年での一過性脳虚血発作と関連がある [2010-03-02]
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Smoking associated with transient ischemic attacks at a younger age |
喫煙者は非喫煙者および元喫煙者よりも一過性脳虚血発作(TIA)をより若年で発症し、喫煙により中等度のプラークでも損傷しやすくTIAを引き起こす血栓をより早期に形成する可能性が提起されたと2010年American
Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。カナダの研究者らは、2002年4月から2007年5月の間に急性虚血性脳卒中およびTIAを発症した患者1,047人を、喫煙習慣により3群:現喫煙者、元喫煙者(3ヵ月以上禁煙)、非喫煙者、に分類した。その結果、233人(22.3%)は現喫煙者、131人(12.5%)は元喫煙者、683人(65.2%)は非喫煙者であった。現喫煙者、元喫煙者、非喫煙者の脳卒中出現平均年齢はそれぞれ、65.5歳、68歳、67.6歳であった。TIAの出現平均年齢はそれぞれ56.7歳、72.2歳、69.1歳であった。現喫煙者におけるTIA出現年齢は他の2群と比較して有意に低く、中等度のプラークでも喫煙により血栓形成が誘発されることが示唆された。元喫煙者で発症年齢が遅かったことから、このリスクは禁煙により低下することが示された。 |
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