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スタディの結果、認知機能障害を有するがん患者の予後が有意に不良であることが示された [2009-12-28]
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Study
finds significantly worse outcomes in cancer patients with cognitive impairment |
Critical Reviews in Oncology/Hematologyオンライン版に掲載された新たなスタディの結果、認知症を有するがん患者は、がんのみを有する患者と比較し、年齢、腫瘍型、および腫瘍ステージなどの因子で補正しても、生存率が劇的に低いことが示された。研究者らは認知機能障害を有するがん患者86人とがんのみを有するコントロール群172人の予後を比較した。その結果、認知症を有するがん患者の生存期間は平均4年少ないことが明らかになった。両群の患者は同様の治療を受け、年齢、腫瘍型、および腫瘍ステージで補正してもこの生存率の差は依然として認められた。しかし、認知機能障害のある患者群の中で、軽度認知機能障害を有する患者群と中等度〜重度認知機能障害を有する患者群で生存期間に劇的な差が認められた。中等度〜重度認知機能障害患者の平均生存期間は8ヵ月であったのに対し、軽度認知機能障害患者の平均生存期間は4.5年であった。筆者らはまた、認知症と診断されたことによりがんのスクリーニングや適切ながん治療を控えるべきではないと強調している。
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蛋白ホルモン濃度が高いと認知症およびアルツハイマー病のリスクが低い [2009-12-28]
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Higher
levels of protein hormone associated with lower risk of dementia and Alzheimer's
disease |
脂肪細胞から産生され食欲の調整に関わる蛋白ホルモンレプチンのレベルの高い人はアルツハイマー病(AD)および認知症の発現率が低い可能性があるとJAMA
12月16日号に掲載された。研究者らは、オリジナルのフラミンガム研究のスタディ群に組み入れられた認知症を有さない785人(平均年齢79歳;女性62%)の血漿レプチンレベルを計測した。レプチン計測から約7.7年後に認知症を発症していない198人に脳容積測定磁気共鳴画像検査(MRI)を施行した。経過観察期間中央値8.3年の間に111人が認知症を発症し、そのうち89人はADと診断された。レプチンレベルが高いと全ての原因による認知症およびAD発症率が低かった。認知症の発症率はレプチンレベルが高くなるほど低下した:ベースラインのレプチンレベルが最低の四分位の人は12年間の追跡期間のうちにADを発症するリスクが25%であったのに対し、最高の四分位の人のリスクはわずか6%であった。レプチンレベルが高いと脳の総容積も大きかった。
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画像検査により進行しそうなアルツハイマー病が検出できる [2009-12-22]
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Imaging
test detects Alzheimer's disease that is likely to progress |
脳のプラークに結合する物質を用いたPETスキャンで検出された早期のアルツハイマー病は認知症を伴う症候性アルツハイマー病に進行しやすいようであるとJAMA/Archives雑誌の一つであるArchives
of Neurology 12月号に掲載された。Pittsburgh Compound B(PiB)として知られるβアミロイドに結合する物質を用いたPETスキャンを認知症状のない高齢者(平均年齢71.5歳)159人に施行した。患者は検査後0.8〜5.5年間経過観察され、この時間枠内に認知症に関する2〜6つの評価を受けた。計23人が経過観察期間中に臨床的に検出できる認知症を発症し、9人はアルツハイマー型認知症と診断された。これらの診断を行った医師らは、脳のある領域の容積の減少に加え様々な認知機能の低下を組み合わせて通常よりも早期の段階でアルツハイマー病と診断した。PiB画像によりアルツハイマー病関連の認知症を発現する可能性のある人々を見極めることができた。つまり、βアミロイドに物質が多く結合した者はアルツハイマー病を発病する確率が高かった。アルツハイマー病以外の原因による認知症の出現を予測することはできなかった。
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閉経後の抗うつ薬の使用により脳卒中および総死亡のリスクが上昇する [2009-12-22]
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Risk
of stroke and all cause mortality increases with postmenopausal use of antidepressants |
抗うつ薬を内服する閉経後女性は、抗うつ薬を内服していない女性と比較し、脳卒中および死亡のリスクが少しではあるが有意に上昇するとArchives of
Internal Medicine 12月14日号に掲載された。研究者らは、スタディ開始時に抗うつ薬を内服していなかった50〜79歳の女性136,293人のデータを解析し、平均6年間追跡した。初回のフォローアップ受診時に、抗うつ薬を内服していた女性5,496人のデータを抗うつ薬を内服していなかった女性130,797人のデータと比較した。その結果、冠動脈疾患(致死性および非致死性心筋梗塞)発現率には差がなかった。しかし、脳卒中発現率は有意な差が認められた:つまり、抗うつ薬を内服している女性は内服していない女性よりも脳卒中を発症する率が45%高かった。スタディの結果、抗うつ薬を内服している女性は内服していない女性よりも総死亡のリスクが32%高いことも示された。研究者らはうつ病の影響を補正してみたが、抗うつ薬を内服している群の基礎にあるうつ病が脳卒中のリスク上昇に影響している可能性を否定することはできなかった。
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小児期の鉛への曝露は長期の認知機能および行動上の問題を引き起こす [2009-12-15]
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Childhood
lead exposure contributes to long-term cognitive and behavioral problems |
