米国のトライアルの結果では年一回の前立腺がんスクリーニングによる早期死亡率の有益性は認められないとされたがヨーロッパのトライアルではPSAスクリーニングにより死亡が20%減少したとの結果が示された [2009-03-31]
U.S. Trial shows no early mortality benefit from annual prostate cancer screening, but European trial shows PSA screening cuts deaths by 20 percent

前立腺、肺、大腸および卵巣(PLCO)がんスクリーニングトライアルの結果によると、高齢および疾患のため余命が限られている男性に対する年一回の前立腺がんスクリーニングは有益ではないとのことであったが、別のスタディであるヨーロッパの前立腺がんスクリーニングに関する無作為化スタディ(ERSPC)ではPSAスクリーニングにより死亡が20%減少したことが示された。両スタディはNew England Journal of Medicine 3月26日号に掲載された。PLCOトライアルは男性76,693人を組み入れ、毎年の血液PSA検査を6年間および直腸診を4年間行う群と通常ケア群に無作為に割り付けた。年一回のスクリーニング群では、前立腺がんと診断された者が22%多かった(スクリーニング群2,820人 対 通常ケア群2,322人)が、前立腺がん死は二群間で有意差がなかった。ERSPCトライアルでは、前立腺がんによる死亡率は有意に減少したが過剰診断のリスクも高かった。最初に55〜69歳の男性をPSAマーカーでスクリーニングし定期的な経過観察を受けさせることにより、早期発見が増加した。その後転移による死亡が減少した(平均1,408人のスクリーニングにおいて48人ががんと診断され治療を受け、1人の命が救われた)。ERSPCにおいてはPSAが3.0ng/mL以上の者は追跡調査を行うように指示され(PLCOでは4.0ng/mL)、また平均4年ごとにスクリーニングを受けた。一方、PLCOでは毎年スクリーニングを行った。

イマチニブによる術後補助療法(アジュバント療法)は生命を脅かす消化管間質腫瘍(GIST)患者の術後がん再発のリスクを実質的に軽減する [2009-03-31]  
Adjuvant imatinib mesylate substantially reduces risk of cancer returning after surgery in patients with life-threatening gastrointestinal stromal tumors (GIST)

オンラインで公表され近日中にLancet誌に掲載されるデータから、経口薬イマチニブを術後に内服するとプラセボと比較しKit陽性消化管間質腫瘍(GIST)の再発率が実質的に減少することが示された。この二重盲検無作為化多施設研究はAmerican College of Surgeons Oncology Group(ACOSOG)の指揮の下で行われた。外科的に腫瘍を除去されたGIST患者713人が組み入れられた。このスタディではイマチニブ(グリベック)一日400mgまたはプラセボを術直後に 内服した患者の無再発生存率を比較した。その結果、術後一年間の無再発率がグリベックを内服した患者において98%であったのに対し、プラセボ内服群では83%であった(p<0.0001)。研究者らは、グリベックの副作用は過去の臨床試験で認められたものと同様でほとんどの患者において忍容性があった、と報告した。歴史的には、GIST患者二人に一人において術後2年(中央値)以内に再発が認められている。再発予防および全生存率に対する持続的な影響を理解するため、さらなる経過観察が必要である。

乳房密度を含めることで乳がんのリスク評価の精度が上昇する [2009-03-24]
Including breast density increases accuracy when assessing women's breast cancer risk

乳房密度を含めたリスクファクターを組み合わせることにより、閉経後女性の乳がん発症のリスクを見極めるこれまでで最も正確な方法が得られる、とのメタ解析の結果および論文のレビューがJournal of the National Cancer Institute 3月10日号オンライン版に掲載された。研究者らは乳房密度が将来の乳がんリスクの非常に強力な予測因子であることを明らかにした。さらに、女性の既往歴や、人種・年齢・収入・社会−経済的地位などの背景因子の乳がんリスク予測能は中等度に過ぎないことも示した。しかし乳房密度を組み合わせると、このスタディに組み入れられた女性の少なくとも3分の1においてはより正確に分類できた。また定期的な運動、減量、低脂肪食の摂取およびアルコール摂取の減少などの生活習慣により閉経後のみならず全ての年齢の女性が乳がんリスクを軽減できることも示された。さらに、乳がん発症のリスクの高い女性における化学予防療法の有効性も確認された。しかし、果物や野菜摂取量増加による予防効果は認められなかった。

