スタディの結果、アルツハイマー病の遺伝子リスクを有する人々の中年での記憶力低下に関する最も若年期のエビデンスが得られた [2009-07-28]

Study finds earliest evidence of memory decline in middle-aged people at genetic risk for Alzheimer's disease

New England Journal of Medicine 7月16日号に掲載されたスタディの結果、アルツハイマー病に多く認められる遺伝子リスクファクターであるAPOE e4遺伝子を有する者は記憶力低下が50代半ばから始まり、これまで考えられていたよりも早いことが示唆された。対象者を14年間追跡したこのスタディでは、高感度記憶テストおよび思考テストを用いて、APOE e4を2コピー、1コピーまたは0コピー有する21〜97歳の健康人815人の認知能力を検出、追跡、および比較した。その結果、これらの3つのレベルの遺伝子リスクによる記憶力低下の差が55〜60歳の間に開始することが示された。筆者らは、年齢に関係する他の認知機能も変化するが、記憶力はAPOE e4遺伝子を有する者においてより早く低下し、アルツハイマー病患者において予測されるのと同様な(しかし、かなりより軽度の)認知機能老化はこのパターンであると述べている。この結果から、老化による通常の記憶力低下のように見えても実は非常に早期の臨床前段階のアルツハイマー病を呈している可能性もあり、将来的にアルツハイマー病の治療を高齢に達する前に開始した場合に最も有効となる可能性が示唆された。

 

「心臓の健康」によい食生活は認知機能低下を軽減する可能性がある [2009-07-28]

Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) eating pattern may reduce age-related cognitive decline

「心臓の健康」によい食生活は老化による認知機能低下を軽減する可能性があると、2009年International Conference on Alzheimer's Diseaseで報告された。研究者らは食習慣に関するアンケートおよび認知機能評価を含む調査に回答した65歳以上の参加者3,831人を追跡した。認知機能はModified Mini-Mental State examination (3MS)を用いてその後11年間に4回評価された。高血圧予防のための食餌療法(Dietary Approaches to Stop Hypertension :DASH)ダイエット順守スコアは9つの食物群/栄養成分の消費に基づき作成された。DASHスコアが高いと認知機能スコアも高かった。DASHスコアが最も高い四分位の人々はスコアが最も低い四分位の人々と比較し、3MSスコアがベースライン時に1.42ポイント高く、11年後に1.81ポイント高かった(p<0.001)。また、9つの食物群/栄養成分のうち4つ(野菜、全粒粉、低脂肪乳、ナッツ/豆)は3MSと独立して関連があった。これらの4つの食品摂取量が最も多い四分位に含まれた人々は最も低い四分位の人々と比較し、3MSスコアがベースライン時に1.72ポイント高く、11年後に3.73ポイント高かった。

 

重症の慢性閉塞性肺疾患は高齢者の認知機能低下を引き起こす可能性がある [2009-07-21]

Severe chronic obstructive pulmonary disease is associated with lower cognitive function in older adults

重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)は高齢者の認知機能低下を引き起こす可能性があると American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 7月15日号に掲載された。研究者らは50歳以上の米国人に対する二年毎の国内前向き調査Health and Retirement Studyのデータを得た。最終的に4,150人が組み入れられ、492人がCOPDを有し、そのうち約3分の1(153人)が重症であった。35点の認知機能スケールを用いたところ、COPD患者のスコアが6年間で平均1点低下したことが示された。また、COPDの重症度と認知機能低下にも関連があった。社会人口学的背景および他の交絡因子で補正した後も、重症COPDを有する人々の平均認知機能スコアはCOPDを有さない人々のそれよりも有意に低かった(0.9点;p=0.01)。特に、金銭や薬物を扱うような認知機能を多く必要とする実行機能(executive function)は高い認知機能障害レベルでより低かった。同様の認知機能検査を用いた過去の研究から推測した結果、COPD患者は日常業務の困難の平均数が22%増加することが示唆された。

 

MRIに基づく鑑別診断を3つの一般的な神経変性疾患に関して試みた [2009-07-21]

MRI-based differential diagnosis tested for three common neurodegenerative disorders

構造的MRIは将来的に3つの一般的な神経変性疾患の鑑別診断に役立つ可能性があると、7月11日にウィーンで開催されたAlzheimer's Association International Conference on Alzheimer's Diseaseで発表された。研究者らは3つの神経変性疾患(アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、Lewy小体病)のMRIに基づくた鑑別診断の枠組みを作成した。現在、患者の認知症の型を確実に特定する唯一の方法は死体解剖時の脳の標本である。「構造異常指標(STructural Abnormality iNDex)」または STAND-Mapと呼ばれる枠組みは生存中に正確に認知症を診断するのに有望である。その根拠は、それぞれの神経変性疾患がMRIで脳萎縮特異的な特有なパターンを示すのであれば、患者の鑑別診断は可能であろうということである。このproof of conceptスタディは、一つの認知症のみを有していることが確認され、臨床上認知症と診断された際にMRIを施行された、Mayoクリニックのデータベースから得られた患者90人を観察したものである。STAND-Mapの枠組みを用いた結果、研究者らは75〜80%の件数において正確な病理診断を予測した。

 

睡眠不足と産後うつ病は独立して関連がある [2009-07-14]

