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心筋梗塞発症率は禁煙条例の制定後低下し、時間とともに低下し続ける [2009-09-29]
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Myocardial infarction rates drop after smoking bans and continue downward over
time |
北米およびヨーロッパにおいて、屋外での喫煙禁止後1年を経過した自治体では禁煙を行っていない自治体と比較し心臓発作の発現率が17%低く、心筋梗塞(MI)発症数は時間とともに減少し続けたとCirculationに掲載された。この報告は、米国、カナダおよびヨーロッパの自治体で禁煙条例が制定された後のMI率の変化を調査した13のスタディをメタ解析したものである。その結果、制定直後からMI率は低下し始め、1年後には17%低下し、3年後には36%低下した。筆者らは、このスタディは受動喫煙が心筋梗塞を引き起こすとの既存の強力なエビデンスをさらに強化させるものであり、職場や公共の場での喫煙を100%禁止することは何かしら人々を保護するものとなるであろうと述べている。今回の結果は、禁煙法により公衆衛生が改善するとの論旨を強力に支持するものである。 |
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若年女性におけるビタミンD欠乏は中年期の高血圧リスクを上昇させる [2009-09-29]
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Vitamin D deficiency in younger women is associated with increased risk of hypertension
in mid-life |
閉経前女性のビタミンD欠乏は15年後に収縮期高血圧発症のリスクを上昇させる可能性があるとの研究結果が第63回American
Heart Association High Blood Pressure Research Conferenceで報告された。研究者らはMichigan
Bone Health and Metabolismスタディに組み入れられた女性を調査し、ミシガン在住の白人女性559人のデータを解析した。この現在進行中のスタディは女性達が24〜44歳(平均年齢38歳)の1992年に開始された。研究者らはスタディ期間中を通して血圧を毎年計測し続け、年齢、体脂肪量、降圧剤内服、および喫煙の因子で補正した。ビタミンDレベルは1993年に一度計測し、2007年に計測した収縮期血圧と比較した。スタディ集団における高血圧有病率は15年の間に6%から25%に上昇した。閉経前の1993年にビタミンD欠乏を有していた女性はビタミンDレベルが正常であった女性と比較し、15年後に収縮期高血圧を発症するリスクが3倍高かった。 |
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CURRENT OASIS-7:二倍用量のクロピドグレルは血管形成術を施行されるACS患者に有益である [2009-09-24]
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CURRENT OASIS-7: Double doses of clopidogrel shows benefit in ACS patients undergoing
angioplasty |
画期的なクロピドグレルの最大量使用による再イベント減少/血管形成術に際しての最大量抗血小板療法(CURRENT-OASIS
7:Clopidogrel Optimal Loading Dose Usage to Reduce Recurrent EveNTs/Optimal Antiplatelet
Strategy for InterventionS)トライアルの結果、高用量のクロピドグレルは経皮的冠動脈形成術を施行される急性冠症候群(ACS)患者の合併症を有意に軽減することが示された。患者は、不安定狭心症または心筋梗塞にて病院に到着次第、可能な限り速やかに高用量または標準量のクロピドグレルを1ヵ月間投与される群に無作為に割り付けられた。高用量群は初日の血管形成術施行前になるべく早く600mgのクロピドグレルを内服し、その後1日150mgを7日間ののちに1日75mgを内服した。標準療法群は初日に300mg内服した後に30日後まで1日75mgを内服した。高用量療法により、血管形成術を施行された68%の患者(25,087人中17,232人)のステント血栓リスクが30%減少し、心筋梗塞リスクがさらに22%減少した。PCIを施行されなかった高用量群の7,000人に有益性は認められなかった。この結果はESC
2009ホットラインセッションで発表された。 |
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MADIT-CRT:再同期療法により軽症の無症状患者の心不全リスクが軽減する [2009-09-24]
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MADIT-CRT: Resynchronization therapy reduces risk of heart failure in asymptomatic
