精神障害のリスクファクターの存在またはリスクファクターの組み合わせにより、ハイリスクの若者の多くにおいて将来の精神障害の予知ができる [2008-01-29]

Presence of a risk factor or combinations of risk factors can predict future psychotic illness in a large proportion of high-risk youth

精神障害のハイリスクの若者は、彼らが診断閾値に達する前に検出できるとArchives of General Psychiatry 1月号に掲載された。研究者らは統合失調症前駆症状の構造化面接の診断基準に当てはまる、治療法を探している患者291人(平均年齢16歳)を評価した。30ヵ月の間に、リスクファクターを有する患者の35%が精神障害を発症した。リスクファクターを3つか4つ有する者のうち精神障害を発症する確率はリスクファクターの組み合わせにより68〜80%であった。リスクファクターには、社会機能の低下、精神障害の家族歴と最近の学習力などの全体機能の低下の合併、異常な思考、過度な疑い/パラノイア、および過去または現在の薬物乱用などが含まれた。リスクファクターを有さないコントロール134人の中に精神障害を発症した者はいなかった。若者における精神障害は比較的早期に発症した。22%が12ヵ月以内に、さらに11%が24ヵ月以内、3%以上が30ヵ月以内に精神障害が認められた。

 

健常者と統合失調症患者の血液検体の比較から、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)感染により疾患のリスクが上昇する可能性が示唆された [2008-01-29]

Comparison of blood samples from healthy people and patients with schizophrenia suggests infection with Toxoplasma gondii may increase risk for disease

健常者と統合失調症患者の血液検体を比較した、これまでで最大規模のスタディの結果、寄生虫トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)が将来的な統合失調症発症のリスクを増加させる可能性が示唆された、とAmerican Journal of Psychiatry 1月号に掲載された。研究者らは、統合失調症と診断されたUS軍隊内の180人のうち、7%が診断以前にトキソプラズマに感染していたことを明らかにした。それと比較し、健康な新兵532人における感染率は5%であった。したがって、トキソプラズマ感染歴は統合失調症発症リスクの24%上昇に関連していた。この差は小さいが、研究者らは、疾患の発症しやすい人々の病因の理解向上および新たな治療法の開発に役立つと考えている。彼らは現在、トキソプラズマに感染している人々に対する積極的な抗寄生虫治療により統合失調症の発症を遅らせることが可能であるかを研究している。

 

生活習慣の改善および糖尿病治療薬メトフォルミンは抗精神病薬治療に伴う体重増加に対し有効である  [2008-01-22]

Lifestyle changes and the diabetes medication metformin are effective against weight gain associated with treatment with antipsychotic agents

生活習慣の改善および糖尿病治療薬メトフォルミンは、特に併用した場合に、抗精神病薬治療に伴う体重増加に対し有効である、とJournal of the American Medical Association 1月9日号に掲載された。この中国のスタディでは統合失調症の成人患者128人を評価した。抗精神病薬内服前の体重から10%を超えて増加した患者を、プラセボ、メトフォルミン1日750mg、メトフォルミンと生活習慣改善療法の併用、生活習慣改善療法のみの4群のいずれかに無作為に割り付けた。生活習慣改善療法には、心理−教育、食事、および運動療法が含まれた。生活習慣改善やメトフォルミン単独および併用療法はいずれも抗精神病薬による体重増加に対し有効であったが、最も効果が認められたのは併用療法であった。メトフォルミン単独療法は生活習慣改善単独よりも体重増加に対し有効であり、インスリン感受性を改善した。

エタネルセプトを脊髄周囲に注射することにより投与数分後にアルツハイマー病の症状が劇的に改善し効果が持続する [2008-01-22]

Perispinal injection of etanercept can produce dramatic and sustained improvement of symptoms of Alzheimer's disease within minutes of administration

エタネルセプトを脊髄周囲に注射することにより投与数分後にアルツハイマー病の症状が劇的に改善し効果が持続する、とJournal of Neuroinflammation 1月9日号に掲載された。エタネルセプトは、脳の免疫系において重要な役割を果たし、また神経インパルスの調節にも寄与しているサイトカインである腫瘍壊死因子α(TNFα)に結合し不活化させる。アルツハイマー病患者の脳脊髄液中のTNFαが過剰であることが報告されている。この論文ではある1人の患者について詳細が述べられているが、他の多くの軽症〜中等症のアルツハイマー病患者もこの治療を受け全員が持続性の著明な改善を示した。論評では、実験レベルと臨床レベル両方でのさらなる研究を速やかに行うよう呼びかけている。この論文はhttp://www.jneuroinflammation.comで、オンライン閲覧できる。

 

