腎移植の適切性評価目的の冠動脈造影は安全に施行できる [2009-10-27]

Coronary angiography safe to use to help determine a patient's suitability for kidney transplant
進行慢性腎臓病(CKD)患者に対する冠動脈造影は腎機能を低下させず、移植のスケジュールを決定するのに役立つとのスタディ結果がClinical Journal of the American Society Nephrology(CJASN)の次号に掲載される。CKD患者は冠動脈造影による合併症のリスクが高いと考えられている。冠動脈造影の本当のリスクを評価するために、研究者らは彼らのクリニックで診ている腎移植のレシピエントになる可能性のある末期CKD患者76人を解析した。冠動脈造影前後12ヵ月の腎機能計測値が記録された。その結果、腎機能は冠動脈造影前後で同等であり、この手技は腎臓に有害ではないことが示唆された。冠動脈造影によるスクリーニングにより23人の患者において冠動脈病変が検出され、これらの患者においては心臓の合併症が解決するまでは移植は適切ではないとされた。22人の患者は検査の結果腎移植を受けられる心臓であることが示され、透析は行わずに済んだ。これらの情報は患者に最良の治療を行うために重要であり、透析が必要となる前に腎移植を行うことはCKDの最も有効な治療である。

小児において骨成熟度と血圧の関係が認められる [2009-10-27]

Relationship seen between skeletal maturation and blood pressure in children
小児において暦年齢よりも骨が成熟していることは高血圧のマーカーである可能性があるとのスタディ結果がHypertensionに掲載された。血圧と骨成熟度の関係を評価するために研究者らは高血圧の小児および青少年の骨年齢を、ボディマスインデックス、年齢および性別をマッチさせた健常若年者のそれと比較した。研究者らは、高血圧の白人ポーランド小児54人の左手首をX線撮影し血圧の正常な白人ポーランド小児54人のそれと比較した。両群(平均年齢14歳)のX線画像を骨格形成のアトラスと比較した。アトラスに基づき、骨成熟度を生理学的加速、および遅延で考慮した。高血圧のない小児の骨年齢は暦年齢と有意差はなく、4ヵ月以内であった。しかし、高血圧の小児においては平均暦年齢(14.15歳)と骨年齢(16.01歳)の差は2年近かった。健常コントロールでは骨成熟は20人に認められたのに対し高血圧群では48例に認められた。筆者らは、生物学的成熟度は逆行するとは考えにくく、骨成熟度の加速は高血圧発症の早期の明らかな徴候である可能性があると述べている。
 

高齢者の体躯の柔軟性は動脈硬化の良い指標である [2009-10-20]

Assessing trunk flexibility in older adults is good indicator of arterial stiffness
American Journal of Physiologyに掲載されたスタディによると40歳以上の人々において体躯の柔軟性は動脈硬化の指標となる可能性のあることが示された。研究者らは20〜83歳の526人の健康な非喫煙者でボディマスインデックス30未満の人々を調査した。参加者らは床に座り壁に背を向けて下肢を伸ばし腰を曲げてゆっくりと腕を前に伸ばした。どこまで手が届くかに基づき柔軟性が不良か良好かに分類した。また、血液が全身を流れるため血圧や脈拍も計測した。さらに一部の対象者については大動脈圧を計測し心肺運動試験を行い筋力および持久力も計測した。その結果、中年(40〜59歳)および高齢者(60〜83歳)において体躯の柔軟性は動脈硬化の良い指標であったが、若年者においてはそうではなかった。中年および高齢者の収縮期血圧は柔軟性の低い者において柔軟性の高い者よりも高かった。動脈硬化はしばしば心血管疾患に先行するため、この結果から、座って手を伸ばす簡便な検査は心筋梗塞や脳卒中による早期死亡のリスクの迅速な測定となりうることが示唆された。
 

心臓の症状に対応する患者の知識と行動にギャップが認められた [2009-10-20]

Gap found between patient knowledge and behavior when responding to cardiac symptoms
PROMOTIONスタディ(看護師による指導後の心筋梗塞に対する患者の対応)の結果、胸痛または心筋梗塞症状への対応の仕方について特別な指導を受けた心血管疾患患者はそれでも緊急のケアを求めようとしないことが明らかになった。教育を受けた患者らは、どのような症状に注意し症状が起きたら何をすべきかを学んだ。しかし、教育を受けた人々に後にそのような症状が出現しても教育を受けていない人々と比較し早く病院を受診するわけではなかった。2年間追跡した3,087人中565人が救急治療部を受診した(うち305人は教育を受け260人は受けていなかった)。病院受診までの時間に両群間で有意差はなかった。症状出現から病院到着までの時間は教育された患者群で2.20時間でありコントロール群で2.25時間であった。しかし、教育を受けた群の患者は初回の教育セッション後6ヵ月以内に症状が出現した場合にEMSを呼ぶ率が高かった。教育を受けた群はまた、胸痛または心臓発作症状が出現した時にアスピリンを内服する率が高かった。このスタディ結果はCirculation: Cardiovascular Quality and Outcomesに掲載された。
 

帯状疱疹は成人の脳卒中リスクを30%以上上昇させる [2009-10-13]