patients with mild disease |
無症状または軽症状を有する心不全患者を、除細動器付き植込み型心臓再同期装置(CRT-D)に無作為に割り付けられた患者は、標準的な植込み型除細動器(ICD単独)に割り付けられた患者と比較し、心不全または死亡のリスクが34%低い(HR
0.66;p=0.001)との多施設心臓再同期療法付き自動除細動器植込みトライアル(MADIT-CRT:Multicenter Automatic Defibrillator
Implantation Trial with Cardiac Resynchronization Therapy)の結果がESC 2009で発表された。このトライアルではNew
York心機能クラスIまたはIIの左室機能低下(左室駆出率<30%)を伴いQRS幅>130msの虚血性または非虚血性心疾患患者を対象とした。トライアルは、心臓再同期療法に優位性が認められた(p=0.001)ため4.5年間で終了し、その間に1,820人の患者が組み入られた。患者はCRT-DまたはICD単独を受ける群に3:2の割合で無作為に割り付けられ、全ての患者がトライアルの期間を通じて最大限の心不全薬物療法を受けた。男性および女性、若年患者および高齢患者、心機能不全の軽症患者およびそれよりも重症の患者、虚血性および非虚血性全ての患者サブグループにおいてCRT-D療法の優位性が認められた。 |
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ヨーロッパCRT調査:ヨーロッパにおいて心臓再同期療法はガイドラインで推奨されているよりもより一般的になっている [2009-09-24]
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European CRT Survey: Use of cardiac resynchronization therapy in Europe more common
than guidelines recommend |
ヨーロッパの循環器医は、心臓再同期療法(CRT)単独または除細動機能付き(CRT-D)によるCRTの有効性を、強力なエビデンスに基づく適応ではない患者に対しても確信しているとESC
2009ホットラインセッションで発表された。ヨーロッパCRT調査には、平均年齢68歳(31%は75歳以上)の患者2,438人を組み入れた。CRT療法を受ける患者には高齢者や洞調律でない者または軽度の心不全のみの患者や心電図上定義された心室dyssynchronyを有さない患者なども含まれた。CRT-PおよびCRT-Dを挿入された患者群間の患者背景に差は認められた;理由は多くあったが、人口統計学および経済因子は一部を構成していた。若年患者、男性および虚血性疾患患者はCRT-Dデバイスを植え込まれる確率が高かった。データから、今回のスタディのコホートは無作為化臨床試験に組み入れられたコホートと著明に類似している(CRTを受ける女性の割合は少なかった)ことが示された。しかし、今回の調査の患者はより高齢で、症状の軽い者が多かった。相当数の患者がnarrow
QRSであり、心房細動を有する頻度が高かった。合併症率は無作為化トライアルで報告されたのと同様であった。 |
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ACTIVE-I:イルベサルタンは心房細動患者の心不全および塞栓イベントを減少させる [2009-09-24]
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ACTIVE-I: Irbesartan linked to reduced heart failure complications and embolic
events in patients with atrial fibrillation |
心房細動クロピドグレルトライアルにおけるイルベサルタンによる血管イベント予防(ACTIVE-I
:Atrial Fibrillation Clopidogrel Trial With Irbesartan for Prevention of Vascular
Events)スタディがESC 2009で発表され、降圧剤イルベサルタンが心房細動患者の心不全合併症および脳卒中、他の塞栓イベントおよび一過性脳虚血発作の合計リスクを軽減させたことが明らかになった。このスタディは二つの複合主要エンドポイントを調査した:心血管死、心臓発作または脳卒中の合計であったが、両群間で差はなかった(両群ともに年間5.4%)。しかし、この合計と心不全による入院率は、有意ではないが低い傾向にあった(イルベサルタン群年間7.3%対プラセボ群年間7.7%)。この差は心不全による入院が14%と有意に少ないためであった(イルベサルタン群年間2.7%対プラセボ群
年間3.2%)。脳卒中、非中枢神経系塞栓、および一過性脳虚血発作発現率も13%と有意に低かった(イルベサルタン群年間2.9%対プラセボ群年間3.4%)。心血管疾患による入院および入院日数の有意な減少も認められた。イルベサルタンとプラセボの忍容性は同様であった。 |
