◆ |
解析の結果、セロトニン輸送体遺伝子亜型とうつ病リスクとの関連は支持されなかった [2009-06-30] |
Analysis does not support association between serotonin transporter gene variation and risk of depression |
過去の14のスタディを解析した結果、既に報告されたものとは異なり、セロトニン輸送体遺伝子亜型と大うつ病のリスク上昇との関連は認められなかったとJAMA 6月17日号に掲載された。いくつかの複雑な疾患のリスク遺伝子の同定が進歩しているにもかかわらず、精神疾患ほど遺伝子識別が困難な疾患は少ない。過去のあるスタディ(Caspiら)では、セロトニン輸送体遺伝子(5-HTTLPR)は、ストレスの多い生活上の出来事との相互作用により大うつ病の素因としての役割を果たしていると結論付けた。研究者らはうつ病発症に対するセロトニン輸送体遺伝子とストレスの多い生活上の出来事との相互作用に関するメタ解析を行った。彼らは解析に組み入れるクライテリアを満たす14のスタディを特定した。参加者14,250人中1,769人がうつ病を有し12,481人がうつ病を有さないと分類された。その結果、どの個々のスタディおよび加重平均においても5-HTTLPRジェノタイプとうつ病には関連がなく、うつ病に関するジェノタイプとストレスの多い生活上の出来事との相互作用は認められなかった。個人レベルのデータの性別特異的メタ解析においても同様の結果が認められた。このメタ解析の結果、生活上のストレスの多い出来事の数がうつ病と有意に関連があることが示された。 |
|
◆ |
ケアマネージメントにより高齢患者のうつ病および自殺念慮が軽減する [2009-06-30] |
Care management reduces depression and suicidal thoughts in older primary care patients |
プライマリケア診療に熟練したうつ病ケアマネージャーを加えることによりうつ病の寛解率が上昇し自殺念慮が軽減するとの、多施設高齢者プライマリケアにおける自殺予防:共同研究(Prevention of Suicide in Primary Care Elderly: Collaborative Trial [PROSPECT])の結果がAmerican Journal of Psychiatryオンライン版に掲載された。研究者らは、様々な規模のプライマリケア診療施設20ヵ所で60歳以上のうつ病患者599人を追跡調査した。参加者はPROSPECT介入治療または通常の治療を受ける群に無作為に割り付けられた。PROSPECT群の患者は、承認されたガイドラインに従って医師が治療を行うのを手助けし治療効果を監視し2年間の経過観察を行うケアマネージャーを割り当てられた。2年後にPROSPECTケアマネージメント群の90%近い患者が医師からうつ病の治療を受けたのに対し、通常治療群患者におけるその割合は62%であった。自殺念慮の減少率はPROSPECT群において2.2倍高かった。うつ病の寛解はPROSPECT介入群の方が早期に得られ、寛解率は18〜24ヵ月の間上昇し続けたのに対し、通常治療群においては同期間中に明らかな上昇は認められなかった。 |
|
◆ |
転居により子供の自殺行為のリスクが上昇する [2009-06-23] |
Changing residences associated with increased risk of suicidal behavior among children |
頻回に引越しをするデンマークの小児は11〜17歳での自殺企図または自殺既遂のリスクが高いようである、とArchives of General Psychiatry 6月号に掲載された。デンマーク国内登録のデータを用いて1978〜1995年に生まれた子供を抽出した。病院の記録に基づくと11〜17歳時にこれらの子供のうち4,160人が自殺を試み79人が自殺した。それぞれの自殺企図および自殺既遂に対し、研究者らは同性および同年代のコントロールの小児30人を選び出した。コントロールの子供と比較し、自殺を試みた子供は住居がより頻回に変わっていた−3回以上引越しをしたのは自殺を試みた小児の55.2%であったのに対し、コントロールでは32%であり、自殺を試みた小児の7.4%が10回以上引越しをしていた(コントロール群では1.9%)。自殺既遂の子供においても引越しの頻度が高かった。住所変更の頻度が高いほど自殺企図や自殺既遂の率がより高かった。この相関関係は、生誕地や両親の精神状態などの他の因子で補正してもなお認められた。 |
|
◆ |
小児がん既往者の外傷後ストレス障害のリスクは低いが、他者と比較し高い [2009-06-23] |
Childhood cancer survivors have low, but increased risk of post-traumatic stress disorder |
