統合失調症患者において薬物乱用は暴力犯罪のリスクを上昇させる重要な因子である [2009-05-26]

Substance abuse appears to be an important factor in increased risk of violent crime by persons with schizophrenia

統合失調症患者が暴力犯罪を犯すリスクが高いのは主に同時に有している薬物乱用の問題によるようであるとJAMA 5月20日号に掲載された。このスタディはスウェーデン国内の入院および犯罪の有罪判決の登録データを用いた。統合失調症と診断された後の患者(8,003人)における暴力犯罪のリスクを一般人口のコントロール(80,025人)におけるそれと比較した。統合失調症患者のうち、1,504人(13.2%)が少なくとも1回は暴力犯罪を犯したのに対し一般人口コントロールにおいては4,276人(5.3%)であった(補正後のオッズ比2.0)。統合失調症と薬物乱用を有すると診断された者が暴力犯罪を犯す率は薬物乱用を有さない統合失調症患者と比較し有意に高く(27.6%対8.5%)、統合失調症および薬物乱用を有する者のオッズ比は4.4であり、薬物乱用のない統合失調症患者のそれは1.2であった。薬物乱用者において認められた暴力行為のリスク上昇度は、統合失調症のない兄弟姉妹をコントロールとして用いると有意に低下し(統合失調症患者の28.3%が暴力犯罪を犯したのに対し、疾患を有さない兄弟姉妹におけるその割合は17.9%であった)、統合失調症と暴力の関連には家族性の交絡(遺伝子または幼少期の環境)が有意に認められることが示唆された。

 

高齢者における急激な体重減少は認知症を発症するリスクが高いことを示している [2009-05-26]

Rapid weight loss in elderly indicates high risk of developing dementia

Neurology 2009年5月19日号に掲載された新たなスタディにより、やせていたり急激に体重が減少したり(特にもとは過剰体重または肥満であった場合)する高齢者は認知症を発症するリスクが高いことが示された。研究者らはワシントン州の平均年齢72歳の日系アメリカ人1,836人を追跡した。8年間に129人が認知症を発症した。スタディ開始時にボディマスインデックス(BMI)が低かった人々はそれよりもBMIが高かった人々と比較し、認知症を発症する確率が79%高かった。さらに、スタディ期間中に体重が急速に減少した人々は体重がゆっくり減少した人々と比較し、認知症を発症する確率が三倍であった。この結果はスタート時点で過剰体重または肥満であった人々においてより著明であった;BMIが23以上の人々は標準体重または過小体重の人々と比較しリスクが82%低かった。この結果は喫煙、運動または性別などの他の健康上のリスクファクターで補正しても同じであった。

 

加齢黄斑変性は認知機能と関連がある可能性がある [2009-05-19]

Age-related macular degeneration may be associated with cognitive impairment

思考、学習、および記憶などの認知機能検査で点数の低い高齢者は早期の加齢黄斑変性(AMD)を有する確率が高いようであるとArchives of Ophthalmology 5月号に掲載された。論文の背景情報によると、どちらの状態も脳と眼にβアミロイド蓄積などの類似の変化を認めるとのことである。臨床研究の結果、AMDとアルツハイマー病は同じ血管リスクファクターを共有し、また両者ともに脳卒中のリスクを上昇させることが示唆された。この関連を調査するためオーストラリアの研究者らは69〜97歳の2,088人を評価した。参加者らは認知機能検査、眼底写真によるAMDの検出および動脈疾患とそのリスクファクター(血圧、喫煙状況およびbody mass index)の広範な評価を施行された。年齢、性別、人種およびスタディに参加した施設で補正した結果、ある認知検査で最もスコアの低い4分の1に該当する者はスコアがそれより高い者と比較し、早期AMDを有する確率が2倍であった。しかし、もう一つの認知機能検査、認知症およびアルツハイマー病とAMDには関連がなかった。

 

