乳がん患者のリンパ浮腫の評価に対し、生体インピーダンス分光法は他の方法と比較してより正確で信頼のおける検査である、とJournal of Clinical
Oncology 7月20日号に掲載された。265人の患者を対象としたオーストラリアの研究では、およそ87%の患者でリンパ節郭清が、70%の患者で放射線療法が、さらに40%の患者で化学療法とホルモン療法の単独もしくは併用療法が施行された。患者らは術後6〜18ヵ月にわたり生体電気インピーダンス分光鏡、腕周囲長の合計、および患者自身による報告にて3ヵ月毎にリンパ浮腫について評価された。生体電気インピーダンス分光鏡を用いることで、腕周囲長の合計による評価で見逃されたうちの60%に、および自己報告で見逃されたうちの40%にリンパ浮腫の患者を認めた。腫脹のより目立たない側で検査された場合、腕周囲長の合計による方法では感度はむしろ低く、無症候性のリンパ性浮腫の10人中約8人を検出することができなかった。自己報告による方法では特異度が低く、40%の偽陽性を認めた。
まれな腫瘍である乳腺葉状腫瘍の患者は手術に放射線療法を加えることにより再発を予防できる可能性がある、とInternational Journal of
Radiation Oncology*Biology*Physics 7月号に掲載された。この腫瘍は一般的には手術のみで治療されるが、局所再発は珍しくない。今回のスタディの研究者らは1964年3月から2005年8月に悪性葉状腫瘍の治療を受けた患者478人の記録をレビューした。この記録は、130の病院の腫瘍患者が登録されているIMPAC
National Oncology Databaseから引用したものである。その結果、葉状腫瘍の局所再発リスクは腫瘍サイズおよび受けた術式に関連することを見出した。研究者らは、2cm以上の腫瘍に対する摘出術または10cm以上の腫瘍に対する乳房摘出術を受けた葉状腫瘍患者においては、局所再発リスクを低下させるためのアジュバント放射線療法の効果を評価すべきであると提案している。
有意な割合の男性が配偶者のがんが治療不能であると聞かされていないか、またはこの情報を配偶者の人生の最後の週になって初めて聞かされるとのスイスのスタディの結果がJournal
of Clinical Oncology(JCO)7月10日号に掲載された。スイスのがん登録を用いて研究者らは、2000年または2001年に妻を乳がん、卵巣がん、または結腸がんで亡くした男性691人を探出し調査した。4〜5年前に妻をがんで亡くした男性の40%以上が、配偶者が治療不能ながんであると一度も聞いたことがない、あるいは妻が亡くなる最後の週に初めて聞いたと答えた。彼らの86%は、妻が治療不能ながんである場合には近親者が知らされるであろうと信じていたが、彼らの71%はこの情報を知らされた記憶がなかった。
アンドロゲン除去療法は保存的治療と比較し局所前立腺がん高齢患者の生存率を改善しないと Journal of the American Medical
Association 7月9日号に掲載された。研究者らは、根治的局所療法を断ったT1-T2前立腺がん患者19,271人(66歳以上)の疾患特異的死亡率および全生存率のデータを解析した。7,867人は一次アンドロゲン除去療法を受け、11,404人は保存的に治療された(注意深い経過観察)。追跡調査中に前立腺がんによる死亡が1,560例、あらゆる原因による死亡が11,045例認められた。一次除去療法を受けた群は、10年がん特異的生存率が低く(80.1%対82.6%)10年全生存率も上昇しなかった。一方、低分化がん患者においては10年がん特異的生存率は改善した(59.8%対
54.3%)が、全生存率は改善しなかった(17.3%対15.3%)。
新たな血管内皮増殖因子阻害薬motesanibは一部の転移性分化型甲状腺がん患者の進行を遅延させる可能性がある、とNew England Journal
of Medicine 7月3日号に掲載された。国際phase II治験では、93人の患者が組み入れられ、1日125mgのmotesanibを48週間または許容できない副作用が発現するか疾患が進行するまで毎日内服した。93人中32人が48週間の治療を完了した。12人の患者は薬物による有害事象のため脱落した。全ての患者のうち49%に良好な反応が認められた。そのうち14%で腫瘍の縮小が認められ、35%においては24週以上進行が認められなかった。無増悪生存期間中央値は40週間と推定された。25人の患者における遺伝子解析の結果、腫瘍細胞のBRAF
V600Eとして知られる変異が存在するとmotesanibへの反応が良好であることが示唆された。
7つのバイオマーカーの術前血液検査により根治的前立腺全摘除術後の再発または転移リスクが正確に予測できる、とClinical Cancer Research
6月15日号に掲載された。研究者らは60を超える可能性のあるバイオマーカーを評価した後、423人の患者に対し根治的前立腺全摘除術および両側リンパ節郭清術前に7つのバイオマーカー(トランスフォーミング増殖因子β1、インターロイキン6、可溶性インターロイキン6受容体、血管内皮増殖因子、血管細胞接着因子-1、エンドグリン、およびウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子[u-PA])を検査した。平均4年間の追跡調査後、17.7%の患者に再発が認められた。各々のバイオマーカーの上昇により再発リスクは上昇した。7つのバイオマーカーを組み合わせることにより追跡調査期間中に再発した症例の86.6%を予測することができた。一方、臨床病期、Gleasonスコア、および術前の前立腺特異抗原レベルなどの標準的な臨床的変数を含むモデルの的中率は71.6%であった。
鍼治療は頭頸部がんに対し頸部郭清術を施行された患者の疼痛および機能障害の軽減などの恩恵をもたらす、とAmerican Society of Clinical
Oncology学会で発表された。計70人の患者を鍼治療または通常の治療(理学療法の推奨や抗炎症薬)群に無作為に割り付けた。ベースライン時には、全ての患者が3ヵ月以上前に手術および放射線療法を終了していた。鍼治療群は約4週間の期間中に4回の鍼治療を受けた。両群ともに、疼痛、機能、および日常生活活動評価を総合したConstant-Murleyスケールで評価した。疼痛および可動性は鍼治療群で39%改善したのに対し、通常治療群患者で改善したのは7%であった。さらに鍼治療により極端な口腔内乾燥(xerostomia)も有意に軽減した。
ラロキシフェンを内服している閉経後女性は内服していない女性と比較し、エストロゲン受容体陽性浸潤乳がんのリスクが少なくとも8年間50%以上低いとJournal
of the National Cancer Institute オンライン版6月10日号に掲載された。国際臨床試験RUTHトライアルは冠動脈疾患リスクの高い閉経後女性10,101人を組み入れた。解析の結果、ラロキシフェンによる心疾患の予防効果は認められなかった。しかし、ラロキシフェンを内服した女性5,044人においては、プラセボを内服した女性5,057人と比較し、エストロゲン受容体陽性浸潤乳がんを発症するリスクが55%低かった(経過観察期間中央値5.65年)。今回の解析では年齢、過去のホルモン使用の有無またはベースラインの乳がんのリスクにかかわらず全ての女性においてリスク軽減が認められた。筆者らは、今後5年間の乳がんリスクが30〜50%で静脈血栓および脳卒中のリスクが低い女性のリスクベネフィット比が最も高いであろうと述べている。