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TRUST trial:植込み型除細動器の追跡監視は病院受診と比較し、家でモニターすることにより改善した [2009-09-24]
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TRUST trial: Follow-up surveillance of implantable defibrillators is improved
by home monitoring compared to hospital visits |
植込み型除細動器(ICD)装着患者は遠隔監視および年一回の受診により安全にモニターすることができる―Lumos-Tはルーチンの外来でのデバイスフォローアップを安全に軽減することができる(TRUST
:Lumos-T Safely Reduces Routine Office Device Follow Up)―とのトライアル結果がESC 2009で発表された。TRUSTは従来どおりのまたは遠隔監視による追跡調査を前向きに評価した初めてのかつ最大規模(患者1,443人を組み入れ)のスタディであった。患者・医師間の意思疎通に関係のない自動送信は、監視を維持し注目すべき有意なデータを迅速に送信できるため、臨床的に適切な介入ができる。遠隔監視を用いることにより、不必要な受信を省き、カレンダー上3ヵ月おきのチェックを厳守させることができた。TRUSTトライアルの結果、従来の診療のように患者自身が物理的に診察室に訪れる必要のある従来の診療と全く異なり、患者のデータがいつでもどこからでも遠隔監視できる可能性のあることが示された。しかし、従来の診療であれ遠隔監視であれ、カレンダーベースのチェックで検出できる重要なイベント数は総じて少ない。イベントは予定されたチェックとチェックの間に起こりがちであり、いつ発現したかは、心臓または装置の不具合を遠隔監視している方が(中央値<3日)、従来の診療(>30日)よりも遥かに速く検出された。 |
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心臓磁気共鳴画像により糖尿病患者の主要な有害心臓イベントを予測することができる [2009-09-24]
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Cardiac magnetic resonance imaging predicts major adverse cardiac events in diabetic
patients |
糖尿病患者の主要な有害心臓イベント(MACE)は心臓磁気共鳴(CMR)画像により予測できるとESC
2009で発表された。この前向きスタディは狭心症で来院しCMRアデノシン灌流およびガドリニウム遅延造影(LGE)画像検査を施行された糖尿病患者170人を対象とした。164人(男性101人および女性63人)において良質のCMR画像が撮影でき追跡調査が可能であった。これら164人の患者は臨床的に心筋梗塞歴のないスタディ群(114人)および心筋梗塞の既往のあるコントロール群(50人)に分割した。追跡調査中央値26ヵ月後に心筋灌流欠損およびLGE陽性の者が32%(114人中36人)存在し、26%(114人中30人)がMACEを経験した。MACEを経験した者は有意に高齢であり、過去に冠動脈血行再建術を施行された率が高く、CMRで評価した左室駆出率が低かった(それぞれp=0.03;p=0.05
およびp=0.03)。LGEが存在することによりMACEのハザード比がLGEの存在しない場合と比較し3.5倍増大した(HR 3.5;p=0.01)。心筋灌流欠損によりMACEのハザード比が2.5倍増大した(HR
3.1;p=0.04)。 |
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KYOTO HEART Study:バルサルタンは高リスクの日本人高血圧患者の罹患率および死亡率を減少させる [2009-09-15]
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KYOTO
HEART Study: Valsartan reduces morbidity and mortality in Japanese patients with
high risk hypertension |
KYOTO HEARTスタディの結果、従来の高血圧治療にアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)バルサルタンを追加することにより日本人の心血管イベントの高リスク高血圧患者の心血管予後が改善することが示された、とESC
2009ホットラインセッションで発表され同時にEuropean Heart Journalオンライン版に掲載された。しかし、2つの治療群間の血圧に有意差はなく、この有益性は降圧効果のみでは説明できないことが示唆された。3.000人以上の日本人患者(女性43%、平均年齢66歳)をバルサルタン追加群またはARB以外の降圧剤使用群に無作為に割り付けた。全ての患者が血圧コントロール不良であり、心血管リスクファクターを1つ以上有していた。バルサルタン群において明確な有益性が認められたため、このスタディは3.27年の観察期間中央値の後早期に終了した。ARB以外の治療群と比較し、バルサルタン群においては、心血管または脳血管イベントを発症した患者が有意に少なかった(83人対155人;HR