機能的磁気共鳴画像(fMRI)にて脳機能を評価した結果、小児期に鉛に曝露された成人は認知機能および行動上の長期の影響を有し永続的な脳傷害を患うと2009年Radiological
Society of North America学会(RSNA 2009)で発表された。このスタディには血液中の鉛レベルが5〜37(平均14)μg/dLの成人33人(女性14人および男性19人、平均21歳)が組み入れられた。病歴上IQ低下、少年非行および犯罪による逮捕が認められた。全ての患者が、注意力、意思決定および衝動コントロールを司る脳の実行機能を計測する二つの課題を行っている最中のfMRIを施行された。画像検査の結果、抑制を要する課題を完了するために、血中の鉛レベルの上昇している者は前頭葉および頭頂葉の余分な領域の活動性を必要とすることが示され、抑制を司る脳領域が鉛によりダメージを受けていることが示唆された。注意力を検査するようにデザインされた課題を行っている最中の画像検査の結果、鉛レベルが高いと頭頂葉領域および他の脳領域の活性が低下することが示された。これらの結果から、これらの人々においては、社会環境が不良なためではなく、鉛の曝露による長期の神経学的影響がその後の認知機能および行動上の問題の重要な原因であるとの過去の研究を支持するものである。
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fMRIの結果、快不快な刺激に対する脳の反応は男女で異なることが示された [2009-12-15]
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fMRI
shows men and women's brains respond differently to positive and negative stimuli |
機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて脳の活性化を調査した結果、快不快な刺激に対する脳の反応は男性で異なることが明らかにされた、と2009年Radiological
Society of North America学会(RSNA 2009)で発表された。研究者らは、18〜36歳の右利きのボランティア40人(男性21人、女性19人)を組み入れた。彼らは、明らかな情動状態を喚起するようにデザインされた様々な物体および通常の生活の映像を見ている間にfMRIを施行された。不快なイメージを見ている間、女性は、疼痛および歓喜の中心を含む脳皮質へまたここから知覚情報を伝達する左視床の強くより広範な活性化を示した。男性は、体全体の生理的状態を判断し行動を引き起こす主観的な感情を生み出す左島皮質の活性化を示した。快適な映像を見ている間、女性は、聴覚処理および記憶に関与する右上側頭回の強く広範な活性化を示した。男性は視覚処理に関連する両側の後頭葉に強い活性化を示した。これらの差は、女性は快適な刺激を広範な社会場面において解析し快適な映像と特別な記憶を関連付ける可能性が示唆される。逆に男性の反応はより知覚的である。
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意欲をかき立てるような「女性のみの」心臓リハビリテーションはうつ症状を軽減する [2009-12-08]
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Motivational
"women-only" cardiac rehabilitation program improves symptoms of depression |
心血管疾患を有する女性のうつ症状は、意欲をかき立てるような女性限定の心臓リハビリテーションに参加することで改善したとの研究結果が2009年American
Heart Association学会で発表された。5年間の無作為化臨床試験の一次目的は、変化ステージをマッチさせた、動機付けを強化された、女性限定12週間の心臓リハビリテーションプログラムに参加した女性と、従来の教育および運動からなる12週間の心臓リハビリテーションプログラムに参加した女性とを、複数の身体的心理社会的予後に関して比較することであった。このトライアルに最後まで参加した女性225人(平均年齢63歳)のうつ症状をリハビリ終了後および6ヵ月の経過観察後に評価した。従来の心臓リハビリテーションに参加した女性のうつ病スコアは12週間のうちに16.5から14.3まで低下したのに対し、強化リハビリ群では17.3から11.0まで低下した。この結果は2群間のうつ症状の経時的な有意差を示している(p=0.13)。6ヵ月間の経過観察期間ののち、従来リハ群の平均スコアは15.2であり女性に特化したリハ群の平均スコアは13であった(p<0.001)。
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OctoStent Study:ステント留置を伴う血管形成術はオフポンプバイパス術よりも認知機能を低下させる可能性がある [2009-12-08]
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OctoStent
Study: Angioplasty plus stenting may be associated with greater cognitive decline
than off-pump coronary artery bypass |
動脈硬化の低リスク患者において長期の認知機能および運動能力は、オフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)後の患者の方がステント留置を伴う冠動脈形成術後の患者よりも良好である、と2009年American
Heart Association学会のレイトブレイキング臨床試験のセッションで発表された。研究者らはOctopusスタディの一部であるOctoStentトライアルの低リスク患者201人(エントリー時280人)の7.5年間の認知機能の結果を報告した。患者はOPCABまたは低侵襲のベアメタルステント留置を伴う経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける群に無作為に割り付けられた。認知機能に関する長期予後をOPCAB群とPCIステント群で比較したこの初めてのスタディでは、死亡率または心筋梗塞発症率に差はなかったが、OPCAB群患者においてPCIステント群患者と比較し、特に学習および言語記憶領域の認知機能が有意に良好であった。認知機能変化は軽微なものであったが、7つ全ての認知機能領域の検査にわたり認められた。このスタディが溶出ステントにおいても確認されれば、医師および患者が血行再建術の方法を選択する際に考慮すべき問題に加わるであろう。
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