ATHENA Trial:抗不整脈薬は心房細動患者の心血管系の入院または死亡のリスクを軽減する [2009-02-24]

ATHENA Trial: Ant-arrhythmic drug reduces risk of cardiovascular hospitalization or death in patients with atrial fibrillation
画期的なATHENA スタディは心房細動に対し抗不整脈薬を内服することにより心血管系の入院または死亡率が低下することを示した初めてのトライアルである、とNew England Journal of Medicineに掲載された。この二重盲検スタディは心房細動(AF)/心房粗動(AFL)を有する患者または最近罹患した、37ヵ国55施設の患者4,628人を組み入れた。標準的な治療に加え、患者らはdronedarone 400mgを一日二回またはプラセボを内服する群に無作為に割り付けられた。平均追跡期間21ヵ月の後、実薬群において初回の心血管系入院または死亡のリスクが24%低下し(31.9%対39.4%, p<0.001)、AF患者の心血管死のリスクが29%低下した(p=0.03)。またこの薬剤により不整脈死のリスクが45%と有意に低下し(p=0.01)、実薬群においてはあらゆる原因による死亡が数の上で少なかった(16%, p=0.18)。甲状腺や肺機能の障害などの副作用が実薬群において有意に高率に認められるということはなかった。

若年アスリートにおける心臓突然死はこれまで考えられていたよりも多いが依然としてまれである [2009-02-24]

Sudden cardiac death is more common than previously thought but remains rare in young athletes
若年アスリートにおける心臓突然死率は過去の推定よりも高いが依然としてまれであるとの27年間のレジストリの結果がCirculationに掲載された。研究者らは、米国において1980〜2006年の間に突然死または心停止後に蘇生された38の異なるスポーツのアスリート1,866人の大規模なレジストリを作成した。アスリートは8〜39歳であった。死亡原因の56%(1,049人)は心血管疾患であった。肥大型心筋症が心血管死の原因として最も多く3分の1を占め、22%(416人)は鈍的外傷による心臓の器質的損傷、4%(65人)は心臓震盪、2%(46人)は心臓発作によるものであった。突然死の頻度は年間100,000人当たり0.6件であり、11年間にわたるイタリアのヴェネト地域のアスリートのスタディで報告された年間100,000人当たり0.87件と類似した値であった。イタリアではアスリートのプレスクリーニングの一部として12誘導心電図を必須としている。

一次および二次予防目的でのスタチン療法の継続は持続的に総死亡率を低下させる [2009-02-17]

Continuation of statin therapy for primary and secondary prevention associated with ongoing reduction in all-cause mortality
高コレステロール血症に対し持続的にスタチンを内服し続けている者は、既に心疾患と診断されているかどうかに関わらず、4〜5年にわたって死亡のリスクが低いようである、とArchives of Internal Medicine 2月9日号に掲載された。イスラエルの研究者らはある健康維持機構に登録され1998年から2006年の間にスタチンの内服を開始した成人229,918人(平均年齢57.6歳)のデータを解析した。このうち136,052人には心疾患がなく(一次予防群)平均4年間追跡され、93,866人は既に心疾患と診断されており(二次予防群)、平均5年間追跡された。スタディ期間中に一次予防群の4,259人および二次予防群の8,906人が死亡した。両群ともにスタチンを持続内服(追跡期間の90%以上において内服することで定義)することにより、スタチンを追跡期間の10%未満しか内服しなかった者と比較し、死亡のリスクが少なくとも45%低下した。このリスク軽減はスタディ開始時のLDLコレステロールが高く、初回治療を効果の高いスタチンによって行われた者においてより強く認められた。

閉経後女性におけるマルチビタミン内服は心疾患、がんまたは死亡のリスクと関連がない [2009-02-17]

Multivitamin use not associated with postmenopausal women's risk of heart disease, cancer or death
マルチビタミンを内服する閉経後女性の心疾患、ほとんどの一般的ながんまたはあらゆる原因による死亡のリスクはマルチビタミンを内服していない女性と同等である、とArchives of Internal Medicine 2月9日号に掲載された。研究者らはWomen's Health Initiative(WHI)の参加者(ホルモン補充療法、食事の調整およびビタミンD補充の効果を調査した3つの臨床試験の対象女性161,808人、およびある観察研究の対象女性93,676人)のデータを解析した。ビタミン内服に関する情報は問診および受診の際に持参したサプリメントの瓶から収集した。参加者の計41.5%がマルチビタミンを内服していた。2005年(臨床試験の8年間の追跡期間および観察研究の7.9年間の追跡期間中央値または中間地点)までに8,751件の心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントが起こり、9,619件の乳がん、大腸がん、子宮がん、腎がん、膀胱がん、胃がん、肺がんまたは卵巣がんが発症し、9,865人が死亡したと報告された。心筋梗塞のリスクを低下させる可能性のあるストレス型サプリメント(高用量の葉酸および他のビタミンB群)内服者を除き、マルチビタミンのクラスによる実質的なリスクの差はなかった。

日本において"救命の連鎖"が生命を救い院外心臓停止患者の心臓損傷を減少させる [2009-02-10]

