ラットにおいて末梢性腫瘍はサイトカイン増加およびコルチコステロン産生低下によりうつ病様行動を引き起こす [2009-05-26]
Peripheral tumors induce depression-like behaviors in rats through increased cytokine and dampened corticosterone production

動物モデルを用いて腫瘍とネガティブムードへの変化との生物学的つながりが明らかにされ、このスタディによりうつ病とがんとの関連が説明できる、とProceedings of the National Academy of Sciencesに掲載された。この研究において研究チームは、約100匹のラット(一部のラットはがんを有する)に一連の検査を施行し、情動状態の実験における反応行動を調査した。ラットに対して抗うつ剤を試す際に使用する実験を用いた結果、腫瘍を有するラットは水泳をさせた際に逃げようとする動きが少なくなり、うつ病の人間と同様の状態になった。腫瘍を有するラットはまた、通常健康なラットの食欲を引き付ける糖水を欲さなかった。さらに実験を行った結果、腫瘍を有するラットは健康なラットと比較すると血中および海馬内のサイトカインレベルが上昇していた。サイトカインの上昇はうつ病と関連する。腫瘍を有するラットにおいてはまたストレスホルモンであるコルチコステロンの産生も低下していた。このホルモンはサイトカインの効果を調整しその産生を軽減しているため、サイトカインの影響が増大することになる。

ホルモン補充療法による乳がんリスクは家族歴の有無にかかわらず同等である [2009-05-26]
Breast cancer risk due to hormone replacement therapy stays same regardless of family history

ホルモン補充療法を行ったことにより乳がんを発症するリスクは乳がんの家族歴のある女性とない女性とで同等のようであるとのスタディ結果がEpidemiology誌で結論付けられた。研究者らは、1993〜2002年にホルモン補充療法(HRT)の薬剤またはプラセボを内服した50〜79歳の閉経後女性16,608人を追跡したWomen's Health Initiative無作為化トライアルのデータを解析した。経過観察期間中央値5.6年の間に349例の浸潤性乳がんが発症した。研究者らはデータをサブグループに分別し、閉経後女性における乳がんに対する二つのリスクファクター(HRTと家族歴)の影響間の直接的な相互関係について調査した。その結果、無視できる程度の相互関係しか認められず、HRTは第一度近親者に乳がんを有する者において有さない者よりも乳がんを発症させるリスクが高いということはないことが示唆された。筆者らは、女性らは短期間のホルモン補充療法を受けたのみであり追跡期間も短いという限界がこのスタディにはあることに言及している。より長期のホルモン補充療法を受ければ異なる結果となった可能性がある。

新たな普遍的な腫瘍マーカーにより乳がんの再発および臨床上の予後が予測できる [2009-05-19]
New universal breast cancer marker predicts recurrence and clinical outcome

カベオリン-1と呼ばれる細胞膜ラフト構成蛋白質の減少は、早期の乳がん再発、転移および患者の生存期間を予測する主要な新たな予後予測因子であるとAmerican Journal of Pathologyオンライン版に掲載された。間質細胞内におけるカベオリン-1の減少は、タモキシフェンを投与されている患者の薬物耐性マーカーでもあると思われる。研究者らは、乳がんと診断された女性154人の乳房組織のコア生検サンプル内の間質細胞のカベオリン-1を免疫組織化学染色を用いて解析した。ホルモンの状態、がんのステージまたはリンパ節の状態で群別した各患者群において、間質細胞のカベオリン-1は単独の最も強い乳がん患者の予後予測因子であった。また特記すべき点は、タモキシフェンを内服しているER陽性乳がん患者において、間質細胞でカベオリン-1の減少は再発および臨床上の予後不良の予測因子であったことである。無病生存期間(PFS)もまたカベオリン-1により影響された。全体で、間質細胞においてカベオリン-1のない患者のPFSは3.6倍低かった。リンパ節陽性の患者ではPFSの差は特に顕著であった:カベオリン-1の発現がある場合の5年生存率は約80%であった一方で、カベオリン-1が欠損する患者のそれは7%であった。