0.55、95%CI 0.42〜072、p=0.00001)。この一次エンドポイント発現率の有意差は、主に狭心症(22件対44件;HR 0.51、95%CI
0.31〜0.86、p=0.01) および脳卒中/一過性脳虚血発作(25件対46件;HR 0.55、95%CI 0.34〜0.89、p<0.05)の発現が少ないことによるものであった。 |
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ISAR-TEST-4:生分解性ポリマー薬剤溶出ステントの1年後の成績は永久ポリマーを基盤とした薬剤溶出ステントの成績と同等であった [2009-09-15]
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ISAR-TEST-4:
One-year outcomes with a biodegradable polymer drug-eluting stent are similar
to those with permanent polymer-based drug-eluting stents |
生分解性ポリマーを薬剤溶出ステント(DES)に使用することによりステント血栓症のリスクを軽減する可能性があるとの考えを支持する新たな研究結果が、ESC
2009で発表され、European Heart Journalに掲載された。新規発症の未治療冠動脈病変に対しPCI施行の選別をかけていない患者を、生分解性ポリマーDES(1,299人)または永久ポリマーDES(Cypher-652人またはXience-652人)を留置する群に無作為に割り付けた。一次エンドポイントは、12ヵ月以内の心臓死、標的血管に基づく心筋梗塞(MI)、または標的病変(TLR)に対する再血行再建であった。30日後の臨床転帰は両群間で差が無かった;心臓死、標的血管またはTLRに基づくMIは生分解性ポリマー群で4.4%、永久ポリマー群で4.5%に認められた(p=0.87)。明らかなステント血栓症は各々の群で5例ずつ(0.4%)認めた。6〜8ヵ月後の冠動脈造影では、後期ステント内狭窄およびステント留置セグメント内再狭窄発症率に両群間の差はなかった(それぞれp=0.49、p=0.85)。一次エンドポイントは生分解性ポリマー群で13.8%および永久ポリマー群で14.4%であり、非劣性のクライテリア(相対リスク0.96、95%CI
0.78〜1.17、p-非劣性=0.005;p-優越性=0.66)に合致した。 |
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GRACE Registry:プロテクトされていない左冠動脈主幹部病変に対しPCIとCABGは相補的な治療であるようである [2009-09-15]
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GRACE
Registry: PCI and CABG appear to provide complementary treatment options in patient
with unprotected left main coronary disease |
急性冠イベントに関する国際登録研究(Global Registry of Acute
Coronary Events:GRACE)の解析の結果、急性冠症候群(ACS)を呈する患者においてプロテクトされていない左冠動脈主幹部病変(ULMCD)患者はまれではあるが、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)はこれらのよりリスクの高い患者において多く施行されている血行再建療法であることが示された。冠動脈バイパス術(CABG)はリスクの低い患者に対ししばしば遅れて施行され良好な6ヵ月生存率を得ている。今回解析を行った43,018人中1,799人は有意なULMCDを有し、PCIのみ(514人)、CABGのみ(612人)を施行されたかまたは血行再建術を施行されなかった(673人)。8年間のスタディ期間中にGRACEリスクスコアはPCIにおいてCABGよりも20ポイント高いまま不変であったが、時間とともにCABGよりもPCIでの血行再建術が着実に増加した。PCIを施行される患者は心停止後または心原性ショックを伴った急性心筋梗塞であることが多かった;PCIを施行された患者の48%が入院当日に血行再建されたのに対しCABG群では5.1%であった。血行再建術非施行群と比較し、血行再建術施行により早期院内死亡が多い傾向にあり、PCIでは有意であった(HR
2.60、95%CI 1.62〜4.18)が、CABGでは有意ではなかった(HR 1.26、95%CI 0.72〜2.22)。これらの結果はESC2009で発表されEuropean
Heart Journalに掲載された。 |
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PROTECT Study:Rolofyllineは急性心不全患者において有効性を示すことができなかった [2009-09-15]
