エストロゲンと選択的エストロゲン受容体モジュレーターの併用により乳がんリスクが軽減し更年期症状が治療できる可能性がある [2009-10-27]
Combining estrogen and a selective estrogen receptor modulator could cut breast cancer risk and treat symptoms of menopause

エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)の適切な組み合わせにより更年期症状が軽減し乳がんリスクも低下するとの研究結果がAmerican Society for Reproductive Medicine (ASRM) 学会で発表された。乳がんのリスクなくホルモンを補充するよりよい方法を発見するため研究者らは、乳房および子宮内膜細胞株をエストロゲンまたはエストロゲンとSERMの併用で治療した。そして彼らは、細胞増殖の最も特徴的なマーカーのひとつである増殖細胞核抗原(PCNA)などの様々なマーカーを観察した。その結果、PCNAはエストロゲンで細胞を刺激すると増加しSERMを追加すると減少することから、SERMが細胞増殖を阻害することが示唆された。研究者らは、乳房および子宮細胞はエストロゲンとSERMを併用することにより刺激されず、そのため更年期障害の女性はプロゲスチンのリスクなくエストロゲンの効果を得ることができると結論付けており、この予備的な結果から、更年期の女性にホルモン補充療法を行うさらによい方法が導き出される可能性があると述べている。

白血病において同定された新たな染色体異常はダウン症候群と関連がある [2009-10-27]
New chromosomal abnormality identified in leukemia associated with Down syndrome

急性リンパ性白血病(ALL)における染色体異常が新たに発見され、それは他の変異と協同でがんを発症させるようである。この最新の異常はダウン症候群の小児において特によく認められる。研究者らは、偽常染色体領域1またはPAR1として知られるXおよびY染色体上に重複するDNA領域に繰り返される欠失について過去に報告した。PAR1欠失は前駆B細胞性ALLとして知られるある種のALL患者においてのみ認められた。それは前駆B細胞性ALLとダウン症候群を合併した小児において最もよく認められた。このスタディにおいて研究者らはALLの患者約400人をスクリーニングし、そのうち75人はダウン症候群であった。欠失は前駆B細胞性ALL患者の7%に存在していたが、前駆B細胞性ALLとダウン症候群を合併している患者においては半数以上に認められた。欠失により二つの遺伝子P2RY8およびCRLF2が融合し、それによりCRLF2の発現はP2RY8プロモーターの支配下となる。結果として、CRLF2発現は10倍にまで跳ね上がる。CRLF2は過去には白血病との関連は明らかにされていなかった。今回のスタディはNature Genetics 10月18日号オンライン版に掲載されている。

脳転移に対する定位手術的照射と全脳照射を組み合わせた治療は認知機能低下のリスクを上昇させる [2009-10-20]
Combined treatment of stereotactic radiosurgery and whole brain radiation therapy for brain metastases increases risk of cognitive decline

転移性脳腫瘍に対し定位手術的照射(SRS)と全脳照射(WBRT)を組み合わせた治療を受けたがん患者は、SRS単独で治療された患者と比較し、学習および記憶の問題が生じる確率が2倍以上であるとThe Lancet Oncologyオンライン版に掲載された。この7年間にわたるスタディでは、新たに1〜3個の脳転移病巣を指摘され、SRS後にWBRTを施行またはSRS単独治療を受けた患者58人を観察した。研究者らは、改訂版ホプキンス言語学習テストで検査した記憶機能を一次エンドポイントとし、短い神経心理学的検査を用いて、対象患者の神経認知機能を測定した。ベースラインに対し予め定義されたクライテリアを超えた試験成績の低下を明らかな低下とした。治療から約4ヵ月後に、WBRTを受けた患者の52%が学習および記憶能の低下を認めたのに対し、SRS単独治療を受けた患者におけるその割合は24%であった。SRS単独治療に割り付けられた患者群の予後が良好である統計学的確率が高い(96.4%)ことが中間解析において示されたため、独立データモニタリング委員会がこのトライアルを中止した。

ヒトパピローマウイルスに関連する鼻咽頭がんがまれなことから病因の変化が示唆される [2009-10-20]
Rare nasopharyngeal cancer linked to human papillomavirus suggesting changing etiology of this disease

鼻咽頭がん症例の増加はヒトパピローマウイルスと関連があるようであるとの新たなスタディの結果がHead & Neckに掲載された。研究者らは鼻咽頭がんまたは扁桃がん治療前に採取した組織検体を調査した。このスタディの対象となった89例中5例は鼻咽頭がんでありそのうち4例はHPV陽性であった。同時に、4例のHPV陽性腫瘍はいずれも、鼻咽頭がんの最大の感染性の原因であると考えられていたEpstein-Barrウイルスは陰性であった。このスタディの筆者らによると、今回の研究は、北米においてHPV陽性扁桃がんのように鼻咽頭がんの病因が変化していることを示唆している。鼻咽頭がんの死亡率は年間4%低下している。可能性の一つとして、HPV関連腫瘍はEpstein-Barrウイルス関連腫瘍よりも化学療法や放射線療法の有効性が高いことが考えられる。鼻咽頭がんは非常にまれなため、より多くの患者を組み入れるために多施設トライアルを施行しHPVの鼻咽頭がんに対する役割を確認する必要がある、と述べている。

