家族型うつ病の早期脳マーカー
  蛋白質のもつれ(Protein snarls)が神経機能および記憶脳を破壊する
  Modafinil乱用の可能性
  アルツハイマー病の診断または除外のためのバイオマーカー検査
  不幸な主婦の心臓の危険性 (American Psychosomatic Society)
  うつ病は心血管リスクファクターとして遺伝子に勝る (American Psychosomatic Society)
  親は子供の精神障害のリスクに影響を与える
  アルコール障害はうつ病を引き起こす
  親が認知症を有すると中年期に記憶障害を発症するリスクが高くなる可能性がある (American Academy of Neurology's 61st Annual Meeting)
  糖尿病は女性をうつ病にさせやすくする可能性がある



画像スタディによりうつ病の高リスクの患者に関連した構造的マーカーが同定される [2009-03-31]

Imaging study identifies structural marker linking patients to higher risk for depression

これまでで最も大規模なうつ病の画像スタディの結果、脳―右脳半球―の構造の違いがうつ病のリスクが高いことと関連のあることが示されたとの新たな研究結果がProceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)オンライン版に掲載された。このスタディでは、家族歴のあるまたはない対象(6〜54歳)131人の画像上の大脳皮質の厚さを比較した。うつ病患者の生物学的な子において構造上の違いが認められたが、うつ病ではない者の子供においては認められなかった。うつ病のリスクの高い者においては既知のリスクのない者と比較し、右大脳皮質が28%薄かった。スタディの結果、右大脳皮質の菲薄化は実際のうつ病とは関連がなく、うつ病のリスクが高いこととのみ関連があり、一部の認知機能および注意欠損と関連がある可能性があった。大脳皮質が薄いほど認知機能に関する問題が大きかった。左脳半球の同部位も薄くなっている者は、うつ病または不安症を発症した。

 

アルツハイマー病のメカニズムから併用療法の必要性が示唆された [2009-03-31]

Mechanism of Alzheimer's disease suggests combination therapy is needed

不可解なしかし診断に役立つアルツハイマー病患者の脳内の蛋白質のもつれ(Protein snarls)の作用機序が発見され、この神経変性疾患と戦うには併用療法が必要である可能性が示唆された、とProceedings of the National Academy of Sciencesに掲載される。過去の研究からtau tangles(タウ蛋白のもつれ)がアミロイドベータとともに神経機能および記憶を破壊するメカニズムが示された。彼らは、長鎖プラークではなくむしろ短い集合体のアミロイドがニューロン内に入ると細胞の移送系と干渉し合い他の神経細胞とのシナプス結合を妨害することを発見した。さらに、タウ蛋白のもつれは末梢ニューロンへの移送を停止させる。今回の新たなスタディでは、短い集合体のアミロイドが、運動蛋白のカーゴ(cargo)の放出を引き起こすCK2と呼ばれる移送調節酵素を活性化し、CK2阻害によりアミロイドの移送に対する作用が妨害されることが示された。アミロイドにより活性化されたCK2はまた、タウ蛋白のもつれにより活性化された酵素の一つGSK3のプライマーとして働く。アミロイドとタウ蛋白のもつれは相互に問題を増悪させ、アルツハイマーの神経結合の喪失を引き起こすイベントのカスケードを作り出す。

 

認知機能改善目的で使用されているナルコレプシー治療薬が脳のドパミン活性に影響することから乱用および依存性の可能性が示唆されているる [2009-03-24]

Narcolepsy drug being used to improve cognitive performance affects brain dopamine activity, suggesting potential for abuse and dependence

健常人を対象とした予備研究の結果、認知能力を増強するためにますます使用されつつあるナルコレプシー治療薬modafinilが、脳のドパミン活性に乱用や依存を引き起こす可能性のあるように働くことが示唆された、とJAMA 3月18日号に掲載された。Modafinilは、適応外でいくつかの精神疾患(例:統合失調症、注意欠損/多動性障害[ADHD])の認知機能障害治療のために使用されている。研究者らは、治療用量のmodafinilが脳内でドパミントランスポーターを遮断することにより細胞外ドパミンレベルを上昇させるかどうかを調査するスタディを行った。スタディでは健常男性10人(23〜46歳)にプラセボまたはmodafinil 200mg(ナルコレプシーに対する推奨用量)またはADHD治療に有益であることが示されている用量である400mgを投与した。Modafinilの細胞外ドパミンおよびドパミントランスポーターに対する効果は陽電子断層撮影法を用いて計測した。今回のパイロットスタディではmodafinil は人間の脳において迅速にドパミンレベルを上昇させドパミントランスポーターを遮断した。筆者らは、ドパミンを増加させる薬剤は乱用の可能性を有しており、modafinilが様々な目的でますます使用されるようになっていることを考慮すると、依存症になりやすい人々の乱用リスクに対する認識を高める結果になった、と述べている。