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PROTECT
Study: Rolofylline does not demonstrate efficacy for patients with acute heart
failure |
PROTECTパイロットスタディでは有望な結果が認められたにもかかわらず、大規模なPROTECTトライアルではrolofyllineとプラセボとで非代償性心不全(HF)患者において差が認められなかった。24〜48時間後の中等度から著明な呼吸困難の改善はrolofylline群の方がプラセボ群よりも多くの患者において認められたが、これは、永続的な腎機能障害に対する有効性の欠如により相殺された。このトライアルは、体液過負荷、腎機能障害(推定GFR
20〜80 ml/min)および血漿BNPまたはNT-proBNPレベル上昇(それぞれ>500 pg/mL または >2,000 pg/mL)の徴候発現後24時間以内にHFとして入院した患者2,033人に対するrolofyllineの効果を評価したものである。治療に成功したのはrolofylline群患者の40.6%に対し、プラセボ群患者では36.0%であり、治療無効と分類されたのはrolofylline群患者の21.8%に対し、プラセボ群患者では19.8%であり、その他の患者は不変であった(オッズ比=0.92、95%CI
0.78〜1.09;p=0.348)。60日以内の死亡または心血管疾患および腎疾患による再入院は、rolofyllineおよびプラセボ患者でそれぞれ30.7%および31.9%であった(ハザード比および
95%CI 0.98、0.83〜1.17、p=0.861)。永続的な腎機能障害はプラセボ群患者の13.7%およびrolofylline患者の15.0%にそれぞれ発現した。重大な神経学的イベントはrolofylline群患者において多く認められた。 |
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PRAGUE-7 Study:GP IIb/IIIa阻害薬abciximabは心原性ショックを伴った急性心筋梗塞患者に対し有益ではない [2009-09-15]
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PRAGUE-7
Study: GP IIb/IIIa inhibitor abciximab shows no benefit in patients with acute
myocardial infarction and cardiogenic shock |
心原性ショックを伴った急性心筋梗塞患者に対する初回経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の際に、GP
IIb/IIIa阻害薬abciximabをルーチンにup-frontで使用することは有益ではないとのPRAGUE-7スタディの結果がESC 2009ホットラインセッションで発表された。80人の患者が移送中またはカテ室で直に標準的な抗血栓薬および抗凝固薬を投与され冠動脈造影を施行された。その後患者らはup-frontでabciximabをボーラス投与後に点滴を12時間施行される群または標準的な周術治療を施行される群に無作為に割り付けられた。PCI中のabciximabの使用はインターベンションの術者の裁量に任された。Abciximabはup-front治療群患者全員に使用されたのに対し、標準治療群患者で使用されたのは35%であった。一次エンドポイント(30日間の死亡/再梗塞/脳卒中/新規の腎不全の合計)に達したのはup-front治療群患者のうち17人(42.5%)であり、標準治療群患者のうち11人(27.5%;p=0.24)であった。入院中に死亡したのはup-front群患者のうち15人(37.5%)であり、それに対し標準治療群患者では13人(32.5%;p=0.82)であった。他の項目に関しては両群間で有意差はなかった。 |
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高血圧性心疾患患者において週10単位を超えるアルコールを飲むことにより心房細動のリスクが上昇する [2009-09-15]
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Drinking
more than 10 alcohol units per week increases the risk of atrial fibrillation
in persons with hypertensive heart disease |
高血圧のエンドポイント減少を目的としたロサルタン治療(Losartan Intervention