ボディマスインデックスが35を超えると膵がん治療としての膵切除術後の経過が不良である [2009-03-24]  
Body mass index over 35 associated with worse outcomes following pancreatectomy to treat cancer

ボディマスインデックス(BMI)が35を超える肥満患者はリンパ節転移があり生存率が低く術後再発率の高い膵がんを有する確率が高い、とArchives of Surgery 3月号に掲載された。研究者らは膵がん治療のために膵切除術を施行された患者連続285人を調査した。計152人(53%)が中央値16ヵ月の経過観察期間中に死亡した。BMIが35を超える患者の生存期間中央値は13.2ヵ月であるのと比較し、BMIが23未満の患者においては27.4ヵ月であった。最終の経過観察において、BMIが35を超える患者20人中15人(75%)が死亡したのに対し、BMIが35以下の患者においては265人中137人(52%)が死亡した。BMIが35を超える患者は35以下の患者と比較し、リンパ節転移を有するリスクが12倍であった。がんの再発はBMIが35を超える患者の95%(20人中19人)に認められたのに対し、他の全ての患者においては61%(264人中161人)であった。

MRIおよびPET/CTは子宮頸がん患者の治療を最適にし、合併症を最小にする [2009-03-17]  
MRI and PET/CT improve chances for optimal treatment and minimal complications in cervical cancer patients

子宮頸がんに対する治療前MRIおよびPET/CTにより、より多くの女性が最適治療を選択することが可能となり長期の罹患および三者併用療法(外科手術後に化学療法と放射線療法)の合併症を避けることができる可能性があるとのスタディ結果が、American Journal of Roentgenology 3月号に掲載された。ある学際的研究チームが、FIGOステージIBの子宮頸がん患者に対するMRIおよび/またはPET/CTによる治療前画像検査の価値を評価するために、意思決定分析モデルを開発した。治療前画像検査の目標はこれらの患者を非侵襲的に見極め、手術を行わずに化学放射線療法のみで治療することである。スタディの結果、画像検査により生存率は改善しなかったが、PET/CTにより最も高いパーセンテージ(89%)の患者が正しい初回治療を受けることができ、MRIとPET/CTの両方を使用することによりほとんどの患者(95%)が三者併用療法を避けることができた。疾患の過大評価も過小評価も患者の予後を不良とし得るため、筆者らは、疾患の範囲を前もって正確に評価することは非常に重要であると述べている。治療前画像検査により、長期の合併症および罹患のリスクを最小にし生存の機会を維持する最適な初期治療を提供することが可能である。

飲酒は膵がんリスクを上昇させる可能性がある [2009-03-17]
Alcohol consumption may increase risk of pancreatic cancer

一日2杯以上の飲酒をすると膵がんのリスクが約22%上昇する可能性があるとのデータがCancer Epidemiology, Biomarkers and Preventionに掲載された。膵がんと食餌因子との関連を観察した最大のスタディの一つにおいて研究者らは、14のスタディの対象862,664人の一次データの統合解析を行った。そのうち2,187人が膵がんと診断された。一日30g以上のアルコールを消費すると、アルコールを全く飲まない人々と比較し膵がんのリスクが22%上昇した。アルコールの種類とは関係がなかった。この結果は、男性は一日の飲酒が2杯を超えないように、女性は1杯を超えないようにとするmultiple nutrition recommendations(様々な栄養に関する勧告)を支持するものであった。この場合の1杯はビール換算で12オンス、ワインで4オンス、80度の蒸留酒で1.5オンスである。

プロエピセリンは前立腺がん細胞の増殖および移動を促進する [2009-03-10]  
Proepithelin encourages cell growth and migration in prostate cancer