"Chain of survival" saves lives, lessens heart damage in out-of-hospital cardiac arrest patients in Japan
日本において"救命の連鎖"への改善により院外心臓停止患者の生存者が増加し神経学的損傷の残存が減少した、とCirculationに掲載された。研究者らは1998年5月から2006年12月までの大阪における通行人の目撃のあった心臓停止症例8,782例を考察した。この時期までに日本国民は心肺蘇生(CPR)のトレーニングを受け、指令者によるCPRのインストラクションが導入され、オンラインによる医師の監視なく救急救命士が除細動器を用いて院外の患者に電気ショックを施し挿管をすることができるように変更された。その結果、目撃者のいる心臓停止の1ヵ月生存率は5%から12%に上昇した。国民のトレーニングにより倒れてからCPRまでの時間中央値は9分から7分に縮小した。目撃者の開始したCPRは19%から36%に増加した。目撃者のいる心室細動心停止後1ヵ月の神経学的損傷のない生存率は6%から17%に増加した。CPRが1分遅れるごとに神経学的損傷のない生存の可能性は11%低下し、心室細動に対する電気ショックが1分遅れるごとに生存率は16%低下することが示された。挿管が1分遅れるごとに生存率は4%低下した。

更年期が短いことと動脈硬化の進行が速いことは関連がある可能性がある [2009-02-10]

Possible connection found between shorter menopause and faster progression of atherosclerosis
多面的Los Angeles Atherosclerosis Study ロスアンゼルス動脈硬化スタディ (LAAS)の結果、更年期が速く過ぎた女性は"非臨床的動脈硬化"の進行速度が速いリスクが高く、心疾患を早期に発症するリスクが高いことが示された。この観察研究はスタディ組み入れ時に45〜60歳の女性203人を対象とした。52人は閉経前、20人は閉経前後であり、131人は閉経後であった。心血管疾患と診断されたことのある者はいなかった。スタディ開始時および18ヵ月の間隔を置いて2回の評価を行い、3年間の経過を観察できた。評価は、頸動脈内膜中膜肥厚(cIMT)の計測およびホルモンレベルに基づく閉経状態の客観的計測およびホットフラッシュや生理周期などの主観的でない身体的変化を用いた。閉経前から完全な閉経後に3年以内に移行した女性は頸動脈の脂肪プラークの沈着が多かった。筆者らは、これらの結果から、更年期が短い女性は早期のホルモン補充療法により有益性が得られるかどうかを評価するさらなるスタディが必要であると述べている。

BNPレベルを指標とした治療は心不全患者の予後を改善しない [2009-02-03]

Using BNP levels to guide therapy does not improve outcomes for heart failure patients
N末端脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)ホルモンの計測を指標として高齢者の心不全を治療しても、従来の症状を指標とした治療を受けた患者と比較し臨床転帰およびQOLは改善しないとJAMA 1月28日号に掲載された。研究者らは、1年以内に心不全で入院しN末端BNPレベルが正常上限の二倍以上であった60歳以上の患者499人において、BNPを指標とした治療戦略と標準的な症状を指標とした治療を比較した。症状を指標とした治療と比較し、BNPを指標とした治療は18ヵ月後のあらゆる原因による入院のない率を改善しなかった(BNPを指標とした治療群41%に対し症状を指標とした群40%)。全生存率にも有意差はなかった。心不全による入院のない率はBNPを指標とした治療により有意に改善した(72%対62%)。筆者らは、この結果から60〜74歳の患者においては最良の臨床転帰を得るためには強化薬物療法を維持することが重要であるが、75歳以上の患者においては用量を限界まで無理に使用することは有益でない可能性があると述べている。

冠動脈バイパス術後患者において薬剤溶出ステントはベアメタルステントと比較しリスクが低い [2009-02-03]

Drug-eluting stents less risky than bare-metal stents in patients having coronary artery bypass graft surgery
冠動脈バイパス術は、ベアメタルステントではなく薬剤溶出ステントを用いることにより重篤な合併症のリスクが軽減する可能性があるとのスタディ結果がThe Journal of the American College of Cardiologyオンライン版および次号に掲載される。伏在静脈グラフトに対するステント挿入トライアル(Stenting of Saphenous Vein Grafts trial)は、一般的に使用される二つのタイプのステントを比較した初めての大規模多施設トライアルである。研究者らは80人の患者を調査した。約半数の患者は薬剤溶出ステントを挿入された静脈グラフトを、残りの半数はベアメタルステントを挿入された静脈を用いて同じ手術を施行された。その結果、ベアメタルステントを使用された患者の51%が数ヵ月後に再狭窄を来していたのに対し、薬剤溶出ステントにおけるその割合は9%であった。さらに、ベアメタルステントを使用された患者の28%が同じ狭窄病変を治療するのに他の手技を必要としたのに対し、薬剤溶出ステントを使用された患者においては5%のみであった。筆者らはこの結果から、今回のような施術に対してはベアメタルステントよりも薬剤溶出ステントの方が優れていると述べている。彼らは今回のスタディをさらに多くの患者において施行したいと考えている。
 
 
 
 

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