Poor sleep is independently associated with depression in postpartum women

睡眠はうつ病のリスクファクターと産後の睡眠パターンが変化しやすい女性のうつ病発症との間のモデレーターとして働く可能性があるとのスタディ結果がSleep誌7月号に掲載された。ノルウェイのStavanger大学病院で生きた子供を出産した女性2,830人のデータが収集された。産後女性の60%近くが全体的な睡眠の質が不良であり、16.5%がうつ症状を有していた。出産後2ヵ月の時点で睡眠が不良なことは、他の有意なリスクファクターで補正した後もうつ症状と関連があった。睡眠妨害および主観的な睡眠の質が睡眠に関する内容でうつ病と最も強く関連があった。産後うつ状態にある女性の21%が妊娠中もうつ状態であったと報告し、46%が妊娠前に少なくとも一回はうつ病エピソードの既往を有していることから、産後うつ病と診断された女性は単に慢性的な睡眠不足症状を訴えているのみではないことが示唆された。筆者らは、産後に睡眠時間が短縮したり睡眠効率が低下したりすることに対する反応は個々の女性で異なり、うつ病の既往のある女性の睡眠は出産に関連した精神生物学的変化(ホルモン、免疫、心理的、社会的)に、より感受性が高い可能性があると述べている。

 

アミノ酸N-アセチルシステインは抜毛癖患者の強迫的抜毛症状を軽減するようである [2009-07-14]

The amino acid N-acetylcysteine appears to reduce symptoms of compulsive hair-pulling in patients with trichotillomania

アミノ酸N-アセチルシステインは抜毛癖患者の強迫的抜毛症状を軽減するようであると、Archives of General Psychiatry 7月号に掲載された。抜毛癖患者50人(女性45人男性5人、平均年齢34.3歳)に対し、12週間にわたるN-アセチルシステインの二重盲検コントロールトライアルが施行された。25人は一日1,200〜2,400mgのN-アセチルシステインを12週間投与される群に、他の25人はプラセボを投与される群に無作為に割り付けられた。12週後に実薬群患者はプラセボ群患者と比較し、抜毛症状が有意に軽減した(“よく改善または非常によく改善”したのが実薬群で56%であったのに対しプラセボ群では16%)。有意な改善が初めて認められたのは治療開始9週後であった。有害事象が認められた者はいなかった。N-アセチルシステインを内服している患者において認められた改善度は他の薬物を内服している患者よりも高く、認知行動療法単独または認知行動療法と薬物治療の併用を受けている患者と同等であり、N-アセチルシステインは現在ある治療より優れていることが示唆された。この効果はさらにグルタミン酸作動性薬が強迫行動の主症状を標的とする可能性があることを示唆する。

 

ADHDの神経発達に役割を果たすことで知られるADHD遺伝子が発見された [2009-07-07]

ADHD genes found which are known to play roles in neurodevelopment of disease

注意欠陥多動性障害(ADHD)の小児においてADHDのない小児と比較し多く認められる何百もの遺伝子亜型が小児科研究者らにより発見された、とMolecular Psychiatry誌オンライン版に掲載された。研究者らはADHD患者335人およびその家族のゲノムを解析し、ADHDを有さない2,000人を超える健康な小児のものと比較した。その結果、CNV量は両群間で同等であったが異なるパターンが認められた。ADHD家族に認められたが健康な家族には認められなかった222の遺伝CNVのうち、有意な数のものが過去に他の神経発達障害(自閉症、統合失調症、トゥレット症候群)において同定された遺伝子内にあった。ADHD家族内に認められたCNVはまた、学習、行動、シナプス伝達および神経系発達などの精神神経機能に重要な遺伝子を変化させる。研究者らは、関連のある遺伝子は何百もあるであろうが個々の人々においてはそのうち変化しているのはいくつかに過ぎないことを示した。しかしそれらの遺伝子が同様の経路で作用すると同様の結果−ADHDとなる可能性はある。今回の結果から、ADHDの小児がしばしば臨床的に少し異なる症状を有することも説明される可能性がある。将来的に治療が個々の遺伝子プロファイルごとに行われ、より目標を定めた特異的な治療となることが望まれる。

 

拡散テンソル画像で脳白質が異常な青少年は統合失調症を発症するリスクが高い [2009-07-07]

Diffusion tensor imaging shows abnormal white matter development in brains of adolescents at risk for developing schizophrenia

新たな脳の画像検査を用いた結果、統合失調症発症のリスクの高い白質を有する青少年の統合失調症発症率は健康人のそれと同等ではないとBiological Psychiatryオンライン版に掲載された。さらに、この変化の程度により経時的な機能障害の程度も予測できた。研究者らは25人の健常コントロール群および統合失調症発症リスクの非常に高い10歳代および若年成人36人(12〜26歳)を調査した。対象者全員がトライアル開始時に拡散テンソル画像検査(DTI-白質線維に沿った水分子の動きを用いて脳のパスウエイを精密に描出する)、スタディ開始持および2年後の臨床的機能的評価を受けた。その結果、健康人は側頭葉の白質計測値が予測どおりに上昇し正常であったのに対し、統合失調症のリスクの高い若年者は正常な上昇パターンを示さなかった。初回診察時に白質の計測値を見ることにより、研究者らは15ヵ月後の機能状態を予測することができた。

 


 

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