"Real world"スタディの結果、薬剤溶出ステントは安全で
有効であることが示された
(ACC)
  SYNTAXの結果から治療方針を決定するのに役立つ情報が得られる (ACC)
  若年者におけるまれな心筋症
  抗てんかん薬は心血管リスクファクターに影響する
  運動は心筋梗塞後の血管機能を改善する
  検査により生命を脅かすような心臓の状態が見極められる
  小児の心停止後生存率
  交通への暴露は心筋梗塞に影響する
(American Heart Association's 49th Annual Conference on
Cardiovascular Disease Epidemiology and Prevention)
  心筋梗塞後のプロトンポンプ阻害薬の使用によりリスクが上昇する
  心疾患患者が運動をする上での障壁
  ロボット介在療法は脳卒中による身体障害を軽減する可能性がある
(American Stroke Association's International Stroke Conference 2009)
  脳卒中発症率は40代半ばで増加する


レジストリのデータから高齢者における薬剤溶出ステントの死亡率に対する有益性が示された [2009-03-31]

Registry data suggests mortality benefit for drug-eluting stents in elderly
「現実の世界(Real world)」の患者に対するステント留置術を評価した過去最大のスタディの結果、薬剤溶出ステントはベアメタルステントと比較し、重篤な心血管疾患予防の点で優れ、安全性は同等であることが確認されたとのレイトブレイキングクリニカルトライアルの結果が第58回American College of Cardiology学会i2サミットにて発表され、同時にJournal of the American College of Cardiologyオンライン版に掲載された。研究者らは、米国心血管疾患データレジストリ(National Cardiovascular Data Registry)およびMedicare proceduralレジストリの2004〜2006年に血行再建術を施行された患者のデータを解析した。そのうち217,675人が薬剤溶出ステントで治療され、45,025人がベアメタルステントで治療を受けた。年齢中央値は薬剤溶出ステント群で74.5歳でありベアメタルステント群で75.3歳であった。30ヵ月間の経過観察期間中の死亡率、非致死性心筋梗塞発症率および血行再建術再施行率は薬剤溶出ステントを使用された患者においてベアメタルステントを使用された患者よりも有意に低かった(ハザード比[HR]はそれぞれ0.75、0.76、0.91)。脳卒中および重大な出血は基本的に差がなかった(HRはそれぞれ0.96および0.91)。さらに、STEMIおよびnon-STEMIに関する長期のハザード比は薬剤溶出ステントの方に良好な値が認められた。

SYNTAX解析の結果、多くの患者においてPCIに軍配が上がったが、QOLおよび医療経済上、CABGとPCIのバランスには疑問の余地がある [2009-03-31]

SYNTAX analysis favors PCI in many patients, but quality of life and economics question CABG-PCI balance
重症の冠動脈疾患患者においてはバイパス手術の方がステント留置術よりも臨床上の予後に関して有利な結果であったが、冠動脈が解剖学的に最も複雑な患者においてはバイパス術を選択するのが最良な一方で、QOLや経済的なことを考慮すると真っ直ぐな病変や中等度の複雑性病変では経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の方が良いとのレイトブレイキングクリニカルトライアルの結果が、第58回American College of Cardiology学会i2サミットで発表された。Synergy between PCI with Taxus and Cardiac Surgery(SYNTAX)トライアルの1年間の結果から、死亡率、心筋梗塞または脳卒中発症率はPCIとCABG群で同等であったが、再血行再建施行例数に関してはPCIの方が有意に多いことが示された。ステントもCABGも全体のQOLは向上させたが、胸痛の軽減に関してはCABGの方がやや良好であった。費用対効果解析の結果、疾患の複雑性が費用対効果に影響することが示された。真っ直ぐな3枝病変または左主幹冠動脈病変および中等度の複雑性病変の患者においては、質で補正した余命がPCIの方がCABGよりも良好であり医療費も安かった。しかし、複雑性3枝病変の患者においては質で補正した余命がCABGの方が良好であり、全体的なコストはPCIとCABGとでほぼ同等であった。

近年同定された稀な遺伝性心疾患は急速に進行し、しばしば若年患者において致命的である [2009-03-31]

