頭部外傷を受けた政治犯においては脳の変化とより重度のうつが認められる [2009-11-17]

Brain changes and more severe depression found in political detainees experiencing head injury

拷問やトラウマ体験のある者では頭部外傷の影響によりうつおよび他の情動症状が増強されるとのスタディ結果がArchives of General Psychiatry 11月号に掲載された。このスタディにおいては、かつていわゆる“再教育キャンプ”に拘留され現在は米国に定住している42人のベトナム人および同年代の拘留歴のないベトナム移民15人の情報を解析した。参加者らは全員が面接前に頭部外傷歴および拷問および他のトラウマ体験の有無に関するアンケートに回答し、現在のうつ症状および外傷後ストレス障害(PTSD)に関する評価を受けた。彼らはまた広範な磁気共鳴画像検査を受けた。過去の拘留者のうち16人がどこかの時点で頭部外傷を負ったと回答し、26人には頭部外傷歴がなかった。頭部外傷歴のある拘留者は頭部外傷のない者と比較し、うつ症状を訴える率が高いのみならず画像検査の結果において前頭葉および側頭葉の脳皮質の菲薄化が認められた。脳皮質の菲薄化は頭部外傷歴のない拘留者には認められなかった。頭部外傷がより重度の者は構造変化がより大であり衰弱させるようなうつ症状を有する傾向にあった。

 

スタディの結果、老化による筋力低下と認知機能の低下には共通の原因のあることが示唆された [2009-11-17]

Study suggests a common pathogenesis may underlie loss of muscle strength and cognition in aging

筋力の弱い者はアルツハイマー病のリスクが高く時間とともに認知機能が低下するとArchives of Neurology 11月号に掲載された。研究者らは、初回評価時に認知症のない高齢者970人(平均年齢83歳)を調査した。スタディ期間中に138人(14.2%)がアルツハイマー病を発症した。筋力スコアは-1.6から3.2単位であった;スタディ開始時の筋力スコアが1単位増加するごとに追跡調査期間中の高齢者のアルツハイマー発症のリスクは43%低下した。筋力スコアが90パーセンタイルの者のアルツハイマー病発症のリスクは10パーセンタイルの者と比較し61%低かった。筋力とアルツハイマー病のリスクの関係は、ボディマスインデックスや身体活動レベルなどの他の因子を考慮にいれても依然として認められた。スタディ開始時に筋力が強い者ほど認知機能低下の進行が遅かった。最後に、ベースライン時に認知症または軽度の認知機能障害を有していた者を除いた解析によれば、筋力は軽度の認知機能障害発症のリスクと関連があり、これが認知機能障害の最も早期の症状である。

 

外傷後ストレス障害のリスク上昇には遺伝子と環境が相互作用で影響している可能性がある [2009-11-10]

Genes and environment may interact to influence risk for post-traumatic stress disorder

小児期の不運な出来事と成人期のトラウマになるような出来事の両者を経験した人々は、それらのうち一方のみ経験した人々と比較し、外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する確率が高いとArchives of General Psychiatry 11月号に掲載された。PTSDを発症するリスクは、生涯におけるストレスの情動反応に関連すると報告されているある特異的な多型−5-HTTLPRジェノタイプ−を有する人々においてさらに高かった。研究者らは、小児期の不運な出来事(虐待や無視を含む)、成人期のトラウマ(戦闘、性的暴行または自然災害)および両者を経験した人々1,252人(17〜79歳、平均年齢38.9歳)を調査した。参加者の約5分の1(229人、18.3%)がPTSDのクライテリアに合致した。計552人(44.1%)が小児期の不幸な出来事および成人期のトラウマを経験していた。これらの人々は生涯においてPTSDと診断される確率がトラウマを1回しか経験していない人々と比較して高かった(29%対9.9%)。筆者らは、5-HTTLPR遺伝子単独ではPTSDの発症を予知できないが、成人期のトラウマになるような出来事および小児期の不運な出来事と干渉し合い、特に両方のトラウマを経験した人々のPTSDのリスクを上昇させると述べている。

 

