冠動脈閉塞病変に対する低侵襲治療は多くの患者において手首から行うのが安全で簡単である [2009-01-27]

Wrist access safer, easier for many patients undergoing minimally invasive treatment of blocked coronary arteries
血管形成術を経橈骨動脈的に施行した方が経大腿動脈的に施行するよりも出血が少なく施術後の安静時間が短く安価で、特に肥満患者において全体のリスクが低いと第21回International Symposium on Endovascular Therapy(血管内治療国際シンポジウム:ISET)において発表された。5,000例以上のデータから、狭窄部位へ経橈骨動脈的にアクセスした方が経大腿動脈的にアクセスするよりも出血および神経損傷のリスクが軽減されることが示唆された。スタディによると経大腿動脈的に施行されていた頃は出血または神経損傷のリスクが2.8%であった。マイアミのBaptist Cardiac & Vascular Instituteにおいて経橈骨動脈的に施行された場合の合併症率はきわめて低かった(出血の合併症が0.3%に認められ神経損傷は認められなかった)。経橈骨動脈アプローチでは術後座ることが可能であり、直後から歩くこともでき患者にとっても楽である。研究者らは、アプローチ部位を選択できるようにした場合、約75%の患者が候補となり、特に肥満患者または重度の末梢血管疾患を有する患者に適していると考えている。このアプローチは、非常に細いまたは歪曲した血管を有する患者あるいは極端にやせた患者には適さない。

非定型抗精神病薬を成人に使用することにより心臓突然死のリスクが増加する [2009-01-27]

Using atypical antipsychotics increases risk of sudden cardiac death in adults
リスペリドン、クエチアピン、オランザピンおよびclozapineなどの非定型抗精神病薬を内服した者はこれらの薬物を内服しなかった者よりも不整脈や他の心臓疾患による突然死のリスクが有意に高い、との新たなスタディ結果がNew England Journal of Medicine 1月15日号に掲載された。研究者らはTennessee Medicaid programの医療記録をレビューし、抗精神病薬を処方された患者(30〜74歳)の処方数、用量および投与日数などのデータを確認した。その結果、抗精神病薬を内服中の者はそれらの薬剤を内服しない者と比較し心臓突然死率が二倍であり、ハロペリドールやチオリダジンなどの定型抗精神病薬を内服している者と同等であった。死亡のリスクは用量が多いほど上昇した。研究者らは、心臓突然死を回避するために非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬に取って代わる安全な薬剤ではないと結論付けている。

スタディの結果ストレスの多い仕事に就いている日本人男性は脳卒中のリスクが高いことが示された [2009-01-20]

Study shows increased risk of stroke for Japanese men with high-stress jobs
ストレスの多い仕事に就いている日本人男性はあまりきつくない仕事に就いている者と比較し脳卒中のリスクが高いようであるとArchives of Internal Medicine 1月12日号に掲載された。研究者らは日本人の労働者6,553人(男性3,190人女性3,363人、年齢65歳以下)を調査し、毎年電話、手紙およびインタビューなどで平均11年間追跡した。追跡期間中に男性91件、女性56件の計147件に脳卒中が発症した。これらの脳卒中は「ストレスの少ない」仕事(あまりきつくないコントロールしやすい仕事)に就いている男性7人および女性11人、「能動的な」仕事(きついがコントロールしやすい仕事)に就いている男性23人および女性15人、「受動的な」仕事(きつくはないがコントロールしにくい仕事)に就いている男性33人および女性15人、「ストレスの多い」仕事(きついしコントロールしにくい仕事)に就いている男性28人および女性15人に発現した。多変量解析の結果、年齢、教育、職業、喫煙の有無、飲酒量、身体活動性およびスタディの地域で補正した後、ストレスの多い仕事に就いている男性はストレスの少ない仕事に就いている男性と比較し脳卒中のリスクが2倍以上高かった。女性に関しては仕事の特性別の脳卒中発現率に統計学的有意差は認められなかった。

従来の心血管リスク評価法は冠動脈疾患を正確に予測しない [2009-01-20]

Traditional cardiovascular risk assessment tools do not accurately predict coronary heart disease
フラミンガム・リスクスコアおよび米国コレステロール教育プログラム(NECP)は冠動脈疾患を正確に予測しない、とAmerican Journal of Roentgenology 1月号に掲載された。このスタディには冠動脈疾患の既往のない患者1,653人を組み入れた。これらの患者のうち738人は冠動脈疾患を発症するリスクが高いためスタチンを内服していた。1,653人の患者全てが冠動脈CT血管撮影を施行され、医師らはフラミンガムおよびNECPリスク評価法で評価した患者らの冠動脈疾患リスクとCTスキャンの結果冠動脈に実際に認められたプラーク量を比較した。その結果、スキャン前にスタチンが必要と考えられた(フラミンガムおよびNCEP評価法に基づき)患者の21%はスタチンが必要ではなかった。既にスタチンを内服している(リスクファクター評価法に基づき)患者の26%には検出できるプラークは全くなかった。筆者らは、家族歴のみが唯一の軽度の冠動脈疾患のリスク予測因子と結論付けており、このスタディがより良い予測因子を探索する研究の動機付けとなってほしいと述べている。

