ヒトパピローマウイルスワクチン16/18は既存のウイルス感染には有効ではないようであり予防のみに使用すべきである、とJournal of the American
Medical Association 8月15日号に掲載された。研究者らは、DNA陽性の18〜25歳の女性2,189人を6ヵ月にわたり、3種類の用量のパピローマウイルスワクチン接種(1,088人)または対照のA型肝炎ウイルスワクチン群(1,101人)に無作為に割り付けた。6ヵ月後の受診時にクリアランス率はパピローマウイルス群で33.4%、対照群で31.6%であった。12ヵ月後の受診時のクリアランス率はそれぞれ48.8%と49.8%であった。ウイルス量などの感染指標別の解析、および性交初体験時の年齢、経口避妊薬使用、および喫煙などの人口統計学的解析でも効果は認められなかった。クラミジアや淋病などの併存する感染症別に解析しても効果は認められなかった。
腎明細胞がん内でしばしば機能的に不活性化された遺伝子を再活性化することにより、腫瘍の成長の抑制や消失させることさえ可能であるとの結果が、in vitroおよび動物モデルで得られたとClinical
Cancer Research 8月15日号に掲載された。研究者らはFrizzled-Related Protein-1 (sFRP1)の遺伝子活性化によりWntシグナル伝達経路内の13の腫瘍促進遺伝子の活性を抑制することを発見した。3例の異なる組織検体を解析した結果、RNAおよび蛋白レベルの大幅なダウンレギュレーションが認められた。39人の患者の検体においてがん検体の70%がsFRP-1蛋白の完全な欠失を示しており、30%は対照の健常組織と比較し蛋白レベルが非常に少なかった。ヒト腎がん細胞にsFRP1遺伝子を導入しin
vitroで活性化させることにより、がん細胞の成長が90%以上抑制された。マウスにおいては、7週間遺伝子活性化をさせた腫瘍は大きさが無治療マウスの腫瘍の平均3%であった。多くのマウスにおいて腫瘍は完全に消失した。
米国において、過去数10年間のがん発症率は安定して低下しているにもかかわらず同じ期間中のメラノーマの発症率は1年につき1%以上着実に上昇している、とAmerican
Academy of Dermatology’s Summer Academy Meetingで発表された。1995〜2004年のデータ解析の結果、がん全体は着実に年間0.6%低下しているのに比べ、メラノーマは年間1%以上上昇していることが示された。メラノーマの増加は年齢に特異的ではないが最も若い年齢群(15〜30歳)において認められた。若い人たちの中で、16〜18歳の人々は11〜13歳および14〜15歳と比較し、報告された日焼けの回数が多かったのを含め、より日焼けをしていた。筆者らは、青年期の少年少女らは親の監視が行き届かない年齢に達しているため日焼け防止策が不十分であろうと推測しており、教育の焦点の一つはおおよそ15歳以下の子供には個々に皮膚の防御の重要性を教えることである、と提案している。
転移性大腸がん患者を対象としたphase IIトライアルにおいてFOLFOX併用化学療法に、がん治療ワクチンを追加することにより有望な結果が認められた、とClinical
Cancer Research 8月1日号に掲載された。調整ワクシニアAnkara-エンコーディング 5T4ワクチンは5T4遺伝子(大腸がんを含む多くのがんで大量に発現するが正常組織では発現しない蛋白)を伝達させるために、弱毒化生ワクチンウイルスを用いた。ワクチンを投与された(化学療法前、中、後に計6回注射した)17人の患者中、11人において5T4腫瘍蛋白に対し強く奏効を示した。11人中6人が部分奏効を、1人が完全奏効を得た。全生存期間中央値は予後評価項目として予定されていなかったが、研究者らはワクチン群17人の平均生存期間は68週間であり予定された6回のワクチン投与を全て施行した患者におけるそれは118週間であったと記している。
タキサンの産生と同時に行われた研究において、研究者らは南アメリカに生息する木の樹皮から得られた新たな化学物質は非小細胞肺がんを含むいくつかのがん治療に有望である、とProceedings
of the National Academy of Sciences 7月10日号に掲載された。今回のbeta-lapachoneを用いた研究で彼らは、この化学物質は、非小細胞肺癌の85%および他のいくつかの固形癌で過剰発現するが正常細胞では過剰発現しないNQO1という酵素により代謝され、その結果DNA修復を傷害し正常細胞ではなくがん細胞を選択的に死なせることを明らかにした。短時間の放射線療法でもin
vitroのbeta-lapachone療法の効果が劇的に増強されるようであった。現在膵がん患者に対するphase Iトライアルが進行中である。