Recently identified rare genetic heart disorder progresses rapidly, is often deadly for young patients
近年同定された稀な遺伝子変異に関連したタイプの心筋症は進行が急速で若年者において死に至る場合もある、とJAMA 3月25日号に掲載された。リソソーム膜蛋白質遺伝子(LAMP2)の変異により臨床的に重症肥大型心筋症に類似した若年者の心筋症が引き起こされる。このスタディはLAMP2変異を有する患者7人(男児6人、診断時平均年齢7〜17歳)を組み入れた。診断後平均8.6年間に7人全てが14〜24歳(平均21歳)までに重篤で不良な臨床転機を来した。4人は急性または進行性心不全により死亡し、1人は心臓移植を施行された。臨床上の悪化はしばしば急速であり、無症状あるいは症状の少ない臨床的に安定した状態から末期の心不全までの期間は6ヵ月と短かった。他の2人の患者は予期せぬ突然の重大な不整脈イベントを来たし、1人(14歳)は心室細動が植込み型除細動器に反応せず突然死した。7人の患者全てが左室収縮不全を発症した。二つの心臓の死亡解剖の結果、著明な心肥大が認められた。

一般的な抗てんかん薬は心血管系のリスクを上昇させる可能性がある [2009-03-31]

Common anti-seizure medications may increase risk of cardiovascular problems
最も一般的に処方される抗てんかん薬がコレステロール、C反応性蛋白および他の心血管疾患マーカーレベルを有意に上昇させる可能性があるとの研究結果がAnnals of Neurology 3月18日号に掲載された。研究者らは、最も頻繁に処方される抗てんかん薬二つ―フェニトインおよびカルバマゼピン―のうちいずれかを内服し、広範囲に酵素に影響しない新しい抗てんかん薬二つ―ラモトリギンまたはlevetiracetamに変更したてんかん患者34人を組み入れた。内服薬変更からちょうど6週後に、総コレステロール、非高密度リポ蛋白コレステロール、中性脂肪およびC反応性蛋白が有意に低下し、この結果から、一般的に用いられる古い抗てんかん薬は心血管疾患のリスクを実質的に増加させる可能性があることが示唆された。薬剤を変更することにより、総コレステロールが平均26ポイント低下したのを含め、心血管疾患に関連したいくつかのマーカーが急速に臨床的に有意に改善した。筆者らは、この変化は新たな薬剤による好ましい変化ではなく、コレステロールおよび他のマーカーを上昇させていた古い薬剤の内服を中止したことによると述べている。

運動は心筋梗塞後の血管内皮機能を改善するがこの効果は運動を止めると消失する [2009-03-24]

Exercise improves endothelial function after myocardial infarction, but benefits vanish when workouts stop
有酸素運動、筋力トレーニングおよび両方の運動を行うことにより、心筋梗塞後の血管内皮機能が安全に改善するが、トレーニングを中止するとこの改善は急速に消失するとCirculationに掲載された。スイスの研究者らは、心臓発作のあった209人に対し、異なったタイプの運動の効果および運動を中止したことの影響を評価した。研究者らは患者を、有酸素運動群、筋力トレーニング群、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせ群、または非トレーニング群に無作為に割り付けた。血流依存性血管拡張反応検査(FMD)を用いて、対象者の血管内皮機能をスタディ開始時および4週間のトレーニング後に計測した。1ヵ月後に、トレーニングの種類に関係なくトレーニング群においてはFMDが運動療法前の4%から10%(正常機能)に増加した。非トレーニング群においては有意な変化は認められなかった(FMDは4.3%から5.1%に増加)。しかし、トレーニング中止または日常の運動中止1ヵ月後には血管内皮機能に対する好影響は消失していた。筆者らは、血管内皮に対する効果を維持するには長期の運動療法の順守が必要であると結論付けている。

新たな免疫組織化学的検査により不整脈原性右室心筋症が信頼できる精度で診断できる [2009-03-24]