第45回American Society of Clinical Oncology学会で発表された小児がん既往者のスタディ(Childhood Cancer Survivor Study)の報告によると、小児がんの既往のある成人における外傷後ストレス障害(PTSD)発症率は、健康な彼らの兄弟姉妹よりも4倍以上高いとのことである。しかし、それでも小児がん既往者におけるPTSD発現率は依然として低かった(9%)。この解析では、小児がんの既往のある成人6,542人と彼らの兄弟姉妹368人におけるPTSD症状、臨床上の苦痛、および機能障害を比較した。既往者の9%および兄弟姉妹の2%がPTSDを有していた。4歳未満でがんと診断され頭部に放射線照射を受けた者はPTSDのリスクが高かった。PTSDは、四肢切断、放射線療法、または複数の治療などの集中治療を受けた者において多く認められた。他のがんの既往者と比較し、神経芽細胞腫やWilms'腫瘍の既往者においてはPTSDの発症は少なかった。またPTSDは、未婚者、大学教育を受けていない者、年収$20,000未満の者、失業者により多く認められた。これらの因子は医師らがPTSDのリスクの高い小児がん既往者を見極めるのに役立つ可能性がある。 |
|
◆ |
長時間作用型リスペリドンは双極I型障害患者の再発までの時間を遅らせる [2009-06-02] |
Maintenance therapy with long-acting risperidone delays time to relapse in patients with bipolar I disorder |
第162回American Psychiatric Association学会で発表された新たなデータから、長時間作用型リスペリドンは双極I型障害患者の再発までの時間を有意に遅延させることが示された。無作為化二重盲検プラセボコントロール長期スタディが行われ、薬物療法で落ち着いているかまたは急性躁病エピソードか混合性エピソード発現中の双極I型障害のDSM-IVクライテリアに合致する患者における維持療法としてのリスペリドンの効果が評価された。スタディの第一段階で303人の患者がオープンラベルの長時間作用型リスペリドン26週間投与にて安定した。二重盲検の段階で患者は長時間作用型リスペリドンによる維持療法群(154人)またはプラセボ群(149人)に無作為に割り付けられた。治療期間中央値はリスペリドン群で9ヵ月であり、プラセボ群で5ヵ月であった。一次エンドポイントは何らかの気分エピソード(うつ病、躁病、または混合性)再発までの時間であった。再発までの時間はプラセボ群と比較しリスペリドン群で有意に長かった(p<0.001)。さらに、二重盲検段階の再発率はリスペリドン群(30%;42/140)でプラセボ群(56%;76/135)よりも低かった。リスペリドン投与量の中央値は25mgであった。
|
|
◆ |
Phase 3トライアルの結果、lurasidoneは統合失調症治療において有効であり忍容性も良好であることが示された [2009-06-02] |
Phase 3 trial finds lurasidone to be effective and well tolerated for treatment of schizophrenia |
急性期の統合失調症治療に対するlurasidoneの初めてのphase 3トライアルの結果、この薬剤がプラセボよりも有意に有効であり忍容性も良好で脱落率も比較的低いことが報告された、と第162回American
Psychiatric Association学会で発表された。無作為化プラセボコントロール二重盲検多国籍トライアルPEARL 1:Program to Evaluate
the Antipsychotic Response to Lurasidone(Lurasidoneの抗精神病作用を評価するプログラム)において急性期の統合失調症患者に一日
40mg、80mg、120mgのいずれかの用量のlurasidoneを6週間投与しプラセボと比較し評価した。一日80mgのlurasidone投与により、Positive
and Negative Syndrome Scale (PANSS)総スコア(一次エンドポイント)およびClinical Global Impressions
Severity scale (CGI-S、重要な二次エンドポイント)が第2週から第6週までの全ての受診時において改善していた。lurasidoneの体重への影響はプラセボと同等であり(体重変化中央値はlurasidone群全体で0.3kgに対しプラセボ群で0kg)、脂質および血糖値に対する影響も同等であった。またlurasidone群全体の脱落率はプラセボと比較し低く(31%対43%)忍容性が良好であり、有害事象による脱落率も低かった(lurasidone群全体とプラセボ群とでそれぞれ6%と2%)。
|
|
◆ |
経頭蓋磁気刺激(TMS)療法は大うつ病患者の認知機能を改善する [2009-06-02] |
Transcranial magnetic stimulation (TMS) therapy improves cognitive function in patients with major depressive disorder |
