大動脈弁狭窄を伴った患者に対するシンバスタチンとエゼチミブの併用は重大な心血管イベントを低下させるには至らなかった [2008-07-29]

The combination of simvastatin and ezetimibe failed to reduce major cardiovascular events in patients with aortic stenosis
大動脈弁狭窄を伴った患者においては、シンバスタチンとエゼチミブ併用による積極的脂質低下療法は大動脈弁疾患の進行を抑制することには繋がらなかった、とするSEAS (Simvastatin and Ezetimibe in Aortic Stenosis)studyの結果がオックスフォード大学のClinical Trial Service Unit より報告された。この多国間研究では1,873人の無症候性の軽度〜中等度の大動脈弁狭窄患者を対象としている。重大な心血管イベントの発生というプライマリーエンドポイント(治療群333人対プラセボ群355人;ハザ−ド比0.96;95%信頼区間0.83〜1.12)と大動脈弁疾患イベントというセカンダリーエンドポイント(治療群308人対プラセボ群326人;ハザ−ド比0.97;95%信頼区間0.83〜1.14)のどちらにおいても、両群間で有意差は認められなかった。動脈硬化イベントに限れば、治療により22%(95%信頼区間 3%〜37%;P=0.02)の減少を認めた。治療群においてはプラセボ群と比較してより多くの患者で悪性腫瘍による重大なイベントが認められたが(治療群9.9%対プラセボ群7.0%、P=0.03)、この差は、対象人数が少ない研究であるため偶然に起こった可能性もある。

マウス内で成人前駆細胞が機能的なヒト血管へと発育 [2008-07-29]

Functioning human blood vessels grown in mice from adult progenitor cells
成人ドナーから得た細胞を用いてマウス内でのヒト血管の発育に初めて成功した、とCirculation Research 7月18日号に掲載された。この研究では内皮系および間葉系前駆細胞が用いられた。成人血液由来と骨髄由来の前駆細胞の組み合わせ、あるいは臍帯血由来と骨髄由来の前駆細胞の組み合わせにおいて、形成された新生血管濃度が最も高かった。これら細胞は7日のうちに新生血管同士あるいは宿主マウスの血管と緻密な網状構造を形成し、4週間の研究期間にわたり血液輸送を継続した。この技術は心筋梗塞、急性傷害、および創傷治癒といった虚血状態に対する治療になりうる可能性がある。

閉経後女性において睡眠時間が長すぎても短すぎても虚血性脳卒中のリスクは上昇する [2008-07-22]

Too much or too little sleep increases risk for ischemic stroke in postmenopausal women
一晩の通常の睡眠時間が8時間を超える、あるいは6時間以下の閉経後女性は虚血性脳卒中のリスクが高い可能性があるとのWomen's Health Initiative Observational Study(女性健康イニシアチブ観察研究)の結果がStroke誌(American Heart Association学会誌)7月18日号に掲載された。米国の40のclinical centerにおける参加者93,686人の一般的な虚血性脳卒中リスクファクターを考慮した結果、脳卒中相対リスクは、睡眠時間が7時間の群と比較し6時間以下で14%、8時間で24%、9時間以上では70%上昇した。睡眠時間が6時間未満の女性は9時間を超える女性の倍近かった(8.3%対4.6%)ため、研究者らは、長時間睡眠よりも短時間睡眠の方が公衆衛生全体に与える影響はおそらく大きいであろうと考えている。

ある家族の心房細動の遺伝子型に関連した変異 [2008-07-22]

Gene mutation linked to one family's hereditary form of atrial fibrillation
Mayo Clinicの研究者らがある家族の心房細動の遺伝子型に関連した変異を発見した、とNew England Journal of Medicine オンライン版7月10日号に掲載された。心房細動を有する11人の家族が心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP)のコードに変異を共有していた。変異を有する家族は変異のない家族と比較し、血中の変異ペプチド濃度がはるかに高かった。アイオワ大学の共同研究者はこの変異が心臓の電気的特性を変化させることを動物モデルにおいて確認した。過去の研究で発見された心房細動に関する遺伝子は比較的少なく、そのほとんどが心筋細胞のカリウムやナトリウムの動きを調節するイオンチャンネルに関する遺伝子であった。研究者らはこの発見により心房細動の理解が深まり、いずれは不整脈の予知、予防および治療のよりよい方法につながることを期待している。

INTERMAPスタディの結果、植物由来のオメガ6脂肪酸を多く摂取すると健康成人の血圧が低下することが示唆された [2008-07-15]

INTERMAP study suggests that higher intake of omega-6 fatty acids from vegetable sources is associated with lower blood pressure in healthy adults
リノール酸を主とした植物由来のオメガ6脂肪酸の多量摂取は健康成人の血圧を低下させる、とHypertension 7月7日号に掲載された。多量/微量栄養素と血圧の国際治験(INTERMAP)では中国、日本、英国および米国の40〜59歳の4,680人を調査した。一度も心血管疾患や糖尿病または高血圧と診断されたことがなくそれらに対する内服もせず、治療食もサプリメントも摂取しない、非介入群とされた2,238人を解析した結果、研究者らは、リノール酸の多量摂取と血圧の低いことに統計学的に関連があることを見出した。有意な変動因子で補正した結果、リノール酸の多量摂取(1日約9g)により収縮期および拡張期血圧がそれぞれ平均1.4mmHg、1.0mmHg低いことが示された。

現在進行中のPRECISIONトライアルにより主に関節炎に使用される3つの非ステロイド抗炎症薬に関する最終的な安全性データが得られる可能性がある [2008-07-15]

