ハイリスクの肥大型心筋症患者は植込み型除細動器により心臓突然死のリスクが低下するようである、とJournal
of the American Medical Association 7月25日号に掲載された。研究者らは506人の患者(平均年齢42歳、平均フォローアップ3.7年)のデータを解析した。リスクファクターには、若年性の心筋症に関連した突然死の家族歴が第一度親族に1人以上存在すること、左室肥大の程度が大であること、ある一定の型の非持続性心室頻拍、および原因不明の失神の既往などが含まれた。患者506人中、20%は適切な除細動器を1個以上埋め込まれていた。心停止後の二次予防を目的とした植込み率は年間10.6%(5年間の累積植込み率は39%)であり、一次予防目的の植込み率は3.6%であった(5年間累積植込み率17%)。一次予防において除細動器の適切な作動率は、リスクファクターが1つ、2つ、3つ以上であるそれぞれの患者群において同等であった。
Organized Program to Initiate Lifesaving
Treatment in Hospitalized Patients with Heart Failure (OPTIMIZE-HF)に参加した施設のデータから、ガイドラインへのコンプライアンスにより、米国における院内および退院後生存率が改善していることが示された、とArchives
of Internal Medicine 7月23日号に掲載された。対象となる成人48,612人のデータを、左室機能評価、禁煙指導、およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬の退院時処方などの入院中の治療のガイドラインへのコンプライアンスに関して評価した。5,791人のサブグループ解析にて死亡率および再入院率を含むアウトカムに関して解析した。標準的な入院の手順をとった患者においては、入院期間は7.5日から6.2日に縮小し、院内死亡率は4.1%から2.5%に低下した。退院後の死亡率に関しても成績は良好で、退院後60〜90日の死亡率は9.9%から6.3%に低下した。
コンピュータモデルによると、コンピュータ断層冠動脈造影の被爆による生涯のがんのリスクは様々であり女性および若年の患者において高い、とJournal
of the American Medical Association 7月18日号に掲載された。このモデルは、64スライス冠動脈造影に起因すると考えられる生涯のがん寄与リスクを推測し、年齢、性別、および撮影法がリスクにどう影響するかを観察した。通常の撮影に伴う生涯のリスクは20代の女性における143分の1から80歳男性における3,261分の1と様々であった。Simulated
electrocardiographically controlled tube current modulation(心電図に同期させ被爆量を少なくした方法)を使用することにより推定リスクは219分の1から5,017分の1に低下した。被爆量を少なくした方法によるがんのリスク推定率は60歳の女性および60歳の男性でそれぞれ715分の1と1,911分の1であった。心臓と大動脈の撮影を両方行うとリスクはさらに上昇した。最もリスクの高い臓器は肺であり若年女性では乳がんであった。
炎症マーカーミエロペルオキシダーゼの血中レベルは、見たところ健康そうな成人における後年の大きな心血管イベントを引き起こす、心血管ダメージの非常に初期のシグナルの可能性があるとJournal
of the American College of Cardiology 7月10日号に掲載された。前向きヨーロッパスタディのある施設の参加者1,138人は、平均8年間の追跡調査期間後に、入院したかまたは死亡した。研究者らはそれらの人々と追跡期間中健康であった参加者らを比較した。平均の血中ミエロペルオキシダーゼレベルは心疾患を発症した患者において健康を維持した人々よりも有意に高かった。伝統的な危険因子を考慮に入れると、ベースラインのミエロペルオキシダーゼレベルが上から4分の1に入る人々は、心疾患のリスクが1.36倍高かった。血中ミエロペルオキシダーゼレベルの上昇とリスク上昇は、LDLおよびHDLコレステロールレベルおよびC反応性蛋白が許容範囲内であっても相関が認められた。
ウォーキングやサイクリングなどの中等度の有酸素運動を週に何回か行うことにより安定した心不全患者の心臓サイズや左室機能が改善する可能性がある、とJournal
of the American College of Cardiology 6月19日号に掲載された。研究者らは14のトライアル(患者812人)のデータを解析した。9つのスタディにおいて患者は20〜60分の有酸素運動を最大運動能力の60〜80%の強度で週に約3回行った。他の4つのスタディにおいては有酸素運動に加え筋力トレーニングを取り入れ、1つのスタディでは筋力トレーニングのみを行った。スタディの参加者は臨床的に安定していた(平均左室駆出率23%)。左室駆出率は有酸素運動を行った患者において有意に改善した(平均2.59%)。拡張末期容積は平均11.49mL減少し、収縮末期容積は12.87mL減少した。有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせは左室駆出率および心臓のサイズに有意な改善を示さず、筋力トレーニングは駆出率を低下させる傾向にあった。
バイパス術中に平均動脈圧が低下した患者は術後早期の認知機能障害のリスクを上昇させる可能性がある、とArchives
of Neurology 6月11日号に掲載された。研究者らは術後脳卒中のリスクの高い患者15人を評価した。認知機能検査は術前と術後3〜5日目に行われた。術中の血圧が27mmHg以上低下すると術後の認知機能検査のスコアが1.4点低下し、一方、血圧の低下が軽度であった患者では1点低下した。術後に磁気共鳴画像(MRI)検査を行った患者13人中6人において急性脳卒中を示唆する所見が得られた。このスタディに参加した患者数は非常に少なかったため、この結果の解析は難しいが、血圧低下の程度が大きい患者は血圧の低下が軽度の患者と比較し、MRI検査において脳卒中病変を有する確率が2.7倍高かった。筆者らは、術中の血圧変化と術後の認知機能低下及び脳卒中の関係を調査するようなさらなる研究が必要であると提案している。
閉経後の若年女性で結合型エストロゲンを内服している者はプラセボを内服している者と比較し冠動脈石灰化が軽度である、とNew
England Journal of Medicine 6月21日号に掲載された。Women’s Health Initiativeトライアルの対象となったベースライン時50〜59歳の閉経後女性1,064人のサブグループは、1日0.625mgの結合型エストロゲンまたはプラセボを平均7.4年間内服したあとフォローアップの冠動脈画像検査を受けた。その結果、フォローアップ時の冠動脈石灰化スコアの平均はエストロゲン内服群(83.1)でプラセボ投与群(123.1)より有意に低かった。ベースライン時点で60歳を超えている女性では冠動脈石灰化は評価しなかった。筆者らは、石灰化のデータは状況を考えずにホルモン療法の心血管疾患予防効果を支持するためにとるべきではないが、症状からホルモン療法が有益と考えられる対象年齢集団の治療方針を考える際には考慮すべきであることを強調している。