For Endpoint reduction in Hypertension:LIFE)スタディの結果がESC 2009で発表され、大量のアルコール摂取により高血圧および左室肥大を有する患者において新規発症の心房細動のリスクが上昇することが示された。この二重盲検無作為化パラレルグループスタディでは、心電図上左室肥大の認められた高血圧患者9,193人を組み入れた(男性46%;平均年齢67歳、平均血圧174/98mmHg)。患者はロサルタンまたはアテノロールを基本とした降圧療法を受け、平均4.8年間追跡された。ベースライン時点で8,831人がAF既往歴および心電図上AF所見を有しておらず、従って、スタディ中にAFを発症するリスクを有していた。353人において新規発症のAFが心電図上認められた。これは、ベースラインの飲酒量が週10単位を超えるもので5.7%(20人)であり、飲酒量の少ない者または飲酒をしない者において3.9%(333人)であった。飲酒量が週10単位を超えることで新規発症のAFのリスクが増加した(p=0.042)。飲酒量が週10単位を超えることにより新規発症のAFのリスクが、AF新規発症の他のリスクと関係なく80%増加した(HR
1.8[1.2、2.9]、p=0.009)。 |
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PLATO:新たな経口抗血小板薬はクロピドグレルと比較し、急性冠症候群患者の心血管イベントを軽減する [2009-09-08]
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PLATO:
New oral antiplatelet agent reduces cardiovascular events when compared to clopidogrel
in patients with acute coronary syndromes |
急性冠症候群患者を抗血小板治験薬であるticagrelorで治療することにより、クロピドグレルと比較し、心血管(CV)イベント(CV死、心筋梗塞、または脳卒中)を有意に軽減したことがphase3
PLATO(Platelet Inhibition and Patient Outcomes :血小板抑制と患者の予後)スタディにおいて示された、とESC
2009ホットラインセッションで報告され、New England Journal of Medicineに掲載された。PLATOはticagrelorとアスピリンの併用とクロピドグレルとアスピリンの併用をhead-to-headで比較したアウトカムスタディである。全ての大陸から選出した43ヵ国893施設の患者18,624人を組み入れた。全ての患者は急性冠症候群により入院しており、3分の1はST上昇心筋梗塞であり3分の2にはST上昇がなかった。入院直後に患者らは、無作為化二重盲検試験の形で、ticagrelor(90mgを1日2回)またはクロピドグレル(1日75mg)を6〜12ヵ月内服する長期抗血小板療法を開始された。その結果、ticagrelorによりクロピドグレルと比較し、CVイベントは11.7%
から9.8%に減少した(p<0.001、 RRR=16%)が、重大な出血は増加しなかった。このエンドポイントに関する有効性はCV死および心筋梗塞の減少によるものであり、脳卒中に関しては差がなかった。 |
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RE-LY:心房細動患者の脳卒中予防において経口抗凝固薬dabigatranはワルファリンよりも有効である [2009-09-08]
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RE-LY: Oral antithrombin dabigatran more effective than warfarin in preventing
stroke in patients with atrial fibrillation |
抗凝固薬dabigatranはワルファリンと比較し、心房細動(AF)患者の脳卒中および末梢塞栓イベント予防効果が高かったとのRE-LY(Randomized
Evaluation of Long-term anticoagulant therapY :長期抗凝固療法無作為評価)スタディの結果が、バルセロナで開催されたESC
2009ホットラインセッションで発表された。RE-LYスタディでは、脳卒中リスクの高い心房細動患者18,113人において、2つの用量のdabigatran(150mgおよび110mgを1日2回)と現在の標準療法であるワルファリンを比較した。このスタディには44ヵ国951以上の施設が参加した。患者は2年以上にわたり組み入れられ、さらに1年間追跡された。高用量のdabigatran
により、ワルファリンと比較し、年間の一次エンドポイント(脳卒中および末梢塞栓イベント)が34%減少し(p<0.001)、出血性脳卒中イベントが74%(p<0.001)減少した。低用量のdabigatranの脳卒中予防効果はワルファリンと同様であったが、重大な出血は有意に少なかった。高用量のdabigatranにより二次エンドポイントであるMIのリスクは増加した(p=0.048)。 |
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AAA:無症候性血管イベントを有する患者に対するルーチンのアスピリン投与にエビデンスはない [2009-09-08]
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AAA:
No evidence for the routine use of aspirin in people with asymptomatic vascular