うつの妊婦はインフルエンザ感染に対し重症になるリスクが高い [2009-11-10]

Depressed pregnant women could be at higher risk for severe response to flu infection

有意なうつ症状を有する妊婦はうつレベルの低い妊婦と比較し季節性インフルエンザワクチンに対する生物学的反応が強いとの新たなスタディ結果がBrain, Behavior, and Immunity誌オンライン版に掲載され、印刷版に掲載される予定である。インフルエンザワクチンのスタディにおいて22人の妊婦がうつ症状に対しアンケートに回答し、インフルエンザワクチン接種を受ける前に血液検体を採取された。6〜9日後に2回目の採血を施行された。女性らは、うつ病がないまたはごく軽度、軽度から中等度、および有意なうつ症状を有する、の三群に分類された。研究者らは、ワクチン接種後の血液中のマクロファージ遊走阻止因子(MIF)と呼ばれる、炎症と戦う血液中の他の因子を抑制することにより炎症を促進する蛋白を解析した。インフルエンザワクチン接種1週間後の血液中MIFは、うつ病スコアが最も高かった女性においてうつ症状が最小であった女性と比較し、2倍多かった。この免疫系の調節障害がインフルエンザに感染した妊婦の症状重症度に影響しうるため、今回の結果は妊婦に対するインフルエンザワクチン接種賛成論を促すものである。

 

小児および青少年に非定型抗精神病薬を使用すると有意な体重増加を来す [2009-11-02]

Use of atypical antipsychotic medications by children and adolescents associated with significant weight gain

第二世代抗精神病薬を投与された小児および青少年の多くがコレステロールや中性脂肪レベルおよび他の代謝の計測値に関する様々な有害事象に加え有意な体重増加を来した、とJAMA 10月28日号に掲載された。過去に抗精神病薬を投与されたことのない小児患者(4〜19歳)272人の体重および代謝変化に関するスタディが施行された。これらの小児患者らは、気分障害スペクトラム(47.8%)、統合失調症スペクトラム(30.1%)、および破壊的および攻撃的行動スペクトラム(22.1%)障害を有していた。治療期間中央値10.8週間後、オランザピン(45人)により体重が平均18.7ポンド、クエチアピン(36人)により13.4ポンド、リスペリドン(135人)により11.7ポンド、アリピプラゾール(41人)により9.7ポンド増加し、それに比べ無治療患者群(15人)においては体重増加が最小で0.4ポンドであった。合計して10〜36%の患者が11週間の間に過剰体重または肥満に移行した。研究者らはまた、スタディ期間中のオランザピンおよびクエチアピンによる総コレステロール、中性脂肪、非HDLコレステロール値および中性脂肪/HDLコレステロール比に対する有害変化が統計学的に有意であることも明らかにした。

 

現在考えられているのとは逆に、脳の炎症はアミロイド沈着およびアルツハイマー病発症を引き起こす原因ではない [2009-11-02]

Chronic sleep deprivation linked to increase in Alzheimer's plaques

長期間にわたり科学的に信じられてきた考えが驚くことに覆され、脳の炎症はアミロイド沈着およびアルツハイマー病の発症を引き起こす原因ではないことが明らかにされた。実は炎症はこれらの有害なアミロイドプラークを疾患発症早期に脳から排除するとの研究結果がFASEB Journalオンライン版に掲載された。研究者らはSomatic Brain Transgenesisとして知られる技術を用いて、年齢とともにアミロイドプラークを増加しやすい若年マウスの脳において、炎症免疫反応を刺激するサイトカインであるインターロイキン6(IL-6)の発現を増加させた。IL-6は脳全体の炎症を引き起こしたため、彼らは脳神経の損傷に加え、プラークの蓄積が認められることを予測した。ところが、炎症はプラーク形成を阻止し、既に存在していたプラーク全てを排除した。さらに解析したところ、IL-6により引き起こされた炎症はマイクログリア細胞によるアミロイドプラークの脳からの排除を誘導することが確認された。活性化マイクログリア細胞がプラークに密着しアミロイドプラークを脳から除去するのに役立つ蛋白を発現することも明らかにされた。

 


 

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