経頭蓋磁気刺激(TMS)療法は大うつ病患者の総合的な認知機能および短期の言葉の記憶を改善したと第162回American Psychiatric Association学会で発表された。認知機能は薬物治療に抵抗性の大うつ病患者におけるNeuroStar TMS療法の多施設無作為化コントロールトライアルにおいて評価した(有効なTMS群155人、シャムTMS群146人)。全体的な認知機能、短期および長期の記憶に関する特異的な計測(それぞれMini Mental Status Examination、Buschke Selective Reminding Test、Autobiographical Memory Interview-Short Form)を初回治療前、TMSを毎日施行する集中治療コース期間中の4および6週の時点で行った。6週終了後に各治療群の臨床経過で分類した。TMS群のみにおいては、TMSが有効であった者において無効であった者と比較し、Buschke Selective Reminding Testにおける短期記憶(4週目P=0.0116;6週目P=0.0038)および長期記憶(4週目P=0.0463;6週目P=0.0012)が統計学的に有意に改善した。この認知機能改善はプラセボ投与患者では認められなかった。 |
|
◆ |
Guanfacineは反抗的な症状のあるADHD患者の症状を有意に改善する [2009-06-02] |
Guanfacine shows significant ADHD symptom improvement in patients with oppositional symptoms |
用量変更可能な無作為化プラセボコントロールスタディにおいて選択的α2A作動薬guanfacine徐放製剤は、ADHD評価スケールIVを用いた計測で反抗的症状を有すると診断された6〜12歳のADHD小児のADHD症状を有意に改善することが示された。このデータは第162回American
Psychiatric Association学会で発表された。Guanfacineはまた、三つの異なる評価スケール(Clinical Global Impressions-Improvement
[CGI-I]、Conduct Problem Subscale of the New York Parent Rating Scale-School-Aged
[NYP RS-S]、および Parent Stress Index-Short Form [PSI/SF]アンケート)で計測した症状も改善した。CGI-Iスケールにおいては10人中7人においてプラセボと比較し“非常によく改善”または“よく改善“と評価された(71.5%対32.0%;P<0.001)。Conduct
Problem Subscale of the NYPRS-Sにおいてもguanfacine群においてプラセボ群と比較し有意な症状の軽減が認められた(-16.0対-9.6;P<0.001)。PSI/SFスケールにおいては、guanfacine群は17.0点減少したのに対しプラセボ群では7.7点の減少であった(P=0.002)。重篤な有害事象は認められなかった。
|
|
◆ |
ヨーロッパ介護者調査では子供および家庭におけるADHDの影響に焦点を当てている [2009-06-02] |
European Caregiver Survey highlights the impact of ADHD on the child and the family |
注意欠損多動性障害(ADHD)の子供の両親は、両親とのプライベートな時間における子供のADHD行動の影響と同様、学校でのADHD症状にも重大な関心を示しているとのヨーロッパ介護者調査の結果が第162回American Psychiatric Association学会で発表された。この調査において、ドイツ、イタリア、スペインおよび英国の50%近くの親が、彼らの子供が評価を必要とするADHD症状を有しているかを決断するのに彼らが重要な役割を果たしていると回答した。また彼らは家庭でのADHD症状よりも学校でのADHD症状について最も懸念しており(それぞれ17%と67%)、学校のある日は通常内服させていた。さらに、調査の結果ほとんどの親が専門医を少なくとも年2回受診しており、親のADHDの知識は診断時に与えられたサポートとじかに関連していた。しかし、彼らのうち専門医から供給された知識的なサポート(ADHDの子供をもつ家庭への書面での情報、地域または国のサポートグループに関する情報、ADHDを有する子供に対する書面での情報、およびオンラインの情報)により“よく情報を提供された”と感じた者はわずか半分(51%)であった。 |
|
◆ |
児童虐待歴はうつ病入院患者の自殺、薬物乱用、およびパーソナリティ障害に影響する [2009-06-02] |
A history of child abuse impacts rates of suicide, substance abuse, and personality disorder in depressed inpatients |
児童虐待歴のあるうつ病入院患者は、自殺企図の増加、薬物使用障害の発症およびパーソナリティ障害の高い発症率などの広範囲の難題に直面する、と第162回American Psychiatric Association学会で発表された。さらに、彼ら犠牲者は精神疾患を早期に発症し精神科的な問題による入院率が高い。児童虐待が自殺のリスクを上昇させることはすでに知られているが、児童虐待の犠牲となったうつ病患者の他の特徴に関する論文は少ない。このスタディの結果は因果関係を確認していないが、公衆衛生の観点から、児童虐待を防ぐもっと積極的なアプローチが重要であることを強調している。さらに大規模なスタディを行い、児童虐待と精神疾患の関連を調査する計画が進行中である。 |
|