脳卒中後の患者に抗うつ薬を投与することにより、うつ病に対する効果とは関係なく、遂行認知機能において長期的な有益性がもたらされるようである、とBritish
Journal of Psychiatry 3月号に掲載された。過去6ヵ月間に脳卒中を発症した患者計47人を、fluoxetine、ノルトリプチリンまたはプラセボを内服する群に無作為に割り付けた。12週間の治療後およびスタディ開始2年後に標準的な神経精神学的検査を行った。データが完全に揃っている患者36人において、抗うつ薬群とプラセボ群の差は治療終了時には認められなかった。しかし、2度目の検査時にプラセボ群は遂行機能が引き続き低下していたのに対し、抗うつ薬群においてはうつ病の状態に関係なく有意な改善が認められた。研究者らは、抗うつ薬は脳卒中による直接的な破壊を受けていない神経組織の回復を促進するが経過が緩徐なため顕性化するのに数ヵ月かかるのではないか、との仮説を立てている。
身体的疼痛を伴わない心理的虐待は身体的虐待と同等の精神的苦痛を引き起こすようである、とArchives of General Psychiatry 3月号に掲載された。研究者らは、旧ユーゴスラビアで拷問を受けた279人に対し戦争に関連するストレスおよび拷問についてインタビューした。対象者は平均19の戦争関連のストレスおよび19.3種類の拷問を受けたと報告した。彼らの4分の3以上がどこかの時点で外傷後ストレス障害を有しており、55.7%が現在その障害を有し、17%は現在うつ病であり、17.4%が過去にうつ病を有していた。身体的虐待は0〜4点の尺度上3および4に値するが、直接的脅威や他の人々の虐待を証言するような精神的ストレスには高い点数が付けられた。筆者らは、外傷ストレスの強度は、自由が無いことを自覚することやストレスと関連する苦痛により決定されるようであり、この結果はテロや犯罪の現場で虐待を受けた人々の一部に当てはまるであろう、と述べている。
出生時体重が2,500g未満の女児は出生時体重が正常の女児と比較し13〜16歳の間にうつ病を発症する確率が高い、とArchives of General
Psychiatry 3月号に掲載された。研究者らは小児(女児49%)1,420人を9〜16歳にかけてうつ病および他の精神障害に関して毎年評価した。出生時体重および他の情報は母親から得た。出生時低体重の女児は計5.7%であった:kこのうち38.1%が13〜16歳の間に少なくとも1回のうつ病エピソードを経験したのに対し、出生時体重が正常の女児におけるその割合は8.4%であった。低出生体重児であった10歳代の女子のうち年間で平均23.5%がうつ病を有し、出生時体重が正常の女子におけるその割合は3.4%であった。同じ年齢幅において出生時体重に関わらず男子におけるうつ病の割合は4.9%以下であった。低出生体重は、男女共において不安障害などの他のいずれの精神疾患とも関連は無かった。
パニック障害患者と健常な対照群の未熟な白血球細胞の遺伝子発現の違いから、将来的にこの疾患の診断の補助となる血液検査の基盤が得られる可能性がある、とAmerican
Journal of Medical Genetics 3月6日号に掲載された。研究者らはパニック障害患者16人および障害を有さない対照者17人から得たリンパ芽球の遺伝子発現を比較した。解析の結果、パニック障害の患者においては健康な対象者と比較して多くの遺伝子がより多く発現していた。同様に、一部の遺伝子はパニック障害患者において発現が少なかった。性別による差もあった。しかし全体的に、遺伝子発現のパターンには差があり研究チームはこの検査をより多くの集団において調査し正当性を確認したいと考えている。どの遺伝子が過剰−または過少発現しているかをさらに解析することにより、この障害の分子的な病因に関する知見が得られるであろう。
一般的にうつ病の男性はうつ病でない男性よりも飲酒量が多いが、うつ病を有し抗うつ薬を内服している男性の飲酒量はうつ病を有さない男性の飲酒量と同等である、とCanadian
Medical Association Journal 2月27日号に掲載された。この研究において、18〜76歳のカナダ人男性14,063人を1年間に渡り飲酒量および飲酒の頻度、同様にうつ病と抗うつ薬内服に関して調査した。うつ病の女性は抗うつ薬内服の有無にかかわらず、うつ病のない女性と比較し飲酒量が多かった。うつ病を有さない男性は1年間に436杯飲酒したのに対し、抗うつ薬を内服していないうつ病男性は579杯、うつ病を有し抗うつ薬を内服している男性は414杯であった。それとは対照的に、うつ病を有さない女性は年間179杯飲酒するのに対し、うつ病で抗うつ薬を内服していない女性は235杯、うつ病で抗うつ剤を内服している女性は264杯であった。
眼球運動および注意力の特異的な異常を評価することにより、患者が統合失調症のリスクを有するか否かを医師が判断しやすくなる可能性がある、とJournal
of Abnormal Psychology 2月号に掲載された。この前向き研究では一般的な米国人から抽出した成人300人を評価した。標的を目で追跡することや与えられた仕事に対する集中力に関する所見を2つの異なる統計法により解析した結果、2つの同じグループが限定された。最初の小さいグループは、統合失調症の既往は決してないが、統合失調症様症候(統合失調症に典型的な特徴)を弱く有する人々からなっていた。彼らの家族歴の結果、生物学的家族に統合失調症と診断された者は存在したが他の精神疾患はなかった。もう1つの大きいグループには統合失調症の特徴を有する者はおらず統合失調症を有する生物学的家族もいなかった。
慢性的にめまい(回転性めまいではない)の自覚のある患者の多くを詳細に評価すると潜在的に精神疾患または神経疾患を有し、特に原発性または二次性の不安障害であることが多いとArchives
of Otolaryngology--Head & Neck Surgery 2月号に掲載された。研究者らは、原因不明のめまいを3ヵ月以上有し大学病院のバランスクリニックを受診した15〜89歳の男女345人(平均年齢43.5歳)を調査した。その結果、不安障害は慢性めまい患者の60%に存在し、一方、38.6%の患者が片頭痛、脳損傷、および自律神経障害などの中枢神経系疾患と診断された。最終的に精神疾患または神経疾患以外の診断を下されたのはわずか6人(1.7%)であった。これらの6人は全て不整脈を有していた。