疫学調査の結果、大気汚染レベルの増加により心血管疾患の罹患率および死亡率が上昇することが示された [2008-08-26]

Epidemiologic studies show that increased levels of air pollutants are positively associated with cardiovascular morbidity and mortality
北京オリンピックが大気汚染による呼吸器疾患に焦点を当てたことから、Journal of the American College of Cardiologyの8月26日号では大気汚染により心血管疾患の罹患率および死亡率も上昇するとの論文が掲載された。ヒトと動物の両者を対象とするスタディの結果、大気汚染への曝露は心拍数、血圧、血管緊張、血液凝固能、心拍変動および動脈硬化の進行に影響しうることが示された。疫学者の報告では、心筋梗塞、狭心症およびうっ血性心不全による緊急入院、さらに心疾患、不整脈、心不全および心停止による死亡までもが関連するとしている。多くのスタディは大気汚染の全身への影響に焦点を当てているが、今回のスタディは車の排ガスのような超微粒子が循環系に移行し、血管や心臓に直接運搬され、不整脈を発現させ心収縮力及び冠動脈血流を減少させる可能性がある。高齢者や心血管疾患または糖尿病を有する患者は特に影響を受けやすい。

ビタミンB群および葉酸は冠動脈疾患患者の死亡および重大な心血管イベントのリスク軽減に役立たない [2008-08-26]

B Vitamins and folic acid not effective for reducing risk of death or major cardiovascular events in patients with coronary artery disease
冠動脈疾患患者を対象としたある大規模臨床試験においてビタミンB群および葉酸は心血管疾患罹患率および死亡率の軽減に役立たなかった、とJAMA 8月20日号に掲載された。ノルウェーの2つの病院の患者3,096人を、1日当たり葉酸0.8mgとビタミンB12 0.4mg、ビタミンB6 40mgの併用(772人)、葉酸とビタミンB12の併用(772人)、ビタミンB6単独(772人)、またはプラセボ(780人)を内服する群のいずれかに無作為に割り付けた。一次エンドポイントは総死亡、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症による緊急入院、非致死性血栓塞栓性脳卒中の合計であった。平均血漿総ホモシステイン濃度は、葉酸およびビタミンB12内服群で治療開始1年後に30%低下した。38ヵ月後までに計422人(13.7%)が一次エンドポイントに達した(葉酸/ビタミンB12内服群219人[14.2%]対プラセボ群203人[13.1%]、ビタミンB6内服群200人[13.0%]対ビタミンB6を内服しない群222人[14.3%])。これらの結果は、ビタミンB群を二次予防のために使用することを支持するものではなかった。

肥満により引き起こされる心血管リスクに対する理解がスタディの結果により改定された [2008-08-19]

Studies refine understanding of cardiovascular risk posed by obesity
肥満者の中には心疾患のリスクが上昇していない者もいるようであり、一方、正常体重者の中には一群の心リスクを有する者もいる、との2つの報告がArchives of Internal Medicine 8月11/25日号に掲載された。ドイツの研究者らは、過剰体重者および肥満者は正常体重者より総体脂肪および内臓脂肪をより多く有することを明らかにした。しかし、インスリン抵抗性を有する肥満者はインスリン抵抗性を有さない肥満者と比較し骨格筋内および肝臓内の脂肪を多く有していた。さらに、インスリン抵抗性を有する者は頸動脈壁厚が厚かった。2つ目のスタディで米国の研究者らは、20歳以上の正常体重者の23.5%は代謝異常を有していた一方、過剰体重者および肥満者のうち代謝が正常であったのはそれぞれ51.3%および31.7%であったと報告した。体重が正常範囲内で代謝異常を有していた者は、健常な正常体重者より年齢が高く運動不足でウエストが大きい傾向にあった。代謝が正常な肥満者は、代謝危険因子を有さない肥満者と比較し、若く、黒人で、身体活動量が多く、ウエストが小さい傾向にあった。

低出生体重は食塩感受性、血圧および腎疾患と関連がある [2008-08-19]

Low birth weight linked to salt sensitivity, blood pressure and kidney issues
低出生体重児の半数近くは高塩分食を摂取したときに有意に血圧が上昇したとのSwiss studyの結果がHypertension誌に掲載された。研究者らは平均年齢11歳の小児50人を調査した。15人は出生時体重が正常で、35人は低出生体重(LBW)またはsmall-for-gestational-age(SGA)の新生児であった(体重5.5ポンド以下)。子供たちはナトリウム制限食を1週間、その後、高ナトリウム食を1週間摂取した。研究者らは参加者らの平均動脈圧を24時間計測した。その結果、食塩感受性(高食塩食に反応し3mmHg以上の変化で定義)は全てのLBWの37%に、SGAの小児の47%に認められた。スタディの結果から、これらの小児の塩分摂取量を制限することにより将来の血圧および腎機能を改善することが示唆された。またこの結果は心疾患の一部の原因は子宮内で既に始まっているとの仮説を支持するものである。

植込み型心膜パッチは心筋梗塞後に起きた機能的および構造的変化を修復する可能性がある [2008-08-05]

Implanted heart patch may reverse both functional and structural changes that occur after myocardial infarction
損傷された心筋に細胞を移行させることのできる線維芽パッチは心筋梗塞後の心不全を予防し慢性不全心の心機能を改善する可能性がある、とAmerican Heart Association's Basic Cardiovascular Sciences Conference 2008 - Heart Failure: Molecular Mechanisms and Therapeutic Targetsで発表された。実験用のラットを用い、無治療群、心筋梗塞後ただちに損傷心筋に外科的3次元線維芽パッチ形成術(3DFC)を施行する群(MI治療群)、心筋梗塞3週後に3DFSを施行する群(心不全治療群)に割り付けた。左室駆出率はコントロール群と比較し、MI群で40%、心不全治療群で21%それぞれ増加した。損傷心筋壁の収縮期displacementはMI群で64%、心不全群で43%それぞれ減少した。左室サイズはMI群で19%減少し、心不全治療群では変化しなかった。心筋への血流はMI群で37%増加し、心不全治療群では116%増加した。

急性大動脈解離の診断を改善する可能性のある手がかりがスタディの結果明らかとなる [2008-08-05]

Study uncovers possible key to improving diagnosis of acute aortic dissection
急性動脈解離に関連した初めてのバイオマーカーの発見により迅速診断検査が開発される可能性がある、とAmerican Heart Association's Basic Cardiovascular Sciences Conference 2008 - Heart Failure: Molecular Mechanisms and Therapeutic Targetsで発表された。ドイツの研究者らは19人の既知の結合組織疾患のない大動脈解離患者(平均年齢62歳)およびMarfan症候群の変異遺伝子を有する8人の患者(平均年齢33歳)の大動脈組織サンプルを検査した。心臓弁置換術を施行された大動脈疾患を有さない患者6人(平均年齢57歳)をコントロール群とした。遺伝子を発現している急性解離患者19人全ての88の遺伝子がMarfan症候群およびコントロール群の同じ遺伝子と有意に異なることが見出された。さらに、MS FBN1蛋白が88の遺伝子のうち4つの蛋白と直接相互作用のあることが明らかとなった。これらの遺伝子のうち2つは少なくとも3倍過剰発現しており、2つは少なくとも同じ量過少発現していた。過少発現していた2つの遺伝子FBLN1およびDCNが急性大動脈解離の基盤となる原因を説明するのに役立つ可能性がある。
 
 
 

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