|
◆ |
tPAは週末に入院した脳卒中患者に処方される率が高い [2010-01-26]
|
tPA more likely to be prescribed to stroke patients admitted on weekends |
週末に脳卒中で入院した患者は平日に入院した患者よりも組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)を投与される率が高いとArchives of Neurology 1月号に掲載された。しかし、脳卒中死亡率は週末と平日とで同様のようである。研究者らは、バージニア病院に急性虚血性脳卒中で入院した患者78,657人におけるtPA投与率と死亡率を調査した。これらのうち20,279人が週末入院し58,378人が平日入院した。tPAは週末入院した患者のうち229人に投与され、平日入院した患者のうち543人に投与された。週末入院した患者のtPA投与率は20%高かった。死亡率は二群間で統計学的有意差はなかった(平日入院患者のうち3,993人が死亡し、週末入院患者のうち1,420人が死亡した)。死亡率が同等であったことから、tPAを投与された者は投与されなかった者よりも院内で死亡する率が高かったことが示唆されると筆者らは述べている。これは、医師がこの薬剤をより重症の脳卒中に使用する傾向にあるか、性別や人種/民族がtPA投与よりも死亡リスクに影響するなどの因子による可能性もある。 |
|
◆ |
冠動脈疾患患者におけるオメガ3脂肪酸レベルと生物学的加齢の染色体マーカーの関連をスタディで調査した [2010-01-26]
|
Study examines association between omega-3 fatty acid levels and chromosome marker of biological aging in patients with coronary heart disease |
血中オメガ3脂肪酸レベルの高い冠動脈疾患患者はテロメアの短縮率が低いことからこれらの脂肪酸は細胞を加齢から保護している可能性が出てきた、とJAMA 1月20日号に掲載された。研究者らは、安定した冠動脈疾患を有する外来患者608人を対象としたスタディにおいて、血中オメガ3脂肪酸レベルと白血球テロメア長の変化とが関連するか否かを調査した。白血球テロメア長はスタディ開始時および5年の経過観察期間後に計測された。多変量モデルを用いてベースラインのオメガ3脂肪酸(ドコサヘキサエン酸[DHA]およびエイコサペンタエン酸[EPA])レベルとその後のテロメア長の変化の関連を調査した。その結果、DHA+EPAが最も低い四分位であった者はテロメア短縮率が最も速く、一方、最も高い四分位の者はテロメア短縮率が最も遅かった。DHA+EPAレベルは確立されたリスクファクターおよび可能性のある交絡因子での補正前後のテロメア短縮の少なさと関連があった。DHA+EPAレベルの標準偏差が1上昇するごとにテロメア短縮率が32%減少した。 |
|
◆ |
身体を動かさない生活習慣はどんな体系の人にも死亡リスクを上昇させる [2010-01-19]
|
Sedentary behavior increases risk of death for people of all weights |
1日当たりテレビの前で過ごす時間ごとに早期総死亡リスクが11%上昇し、がん死リスクは9%、心血管疾患死リスクは18%上昇する、とCirculationに掲載された。長期の座位は血糖および血中脂質に悪影響を及ぼすため、この結果は肥満や過剰体重のみならず正常体重の人にも当てはまる。オーストラリアの研究者らは成人8,800人の生活習慣を調査した。テレビを観る時間が1日2時間未満の者と比較し1日4時間以上観る者は総死亡リスクが46%高く、心血管疾患(CVD)死のリスクが80%高かった。この関係は、喫煙、高血圧、高脂血症、不健康な食事習慣、腹囲、および休暇中の運動などの他の独立した一般的なCVDリスクファクターにかかわらず認められた。このスタディは特にテレビを観る時間に焦点を当てているが、この結果から、コンピュータを扱いながら机の前に座っているなどの長期の身体を動かさない習慣は健康上のリスクとなる可能性が示唆される。 |
|
◆ |
スタディの結果、HIV陽性男性は動脈硬化性プラークおよび重症の冠動脈プラークを有する確率が高いことが示された [2010-01-19]
|
Study finds increased presence, severity of coronary artery plaques in HIV-infected men |
長期のHIV感染を有し心臓のリスクファクターのほとんどない比較的若年の男性は、同等の心血管リスクを有する感染のない男性と比較し、冠動脈の動脈硬化性プラーク有病率が有意に高く、重症の冠動脈閉塞を有する場合もある。2010年1月号のAIDSに掲載されるこの研究結果は、HIV感染者にCT冠動脈造影を施行し冠動脈プラークを観察した初めてのものである。このスタディには心血管疾患の症状を有さない110人の男性−HIV感染者78人および非感染者のコントロール32人−が組み入れられた。対象者は18〜55歳であり、両群ともに伝統的な心血管リスクファクターレベルは低かった。HIV感染者は長期間感染しており、全般的に健康で、ほとんどが抗ウイルス療法を受けていた。64スライスMDCTの結果、HIV感染者は、過去のスタディによると6歳年長の男性に認められるレベルの冠動脈石灰化を有することが示された。CT冠動脈造影の結果、HIV感染者の59%が動脈硬化を有しており、それに対しコントロールにおける割合は34%に過ぎなかった。HIV感染者のうち5人が重篤な冠動脈狭窄(1つ以上の冠動脈セグメントの70%以上狭窄)を有していたが、コントロール群にはそのような病変を有する者はいなかった。 |
|
◆ |
TRITON-TIMI 38の経済面の解析結果から、prasugrelはクロピドグレルと比較し費用対効果の高い代替薬であることが示された [2010-01-12]
|
TRITON-TIMI 38 economic analysis shows prasugrel is cost-effective compared to clopidogrel |