植込み型除細動器は左室機能低下患者の死亡リスクを30%低下させる [2009-01-13]

Implantable cardioverter defibrillators reduce the risk of death by 30 percent in patients with diminished left ventricular function
植込み型除細動器(ICD)は心臓に損傷を負った患者−例え70歳代であっても−の生存率を改善するとの研究結果が、Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomesに掲載された。この一次予防スタディでは連続986人の左室機能低下患者を組み入れ、ICD植込み患者500人と植え込まれなかった患者(年齢中央値67歳)の予後を比較した。これまでのICDのスタディは主として75歳未満の、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患または脳卒中の既往歴などの合併症の少ない患者を対象として行われていた。全体で238人が死亡した−ICD非植込み群130人(26.7%)およびICD植込み群108人(21.6%)。このうち116人が不整脈による死亡であった−ICD非植込み群67人(13.7%)およびICD植込み群49人(9.8%)。ICD植込みにより非植込み患者と比較し総死亡率が30%低下した。この生存率に関する有益性はこのスタディの全ての患者(75歳以上の患者も含む)において当てはまった。しかし、この有益性は年齢と多疾患合併を組み合わせると低下した。

遺伝子治療は心機能を改善し心不全患者の左室劣化を回復し神経ホルモン状態を正常化する [2009-01-13]

Gene therapy improves cardiac function, reverses left ventricular deterioration and normalizes the neurohormonal status in heart failure
長期の遺伝子治療の結果、心不全ラットの心機能が改善し心臓の損傷が回復するとCirculationオンライン版に掲載された。このラットはβARKctと呼ばれるペプタイドを作り出す遺伝子をリコンビナントアデノウイルスセロタイプ6(rAAV6)と組み合わせて投与された。βARKctは、不全心心筋において増加しているG蛋白結合レセプターキナーゼ2(GRK2)の活性を阻害することにより働く。二つのグループのラットはrAAV6とβARKctペプタイドを、他の二つのグループはrAAV6と緑色蛍光蛋白質(GFP)を、最後のグループは食塩水を投与された。βARKctグループおよびGFPグループの一つは同時にメトプロロールの投与を受けた。12週後、βARKctを投与されたラットは左室駆出率が有意に増加していた。この治療は、メトプロロールの投与なしで左室損傷をも回復し神経ホルモン状態も改善した。GFPまたは食塩水のみを投与されたラットはスタディ期間中にさらに心機能が悪化した。この悪化はメトプロロール併用により予防はできたが、回復はしなかった。

パニック発作は特に若年者において心筋梗塞および心疾患のリスク上昇と関連がある [2009-01-06]

Panic attacks linked to higher risk of myocardial infarction and heart disease, especially in younger people
パニック発作またはパニック障害と診断された人々は一般の人々と比較し後に心疾患や心筋梗塞(MI)を発症するリスクが高く、特に若年者において発症率が高いとの研究結果がEuropean Heart Journal 12月号に掲載された。University College Londonの研究者らはパニック発作/障害と診断された成人57,615人およびこれらの障害を有さない成人347,039人のプライマリケアの医療記録を調査した。その結果、50歳未満では障害を有さない人々と比較し、MIは38%、心疾患は後の発症率が44%高かった。50歳を超えた人々においては心疾患のリスクがやや高かった(11%)。しかし、CHDで死亡するリスクはパニック発作/障害の患者において24%低かった。また、40歳未満の女性のパニック発作/障害患者は男性よりもMIおよびCHD発症リスクが高かったが、イベントの数自体は少なく偶然である可能性がある。

スタチンは心臓術後譫妄の発症を軽減する可能性がある [2009-01-06]

Statins may decrease incidence of delirium after cardiac surgery
Anesthesiology 2009年1月号に掲載されたスタディにおいて、心臓術前にコレステロール低下薬スタチンを投与することにより高齢者の術後譫妄の可能性が低下するとの初めてのエビデンスが示された。心臓術後譫妄の発症率は3〜47%と考えられているが、高齢、術前のうつ病および手術の複雑性などの様々な因子による。スタディの対象となった患者1,059人中11.5%は循環器集中治療室滞在中ずっと譫妄を有していた。これらの患者を様々な因子で補正した結果カナダの研究者らは、スタチンの投与が統計学的に有意な予防効果を有し、譫妄の発症率を46%低下させたことを明らかにした。これらの結果から、将来的にスタチンは術後譫妄に関連した患者の予後を改善するとのエビデンスが得られる可能性があるが、研究者らは、スタチンが心臓手術患者における譫妄のコントロール薬として使用されるまでには今回の結果をさらに臨床試験で確認する必要があると警告している。
 
 
 
 

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