New immunohistochemical test reliably diagnoses arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy
あるスタディにより、新たな免疫組織化学的検査は不整脈原性右室心筋症(ARVC)の診断において信頼できることが示された、と New England Journal of Medicine (NEJM) 3月12日号に掲載された。研究者らは、plakoglobinとして知られるデスモソーム蛋白がARVCの組織検体において劇的に減少していることを過去に発見した。今回の新たなスタディで彼らは、このplakoglobin減少のシグナルがARVCの経過の早期におけるバイオマーカーとして利用できるか否かを明らかにしようと試みた。この蛋白がARVC症例で減少しており―他の心疾患では減少は認められない―ことを確かめた後に、彼らは心筋生検の検体を「ブラインド化」免疫組織化学的解析を行った。臨床クライテリアを基に、ARVCと確定診断されている患者11人中10人を正しく診断し、ARVCでない患者11人中10人を正しく除外することができた。筆者らは、plakoglobinシグナルレベルがARVC検体においてびまん性に低下していることは間違いないと述べている。今回の発見により、生命を脅かすこの疾患を植込み型除細動器で治療できる早期のステージで検出する高感度で高特異度の手段の可能性が示された。

小児および青年は成人および乳児と比較し非外傷性の院外発症心停止後の生存率が高い [2009-03-17]

Children and adolescents have higher survival rates than adults or who suffer non-traumatic cardiac arrest outside hospitals
小児および青年は成人および幼児と比較し非外傷性の院外発症心停止(OHCA)後の生存率が2倍高いとCirculationに掲載され、若年者における心肺蘇生が無効であるとの誤った概念に反論した。しかし、1歳未満の幼児のOHCA生存率は成人よりも低かった。この結果は、Resuscitation Outcomes Consortium(蘇生予後協会)に参加した11の地域(米国8ヵ所およびカナダ3ヵ所)のデータを解析して得られたものである。症例は成人計25,405人および、乳児(1歳未満)277人、小児(1〜11歳)154人および青年(12〜19)193人を含む20歳未満624人であった。小児患者のうち44%が乳児であり62%が男性であった。全体で小児患者の6.4%および成人患者の4.5%が生きて退院し、その差は統計学的に有意であった。生存率は乳児とそれより年長の小児とで有意に異なった―乳児3.1%、小児9.1%、青年8.9%であった。救急医療従事者の治療を受けた小児患者のうち乳児230人中8人(3.5%)、小児135人中14人(10.4%)および青年135人中17人(12.6%)が生きて退院した。

交通への暴露は心筋梗塞発症の誘引となる可能性がある [2009-03-17]

Traffic exposure may have a triggering effect on myocardial infarction
心筋梗塞を発症した人は症状出現直前に移動中であることが多い、と第49回American Heart Association のCardiovascular Disease Epidemiology and Prevention(心血管疾患疫学および予防)に関する学会で発表された。心筋梗塞(MI)を発症した患者を対象としたあるドイツのスタディで、患者らは発症1時間以内に移動中であった確率が3倍以上であった。また、MI発症から6時間以内に移動中であった場合にもMIを発症する確率は、少ないが有意に上昇した。車の運転が最も一般的な交通手段であったが、公共交通機関や自転車も交通手段に含まれた。このスタディの結果、心筋梗塞を発症した患者の約8%は交通が原因と考えられた。全体で、移動手段にかかわらず交通へ暴露されている時間は、交通から離れて過ごす時間と比較し、リスクが3.2倍高かった。女性、高齢男性、働いていない人、および狭心症の既往のある人が交通の影響を受けやすかった。

心筋梗塞および狭心症発作後の患者に対する抗血小板薬とプロトンポンプ阻害薬の併用により死亡および入院のリスクが上昇する [2009-03-10]

