大動脈弁狭窄を伴った患者においては、シンバスタチンとエゼチミブ併用による積極的脂質低下療法は大動脈弁疾患の進行を抑制することには繋がらなかった、とするSEAS
(Simvastatin and Ezetimibe in Aortic Stenosis)studyの結果がオックスフォード大学のClinical Trial
Service Unit より報告された。この多国間研究では1,873人の無症候性の軽度〜中等度の大動脈弁狭窄患者を対象としている。重大な心血管イベントの発生というプライマリーエンドポイント(治療群333人対プラセボ群355人;ハザ−ド比0.96;95%信頼区間0.83〜1.12)と大動脈弁疾患イベントというセカンダリーエンドポイント(治療群308人対プラセボ群326人;ハザ−ド比0.97;95%信頼区間0.83〜1.14)のどちらにおいても、両群間で有意差は認められなかった。動脈硬化イベントに限れば、治療により22%(95%信頼区間 3%〜37%;P=0.02)の減少を認めた。治療群においてはプラセボ群と比較してより多くの患者で悪性腫瘍による重大なイベントが認められたが(治療群9.9%対プラセボ群7.0%、P=0.03)、この差は、対象人数が少ない研究であるため偶然に起こった可能性もある。
成人ドナーから得た細胞を用いてマウス内でのヒト血管の発育に初めて成功した、とCirculation
Research 7月18日号に掲載された。この研究では内皮系および間葉系前駆細胞が用いられた。成人血液由来と骨髄由来の前駆細胞の組み合わせ、あるいは臍帯血由来と骨髄由来の前駆細胞の組み合わせにおいて、形成された新生血管濃度が最も高かった。これら細胞は7日のうちに新生血管同士あるいは宿主マウスの血管と緻密な網状構造を形成し、4週間の研究期間にわたり血液輸送を継続した。この技術は心筋梗塞、急性傷害、および創傷治癒といった虚血状態に対する治療になりうる可能性がある。
Mayo Clinicの研究者らがある家族の心房細動の遺伝子型に関連した変異を発見した、とNew
England Journal of Medicine オンライン版7月10日号に掲載された。心房細動を有する11人の家族が心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP)のコードに変異を共有していた。変異を有する家族は変異のない家族と比較し、血中の変異ペプチド濃度がはるかに高かった。アイオワ大学の共同研究者はこの変異が心臓の電気的特性を変化させることを動物モデルにおいて確認した。過去の研究で発見された心房細動に関する遺伝子は比較的少なく、そのほとんどが心筋細胞のカリウムやナトリウムの動きを調節するイオンチャンネルに関する遺伝子であった。研究者らはこの発見により心房細動の理解が深まり、いずれは不整脈の予知、予防および治療のよりよい方法につながることを期待している。
不安定狭心症または非ST上昇心筋梗塞の高リスク女性に対し侵襲的治療は再入院、心筋梗塞または死亡リスクを軽減させるが、低リスクの女性においては予後を悪化させる可能性がある、とJournal
of the American Medical Association 7月2日号に掲載された。性別の影響を評価するため研究者らは8つのトライアルのデータを蓄積し3,075人の対象女性患者を得た。侵襲的治療を受けた患者は保存的治療を受けた患者と比較し、死亡、心筋梗塞、急性冠症候群などの負の結果のリスクが19%低かった(21.1%対25%)。バイオマーカー陽性の高リスク女性においては侵襲的治療により総合的なリスクが33%低下し、有意ではなかったが死亡および心筋梗塞のリスクが23%低下した。一方、低リスク女性おいては侵襲的治療により、有意ではなかったが死亡および心筋梗塞のリスクが35%上昇した。
尿中アルブミンが比較的高レベルの健常女性は高血圧を発症するリスクが高く尿中アルブミンの正常値を低下させることにより心血管疾患予防のゴールに近づく可能性がある、との研究結果がJournal
of the American Society of Nephrology オンライン版6月25日号に掲載された。研究者らは、ある大規模な女性の健康に関する追跡調査に組み入れられた、ベースライン時に高血圧または糖尿病がなく尿中アルブミンレベルが正常な女性2,179人における高血圧の新規発症を評価した。高齢女性(年齢中央値65歳)において尿中アルブミンレベルが最も高い群は最も低い群と比較し、高血圧の発症リスクが76%高かった。若年女性(年齢中央値44歳)においては、発症リスクは35%高かった。リスクの上昇は、ボディーマスインデックス、血圧、喫煙、および高血圧の家族歴で補正してもなお認められた。