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研究の結果、不妊、卵巣予備能低下と乳房/卵巣がん遺伝子(BRCA1)変異との関連が示唆された [2009-12-28] |
Research
suggests link between infertility, low egg reserve, and mutations in breast/ovarian
cancer gene (BRCA1) |
新たな研究結果により、BRCA1遺伝子変異を有する女性が乳房および卵巣がんのリスクが高く不妊率が高い理由が説明できる可能性があるとの論文がJournal
of Clinical Oncologyに掲載された。研究者らは乳がん患者126人に胚および卵母細胞の冷凍保存による生殖力保護のために卵巣刺激を行った。組み入れ基準に合致した82人中47人(57%)にBRCA検査を施行した結果、14人がBRCA遺伝子変異を有していた。BRCA変異陽性患者においてはBRCA遺伝子変異のない患者または遺伝子検査を受けたことのない患者と比較し、低卵巣反応率が有意に高かった。筆者らは、BRCA1遺伝子変異は早期の卵巣予備能低下と関連があると結論付けている。彼らは、BRCA1変異を有する患者の卵巣において排卵誘発剤が有効でないのであれば、不妊と乳がんおよび卵巣がん発症リスクの関連が確立できると述べている。
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生検なしで乳がん層別化ができる可能性のある画像法が発見された [2009-12-28] |
Researchers
identify possible imaging method to stratify breast cancer without biopsy |
生検を必要とせずに悪性の乳房腫瘍を見極められる可能性のある方法が発見されたとのスタディ結果がJournal of Nuclear Medicine印刷版に先立ちオンラインで掲載された。研究者らは、PET画像で腫瘍を評価するのに用いられる64Cu-TP3805と呼ばれる薬剤を研究した。64Cu-TP3805は、腫瘍が発育する際に過剰発現するVPAC1と呼ばれるバイオマーカーを探し出し乳がんを検出する。MMTVneuマウスにまずゴールドスタンダード薬18F-FDGを使用してPETスキャンを行った。その後64Cu-TP3805を用いて再度PETスキャンを行った。10個の腫瘍がそのマウスにおいて発見された。4つの腫瘍は18F-FDG
および 64Cu-TP3805の両者により検出され、他の4個は64Cu-TP3805でのみ検出された。これらの8個の腫瘍はすべて腫瘍細胞上にVPAC1がん遺伝子を過剰発現しており、組織学的に悪性であった。残りの2つの腫瘍は良性であり18F-FDGでのみ検出された。これらはVPAC1がん遺伝子を発現しておらず、従って64Cu-TP3805では検出されなかった。この64Cu-TP3805の検出能が人においても維持されるのであれば、64Cu-TP3805は乳がん診断における生検の有用な代替法となりうるであろう。
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化学療法にハーセプチンを同時併用することで乳癌無病生存率が改善する [2009-12-22] |
Disease-free
breast cancer survival improves when herceptin is used concurrently with chemotherapy |
ハーセプチンを化学療法の後ではなく同時併用することでHER2陽性乳癌女性の治療が改善すると2009年サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表された。化学療法とハーセプチンを同時併用した者は、ハーセプチンを化学療法の後に使用した者と比較し、がんの再発または死亡の相対リスクが25%低かった。Phase
III無作為化トライアルにおいて、stage I-IIIのHER2陽性乳癌に対し手術を受けた患者に対し、化学療法単独(A群)と化学療法に引き続きハーセプチンを使用する群(B群)またはハーセプチンを同時併用する群(C群)とで比較した。このスタディで使用された化学療法はドキソルビシンとシクロフォスファミドそしてパクリタキセルを使用し、約6ヵ月間投与した。ハーセプチンは52週間投与された。二つの差の比較が行われた。まずA群(1,087人)とB群(1,097人)を比較したところ、5年無病生存率(がんの再発がない)はA群の72%からB群の80%に上昇した。次の比較はB群の女性954人とC群の女性949人を比較した。C群の患者が全体で最も予後が良好であった(C群の5年無病生存率はB群の80%に対し84%であった)。
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小型のHER2陽性の乳癌は再発リスクが有意に高い [2009-12-22] |
Small,
HER2-positive breast cancer tumors show significant risk of relapse |
HER2陽性で1cm以下の乳癌患者は他のタイプの腫瘍の患者と比較し、再発リスクが有意に高いと2009年サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表された。研究者らはヨーロッパの二施設の患者965人を調査し350人において結果を確認した。診断時の年齢中央値は57歳であった。全ての腫瘍は1cm以下であった。多くの(68%)腫瘍がホルモン受容体陽性であり、10%はHER2陽性で23%はトリプルネガティブであった。5年間の無再発生存率はHER2陽性および陰性患者でそれぞれ77.1%と93.7%であり、5年無遠隔転移生存率はそれぞれ86.4%と97.2%であった。HER2陽性患者はHER2陰性患者よりも再発リスクが2.68倍高く遠隔転移のリスクが5.3倍高かった。HER2陽性患者はホルモン受容体陽性腫瘍の患者と比較し再発リスクが5.09倍高く遠隔転移のリスクが7.81倍高かった。現在のガイドラインでは5mm未満の腫瘍に対してはさらなる治療は行わないことを推奨しているが、今回のスタディ結果からこれらの患者らにおいてはアジュバント療法が有益である可能性が示唆された。