Ongoing PRECISION trial may produce definitive safety data on the three non-steroidal anti-inflammatory drugs most commonly used for arthritis
主に変形性関節症と関節リウマチに使用される3つの非ステロイド抗炎症薬(セレコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン)の心血管系に対する相対的な安全性を評価する現在進行中のトライアルにより、関節炎に対する薬物治療の必要な循環器疾患患者の処方を決定する際に使用できる決定的なデータが得られる可能性がある、とjournal Congestive Heart Failure 3-4月号に掲載された。PRECISIONスタディでは主として、関節炎で最も多い疾患である変形性関節症の患者で、冠動脈疾患を有するかまたは複数のリスクファクターを有する患者を組み入れた。患者らは平均18ヵ月間追跡調査される予定である。セレコキシブは選択的COX-2阻害作用が最も低いため、これを内服している患者は他のCOX-2阻害薬を内服している患者よりもリスクが低いと予測されている。低用量アスピリンの使用もイブプロフェンとの相互作用の可能性はあるが、現実の臨床に即しており許可されている。

不安定狭心症または非ST上昇心筋梗塞の高リスク女性に対する侵襲的治療は有益であるが低リスクの女性に対しては有益ではないようである [2008-07-08]

Invasive approach benefits high-risk women with unstable angina or non-ST-segment elevation myocardial infarction but does not appear to help low-risk women
不安定狭心症または非ST上昇心筋梗塞の高リスク女性に対し侵襲的治療は再入院、心筋梗塞または死亡リスクを軽減させるが、低リスクの女性においては予後を悪化させる可能性がある、とJournal of the American Medical Association 7月2日号に掲載された。性別の影響を評価するため研究者らは8つのトライアルのデータを蓄積し3,075人の対象女性患者を得た。侵襲的治療を受けた患者は保存的治療を受けた患者と比較し、死亡、心筋梗塞、急性冠症候群などの負の結果のリスクが19%低かった(21.1%対25%)。バイオマーカー陽性の高リスク女性においては侵襲的治療により総合的なリスクが33%低下し、有意ではなかったが死亡および心筋梗塞のリスクが23%低下した。一方、低リスク女性おいては侵襲的治療により、有意ではなかったが死亡および心筋梗塞のリスクが35%上昇した。

尿中アルブミンが比較的高レベルの健常女性は高血圧を発症するリスクが高い [2008-07-08]

Healthy women with relatively high levels of urinary albumin are at increased risk for developing hypertension
尿中アルブミンが比較的高レベルの健常女性は高血圧を発症するリスクが高く尿中アルブミンの正常値を低下させることにより心血管疾患予防のゴールに近づく可能性がある、との研究結果がJournal of the American Society of Nephrology オンライン版6月25日号に掲載された。研究者らは、ある大規模な女性の健康に関する追跡調査に組み入れられた、ベースライン時に高血圧または糖尿病がなく尿中アルブミンレベルが正常な女性2,179人における高血圧の新規発症を評価した。高齢女性(年齢中央値65歳)において尿中アルブミンレベルが最も高い群は最も低い群と比較し、高血圧の発症リスクが76%高かった。若年女性(年齢中央値44歳)においては、発症リスクは35%高かった。リスクの上昇は、ボディーマスインデックス、血圧、喫煙、および高血圧の家族歴で補正してもなお認められた。

薬剤溶出ステントはベアメタルステントと比較し血行再建術再施行のリスクが低い [2008-07-01]

Statin therapy appears to correlate with lower incidence and prevalence of atrial fibrillation in postmenopausal women with coronary disease
スタチン療法は冠動脈疾患を有する閉経後女性の心房細動発症率および有病率低下と関連があるようである、とHeart Rhythm 2008で発表された。研究者らは、大規模なHeart and Estrogen-Progestin Replacement Study(HERS)に登録された冠動脈疾患歴を有する閉経後女性2,673人を評価し、スタチン使用と心房細動の発症率および有病率を調査した。平均追跡期間4.1年後、年齢、性別および他のリスクファクターで補正した結果、スタチン療法を受けている患者はスタチン製剤を服用していない患者と比較し、心房細動の発症率は55%低く有病率は65%低かった。研究者らは、男性に対するスタチン療法の有益性を示した過去のスタディに基づき、女性におけるスタチン使用効果を調査する今回のスタディを施行した。

5つの一般的な遺伝的変異によりメタボリック症候群の発症リスクが上昇する一方、他の遺伝子多型により症候群のリスクが低下する可能性がある [2008-07-01]

Five common genetic variations increase risk for developing metabolic syndrome while another may decrease risk for the condition
5つの一般的な遺伝的変異によりメタボリック症候群の発症リスクが上昇するとの知見により、医師は将来的にコントロール可能なリスクファクタ−を調整することによりハイリスクの人々の症候群を予防したり発現を遅延させたりすることが可能となるであろう、とHuman Molecular Genetics 6月号に掲載された。研究者らは高密度リポ蛋白(HDL)コレステロール調節の役割を担っていると思われるCD36を、36の既知の一塩基多型に焦点を当てて解析した。遺伝的変異の発現率と症候群の徴候との相関は2,000人以上のアフリカ系米国人のデータに基づいた。遺伝子変異はアフリカ人またはアジア人において他の人種より一般的であった。5つの変異が症候群のリスクを上昇させる一方、他の変異はヘテロ接合性の場合はリスクを低下させたが、ホモ接合性の場合はリスクを上昇させた。今回の研究は遺伝子がHDLコレステロールにどのように影響するかを研究している。
 
 
 

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