卵巣がんの腫瘍血管内皮の遺伝子発現の特異的な変化を同定することにより、特に妊娠可能年齢女性における早期悪性疾患の診断が改善する可能性がある、とJournal
of Clinical Oncology 3月1日号に掲載された。ある国際チームがレーザーを用いて21の腫瘍血管内皮細胞および4つの正常卵巣組織を得た。その結果、がん組織の腫瘍血管には大量のマーカーが70以上発見されたが正常組織の血管においては認められなかった。これまでに腫瘍血管との関連が認められていなかった12のマーカーについて詳細な解析が行われた。このスタディは悪性腫瘍の腫瘍血管に関するこれまでの研究の中で最も検体数が多いものである。この結果は予備的なものであるが筆者らは、生物学的悪性度や予後と関連した高発現を示す遺伝子に関する研究を含めた将来の研究の方向性について述べている。
BortezomibをEpstein-Barrウイルスに関連したがんの患者に投与するとウイルスの複製を活性化し腫瘍細胞の溶解を引き起こすことができる可能性がある、とClinical
Cancer Research 3月1日号に掲載された。研究者らは放射性同位元素でラベルしたトレーサーおよびガンマカメラを用いてウイルス陽性腫瘍内の重要なウイルス遺伝子を可視化したところ、発現は非常に少ないか認められなかった。しかし、ウイルス陽性Burkittリンパ腫にbortezomibを投与した所、発現量は有意に高かった。動物モデルを用いた他の実験ではそのような遺伝子活性化の後に有意な細胞溶解が起こった。研究者らは、トレーサーの放射性活性成分が腫瘍に対する致死効果を有している可能性があると信じている。ウイルス陰性の腫瘍はbortezomib投与後に画像パターンの変化は認めず、腫瘍溶解活性も示さなかった。
高リスクの成人をコンピュータ断層法でスクリーニングすることにより肺がんの診断率を上昇させる可能性はあるが、必ずしも進行肺がんのリスクや死亡のリスクを軽減するとは限らない、とJournal
of the American Medical Association 3月7日号に掲載された。研究者らは予測モデルおよび無症候で現在または過去の喫煙者3,246人のデータを用いて、スクリーニングの結果とスクリーニングなしで予測した結果を比較した。参加者らは毎年評価され発見された結節の治療を受けた。追跡期間中央値である3.9年後、スクリーニングを受けた患者らは肺がんと診断される確率が3倍高く(144例対予測例44.5例)、手術を受ける確率が10倍高かった(109例対予測例10.9例)。しかし、スクリーニングにより進行肺がんのリスクまたはがん死のリスクは低下しなかった。論説で述べられているように、米国およびヨーロッパにて進行中の前向き研究によりスクリーニングの有益性、リスク、およびコストに関する確固たるデータが得られるであろう。
新たな経口白金製剤satraplatinはプレドニゾンと併用することにより、化学療法やホルモン療法の無効であった進行前立腺がん患者の疾患増悪のリスクを有意に軽減させる、とAmerican
Society of Clinical Oncologyの Prostate Cancer Symposiumで発表された。このPhase III のSPARC試験では950人の患者をプレドニゾンとsatraplatinの併用群またはプレドニゾンとプラセボの併用群に無作為に割り付けた。その結果、satraplatinとプレドニゾンを併用された患者はプレドニゾンのみを投与された患者と比較し、疾患の増悪度が33%低かった。さらに、無増悪生存期間の改善度は時間とともに増大した。つまり、6ヵ月後にはsatraplatin群患者の30%において疾患の増悪が認められなかったのに対し、プラセボ群患者におけるその割合は17%であった。12ヵ月後、satraplatin群患者の16%において疾患の増悪が認められなかったのに対し、プラセボ群患者におけるその割合は7%であった。
前立腺がん細胞上のアンドロゲン受容体発現を計測する新たな分子学的検査法は、術後に増悪しやすい腫瘍を医師らが予測するのに役立つ可能性がある、とAmerican
Society of Clinical OncologyのProstate Cancer Symposiumで発表された。研究者らは、ある米国のがんセンターで前立腺全摘除術を施行された患者881人の前立腺組織のアンドロゲン受容体と他の分子マーカーを、定量免疫蛍光抗体法を用いて計測した。受容体の発現度や臨床上の因子を基にしたこのモデルは術後5年間の疾患の増悪を84%の確率で正確に予測した。研究者らはまた、疾患増悪のリスクは、前立腺がん細胞の一回の検査におけるアンドロゲン受容体密度が高いほど高いことも明らかにした。
放射線外部照射で治療された早期前立腺がん患者は近接照射療法や前立腺全摘除術で治療された患者よりも生存期間が短い、とAmerican Society of
Clinical OncologyのProstate Cancer Symposiumで発表された。研究者らはあるがんセンターで治療された低〜中等度リスクの米国人男性2,285人(近接照射療法662人、外部照射570人、手術1,053人)の全生存率を解析した。5年後、体外照射で治療された男性の93.8%が生存していたのに対し、近接照射療法を受けた患者では95.7%、手術を受けた患者では97.7%であった。交絡因子で補正した結果、近接照射療法と手術の効果は同等であったが、体外照射療法の有効性はそれらよりも低かった。喫煙はCharlsonスコア(合併症や全体的な健康度の指標)を上昇させ、また年齢は全生存率を低下させる独立した因子であった。
Toremifeneは進行前立腺がんに対しアンドロゲン除去療法を受けた患者の脂質レベルと骨密度を改善するようである、とAmerican Society
of Clinical OncologyのProstate Cancer Symposiumで発表された。この現在進行中のphase IIIトライアルは50歳以上の患者1,392人を対象とし、toremifeneまたはプラセボを2年間投与する群に無作為に割り付けた。1回目の1年間の解析では、200人の男性の骨密度を計測した。その結果、toremifeneは腰椎、骨盤、大腿骨頸部の骨密度を有意に上昇させたが、プラセボにおいては3個所の骨密度は全て低下していた。2回目に予定されていた解析では、197人の男性における脂質レベルを解析した。その結果、toremifeneはプラセボと比較し、コレステロールを7.1%、低密度リポ蛋白コレステロールを9.0%、中性脂肪を20.1%それぞれ低下させたが、高密度リポ蛋白コレステロールを5.4%上昇させた。