乳がんの脳転移に介在する3つの遺伝子が発見された [2009-05-19]  
Three genes found to mediate the metastasis of breast cancer to the brain

新たな研究の結果、乳がんの脳転移に特異的に介在する3つの遺伝子が同定され、転移の起こるメカニズムが明らかになったとのスタディ結果がNature誌に掲載された。このスタディにおいて研究者らは、進行乳がん患者から、脳を標的にするがん細胞を分離した。この方法を遺伝子発現プロファイリング、マウスモデルシステムにおける追加試験、および多数の臨床データ解析を組み合わせることにより、研究者らはある遺伝子および選択的にがん細胞に血液脳関門を通過させる機能を発見した。彼らはCOX2およびHB-EGF―がん細胞の移動性および浸潤性を引き起こす遺伝子―が乳がんの脳転移における遺伝子メディエーターであることを発見した。通常は脳組織においてのみ活性化される3つ目の遺伝子ST6GALNAC5は、乳がん細胞が血液脳関門を突破する能力を増強する乳がん細胞表面のコーティングをもたらす化学反応を起こす。乳がん細胞はこの脳特異的細胞コーティング酵素を脳への浸潤の手段として利用する。

乳房特異的ガンマ線画像(BSGI)を用いた検査をさらに行うことにより、乳がん患者の他のがんが発見され外科治療が変わる [2009-05-12]
Further testing with breast-specific gamma imaging (BSGI) uncovers additional cancer in breast cancer patients and changes surgical management

2009年American Society of Breast Surgeons学会で発表されたスタディにおいて、乳がん患者にマンモグラフィを補完する乳房特異的ガンマ線画像(BSGI)を用いることにより、9%の患者に新たに乳がんが発見され外科治療に実質的な変化をもたらすことが示された。分子学的乳房画像技術であるBSGIは、乳房撮影と組み合わせて施行することにより組織密度と関係なく病変を観察し、早期がんを発見することができる。新たに乳がんと診断された計82人の患者にBSGIを施行したところ、これらの患者のうち18人にさらに異常影が認められ、17人は生検を施行された。5例は浸潤性乳管がんであり、2例はDCIS、1例はLCIS、2例は乳頭腫であり、8例は良性腫瘍であった。1例は直接乳房切除を施行され、BSGI所見と一致したDCIS領域が発見された。このスタディ患者のうち22%がBSGI所見に基づき外科治療が変更された。

グリオブラストーマのEGFRvIII変異をMR灌流強調画像(MR-PWI)およびVEGF発現により同定することは治療方針決定に役立つ [2009-05-12]  
Identification of the EGFRvIII mutation in glioblastoma by magnetic resonance perfusion-weighted imaging (MR-PWI) and VEGF expression helps guide treatment decisions

MR灌流強調画像(MR-PWI)は、悪性脳腫瘍における遺伝子変異の正確な識別能に基づく合理的な治療方針を決定するのに役立つ有用な手段となる可能性がある、と第100回American Association for Cancer Research(AACR)学会で発表された。このスタディの目的は、グリオブラストーマ患者における上皮成長因子受容体(EGFR)に多く認められる遺伝子変化を同定するために、相対的脳血液量(rCBV)および血管内皮増殖因子(VEGF)の計測の精度を評価することであった。最も多いEGFR遺伝子変化はEGFRvIIIとして知られている。研究者らは97人の患者の組織検体を解析し、リアルタイムPCRを用いてVEGF発現を評価した。その結果、EGFRvIIIを有する患者においてこの変異を有さない患者と比較し、MR-PWI上のrCBV値が高かった。筆者らは、MR-PWIのような先進的な画像診断法により、EGFRvIIIや最終的には他のグリオブラストーマ変異の非侵襲的サロゲートマーカーが得られ、患者に対する治療選択を容易にする可能性があると述べている。

 


 

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