Combined use of antiplatelet and proton pump inhibitor following myocardial infarction or angina associated with increased risk of death, hospitalization
心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群(ACS)後にクロピドグレルやアスピリンなどの抗血小板薬内服に伴う消化管出血のリスク軽減目的で薬物を投与される患者は、その後のACSによる入院または死亡のリスクが上昇するとJAMA 3月4日号に掲載された。退院後にクロピドグレルを内服しているACS患者8,205人中63.9%(5,244人)が退院時または経過観察期間中にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方された。クロピドグレルとPPIを処方された患者のうち29.8%が死亡したかまたはACSにより再入院し、クロピドグレルは処方されたがPPIを処方されなかった患者におけるその割合は20.8%であった。いずれかの時期にクロピドグレルとPPI を併用することにより死亡またはACSによる入院の確率が25%上昇した。アウトカム別にみると、ACSによる入院(14.6%対6.9%)および再血行再建術施行率(15.5%対11.9%)はクロピドグレルを内服しPPIは内服しなかった者と比較し両者を内服した者において高かった。しかし、死亡のリスクは二群間で差がなかった。

心疾患患者があまり身体を動かさないのは関節痛が原因の可能性がある [2009-03-10]

Arthritis pain may keep people with heart disease physically inactive
心疾患と関節炎を合併している患者は心疾患のみの患者と比較し著しく非活動的になりがちであり、これらの患者の心疾患管理に運動を用いるのにさらなる障壁となっているとMorbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)に掲載された。このスタディでは、心疾患患者において関節炎はよく認められ、心疾患患者の57%が関節炎を有していることを明らかにした。米国疾病管理予防センターで行ったこのスタディでは、心疾患と関節炎を合併した患者の約29%が非活動的であり、それに対し心疾患のみおよび関節炎のみの患者におけるその割合はそれぞれ21%および18%であり、両疾患とも有さない人々におけるその割合は11%であった。米国心臓協会は、慢性疾患患者は予防および治療に関する勧告を統合した運動計画が必要な可能性があるとコメントしている。これには関節炎患者も含まれている。

ロボット介在療法は、例え発症から数年後であっても脳卒中による身体障害を改善する [2009-03-03]

Robotic therapy improved physical disability caused by stroke, even years after the stroke
ロボット介在療法は脳卒中発症から数年経過した患者の身体能力を回復するのに役立つ可能性がある、と2009年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。研究者らは右片麻痺を有する平均年齢61歳の患者15人を調査した。患者はこの治療を開始する4ヵ月〜10年(平均2.6年)前に脳卒中を発症した。7人の患者はモーター療法と呼ばれる、休みを入れながらコンピュータにより握ったり離したりするロボット介在療法に割り付けられた。残りの8人はより運動前野を使うプレモーター療法と呼ばれるさらに複雑なロボット介在療法を受け、指定時刻に作用する視覚的な合図の詳細に合わせて握ったり離したりした。全ての患者が1ヵ月後には有意な改善を示したが、改善の程度はリハビリ開始時の患者の障害の重症度により異なった。2週間の治療開始時の障害が軽い程、身体能力はより改善した。筆者らは、ロボット介在療法はまだ初期段階にとどまっているが、おそらく薬物や脳電気刺激療法および細胞移植などの他の実験的な治療と組み合わせて使用することで多大な可能性を秘めていると述べている。

虚血性脳卒中発症率は44歳を超えると劇的に増加する [2009-03-03]

Ischemic stroke rate increases dramatically after age 44
虚血性脳卒中発症率は特に男性において44歳を超えると急激に増加する、とフィンランドの研究者らがStroke誌に報告した。研究者らは初回の虚血性脳卒中の治療を受けた患者1,008人(15〜49歳)の人口統計学上の傾向を解析した。全体的に男性は女性よりも2対1の割合で多かったが、30歳未満では女性が男性よりも56〜44%多かった。脳卒中は年齢とともに増加し44歳の辺りで男女比はほぼ1:1となった。この時点から特に男性において脳卒中発症率が急増した。45〜49歳の群では男性が女性の2倍多く脳卒中を発症した。また若年患者においては脳卒中リスクファクターの頻度が高く、「無症候性」脳卒中および多発性脳卒中の割合が多かった(それぞれ13%と23%)。脳卒中を引き起こす原因は心原性のもの(19.6%)および動脈解離(15.4%)であった。高コレステロール、喫煙、高血圧および肥満などの伝統的な脳卒中リスクファクターは44歳を超えた男性が多く有していた。大量飲酒は男性に、偏頭痛は女性に多くみられた。違法薬物使用および偏頭痛は若年患者により多く認められた。
 
 
 
 

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