多くの小児がん既往者は合併症のない妊娠をし健康な子供を出産する [2009-10-13]
Many childhood cancer survivors have uncomplicated pregnancies and healthy babies

小児期または思春期に小児がんを経験した女性、または小児がんの既往がある男性のパートナーがいる女性は、妊娠中に主要な合併症を有したり先天異常を有する子供を出産したり子供が幼児期に死亡するリスクが増加することはないようである、とArchives of Pediatrics & Adolescent Medicine 10月号に掲載された。小児期にがんを経験した女性の子供は先天異常や幼児期死亡のリスクは高くはないが、早産リスクが54%高く、生下時体重が2,500g未満であるリスクが31%高い。早産リスクは白血病の既往女性において最も高いが、リンパ腫、骨腫瘍、軟部肉腫および腹部原発性がんにおいてもリスクは高い。これらの幼児は妊娠週数に対し小さいリスクは高くはなかった。治療に関しては、化学療法により早産リスクが2倍になったが、相対リスクは他のほとんどの治療法でも有意に上昇した。他のスタディにより、がんを有する父親、特に父親のがんが若年期に診断され化学療法を施行された場合に、子供の生下時体重が2,500g未満であるリスクは“ボーダーライン”であることが報告された。

ジェノタイプに関連した活性化代謝物形成の差は乳がんに対するタモキシフェンの治療効果に影響する [2009-10-13]
Genotype-related differences in the formation of active metabolites influence therapeutic response to tamoxifen for treatment of breast cancer

早期乳がん女性においてある酵素の遺伝子多型はタモキシフェンで治療される女性の臨床予後と関連するようである、とJAMA 10月7日号に掲載された。この論文の背景によると、多型体チトクロームP450 2D6(CYP2D6)により生じた活性化代謝物形成における遺伝子に関連する違いがタモキシフェンに対する治療効果に影響を及ぼす可能性があるとのことである。このスタディではステージIからIIIまでの乳がん患者1,325人(95.4%が閉経後)を対象とした。CYP2D6酵素活性を低下または消失させるのに関連する遺伝子亜型を探すためDNAのジェノタイプを解析した。患者らは、CYP2D6代謝が著明(609人)、中等度(637人)、乏しい(79人)に分類された。その結果、CYP2D6機能が低下しているかまたは消失している患者においては、機能が著明な患者と比較し乳がんイベント率が高いことが示された。9年間の経過観察後の再発率は代謝が著明な患者で14.9%、中等度の患者で20.9%、乏しい患者で29.0%であり、全死亡率はそれぞれ16.7%、18.0%、および22.8%であった。代謝が著明な患者と比較し、代謝が中等度の患者の再発のリスクは40%高く、代謝の乏しい患者においてはそのリスクは2倍であった。

心血管画像検査時の被爆によるがんのリスク管理のための被爆軽減技術の使用 [2009-10-06]
Using radiation reduction techniques to manage cancer risks from radiation exposure during cardiovascular imaging

コンピュータ断層法および核医学検査による被爆に基づくがん発現のリスクは、各々の臨床状況に応じた適切な注意深い被爆軽減技術を用いることにより管理可能である、とTCT 2009で発表された。放射線量が大きければ質の高い画像が得られるが、がんを発現するある一定の人口のリスクは被爆量とともに増加する。研究者らはNational Cancer Instituteのデータを評価し年齢と将来がんを発症するリスクとの関係を説明した。その結果、対象集団が高齢になるほど自然の被爆リスクが上昇し画像による被爆のリスクは低下する。被爆量軽減の方法は装置による。蛍光法に関しては、X線ビームの調整およびフレームレートを低下させることにより被爆量を軽減することが可能であった。CTに関しては、ビーム強度の全体的な低下、ビーム−パス調節および乳房の直接の被爆を避けることが被爆量を減少させる有効な方法として推奨された。核医学検査による被爆量を軽減する方法は、臨床所見に適合させたプロトコールを用い患者ごとの放射線核種を投与することなどである。

前立腺全摘除術後の放射線療法の副作用は少ないことが示された [2009-10-06]
Researchers find few side effects from radiation treatment given after radical prostatectomy

この種で最大の単施設スタディの結果、前立腺摘除術後患者に対する放射線療法の合併症は少ないことが示された。術後に前立腺特異抗原(PSA)検査において再発が示唆された患者が放射線療法を受けた。サルベージ体外照射療法後の患者308人(経過観察期間中央値60ヵ月)を追跡した。グレード4の合併症を有したのは1人のみであり、3人がグレード3の副作用を発現した。これらの合併症はいずれも非致死的なもので治癒した。37人の患者においてさらに軽度の副作用が認められたがいずれも治癒した。放斜線療法を選択しない患者の多くが心配する尿漏は多くは認められなかった。研究者らは、このスタディが開始された1987年以降にサルベージ体外照射療法の技術が改善したため、今日では副作用発現率が非常に低くなっているのであろうと述べている。これらの結果から、患者や医師らは手術の副作用や毒性を過度に心配すべきではないと筆者らは述べている。このスタディはRadiotherapy and Oncology 10月号に掲載される。



 

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