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エラストグラフィーを用いた超音波画像により皮膚の悪性腫瘍と良性腫瘍が鑑別された [2009-12-15] |
Malignant
tumors differentiated from benign skin conditions by ultrasound with elastography |
エラストグラフィー付き高周波超音波は皮膚のがんと良性腫瘍を鑑別するのに役立つと2009年Radiological Society of North America学会(RSNA
2009)で発表された。エラストグラフィーは、病変を見た目ではなく弾力性や硬さを計測することにより鑑別することで知られている。このスタディにおいて、超高周波超音波装置を用いて様々な悪性および良性皮膚病変を有する患者40人の画像検査を施行した。悪性腫瘍には扁平上皮細胞がん、基底細胞がんおよびメラノーマが含まれた。良性病変は皮膚線維腫および脂肪腫であった。研究者らは正常皮膚と隣接した皮膚病変との弾性の比を計算し、検査解析を行い診断を確認した。悪性ではない嚢胞病変は弾性が高く、一方悪性病変は有意に弾性が低かった。正常皮膚と様々な皮膚病変との弾性比は嚢胞病変の0.04〜0.3から悪性病変の10.0以上と幅があった。さらに、エラストグラフィー付き高周波超音波により皮下病変の広がりおよび深達度が正確に分かり、医師が治療する際に役立つ。
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ACRIN trial:超音波またはMRIを用いた年1回の乳房のスクリーニングは高濃度乳房の女性においては有益である [2009-12-15] |
ACRIN
trial: Annual screening with breast ultrasound or MRI could benefit women with
dense breasts |
2009年Radiological Society of North America学会(RSNA 2009)で発表された大規模臨床試験の結果、乳癌リスクの高い高濃度乳房の女性に対する年1回の超音波スクリーニングの有益性に関する初めての強力なエビデンスが示された。平均年齢55歳の乳癌リスクの高い女性612人がAmerican
College of Radiology Imaging Network (ACRIN) 6666トライアルに参加した14施設から組み入れられた。女性らは基本的なスクリーニングのマンモグラフィーおよび超音波検査を施行され、12ヵ月および24ヵ月の経過観察後の検査と24ヵ月後の造影MRI検査を1回施行された。16人が乳癌と診断された。これらのうち12のがんは浸潤性であり4つは非浸潤性乳管癌であった。スタディ経過中に50%〜56%のがんがマンモグラフィーで検出された。超音波検査を加えることにより70%〜94%のがんが検出された。MRIを追加することにより最も早期のがんがさらに検出された。またこのスタディから、超音波またはMRIの補助的な検査をすることにより一部の女性にとっては不必要な生検につながる偽陽性率が低下することも明らかになった。
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エラストグラフィーは超音波検査の特異度を改善し腫瘍のより詳細なマッピングを可能にする [2009-12-01] |
Elastography
improves ultrasound specificity and enables more precise mapping of tumors |
エラストグラフィーは乳房超音波検査に追加すると有効で便利な技術であり、良性腫瘍とがん性病変を鑑別するのに役立つとの現在進行中のスタディ結果が2009年Radiological
Society of North America (RSNA)学会で発表された。エラストグラフィーは従来の超音波画像を用いて圧縮率および病変の機械的属性を測定し超音波の特異度を改善する。悪性腫瘍は周囲の健常組織または嚢胞と比較し硬い傾向にあるため、エラストグラフィーで計測した圧縮率が高い病変は悪性でない可能性が高い。現在進行中のスタディの一部として、179人の患者(18〜92歳、平均年齢55.1歳)に乳房の超音波検査およびエラストグラフィーを施行した。研究チームは184のエラストグラムを得て、硬い病変全てを生検した。134の生検のうち56が、がんであった。エラストグラフィーは生検でがんと診断された病変の98%、および良性であると診断された病変の82%を正しく同定した。エラストグラフィーは病変のサイズ計測の点でも超音波よりも正確であった。超音波検査は実際の腫瘍塊だけを見ており腫瘍塊が引き起こす周囲の変化は見ていないため腫瘍サイズを過小評価しうることに、筆者らは注意を促している。
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標的を絞った乳房超音波検査により40歳未満女性の生検を減少させることが可能である [2009-12-08] |
Targeted
breast ultrasound can reduce biopsies for women under forty |
局所の徴候や症状を有する40歳未満女性において、しこりを含む乳房の疑わしい領域に標的を絞った乳房超音波検査は、安全かつ信頼性が高く費用対効果にも優れ侵襲的な生検の代替策となる、と2009年Radiological
Society of North America学会で発表された。研究者らは、乳房のしこりを指摘された、または他の局所所見を有する若年女性において、標的を絞った超音波検査によりがんの可能性のある腫瘍塊と良性病変を鑑別する2つのスタディを施行した。最初のスタディでは30歳未満女性における1,123件の超音波所見が、2つ目のスタディでは30〜39歳女性における超音波所見1,577件が対象とされた。両スタディにおいて臨床上問題となった部位のがん症例全てが標的超音波にて陽性と考えられた。さらに、超音波で陰性所見であったもの全てが乳房の良性病変を正しく見極めていた。超音波で発見されなかった唯一の悪性病変は検査の標的領域外の疑われなかった病変であった。このがんは乳房全体のマンモグラムで発見された。研究者らは40歳未満女性における触知可能なしこりの評価には超音波検査を選択することを推奨している。
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