TRITON-TIMI 38の健康経済サブスタディの結果、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で治療された急性冠症候群(ACS)患者において、prasugrelによる治療はクロピドグレルによる治療よりも費用対効果に優れていることが示された。これらの結果はCirculation 2010年1月5日号に掲載された。TRITON-TIMI 38はACS後にPCIを施行された患者においてprasugrelとクロピドグレルを比較したPhase IIIトライアルである。30ヵ国707施設の患者13,608人が組み入れられた。Prasugrelとアスピリン(ASA)の併用によりクロピドグレルとASAの併用と比較し、心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中発現率が有意に減少した。さらに、prasugrelで治療された患者のステント血栓はクロピドグレルで治療された患者と比較し有意に少なかった。予め指定されていた6,705人の患者における経済面の解析において、prasugrelによる治療はクロピドグレルによる治療と比較し、治験薬のコストを含まない約15ヵ月間の総入院コストが患者一人当たり530ドル低かった。またこの解析の結果、初回およびその後の入院のコストおよび実薬治験薬を含め、prasugrelによる治療はクロピドグレルによる治療と比較し、14.7か月のスタディ期間中の累積医療コストは患者一人当たり221ドル少ないことも示された。 |
|
◆ |
過剰体重の男性はメタボリック症候群でなくても心筋梗塞、脳卒中および早期死亡のリスクが高い [2010-01-12]
|
Overweight men at higher risk of myocardial infarction, stroke and premature death even without metabolic syndrome |
過剰体重または肥満の男性は、メタボリック症候群を有していなくても心筋梗塞、脳卒中および早期死亡のリスクが高いとCirculationに掲載された。肥満とメタボリック症候群(MetS)の心血管リスク発現率を調査した過去のスタディにおいて、MetSを有さない肥満者はリスクが高いことは示されなかった。しかしこれらのスタディは13年までしか追跡されなかった。今回の30年間のスタディには1920〜1924年に生まれた男性1,758人が組み入れられた。各々が50歳の時点で健康診断を受け、糖尿病を有する者および心疾患で入院歴のある者は除外された。追跡調査期間中に681人中、386人の心血管死を含む心血管疾患イベント(心筋梗塞、脳卒中、または心不全による死亡または入院)が発現した。年齢、喫煙およびLDLコレステロールで補正した後、MetSおよび/または高ボディマスインデックスを有する者を正常体重でMetSを有さない者と比較した。その結果、心血管疾患のリスクは、正常体重でMetSを有する者において63%、MetSを有さない過剰体重の者において52%、MetSを有する過剰体重の者で74%、MetSを有さない肥満者で95%、そしてMetSを有する肥満者で155%高かった。 |
|
◆ |
有望な新薬、基礎科学の進歩および行動管理が2009年の最も重要な心血管研究に挙げられた [2010-01-05]
|
Promising new medication, basic science advances and managing behaviors cited as the most important cardiovascular research of 2009 |
過去1年間の心疾患および脳卒中に関する研究の上位には、肥満や喫煙習慣の管理による健康上のリスク低減や有望な新薬および基礎科学の進歩などが挙げられる、とAmerican Heart Associationのトップ10研究報告で発表された。これらの研究のハイライトは、心筋梗塞および脳卒中による死亡を減少させるのにクロピドグレルより有効なticagrelorのような新抗血小板薬治療に関する研究や、経口抗凝固薬dabigatranがワルファリンよりも心房細動患者の脳卒中予防には有効であることが証明されたこと、および循環トランスフォーミング増殖因子βはマルファン症候群治療の管理に有用なバイオマーカーであるとのエビデンス、などであった。基礎科学研究では、マウス胚から得られた幹細胞を使用した一片の自己拍動心筋が培養され、また他の研究グループは機能する心筋細胞がヒトの人工多能性幹細胞(ips細胞)から作成できることを明らかにした。予防の進歩には、強力な喫煙規制法の制定により迅速かつ実質的な心筋梗塞の減少が認められること、その他には、食物の種類ではなく摂取カロリーが減量の重要な決定因子であることなどが挙げられた。 |
|
◆ |
蛋白チャンネルASIC2は圧受容器が血圧を至適レベルに保つのに役立つ [2010-01-05]
|
Protein channel ASIC2 helps baroreceptors keep blood pressure at appropriate levels |
ASIC2として知られる蛋白チャンネルが血管の圧受容器が血圧上昇抑制に役立つことが示されたとの動物実験の結果が2009年12月24日号のNeuronに掲載された。ASIC2がないと圧受容器は脳に至適血圧コントロールに必要なシグナルを送ることができない。今回のスタディにおいて、ASCI2チャンネルがマウスの血管の神経細胞に存在しこのチャンネルが無効であると神経の活性もまた無効であることが示された。また、この蛋白チャンネルをコードする遺伝子を有さず従ってASIC2チャンネルを有さないマウスモデルも作成した。ASIC2チャンネルがないこれらのマウスは高血圧を有していた。ASIC2チャンネルは、血管を拡張させ血圧を正常に保つ電流を神経終末で産生させる。ASIC2がないとこれらの神経終末は機能不全となり電流を産生できず、従って神経系は必要な時に血管を拡張させる能力を失う。結果として血管は収縮した状態を維持し高血圧が発症する。 |
|
|