 

アミロイドベータ42ペプチドおよびタウプロテインを計測することによりアルツハイマー病を診断し軽度認知障害を予知することができる [2009-03-24]

Measuring amyloid beta42 peptide and tau protein can diagnose Alzheimer's disease and predict mild cognitive impairment

アルツハイマー病を確認または除外できる検査が研究者らにより実証され標準化された、とAnnals of Neurologyオンライン版に掲載された。脳脊髄液(CSF)内のアルツハイマー病の生化学ホールマークであるアミロイドベータ42ペプチドとタウプロテインを計測することにより、患者の軽度認知障害が長年の間にアルツハイマー病に移行するかどうかも予測することができた。同年代の正常な健常成人と比較すると、軽度認知障害またはアルツハイマー病の人々において、あるパターンの変化が明らかになった。このグループにおいては疾患の進行につれてタウ濃度が上昇し、アミロイドベータ42レベルが減少した。この検査は全体で87%の的中率であった(80%以上で臨床的有用とされる)。死体解剖でアルツハイマー病と確認された者のCSF検体において、アミロイドベータ42濃度閾値が最も高感度でありアルツハイマー病を96.4%の割合で検出した。この検査は95.2%の患者に対しアルツハイマー病を正確に除外し、軽度認知障害からアルツハイマー病への移行を81.8%の割合で予測した。

 

女性ではうつ病が結婚のストレスと心血管リスクを結びつけるが男性ではそうではない  [2009-03-17]

Depression ties marital strain to cardiovascular risks in women, not men

ストレスの多い結婚生活を送る女性はうつ症状を感じやすく、高血圧や肥満および他のメタボリックシンドロームの徴候を示しやすいとのスタディ結果がAmerican Psychosomatic Society学会で発表された。ストレスの多い結婚生活を送っている男性もうつ症状を感じやすいが、女性のようにメタボリックシンドロームのリスクが上昇するということはなかった。研究者らは結婚後平均20年の276カップル(40〜70歳)を組み入れた。全てのカップルが結婚を評価するいくつかのアンケートに回答し、心血管疾患のリスクを評価するため診察を受けた。その結果、結婚のストレスの多い女性ほどうつ症状を有する確率が高く、これらの女性はメタボリックシンドロームの症状をより多く有していた。不幸な結婚生活を送る男性もうつ症状を報告したが、結婚のストレスもうつ症状もメタボリックシンドロームのレベルとは関係がなかった。研究者らは、夫婦間の感情や関係を理解することが身体的な健康度を理解する上で重要な総合的な因子となり得、また、夫婦間の関係を改善することは感情的および身体的安定に役立つ可能性があると述べている。

 

うつ病は遺伝子や環境因子よりも心血管リスクを上昇させる [2009-03-17]

Depression increases risk for cardiovascular disease more than genetics or environment

大うつ病の既往はうつ病や心疾患のどの遺伝的なリスクよりも心血管リスクを上昇させるとの研究結果が、American Psychosomatic Society学会で発表された。研究者らは、ベトナム戦争中に米国軍隊に勤務した男性の双子1,200人以上から収集したデータを解析した。双子を調査したため対象者らをうつ病の遺伝的および環境的リスクの高い、中等度の、または低いグループに分別することができた。そしてこれらリスク別の群を、喫煙、肥満、高血圧および糖尿病などの心疾患に影響する因子で補正し、心疾患の発症について比較した。1992年にうつ病であった男性はうつ病歴のない男性と比較し、その翌年に心疾患を発症する確率が2倍であった。うつ病が心疾患の発症原因となっていたのは遺伝子リスクが高い双子および実際に臨床的なうつ病を発症した者のみであった。うつ病と心疾患に共通の遺伝子リスクが高いがうつ病を発症したことのない双子においては、心疾患のリスクは高くなかった。この結果から、うつ病自体が独立した心疾患のリスクであることが強力に示唆される。

 

双極性障害の親をもつと早期発症の精神障害のリスクが高い [2009-03-10]

Having parents with bipolar disorder associated with increased risk of early-onset psychiatric disorders