events |
無症候性の患者に対する血管イベント一次予防目的のアスピリン投与は支持されないとのAAA(Aspirin
for Asymptomatic Atherosclerosis:無症候性動脈硬化患者に対するアスピリン)スタディの結果がESC 2009ホットラインセッションで発表された。このスタディは、足関節上腕血圧比(ABI)低値から無症候性動脈硬化症と考えられた患者に対するアスピリンの効果を評価するためにデザインされた初めてのプラセボコントロール無作為化試験である。臨床的に明らかな心血管疾患のない、スコットランド中部の50〜75歳の男女28,980人にABIスクリーニング検査を施行した。ABI低値(3,350人、ABI≤0.95)の患者がトライアルに組み入れられ、1日100mgのアスピリンまたはプラセボを内服する群に無作為に割り付けられた。平均8.2年後の一次エンドポイント(致死性または非致死性の初回冠動脈イベントまたは脳卒中の合計、または血行再建術)はアスピリン群とプラセボ群とで統計学的有意差はなかった(HR
1.03、95%CI 0.84〜1.27)。同様に、二次エンドポイント(一次エンドポイントの合計または狭心症、間欠性跛行または一過性脳虚血発作で定義した初回結果イベントおよび総死亡率)も両群間で有意差はなかった。 |
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SEPIA-ACS1 TIMI 42:otamixabanは非ST上昇急性冠症候群患者の治療薬として有望である [2009-09-08]
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SEPIA-ACS1
TIMI 42: Otamixaban shows promise for the treatment of patients with non-ST-elevation
acute coronary syndromes |
ESC 2009で発表された静注抗凝固治験薬otamixaban のphase
IIトライアルの結果、急性冠症候群(ACS)の現在の標準治療薬と比較し、死亡、二度目の心筋梗塞(MI)、または他の冠動脈疾患のリスクを軽減する可能性が示された。このスタディ(SEPIA-ACS1
TIMI 42)は、世界36ヵ国のACS患者3,241人(平均年齢61歳、女性31%)を組み入れた。患者は5つの用量のotamixaban群またはヘパリンと比較対照薬(静注抗血小板薬eptifibatideの併用)の群に無作為に割り付けられた。患者は7日間(一次エンドポイント)およびその後6ヵ月間にわたり追跡された。最も低用量の群を除いた全てのotamixaban群においてヘパリンとeptifibatide併用群よりも死亡率、二度目のMI、または他の冠疾患発現率が低い傾向にあった。特に、中等用量のotamixaban投与群患者においては、死亡または虚血性合併症発現率がヘパリンとeptifibatide併用群と比較し、40%低かった。これらの有益性は180日間にわたり持続した。中等用量otamixaban投与群における出血発現率はヘパリンeptifibatide併用群と同等であった。 |
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NORDISTEMI:長時間の移送により治療が遅延する地域のSTEMI患者に対する血栓溶解術直後の血管形成術は予後を改善する [2009-09-08]
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NORDISTEMI:
Immediate angioplasty after fibrinolysis improves outcome of STEMI in areas with
very long transfer delays |
ノルウェイにおけるST上昇心筋梗塞遠隔治療(NORwegian study on
DIstrict treatment of ST-Elevation Myocardial Infarction :NORDISTEMI)の結果がESC 2009において発表され、急性ST上昇心筋梗塞(STEMI)により受診した地方の患者は血栓溶解療法直後に移送し血管形成術を施行した方が、血栓溶解療法後保存的治療を行い地域病院でフォローするよりも予後が良好であることが示された。NORDISTEMIは、PCIを施行するのに長距離の移送を必要とする(距離中央値158km、移送時間中央値130分)ノルウェイの遠隔地域で施行された無作為化多施設スタディである。18〜75歳のSTEMI患者計266人に血栓溶解療法を施行し、直後に移送し血管形成術/PCIを施行する群、または地域病院で標準的な管理を行い救助の適応のある場合または臨床的に増悪を認めた場合には移送する群に無作為に割り付けた。その結果、一次複合エンドポイント(死亡、再梗塞、脳卒中または12ヵ月以内の新たな虚血)は早期侵襲治療群において有意な低下は示さなかった(HR
0.72、95%CI 0.44〜1.18、p=0.19)。しかし、死亡、再梗塞、または12ヵ月時点での脳卒中の合計は早期侵襲治療群において保存的治療群と比較し有意に少なかった(6.0%対15.9%、HR
0.36、95%CI 0.16〜0.81、p=0.01)。出血および梗塞サイズは二群間で差がなく、移送に伴う合併症は少なかった。 |