前立腺がん、中でも特にアンドロゲン非依存性前立腺がん細胞の増殖および移動に有意な役割を果たすと考えられる蛋白が同定された、とAmerican Journal of Pathologyに掲載され、2009年ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムで発表された。前立腺がん細胞は正常な前立腺細胞と比較しこの蛋白をより多く発現することも示された。筆者らは、前立腺がん細胞によるプロエピセリンの過剰発現が臨床上有用な前立腺がんの診断マーカーとなる可能性があると述べている。プロエピセリンの存在により細胞の移動も促進されるため、転移のマーカーとしても有用な可能性がある。プロエピセリンは、膀胱がんの形成に役割を果たし、その過剰発現は進行の速い乳がんと関連があり、グリオブラストーマ、多発性骨髄腫、腎細胞がん、胃がんおよび卵巣がんなどにおいて役割を果たしていることがこれまでに示されている。

妊娠関連大腸がんの生存率または新生児の予後は一般の妊婦のそれと差がない [2009-03-10]  
No differences in survival or neonatal outcomes in pregnancy-associated colorectal cancer

妊娠中または出産直後に大腸がんと診断された女性は妊娠していない女性の大腸がん患者と比較し生存率は同等である、とJournal of Maternal-Fetal Health and Neonatal Medicine 3月号に掲載された。研究者らは、カリフォルニア州の退院、出生記録およびがんに関するデータベースから8年間にわたり収集した情報を用いた。彼らは、妊娠中または産後1年以内に大腸がんと診断された女性106人と他の2つのグループの情報を比較した。一つのグループは年齢をマッチさせた大腸がんを有さない妊婦から成っていた。もう一つは年齢をマッチさせた妊娠していない大腸がんの女性のグループであった。患者背景、治療、出産前のケアの開始時期、保険のタイプ、腫瘍のサブタイプおよび生存期間などの様々な因子を考慮した。その結果、がんを有する女性の生存率(妊婦43%および非妊婦44%)を含む様々な比較において有意差がないことを明らかにした。大腸がんを有する妊婦は切迫早産および早産の確率が2倍高かったが、これは新生児の健康状態および生存率には影響しなかった。

カルシウム摂取量が多いと大腸がんおよび他の消化器がんのリスクが低下する [2009-03-03]  
Higher calcium intake associated with reduced risk of colorectal and other types of digestive cancers

カルシウム摂取量の多い女性はがん全体のリスクが低いようであり、男女ともカルシウム摂取量が多いと大腸がんおよび他の消化器がんのリスクが低いようである、とArchives of Internal Medicine 2月23日号に掲載された。研究者らは米国国立衛生研究所−AARP食事と健康スタディ−に参加した男性293,907人および女性198,903人のデータを解析した。平均7年間の経過観察期間ののち、食物およびサプリメントからカルシウムを最も摂取した男性(約1,530mg/day)は最もカルシウム摂取の少なかった男性(526mg/dy)と比較し、大腸がんおよび他の消化器がんのリスクが16%低かった。食物およびサプリメントからカルシウムを最も摂取した女性(1,881mg/day)は最も摂取の少なかった女性(494mg/day)と比較し、がん全体のリスクは低く、消化器がんのリスクは23%低かった。特にがんのリスク低下は大腸がんにおいて著明であった。カルシウムおよび日々の食物摂取は前立腺がん、乳がん、または消化器がん以外の他のどの臓器のがんとも関連がなかった。

不妊の男性は精巣胚細胞がんのリスクが高いようである [2009-03-03]  
Infertile men appear to be at increased risk for testicular germ cell cancer

不妊の男性は精巣がんを発症するリスクが高いようであるとArchives of Internal Medicine 2月23日号に掲載された。米国の研究者らは1967〜1998年に不妊治療を希望していたカップルの男性22,562人(うち4,549人は精液のデータが異常であるとの臨床所見から男性不妊と診断)のデータを解析した。彼らの記録は、1988〜2004年にがんと確認された症例の情報を含む州がん登録簿とリンクさせた。22,562人中計34人が不妊治療を希望してから少なくとも1年後に精巣がんと診断された。同年代の一般の男性(彼らの記録は国立がん研究所によるSurveillance Epidemiology and End Resultsから得られた)と比較して、不妊治療を希望していた男性は精巣がんの発症率が1.3倍であった。不妊症の男性はそうではない男性と比較し精巣がんを発症する確率が2.8倍であった。

 
 


 

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