双極性障害の親をもつ子供およびティーンエイジャーは早期発症の双極性障害、気分障害および不安障害のリスクが高いようであるとArchives of General Psychiatry 3月号に掲載された。論文のバックグラウンド情報によると、双極性障害患者の60%もが21歳以前に発症する。研究者らは双極性障害患者233人の子供388人(6〜18歳)と背景のマッチしたコントロール143人の子供251人を比較した。コントロールと比較し、双極性障害の親をもった子供は双極スペクトラム障害を有するリスクが高く(10.6%対0.8%)、様々な気分障害および不安障害を有するリスクが高かった。両親ともに双極性障害の家庭の子供は片親が双極性障害の家庭の子供よりも障害を発症する確率が高かった(28.6%対9.9%);しかし、他の精神障害のリスクは片親が双極性障害の家庭の子供と同等であった。筆者らはこれらの結果は臨床的に重要な意味をもつと述べている。早期に疾患を発見することにより長期予後を改善し、高額の心理社会的および医療コストを避けることができる可能性がある。

 

うつ病がアルコール乱用を引き起こすというよりも、むしろアルコール乱用によりうつ病のリスクが上昇する可能性がある [2009-03-10]

Alcohol abuse may lead to and increased risk of depression, rather than vice versa

統計学的モデルスタディは、アルコール乱用がうつ病のリスクを上昇させる可能性はあるが、うつ病の人がアルコール乱用になる逆のモデルはないことを示唆している、とArchives of General Psychiatry 3月号に掲載された。ニュージーランドの25年間にわたるスタディでは1,055人の症例をフォローした。17〜18歳では、19.4%がアルコール問題に対するクライテリアに合致し、18.2%が大うつ病のクライテリアに合致した。20〜21歳では、22.4%がアルコール障害を、18.2%が大うつ病を有していた。24〜25歳では13.6%がアルコール障害を、13.8%が大うつ病を有していた。全ての年齢でアルコール乱用または依存により大うつ病のリスクが上昇した。3つのモデルがデータを適合させるために検証された。一つは大うつ病とアルコール乱用が相反する関係にあるというもので、二つ目はアルコール障害が大うつ病を引き起こすとするものであり、三つ目は大うつ病がアルコール障害を引き起こすとするものであった。最も適合したモデルは、アルコール乱用または依存から大うつ病への一方向性の関連はあるが大うつ病からアルコール乱用または依存への逆の作用はないとするものであった。

 

認知症の親をもつ人はApoEe4遺伝子が中年期の言語および視覚的記憶障害のリスクを上昇させる  [2009-03-03]

Having a parent with dementia, ApoEe4 gene increases risk of verbal and visual memory loss in midlife

親がアルツハイマー病または認知症と診断された人は本人が中年期に記憶障害を発症しやすい可能性があるとのスタディ結果が、4月に開催される第61回American Academy of Neurology学会で発表される。研究者らはフラミンガム心臓研究を用いて参加者の三世代を追跡しアルツハイマー病および他の疾患のリスクファクターを調査した。フラミンガム心臓研究の第二世代に属する計715人(平均年齢59歳)が研究に組み入れられた。282人からなるひとつのグループでは片親または両親が認知症と診断された。他のグループの433人の両親は認知症を有していなかった。認知症の強力なリスクファクターとされているApoEe4遺伝子が検査された。ApoEe4遺伝子を有する人々のうち親がアルツハイマー病または他の認知症を有する人々は、親がアルツハイマー病を有さない人々と比較し、言語および視覚記憶能が低いリスクが2〜3倍高かった。筆者らはこの結果から、アルツハイマー病の親をもつ人々は脳が約15年年をとっていることになる、と述べている。

 

妊娠前または妊娠中に糖尿病を有していた女性は周産期うつ病のリスクが有意に高い [2009-03-03]

Women with diabetes before or during pregnancy are at significantly increased risk of perinatal depression

収入が少なく糖尿病を有し初めて母親になった女性は糖尿病のない女性と比較し妊娠中または産後うつ病を経験するリスクが2倍近く高い、とJAMA 2月25日号に掲載された。研究者らは2004年7月から2006年9月の間に出産した収入の少ない女性11,024人のデータを用いた。その結果、糖尿病の種類にかかわらず糖尿病を有する女性は周産期(しばしば妊娠最後の数ヵ月および出産翌年とされる)に何らかのうつ病の徴候を経験する傾向がより顕著であった。年齢、人種、出産年、および早産などの影響で補正した後、糖尿病を有する女性がうつ病と診断されたり周産期に抗うつ薬を内服したりする確率は糖尿病のない女性と比較し2倍であった(それぞれ15.2%対8.5%)。妊娠中にうつ病と診断されなかった女性において産後うつ病を新規発症するリスクもまた糖尿病を有する女性において高かった(それぞれ9.6%対5.9%)。

 


 

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