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TRIANA:非常に高齢のAMI患者には初期治療としてPCIを施行した方が血栓溶解療法よりも有効性が高いことが示唆された [2009-09-08]
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TRIANA:
Primary angioplasty may be more effective than thrombolysis in very elderly patients
with AMI |
非常に高齢の急性心筋梗塞(AMI)患者には初期治療としてPCIを施行した方が血栓溶解療法よりも有効性が高いことが、スペイン心臓協会の後援で施行された無作為化トライアルTRIANA
(TRatamiento del Infarto Agudo de miocardio eN Ancianos)スタディの結果示唆され、ESC 2009ホットラインセッションで発表された。このトライアルは75歳以上で発症後6時間未満の急性心筋梗塞患者226人を対象に施行され、2005〜2007年にスペインの23の病院において組み入れられた。このスタディは患者の組み入れ率不良のために早期に終了したが、一次エンドポイント(30日間の死亡、再梗塞または障害を伴う脳卒中)は両群間で差がなかった(血栓溶解療法群で25.4%に対し血管形成術群で18.9%、p=0.21)。両群ともにイベント発現率が予測より高かったにもかかわらず、患者組み入れが遅かったために有意差の検出力は十分ではなかった。しかし、あらかじめ指定された二次エンドポイントにおいては、血管形成術群のほうが再虚血に対するカテーテル施行率が有意に低かった(0.8%対9.7%、p<0.001)。 |
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糖尿病患者においてビタミンD低下が心血管疾患のリスクとなる原因が説明された [2009-09-01]
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Mechanism
identified that explains why low vitamin D raises risk for cardiovascular disease
in diabetics |
2型糖尿病患者においてビタミンDは、泡沫細胞形成過程を阻害し、コレステロールを血管に蓄積させ心筋梗塞および脳卒中のリスクを増加させるマクロファージのコレステロール吸収を抑制するとCirculation
8月25日号に掲載された。研究者らは糖尿病を有するまたは有さない者およびビタミンD欠乏症を有するまたは有さない者から採取したマクロファージ細胞を調査した。彼らは細胞をコレステロールおよび高濃度または低濃度のビタミンDに曝露させた。培養皿内のビタミンDレベルが低いと糖尿病患者のマクロファージはより泡沫細胞になりやすかった。
ビタミンD豊富な環境におかれるとマクロファージのコレステロール吸収は抑制され、動脈硬化の最も早期のマーカーのひとつである泡沫細胞にならなかった。筆者らは、糖尿病患者において適正なビタミンDレベルを取り戻すことにより動脈硬化を遅延させたり軽減したりすることが可能であろうと考えている。 |
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足関節上腕血圧比により脳卒中後患者の続発性イベントのリスクが発見できる可能性がある [2009-09-01]
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Measuring
the ankle brachial index may identify stroke survivors at risk of subsequent events |
足関節上腕血圧比(ABI)計測は、続発性の脳血管イベントリスクの非常に高い脳卒中および一過性脳虚血発作(TIA)後患者の無症候性末梢動脈疾患(PAD)発見に役立つ、とAmerican
Heart Association学会誌Strokeに掲載された。研究者らはABIを用いて脳卒中およびTIA後患者102人をスクリーニングした。その結果、患者らの26%が無症候性PADを有しており、PADを有さない患者と比較し発症後2年以内の続発性心血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、または死亡)を3倍多く有していた。PADを有さない患者におけるイベントは16%であったのに対し、無症候性PAD患者においては50%にイベントが発現した。さらにPADはその後の血管イベント、特に脳卒中と有意に関連があった。このスタディは脳卒中およびTIA患者における無症候性PADと心血管イベントの独立した正相関関係を示した初めてのものである。American
Heart AssociationおよびAmerican College of Cardiologyの作成したPAD管理ガイドラインではハイリスク患者全員のスクリーニングを推奨している。 |
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