機能的画像の結果、依存症の人々は短期の衝動的な必要性と比較し長期的結果に基づく意思決定において困難を有する可能性がある [2008-01-15]

Functional imaging suggests that people with addictions may have difficulty making decisions based on long-term consequences versus impulsive short-term need

機能的磁気共鳴画像の結果、依存症を有する人々は、短期間に遂行することを衝動的に選択することではなく長期的結果に基づく意思決定において認知上の困難を有する可能性がある、とJournal of Neuroscience 12月号に掲載された。研究者らは、19人のボランティア(禁酒中のアルコール症9人、薬物乱用歴のない成人10人)が小額ずつの金銭を直ちに欲しいか、あるいは1ヵ月分をまとめて後で欲しいかについて解答している間に評価した。アルコール症の人々は背側前頭前野および頭頂葉の活動性が高く、この高い活動性は直ちに得られる報酬を選ぶ傾向と関連があった。依存症の人々は健康な対照者と比較し「直ちに」得られる報酬を選択する確率がほぼ3倍高かった。ジェノタイピングとさらに5人の人々を評価した結果、バリンCOMT対立遺伝子(脳内ドパミンレベル低下と関連)をホモ接合体で有する人々は、脳のある部位の活動性増加および衝動的な「その場で」の報酬を選ぶ傾向にあった。

 

これまで統合失調症と関連するとされていた遺伝子のジェノタイピングにより疾患の重症度および個々の抗精神病薬に対する反応の可能性が予測できる [2008-01-15]

Genotyping of gene previously associated with schizophrenia is predictive of disease severity and possibly of response to individual antipsychotics

過去に統合失調症と関連するとされたRGS4のジェノタイプが疾患の重症度および個々の抗精神病薬の有効な可能性を予測する可能性がある、とBiological Psychiatry 1月1日号に掲載された。研究者らはClinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness(CATIE)スタディの参加者678人を評価した:推定した先祖は59%が「ヨーロッパのみ」、29%が「アフリカのみ」、「その他」が12%であった。ベースラインおよび抗精神病薬療法中にRGS4における8つの変異をPositive and Negative Symptoms Scale(PANSS)で評価した。遺伝子内の連続した2つのマーカーはベースラインの全体の症状スコアがより重症であることと関連していた。1つのマーカーがホモ接合体であるアフリカの先祖をもつ患者においては、Perphenazineはquetiapineまたはziprasidoneよりも有意に効果が高かった。筆者らはより種々の人口集団においてさらにリサーチすることを推奨している。

 

パーキンソン病患者の第一度近親はうつ病および不安障害を発症するリスクが高いようである  [2008-01-08]

First-degree relatives of people with Parkinson's disease appear to be at increased risk for developing depression and anxiety disorders

パーキンソン病患者の第一度近親はうつ病および不安障害を発症するリスクが高いようである、とArchives of General Psychiatry 12月号に掲載された。研究者らは、この研究を施行したメディカルセンター周辺地域に居住するパーキンソン病患者162人の第一度近親1,000人を評価した。さらに彼らは、同じ人口集団でマッチさせた対照群147人の第一度近親850人を評価した。全ての精神学的診断は個々に確認した。研究者らは、うつ病および不安障害のリスクが対照群と比較し患者の近親において有意に高いことを見出した。パーキンソン病を75歳以前に発症した患者の近親者において、リスクが最も高かった。パーキンソン病を発症または、うつ病と不安障害の両者を有する近親者は除外した。家族において発病しやすいのが遺伝子によるものか、全く環境によるものなのか、あるいは両者によるものかを、さらなる研究により明らかにすることが必要である。

 

精神疾患と薬物嗜癖はいずれも扁桃体が原因のため併存する確率が高い [2008-01-08]

Psychiatric illness and drug addiction may have a high frequency of comorbidity because of a common cause in the amygdala

精神疾患と薬物嗜癖はいずれも扁桃体が根本的な原因のため併存する確率が高い、とBehavioral Neuroscience 12月号に掲載された。扁桃体に病変を作成した幼児ラット群とシャム手術を行った幼児ラット群を作成した。成熟すると、病変群は、不明瞭なあるいは脅しとなりうる程度の刺激に対する反応が異常に低かった。つまり、彼らは通常の警戒や恐怖を期待される状況下でそれらを示さなかった。重要なことに、これらのラットはたった一度コカイン暴露後の感受性が有意に高かった。さらに、これらのラットにコカインを繰り返し投与すると、持続する異常な行動変化をより強く発現し、このことから依存過程への感受性が全体的に高いことが示唆された。筆者らは、両方の疾患と診断された患者において向精神薬に対する反応が乏しいのは、これらのラットに見られたのと同様の、依存により異常が強化されたのを反映しているものと推測している。

 


 

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