Herpes zoster raises risk of stroke by 30 percent or more in adults
帯状疱疹を有する成人を1年間追跡したところ、特に眼に病変が及んでいた場合に帯状疱疹を有さない人々と比較しより脳卒中を発現しやすかった、とStroke誌に掲載された。韓国の研究者らは、帯状疱疹の治療を受けた18歳以上の患者7,760人(平均年齢47歳)を、年齢および性別をマッチさせたコントロール23,280人と比較した。1年の経過観察の間、133人の帯状疱疹患者(約1.7%)、306人のコントロール(約1.3%)に脳卒中が発現した。脳卒中の一般的な因子で補正した結果、帯状疱疹の治療を受けた人々は帯状疱疹を有さない人々と比較し、脳卒中を発現する確率が31%高いことが示された。眼部帯状疱疹を有する患者は帯状疱疹を有さない患者よりも脳卒中のリスクが4.28倍高かった。脳卒中のタイプ別にリスクを解析したところ、帯状疱疹の患者は帯状疱疹を有さない患者と比較し、虚血性脳卒中発症のリスクが31%高く、出血性脳卒中のリスクが2.79倍高かった。
 

魚介類に含まれる汚染による水銀は血圧および脈圧を上昇させる [2009-10-13]

Environmental mercury in seafood associated with higher blood pressure and pulse pressure
魚介類に含まれる水銀の血圧に与える悪影響は魚の栄養素による保護効果を凌ぐようであるとHypertensionに掲載された。たとえ血圧が正常範囲内で、オメガ3脂肪酸やセレンなどの他の多くの因子を注意深くコントロールしても、汚染による水銀により血圧および脈圧が上昇する。研究者らはカナダ北ケベックにあるヌナヴィック地域の14の自治体で調査を行った。この地域では、伝統的な食事は魚介類を主としたものであり、したがって住民は汚染による水銀を日常的に多量に摂取している。調査は2段階の階層化された無作為サンプリングおよび平均年齢34歳のイヌイット族の成人732人(男性319人および女性413人)を取り上げている。他の因子で補正した結果、血中の水銀レベルが10%上昇すると収縮期血圧が0.2mmHg上昇した。魚の栄養素は水銀と血圧の関係を修正させなかった。筆者らはこれらの結果から、水銀を多く含みオメガ3の少ない大型の捕食魚(大型のまぐろ、メカジキ、カジキ、さめなど)を大量に摂取するのはよくない可能性があると述べている。
 

HORIZONS AMI の2年後:タクサス、bivalirudinはSTEMI患者における利点を維持するがbivalirudinの有益性は患者群により異なる [2009-10-06]

HORIZONS AMI at two years: Taxus, bivalirudin maintain their advantage in STEMI patients, but bivalirudin benefits vary among patient subgroups
経皮的冠動脈インターベンションを施行されたSTEMI患者は、bivalirudinおよびタクサスステントを用いた場合に最も予後が良好であったことが示された、AMI患者における血行再建術とステントの調和(Harmonizing Outcomes with Revascularization and Stents in AMI:HORIZONS AMI)トライアルの1年後のデータは2年後も維持されたが、bivalirudin単独療法の死亡率低下効果は高リスク患者に限られたとの研究結果が、2009年 Transcatheter Cardiovascular Therapeutics(TCT 2009)で発表された。2年後にbivalirudinにより(ヘパリンと比較し)、CABGに関連しない重大な出血が36%(p<0.001)、再梗塞は25%(p=0.038)、心臓死は41%(p=0.005)、総死亡率は25%(p=0.049)減少した。Bivalirudin群とヘパリン/GP Iib/IIIa併用群のステント血栓発現率、標的血管再血行再建術施行率および脳卒中発現率は同等であった。ステントの解析において、タクサスステントによりExpress BMSと比較し、虚血性TLRおよびTVRがそれぞれ42%および34%と有意に減少し(両者ともp<0.001)、late catch-upは認められなかった。総死亡率、CV死亡率、再梗塞およびステント血栓は2群間で同等であった。このトライアルの2つの新たなサブ解析結果によると、bivalirudin単独療法の死亡率低下効果はリスクが最も高い患者群に限って認められ、左前下行枝に病変のある患者においてはこの抗トロンビン薬の方がヘパリンとGP Iib/IIIaを併用した場合よりも重大な出血が少ないことが示された。
 

PROSPECT:危険な粥腫は心筋梗塞や死亡よりも不安定狭心症を引き起こしやすい [2009-10-06]

PROSPECT: Vulnerable plaque leads to unstable angina rather than myocardial infarction or death
ステントや薬物療法で治療された患者の責任病変および非責任病変の3年後の有害事象のリスクは同等であるとの、動脈硬化の自然経過を多様な画像を用いて冠動脈を特徴付けた初めての前向きスタディPROSPECTの結果が2009年TCT late breakingセッションで発表された。研究者らは、急性冠症候群患者700人に対し、血管内超音波(IVUS)およびvirtual histology(VH)を用いて冠動脈枝全体の定量的冠動脈造影(QCA)を行った。責任病変および非責任病変が重大な有害事象を引き起こすレベルは同等であった(フォローアップ期間中央値3.4年)。非責任病変は心臓死および心停止のいずれの症例にも関連がなかったが、主に狭心症増悪(8.5%)、不安定狭心症(3.3%)、および心筋梗塞(MI)(1.0%)と関連があった。責任病変または非責任病変のいずれも明確に関連があるといえない死亡全てが非責任病変によるものとすると、最悪のシナリオは、非責任病変の心臓死/心停止/MI発現率の組み合わせの率が3.3%となる。ベースラインの臨床および造影因子は非責任病変に関連したイベントの良い指標ではなかった。しかし、IVUSの特徴およびVHプラークのタイプから5つの独立したイベント予測因子が認められ、virtual histologyにおける薄い線維性皮膜(VH-TCFA)が最もリスクの高い病変タイプであった(p=0.0002)。
 
 
 

DOLについて - 利用規約 -  会員規約 - 著作権 - サイトポリシー - 免責条項 - お問い合わせ
Copyright 2000-2025 by HESCO International, Ltd.