脳脊髄液内のバイオマーカーは軽度認知症患者の急速な進行と関連がある [2009-05-19]

Biomarkers in cerebrospinal fluid associated with faster decline among individuals with mild dementia

非常に軽度の認知症患者の脳脊髄液内のバイオマーカーレベルは思考、学習および記憶能低下率と関連がある可能性がある、とArchives of Neurology 5月号に掲載された。研究者らはアルツハイマー型の非常に軽度の認知症と診断された患者49人を調査した。参加者には腰椎穿刺により脳脊髄液(CSF)を採取し、αβペプチド 1-42(Aβ42)、タウおよびリン酸化タウ181(ptau181)などのアルツハイマー病と関連したいくつかのバイオマーカーを測定した。参加者全員が平均3.5年後に1回以上の追跡評価を受けた。認知症の進行は、ベースライン時脳脊髄液内のAβ42低値、タウまたはptau 181レベル高値、またはタウ/ Aβ42比高値の患者において有意に速かった。筆者らは、このスタディの参加者数は比較的少なかったが、この結果から、CSFバイオマーカーは軽度認知障害およびアルツハイマー型の非常に軽度の認知症に対する根本的治療法の臨床試験への組み入れのクライテリアとして有用である可能性があることが示唆されると述べている。

 

うつ病と内臓脂肪の関係により心血管疾患との関連が説明できる可能性がある [2009-05-12]

Association between depression and visceral fat may explain link to cardiovascular disease

多くのスタディによりうつ病は心疾患のリスクを上昇させることが示されているが、そのメカニズムは明らかにされていない。今回Psychosomatic Medicine 5月号に掲載された研究の結果、うつ病は、心血管疾患および糖尿病のリスクを上昇させることが以前から指摘されている内臓脂肪蓄積と関連があることが示された。このスタディには、更年期の長期スタディであるシカゴのWomen in the South Side Health Project(WISH)に参加した中年女性409人を対象とした。うつ症状は一般的なスクリーニング検査を用いて評価し、内臓脂肪はCTスキャンを用いて計測した。その結果、特に過剰体重および肥満女性において、うつ病と内臓脂肪の強力な相関が認められた。この結果は、身体活動などの内臓脂肪蓄積の原因となりうる他の可変因子で補正した後も同じであった。うつ症状と皮下脂肪には相関は認められなかった。筆者らは、うつはコルチゾールや炎症物質の産生のような体内の化学的な変化を介して内臓脂肪蓄積を引き起こすと推測しているが、さらに研究を行い正確なメカニズムを突き止める必要があると述べている。

 

脳内の酸感受性蛋白を破壊することにより抗うつ効果が得られる [2009-05-12]

Disrupting an acid-sensitive protein in the brain produces antidepressant effects

恐怖行動や不安に関係する酸感受性蛋白はうつ病治療の新たなターゲットとなる可能性があるとの研究結果がThe Journal of Neuroscience 4月29日号に掲載された。このスタディは、マウスにおいて酸感受性イオンチャンネル-1a(ASIC1a)の破壊により抗うつ様効果が得られることを示した。研究者らは、ASIC1a遺伝子欠損マウスとASIC1a阻害薬で治療されたノーマルマウスのうつ様症状が軽減したことを明らかにした。これらのマウスは甘味をより好み活動性低下が軽減し、抗うつ薬治療と同様の効果が認められた。ASIC1a遺伝子欠損マウスはまた既知のうつ病バイオマーカーを示さなかった。慢性のストレスは一般的に脳内のBDNF遺伝子量を減少させるが、ASIC1a欠損マウスにおいてはこの変化は認められなかった。最後に、研究者らは、ASIC1aを基礎とした治療は一般的な抗うつ薬とは異なる生物学的パスウエイを通して効くことを明らかにした。このことから、一般的な治療が無効な患者またはこれらの治療の副作用のため忍容性のない患者に有益である可能性がある。

 


 

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